闇小噺

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  1. 1252お向かいの窓際で老女が手を振っている。彼女は去年亡くなった筈。子供の頃、嫁は意地悪だと愚痴をよく聞かされたが、そればかりなので次第に挨拶程度になった。可哀想に、まだそこに居るんだ。玄関前で花の世話をしていた奥さんが怖い顔でホースの水を窓にかけた。耳元で、老女の深い溜息が…
  2. 1251駅員として勤務中、ホームを何往復もする男を見つけ、声をかけた。「ボクはどっち?」妙な事を言う男の目は明らかに正常ではない。幾つか質問するが話も通じず、仕方なく警察に来てもらうと、男は目つきを変えこう言った。「丁度いい。次こそワタシが正常な殺人者である事を証明してみせよう」
  3. 1250うちの猫『ニャウ太』は朝が早い。猫だから休日も関係なく決まった時間に行動を始める。ある朝、一番に何をやるのかを布団の中で見ていると、本棚に向かい両手でかいぐりし始めた。何かあるのか?後で見てみると、本の間から亡き祖母の写真が。ニャウ太さん!久しぶりに墓に手を合わせて来ます!
  4. 1249うちの猫『ニャウ太』が後をつけて来る。随分後方の塀の上にいるが、何だってんだ?後ろを気にしていると、前、更に左右からニャウ太が現れた。えぇぇ!?ニャウ太に囲まれた!次の瞬間リュックからニャウ太が顔を出し、シャー!と威嚇すると周囲のニャウ太達が消えた。ニャウ太さん!神出鬼没過ぎ!!
  5. 1248僕は人を殺した。彼は学校で虐められっ子だったそうだ。さぞ辛い日々だったろう。けど彼も弱者を虐待していた。暴力は常に弱者に向かい、弱者の心を歪ませ、より弱き者への暴力を生む。僕は彼に彫刻刀で生きたまま皮を剥がされ死んだ。だから蛇の僕は祟り殺してやった。今、僕は人間より強者だ
  6. 1247転居先の地域では当番制で夜間パトロールがある。閑静な住宅地を足を引きずり歩く少年を見つけ、声をかけようとすると、ダメ!と同行者のNさんに止められた。「ゴベンナザイ…ゴベンナザイ…」振り返った少年の顔は、腫れて痣と血に塗れていた。どう帰宅したのか、私は幼い息子を抱きしめていた
  7. 1246当番で地域を夜間パトロール中、薄暗い路地で同行者のNさんが突然立ち止まった。Nさんは顔を青くし引き返しましょうという。右手には廃れた小さな社。仕方なく従うと、背後で気配がし、私達は走って逃げた。時々Nさんから心配され連絡が入る。今の所無事だが、後ろの何かにいつ何をされるか…
  8. 1245鎖に囚われた《蝶》は目を潰され舌を抜かれても尚青い炎を目指し羽ばたいた。ある者はそれを狂気と恐れ、ある者は無垢と笑った。蝶の一族は皆炎の一部となった。やがて蝶は力尽き、言葉にならぬ呪いと血を吐きながら泥の上に崩れ落ちた。それを大いに喜び、貪り食った蜘蛛の子孫が、我々なのだ
  9. 1244私を捨てた男が死んだ。獣に喰い散らされたような死に方だった。身元確認の為にあんな姿を見られるだなんて、思ってなかったでしょ。そんな詰めの甘い、優しい人だった。本来は私が死んでたのに、〝私の〟を持って行ってくれたんでしょ?あぁ、涙が止まらない。本当バカよ。無駄死にするなんて
  10. 1243食事を取っているのに痩せ続ける妹。原因がわからず、家族も皆疲弊していく。妹は遂に動けなくなり、骨と皮だけに。服を着替えさせようとすっかり軽くなった妹を抱えあげると、ポキと手足が折れ、床で崩れた。頭と胴だけになった妹はそれから何故か体重を戻していったが、皆の心は壊れたままだ
  11. 1242祖父は若い頃炭坑で働いたという。だがそこは石炭等は殆ど採れず、掘削の理由も曖昧だった。ある時、縄を硬く巻かれた棺が運び込まれた。その直後、坑夫達を炭坑ごと埋めたという。…埋めた。祖父は指示されただけだ。今の生活の下にある犠牲に感謝しなさいと遺した祖父の遺体は、真っ黒だった
  12. 1241近所の古い平屋は住人の死後空き家だが、時々その前で老婆を見る。彼女は「ココデ…ココデ…」と繰り返している。気味が悪いから止めて欲しいと隣人が声をかけると老婆は静かに去り、以降姿を見せなかった。後日隣人が突然死すると再び老婆が現れ、隣人宅前で「ここで…終わりに」と拝んでいた
  13. 1240孫が事故で重態に。お願いします。私の命と引換に孫を助けて下さい。老い先短い私一人じゃ不足なら、主人の命も差し上げます。私は必死に仏壇に合掌する。が、孫は息を引きとった。その晩、夢に孫が現れた。「行こう」そう言い差し伸べる小さな手を、そっと握る。ねぇ、皆もお迎えに行こっか?
