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  • 狭間 が更新を投稿 1年 4か月前

    久しぶりに怪談投稿させていただきます。
    暇潰しにでも読んでいただければ。

    「秘湯の塚」

    義理の兄貴から聞いた話。
    義理の兄貴はとても女性にうける。
    そしてこの話は義理の兄貴とその友人が体験した話。

    とりあえず呼び名を決めておこうか。
    義理の兄貴を「タラシ」
    兄貴の友人を「モテ男」
    こんなところだろうか。

    個人的にな意見だがイケメンの周りにはイケメンが集まる。
    正直、この文章を書いている自分も悲しくなるほど。

    兄貴の女性経験は楽に3桁を超えているだろう。
    全くもって羨ましい話である。

    兄貴はこの話を語る時もニヤニヤして、ピース(煙草)を人差し指と中指に挟みながらもう一方の手で無精髭を触っていたいた気がする。
    ちなみにこれは兄貴のクセである。
    では決めた呼び名を使わせてもらって、偶然と不思議が混ざる話を書こう。

    ある日のタラシはとても憂鬱だったんだって。
    彼女もいるけどなんか刺激がない。
    いつもつるむモテ男に電話して今日も何かしら刺激を求めて彷徨う算段だ。

    「よう、モテ男。なんかおもしれー事ねーかなぁ?」

    「おう!タラシ!相変わらず刺激を求めてるのか?
    なら混浴いくかぁ?」

    そうそう。説明がたらなかったがタラシ兄貴は大概暇を持て余すとモテ男に連絡を取る。
    モテ男は好奇心旺盛で情報通である。

    今回の不思議な話もモテ男がもたらした情報から始まる。
    当然の如く混浴の話にタラシ兄貴は乗り栃木県の北部那須の更に奥にある天然温泉へ向かう事になった。

    この天然温泉は旅館とかではなく、涌き出る湯に石組みをしてあるだけの本当の秘湯でマニアの間ではちょっとしたスポットだとか。

    温泉マニアもそうだが、「混浴」と知って赴く露出狂も来るので鼻の下を伸ばした男共もやって来るそうだ。
    これだけなら「いい湯~温泉小旅行」の話なのだが、タラシ兄貴達は湯に浸かった後に帰り道に変なものを見つけたそうだ。

    そもそもが石組みしてあるだけの温泉で、バラック屋根、無人、
    一応入浴料を入れる木箱はあるのだが兄貴達は入れるはずもない。
    それに正規の道を通らずに獣道を進んで覗こうとしたらしい。

    だが思惑通りに進まないのが人生というもの。
    客などいなかったというオチである。
    ならばせめて湯に浸かって帰ろうと思ったようであった。

    だが思惑通りに進まないのが人生というもの。
    帰り道に迷ったらしい。

    ただで覗いて、料金踏み倒すのだからそうそう都合よくいかないのが当たり前ではないだろうか。

    迷った所で雑木林の中に変な塚を見つけたそうだ。

    気にしなければいいのにタラシ兄貴は好奇心に負けて立ち止まったそうだ。

    「なぁモテ男。
    これって塚だよな?」

    「ん?あぁそうみたいだな。」

    よく見ると大きな平な石に「赤」と書かれていて中断には小さな字が刻まれていた。

    「赤ってなんだ?青とか、白とかあるのかな?」

    「タラシよぉ。そんなふざけた塚なんかある分けねぇだろ。
    なんかを祭ってあるんだろ。」

    ちなみに二人の推理は的外れ。

    でも二人は悪戯をすることにしたらしい。

    季節は秋口だったのだが、那須の秋口は結構寒い。
    歩く度に落ち葉が砕かれる音が混ざる。

    「モテ男。なんか油性マジック持ってるか?」

    「あるけど、どうしてよ?」

    「ここに名前書こうぜ。
    タラシ、モテ男参上!みたいな。」

    「でた!またまた悪ふざけ!でも、まっいいけどさ。」

    二人は自分達の名前を書き込んだ。
    石に着いた苔を手頃な枝や石等で剥がして。

    その日はこれでおしまい。
    それから数ヶ月が何事なく過ぎ去った。

    ある時タラシ兄貴の彼女に異変が起きる。
    どうも妊娠したらしい。

    これをきっかけに二人は結婚することになるんだけど、兄貴の友人「モテ男」の彼女も妊娠したんだ。

    これは後になって気がついたらしいんだけど、どちらの子供も男の子で同じ日に産まれたんだって。

    めでたい話しだし、特に気にする事も無かった。

    3年が過ぎた頃、育児もある程度慣れて少し余裕ができたタラシ兄貴はモテ男と一杯飲むこととなった。

    独身時代によく行った居酒屋で串焼き等をかじりながら世間話に花をさかせた。

    「そう言えば俺らの子供って同じ日に産まれたんだよな?」

    「あぁ、タラシから電話もらったんだよな。」

    「やっぱりあの時の事関係あるのかな?」

    「あの時?
    あー!那須の塚か!
    タラシが名前かくって言ったやつな!」

    「そうそう。あの塚って結局なんだったんだろな?」

    「タラシにしては珍しく気にしてるじゃん。
    なら後で俺が調べといてやるよ。」

    「いやいや、ネットでもでてなかったぞ。」

    「いや、俺の嫁さんと子供連れて今度の休みに那須に泊まりで温泉入りに行くんだよ。そん時に聞いといてやるよ。
    宿があの秘湯のちかくなんだ。」

    「そっか。んじゃなんかわかったら教えてくれよ。」

    てな会話をして二人はへべれけになって帰宅した。

    後日タラシ兄貴にモテ男から連絡があった。
    なんでも電話じゃなんだから会って話そうとの事だった。

    モテ男はいつもの居酒屋で待ち合わせをした。
    兄貴が到着して飲みながらの結果報告が始まった。

    モテ男は宿泊した旅館の大女将から話を聞いたようだ。
    大女将は70代後半の年齢で定かではないし伝承というレベルでの話である。

    昔から混浴の秘湯は有名で時代は大正にまで遡る。

    秘湯近くの塚はいつ作られたのかは不明で「赤子塚」と呼ばれていた。
    民俗学に詳しい方はご存知かと思うが日本各地に赤子塚は存在する。

    赤子塚の説明は省くが、ここで「呼ばれていた」と書いたのは訳がある。

    本来の赤子塚とはちょっと違っていた。
    「あかとりご」
    「くろぎご」といい、
    漢字で書くと「あかとりご」は色の赤、動詞の取る、に子供。
    「くろぎご」は
    色の黒、動詞の来る、に子供。
    つまり黒で名を書けば子を授かる。
    赤で名を書くと子の命を取る。
    にわかには信じがたい話しではあるけど民間伝承なのか、総じて「赤子塚」と呼ばれていたらしい。

    名家の長子が子に恵まれない時は塚に墨で名を書いたそうだ。

    大女将が言うには赤で名を書く事があったのは口減らしの時だと言っていた。
    しかし、人の業とでも言うべきか。
    大正時代に最後に名家の子供が亡くなるという事があったらしい。

    塚を調べると鮮血のような赤で名家の長子の名が書かれていたそうだ。
    詳細はわからないが産まれて名が決まる前に子供は亡くなったらしい。

    大女将は最後に一言いったそうだ。
    「お忘れなさい、恵みだけをもたらすものなど存在しません。
    あなたは運が良かった。それだけです。
    お忘れなさい。」

    兄貴がモテ男に聞いた。
    「あの時お前、黒のペン以外持ってなかったんだよな?」

    モテ男は言った。
    「いや、赤と黒両方を持っていたよ。」