  14. 1239オカルト愛好家の叔父が孤独死した。奇怪な物ばかりの遺品の整理に困った母は業者に処分を依頼。翌日、木箱は何処?と母が狼狽えていた。業者に訊くが木箱など無かったと言う。段々様子がおかしくなる母。まるで何かに取り憑かれてるようだ。僕は押入れの奥から木箱を取り出し、ベロリと舐めた
  15. 1238深夜のエレベーターでのみ来れる地下100階。そこは全てが水浸しの世界だった。足を踏み込む度、地面の水に血のような色が舞い上がる。暫く進むと、何かを引きずった赤い痕が遠くに伸び揺れていた。この先に…いるのか?必ず探し出す。永遠に見つかる事の無い行方不明者。それを探す者も、また…
  16. 1237青々と葉が茂り風に揺れている木。この木である男が首を吊った。何故男はこの木を選んだのだろう。そっと幹に触れると、ここで少年が少女に告白する映像が視えた。そうか、男には少年時代の思い出が。だが、それからずっと妹に付きまとっていたのか。妹が男を吊るす映像が視えたのは、秘密だ。
  17. 1236満員電車内。傍で赤ん坊が大泣きし、周囲の空気に若い母親も困り顔だ。私はそっとスマホで幼児用動画を赤ん坊に向けると、赤ん坊はスッと泣き止んだ。礼を言う母親に、動画は有効ですよと返す。この動画にはサブリミナル的に『皆殺しせよ』と表示される。将来が楽しみですねと、母親に微笑んだ
  18. 1235軽く拳を握るとできる暗い空間に、僕の友達はいる。ママは僕がいつも独りぼっちだから、そんな子はいないと言う。でも今も手の中で僕に話しかけている。…。ダメだよそんな事。…。ママは邪魔じゃないよ。…。君は友達、ママにはなれない。…グジュッ。煩い。何回潰せばお前は親友になれるの?
  19. 1234「1…3…」スマホのスピーカーがくぐもった少女の声を独りでに繰り返し発する。次第に鮮明になる音声。1234…。「4でやるんだよ!」不意に大人の女の怒声が発せられ、「123ア"ァゥ!」と少女の悲鳴が響いた。翌日、近所に住む少女が手に包帯を巻き登校して行った。通報すべきか、判断できずにいる
  20. 1233息苦しさに目を覚ます。息が出来ず涙と唾液が溢れる。喉の奥から何かが迫り上がり、それは口をこじ開け出てきた。鼻先の向こうに見える、小さな頭。赤ん坊の泣き声が響く。〈赤ちゃん、可愛いでしょ〉繰り返すスマホの声は、孕ませて捨てた女のものだ。嬰児の頭の後ろから、赤い爪の指が伸びる
  21. 1232ある生徒が失踪。手掛かりはなく捜索は難航する中、女性教員が大怪我で入院。鼻を食い千切られ、頬に人の歯型が残っていた。事件となり教員宅に捜査が入ると、檻の中で獣のように唸る生徒が発見された。教員は霊媒体質を持つ生徒を監禁。亡き夫を幾度も強引に降霊させる内、魔物が入ったとか
  22. 1231白く小さな球体が眼前の宙を横切る。球体の向かう先にいた中年の女は素手で球体を掴み、そのまま口に運んだ。口の隙間からブジュと液が漏れ、口元にデロと垂れた。女はそれを拭いもせず咀嚼している。傍にいた男性が突然呻き出すと、目から眼球が飛び出した。女が嫌らしく舌舐めずりをしている
  23. 1230死去した夫の遺体は口から上下に頭部を切り分け、それぞれ別に埋葬された。夫の故郷の風習で、死者が秘密や呪いを囁くのを防ぐ為だと義母に教えられ、合点がいった。事故死した弟に頭部が無かった事。息子の両頬に横長の痣がある事。ある晩夢に現れた亡き義父は、弟の顔で義母への恨みを吐いた
  24. 1229帰宅すると同棲していた彼女はおらず、段ボール箱にまだ赤黒い嬰児が残されていた。俺は醜いソレを湯船に沈めた後、刻んで近所の犬に食わせた。それから、新しい彼女が突然風呂場で出産。俺はまたソレを沈めると、赤子の声で泣き出した彼女も沈めた。外で、犬と前の彼女がオギャァと泣いている
  25. 1228当旅館傍の海では自殺が多い。自治会が精力的防止活動を行う中、会長の独り娘が仕事で鬱病になり、皮肉にも海で自殺。妻に先立たれていた会長も孤独を理由に海へ入ったが自治会員に救出され、後遺症で半寝たきりに。時々旅館の食事を届けると、彼は灰色の妻が見守る中、二人の遺影と話している
  26. 1227当旅館では海での自殺者を多く泊めてきた。中には駆け落ちした若い男女も。後に知った事だが、男性は死刑囚の親を持つ事で彼女の親に交際を反対され、逃避行へ。追って来た彼女の親を殺害、己の血筋に絶望し、二人で海へと。食事を終え、美味しかったですと私に見せた笑顔は、優しく儚げだった
  27. 1226鬼払いの面を手に入れたと友人が嬉しそうに言う。以来友人は度々曰くのある場所に赴き、僕も一度付き添った際に騒めきが去るのを聞いた。だが友人は面を常備せずには生活できなくなった。場を追われた悪鬼が友人の隙を狙っているのだとか。僕も最近体調が悪い。アイツから、面を奪わなければ…
  28. 1225ある時期開発されたVR機器は触感を楽しむ事も可能。仕組みを要約すると、ヘッドセットから脳に信号を送り擬似的に触覚を引き起こすというもの。性的VRの他、ホラーVRによる超恐怖体験が人気を博す。だが肉体への擬似的苦痛もあり、死者が出ると生産中止に。現在、愛好家や拷問に使用されている
  29. 1224前方から男女が両手で作った双眼鏡を覗きながら、見える!と叫び駆けて来る。途中男は電柱に激突、女を巻き込み勢いよく転倒した。駆け寄る と、二人は自身の両目に親指を突き刺し、グリグリと掻き回しながら「見える!見える!」と笑っていた。ふと何が見えるのかが気になり、親指を目に運んだ。
  30. 1223妻と娘を連れ緑地公園へ。池にある白鳥型のボートに娘と二人で乗っていると、異様なモノを発見した。池の水面に、女の顔が。その目が娘を見ているようで、慌てて乗場へ戻った。ふと、音信不通になった不倫相手を思い出した。まさか、な…。どうしたのという妻が、知らぬ女の顔で娘の手を握った
  31. 1222咲き誇る桜は美しいが、同様に美しいモノがある。桜を求めるのは死者も同じようで、彼らの“手”が美しいのだ。彼らは地面から手だけを出し、桜に向かい届く筈もないその淡く青白い手を伸ばす。まるで桜と花畑を同時に見るようで絶景だ。酒盛りをする人々にも、敷物の下のそれらに気づいて欲しい
  32. 1221ゴミ置場で揺れるゴミ袋。やがて揺れが収まると、袋をすり抜け、腫れて顔の変形した少女がヨタヨタと去って行った。彼女も、か…。幼い頃、父の日常的暴力で死にかけたのを機に死者が見え、それを母に告げると病院に入れられた。でもまだ私は生きている。死者の不幸に、私は幾分か救われている
  33. 1220目前に立つ全身焦げた男が、欠けた黒い指で私の後ろを指差す。背後でプスプスと鳴り、私はゆっくり振り返る。火達磨の女が静かに立っている。突然響く赤ん坊の泣き声。私は硬く目を閉じた。死者が視えると口にすると、また母に病院に入れられる。これは幻。私に触れる小さな熱い手は、幻覚だ…
  34. 1219喫茶店でふと見上げると、天井に海老反りで張り付く男が。何かを訴えるような目。ご免なさい、私には何もできない。男が苦しそうにえずくと何かを吐き出し、それは床にカラと落ちた。ミニカーだ。見ると男は手脚を子供の手に掴まれている。男は次に人形を吐いた。彼は一体…。私は目を逸らした
  35. 1218アパート生活を始め数ヶ月。人間関係はまずまずだ。ある日、下の階の老人が亡くなった。遺された夫人曰く、天井から下がる人の脚を見てのショック死だったとか。別の日、今度は上の階で悲鳴が。住人は床から生える脚を見たらしい。脚…。なら、上半身は?ふと見た足元で、顔見知りと目があった
  36. 1217玄関の扉を開けると、外から押し返された。オィ何だ…誰なんだよ!押し合いをしていると、出るな!という声と外の人物が見えた。“俺”だった。俺がもう一人?どういう事だ?曰く兎に角外に出てはダメだらしい。すると、家の中で低い唸り声が。外の俺が言う。「後は俺に任せろ。お前はここで終わり」
  37. 1216登校拒否中の息子が痒いという背中を掻いてやると、皮がズルリと剥け蠅のような羽根が出てきた。「蛆虫のような親より先に子供が蠅に成るなんて皮肉だなぁ!」息子は怒鳴ると窓を突き破り外へ飛び去った。数日後、息子は何者かに羽根を捥がれ撲殺体で見つかった。安堵する私は、蛆虫ですらない
  38. 1215近代まで土葬習俗のあった村で墓荒らしが多発。周辺では徘徊する黒い影が度々目撃され、祟りを恐れられた。ある日、無縁墓の前で全身を影に覆われた初老の男の遺体が見つかる。男に戸籍と身寄りはなく、掘り返したのは全て女性の墓だった。目的は不明だが、壮絶な死顔から志半ばであっただろう
  39. 1214「許さねぇ」すれ違いざまに男に言われ振り返るが、男はいなかった。別の場所では女に許さないと言われ驚いていると、女は消えていた。ある晩、自室に現れた老人が「絶対許さん」と俺を指差す。いや、俺の背後を?恐る恐る振り返る…が、誰もいない。背後の何かの所為で、命の危険を感じている
  40. 1213仕事中、指に痛みが。関節から針が突き出ている。以来針は体中から何本も出た。ある日机の裏で蛇の死骸を発見。大量の針を飲まされていた。これが原因?一体誰が…。会社を辞め実家にいたある日、眼から針が出て視力を失った。原因は発見できず、全部燃やせばと実家を放火。翌日、頬に痛みが…
  41. 1212大きめの石をどかすと虫がいるが、子供の頃に奇妙なモノを見た。鼠の赤ん坊にも、人の胎児にも似た『何か』。へその緒が地中に繋がり、眩しさに悶えるように蠢いていた。でもそこへ鴉が飛んで来て…。翌日町では鴉の無残な死骸が幾つも見つかった。親の復讐か?あの時、もし踏み殺していたら…
  42. 1211幼い頃、家の中で一度だけ『縄で縛られ顔を潰された男』の霊を見た。ふと思い出し母と祖母に話すと、バカな事をと2人は笑った。ある日父が大量の土嚢袋を祖母の部屋に運び込んでいた。祖母の指示で床下を埋めるという。父が耳打ちで囁く。「お前が見たのは、地下で幽閉されてるお爺ちゃんだ」
  43. 1210祖父母の家の敷地には柿の木があり、毎年沢山の柿を届けてくれた。けど今年は祖父が倒れ、皆で祖父母の家を訪れた。祖父の容態は安定している。ふと外で何かが聞こえた。風の音?庭に出ると、木に成った柿の実一つ一つに歪んだ表情の顔が浮かび、恨みの声を低く上げていた。こんな柿を、毎年…
  44. 1209電車で向かいに座る女が、んあ゛ぁぁぁ!と絶叫を上げながら片眼を抉った。引き抜かれ伸びる視神経には黒い何かが絡み付いている。髪だ…。女は長い髪を完全に抜き取るとイイィィ!と奇声を発し、眼球を床に放り踏み潰した。ビュッと液体が飛び散る。女の空いた眼窩の奥に、別の眼が覗いていた
  45. 1208妻の重い病を承知で結婚。数年後、待望の臓器移植を受ける事に。頼む、妻を助けてくれ…。祈りが通じてか、手術は成功。が、ある日呻き声を上げた妻の体に、女が手首まで手を突っ込んでいた。女はしきりにこう呟く。『血の一滴も、逃さない…』やめろ!妻は関係ないだろ!頼む、助けてくれ!
  46. 1207母が殺された現場には『少年』が現れると聞き、僕は確かめに来た。少年は母が死んでいた場所に横たわり蹲っていた。声をかける。「もう十数年だ。僕も結婚して家族ができる。乗り越えられるよ…多分。だからもう…」少年に反応はない。…。僕はあの時のままのもう一人の自分に、また背を向けた
  47. 1206手にした剃刀を置く。自死したら更なる苦しみがあると言われるのを思い出すと、やはり怖くて死ねない。あぁ、生きるのも死ぬのも地獄か。ならば人の世を捨て山に篭ろう。だが山は人の世以上に生物の壮絶な死と恐怖、苦しみが溢れていた。どこも地獄ばかりだ。僕は目を閉じ、束の間の無に逃げる
  48. 1205ある男が死んだ場所には嗚咽する女性の姿が。知人だろうか。近寄ると、女性の絞るような声が聞こえた。「…クク、ずっと苦しいってどんな感じ?気持ちイイの?そうなんでしょ?だからずっとここにいるんでしょ?ククク、下品な男…」私は女を石で殴り倒した。奴が苦しんでないなんて、許せない
  49. 1204今夜も物置がガタガタと鳴っている。あの頃は自分ではどうにもならなかった。何をやっても泣き止まぬ子供の声が私を苦しめ、苛立たせた。だから少し…ほんの少し子供を物置に閉じ込めた。あぁ…物置が煩い。足元に視線をやり、纏わりつく死んだ筈の子供を見る。ねぇ、物置に、一体何が居るの?
  50. 1203道の前方を行く男児が何かを落とした。木の枝だ。そんな物は拾うまでもないなと素通りすると「弟がいない!」と男児が振り返った。その顔は複雑に絡む枝に覆われている。すると街路樹が騒めき〈なぜ助けぬ〉〈人でなしめ〉と声が。慌てて拾いに戻るが枝は車に轢かれ、男児は泣き喚き走り去った
  51. 1202また新人が病院を辞めたって。まぁ無理もないよ。私達古株は大勢の患者さんの最期を看取ってきたけど、その最期の姿で出て来るもんだから、謂わば見るのは2度目って訳でしょ。しかも知ってる人だし。だから免疫があるのよ。でも彼らを知らない新人がこの無数の死者に囲まれたら、そりゃねぇ…
  52. 1201孤独が辛くて、俺は死ぬ事ばかりを考える。けれど自殺は怖く、死刑になりたくて、街へ出て数人を殺した。大人しく捕まればいいものを、何故俺は逃げ出したのか。いや、理由は分かっている。本心では死にたくないんだ。あの時、逃げてよかった。殺した彼らに毎晩見下ろされ、もう寂しくはない。
  53. 1200B20:各階を繋ぐ長い階段を下り続け、鍵の開いていた部屋へと入る。床には積み重ねられた裸の女達。死んで…いるのか?すると突然の絶叫。振り向くと、女を犯しながら乳房を食いちぎる『俺』がいた。狂ってやがる。あんなのは俺じゃない…。俺は暫くその光景を眺め、また階段で下を目指した。
  54. 1199僕の目は生後すぐに見えなくなったらしい。けどそれで良かったのだと思ってる。ある日誰かにそっと教えられた。僕の顔面に女が顔を突っ込んでいる、それで見えないのだ、と。僕は何も感じないし、見えなければ怖くはない、だからこのままでいい…筈だった。今、顔の奥で女の低い声が聞こえる…
  55. 1198犬の散歩を手伝うと菓子をくれる近所の老人が孤独死した。子供達は彼の死より菓子を貰えなくなった事が残念な様子。犬は我が家で引き取った。ある日散歩から戻ると犬が苦しそうに嘔吐、菓子が包みごと混じっていた。その後も度々同じ事があり散歩をやめると、犬の傍に黒い影が立つようになった
  56. 1197深夜、部屋の隅に棺桶を見つけた。動かそうとするがズシリと重い。覗き窓を開くと、中のモノと目が合った。豚?棺は豚の頭で埋め尽くされている。するとそれらの隙間から赤黒い液体が湧き出し棺から溢れた。これは、悪夢だ!頭を振ると、棺は消えていた。クソ…豚は嫌いだ。豚という、人間共め
  57. 1196不幸ではないのに、常に不安で苦しい。だから私は自分が不幸なのだと考えてしまう。暗い顔の私を見る貴方の視線。ゴメンナサイ。私はどんな事にも満たされそうにない。私が私でいられるかも分からない。家族の為、せめて死なずにいようとは思う。ただ…この永遠の不幸の中に、お前は道連れだ。
  58. 1195パパに会いたいなと娘が呟く。夫は先日事故に遭い酷い状態だ。あんな姿を見せる訳には…。だが寂しげな娘に心が揺らぐ。少しだけ会う?と訊くと、娘は大きく頷いた。私は黒いバッグを開き、娘に見せた。中には頭だけになった夫。これでも生きてるのよと教えると、こんなの要らないと娘は言った
  59. 119430歳にもなる息子が口癖のように毎日誰かに対し呪ってやる殺してやると口にする。情けない。まだ何も為してないアンタにどうして人を呪う資格があるんだか。息子を叱ると、遂に私にまで呪ってやると吐き捨てた。ハァ…親の面汚しめ。口先だけのアンタに、本当の呪いってもんを思い知らせてやる
  60. 1193夕空が紅く染まった。私は厭な予感に窓から外を見る。あぁ、やはり異変が現れた。人々の顔がグニャリと醜く歪んでいる。誰もそれに気づかないのか、皆その顔で談笑や犬の散歩等を続けている。歪み方は人により違うようだ。もしあれが『人の本性』だとしたら…。娘が私を呼ぶ。歪んだ笑顔で…。
  61. 1192少年達の間で度胸試しに使われた廃民家がある。中で1時間独りで過ごせれば“男”になれると言われ、成功した少年の面構えには確かに若干の勇ましさが伺えたという。だが彼らが大人になった現在、内数名が自らを廃民家の家主だと口にし、各々の家族を巻き込み、民家を巡る流血の争いを続けている
  62. 1191母は僕から切り取った指を眺めた後、顔をしかめ投げ捨てた。朦朧とする中それを見つめる。「本当に穢らわしい…」母はそう言うと僕の残りの指を手の甲ごと切り落とした。床に落ちた指がのたうち回っている。「…殺しても殺しても殺しても!!」母は発狂し僕を何度も刺した。だから、無駄だってば
  63. 1190歩きスマホをし顔を上げると、見知らぬ町にいた。GPSでも現在地は確認できない。辺りを見回すと、電柱や壁に薄らと大きな赤黒いシミがある事に気付いた。すると前方を俯いて歩く男性が電柱に気づかず激突し、シミを残して消滅した。暫く町を彷徨いスマホの電池が切れると、視界は闇に包まれた
  64. 1189談笑中に大口を開けて笑うと、友人が突然話を止めた。口の中を見せてと言われ従うと、どうなってるのと友人は驚いた。友人の実家の風景が見えるというのだ。暫く口の中を覗いていた友人は血相を変え「大変だ!助けなきゃ!」と叫び、口の中に手を突っ込んできた。何!?ヤメッ…ぐるじぃ…死、ぬ…
  65. 1188あの人が消えたのはこんな夜だった。温もりで私の心臓を握り潰した人…。微かに揺れる水面には何も映っていない。月は完全に蝕まれた。纏わりつく闇の冷たさに身が震える。あの人の名が口から零れた。「甘い死を…」闇の中から囁く声に、手を伸ばす。僅かに姿を現した月が、滲んで満ちて見える
  66. 1187犬が部屋の隅に向かい吠え続けている。オイオイまさか幽霊がいるとか?『タスケテ…』え…?隅から絞るような声が。「ここに男がいるワン!」ん!?今犬が喋った!?『助ケテクレ…』ギャッ!本当にいる!「私の男に手を出すんじゃないワン!」オイお前オスだろ!『助ケテ犬怖イィ…』もうヤダ助けて!!
  67. 1186私は疲れ切っていて、もう何も感じない。子供の泣き声が響き渡る。煩いなぁ。手にした刃物で自分の耳を鼓膜ごと抉る。止まない泣き声。女が床を這い子供と夫の亡骸に手を伸ばしている。まだ生きてたんだ。トドメを刺そうとした刃物に私が映った。え…誰?私は…彼の妻で、この子の母親でしょ?
  68. 1185居酒屋で飲んでいると、客が店員に怒り始めた。何でこんなモンが入ってるんだと客が指差す先には、料理の断面から溢れる黒い髪の塊。店員は何度も頭を下げ料理を運び去る。その時、皿の上に鼻から上の女の顔が見えた。女の目は客を見ていた。咄嗟に顔を逸らすと、自分の皿の上の女と目が逢った
  69. 1184寺に預けられた姉の様子を見に来た。優等生だった姉が突然奇行をとるようになったのだ。姉は蛇のような瞳をこちらに向けた。和尚曰く、姉に対する皆の過剰な期待が邪な守護者を寄せ付けたのだとか。姉が壁を這い、天井の隙間に吸い込まれた。姉にとっては今のままが幸せなのだと、和尚は言った
  70. 1183友人の腕に幾つかの小さなデキモノが出来ていた。それは僅か数日で『手脚』に成長。ある日友人が突然絶叫をあげ、見ると友人の腕が千切れた。離れた腕は生えた手脚を使い、動物の様にどこかへ去って行った。街では同様の症状が多発し、腕や脚が走り回っている。顔に出てきたデキモノが心配だ…
  71. 1182老舗デパートの話。長年人々の流行や生活を支えてきたが、遂に閉店が決定。老朽化が進んだ建物は壊す事に。閉店を惜しむのは限られた愛好家か古い地元住民だけ。だがここには無数の喜怒哀楽の念が遺っている。それらも一緒に消えてしまうのだろうか。ならば消滅ではなく、浄化なのだと考えたい
  72. 1181老舗デパートでの話。ある時館内放送で迷子案内が。だが放送した者も子供も姿はなく、唯一保護者印入りの迷子引渡し書が残っていた。40年前、保護者関係者を偽る人物に引き取られ消息を絶った子とその親の名。当時は確認が甘く、担当従業員は自殺。漸く解決したのではと皆に都合よく解釈された
  73. 1180老舗デパートでの話。ある商品のワンピースの裾から、女の脚が出ていた。女性従業員は驚いたが何故か咄嗟に似合ってるわよと声を掛けると、脚は軽く飛び跳ね消えた。彼女には先天異常で両膝下の無い中学生の娘がいる。後日、ワンピースを着て踊る夢を娘が見たらしいと、彼女は涙ながらに語った
  74. 1179横で共に踏切を待つ女の様子が変だ。まさか飛び込まないよな…。やがて電車が近づくと女は突然叫び声をあげた。ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ!!すると別の男がエ!?エ!?と言いながら何かに引っ張られるように電車に飛び込み弾けた。膝から崩れ謝り続ける女は、子供の玩具を握っていた
  75. 1178大の字で倒れ込むと、降り積もった雪はボッと音を立て僕を型取った。ふふ、何だか間抜けな形だ。でも他に方法が思いつかない。雪が解けてしまう前に、気づいて欲しい。僕がここに居るって。誰かママを連れて来て。あの時手から離れたママの温もりが思い出せない。ずっと独りはイヤだよ、ママ…
  76. 1177新築マンションに入居。快適だが、ある特定の時間に一瞬何かが見える。天井から床へと瞬時に通り抜ける影。それは『人』だった。この建物は古いビルを壊し、面積を広げ建てられた。つまり旧ビルで飛び降りた人が今も同じ位置で繰り返し…。一階の住人がすぐに去ったのは、落下地点だからか…?
  77. 1176タクシー運転手歴9年。怖い体験は…ある。ある日二つの供花の内、強風で転がって来た一つを轢いた。すると後ろに男児が座り「ママは何処?」と問う。車体の底からはバンバンと叩く音が。男児は俯いたまま、暫くして消えた。手洗い洗車中、底に張り付く花弁の横に、白目を剥く女の顔が見えた。
  78. 1175深夜の公園前を通ると、数人の子供が輪を作り宙に浮いていた。地面には彼らに囲まれ怯える男性。すると子供達は自身の手足や首をもぎ取り、吹き出す血を男性に浴びせた。血を出しきると子供も血も蒸発したように消え、男性だけが残った。発狂した男性は自身の目を抉って飲み込み、窒息で死んだ
  79. 1174どこにでも付き纏う女がいる。常に俺の視界に入り込み、こちらを淀んだ目でジッと見ている。だがこの女に自覚はないだろう。ここにいるのは所謂『生き霊』って奴だ。俺への恋情ならまだマシだが、あの目は恐らく“疑念”だ。俺が人喰いである事に気づいたか?まぁいい。これからお前を喰いに行く
  80. 1173母が山へ行こうと言う。何度も何度も何度も。僕はそれを無視し続ける。父や祖父母は皆母の言葉に従い山へ行った。幸い幼い妹には母の声が聞こえてないようだ。「お母さんを見つけてよ…」母が低い声で言う。そうしてあげたいけど、なら何故皆帰って来ないの?僕は恐ろしくて、ただ沈黙を続ける
  81. 1172明け方目覚めると、全身血と泥に塗れていた。妻と娘にバレぬよう寝間着は処分。だが別の日も同じ事が起きた。寝てる間に、俺は一体何を…?ある夜誰かの声に目を覚ますと、森の中にいた。背後で「何でいるの?」と聞こえ振り返る。男の死体、そして娘。まさか…。大丈夫だ、父さんが何とかする
  82. 1171誕生日にパパがくれた物は『妖精』だった。妖精は言葉の代わりに優しい鈴のような声で鳴き、脅かしたり叩くとより大きく美しい声を響かせる。僕が気に入るとパパはもう一匹増やしてくれた。二匹は寄り添い人のような涙を流して鳴いている。この音も綺麗だ。最近は針を刺した時の声が一番好きだ
  83. 1170友人の肩に女の手が!だが友人は悲しげにこう言う。「いいんだ、死んだ彼女の手だから…」怖いけど切ないな…。「悪霊を寄せ付けないし」良いなそれ。「家事も料理もしてくれるし」良いなそれ!「あと金も拾って来てくれるし」超良いなそれ!「他の女と話すと心臓握られるけど」やっぱ怖っ!
  84. 1169ある路地脇の地蔵が何者かに頭を砕かれ、以来付近では頭部損壊殺人が多発。祟りが囁かれる中、長年地蔵を手入れしてきた老人が自首した。「地蔵損壊は無実。土地の守護を失い流れ込んだ魍魎のせいで孫が死に、その腹癒せ」と自白。だが老人には記憶の欠落があり、後日発狂して頭を砕き自殺した
  85. 1168子供達のお泊り会を思い出す。寝静まる子供達をコッソリ覗くと、ある子の布団が盛り上がっていた。翌朝その布団は濡れており、子供達はオネショだと騒いだが、潮の香りがした。その子の弟は海で亡くなっていた。きっと弟は寂しかったのだろう。では、今私の布団の中にいるのは、一体誰なのか…
  86. 1167前方から自転車でやって来た中年の婦人は、僕の目の前で降りた。そして前籠からこぼれ落ちそうな程に蠢く黒い何かを鷲掴みにし「アンタにも必要だろぅ?」とそれを突き出した。曰くそれは『悪夢』で、今の自分が幸か不幸か分からぬなら、悪夢と比較してごらん、と。僕は黙ってそれを受け取った
  87. 1166妹の死を境に父と母がおかしくなった。父は妹のような喋り方をし、人形で遊ぶ。母は母で父を妹として接している。両親は妹を失い狂ってしまったのだろうか。仕方がない。私がしっかりしなきゃ。洗面所で顔を洗い気合を入れ、鏡の中の自分を睨みつける。…え?何これ。何で、祖母が映ってるの?
  88. 1165仕事中、ふと時計を見ると18時。もうこんな時間かと帰ろうとすると、まだ13時だぞと止められた。腕時計は22時、掛け時計は3時を指している。「迷子かい?ご両親は?」と背後から声をかけられ、次の瞬間には老人ホームにいた。こんな時間のうねりの中で、それでも多分僕は少しずつ成長している
  89. 1164「ママ、泣いてるの?」その言葉に私は答えない。「大丈夫?どこか痛いの?」…もうウンザリだ。死んでしまいたい。「ママ可哀想。僕、替わってあげたい」腰に手が回される。止めて…触らないで…。「僕、替わってあげる。ね?替わろうよ」人ではない何かが私の口をこじ上げ、中に入ろうとする
  90. 1163同僚の葬儀で皆が突然の死を悼む中、まだ死の意味を知らぬ同僚の幼い娘が表情なく参列者を見渡していた。が、上司を見て突然泣き出した。葬儀後立ち去る上司に、負ぶさる娘のような姿が見えた。そして上司の葬儀で今、あの娘がこちらを見て泣いている。肩に、背後から小さな老婆の手が伸びた
  91. 1162音も無く降り続ける雪の夜空を見上げ、深く白い息を吐く。このまま全て雪に埋もれればいいのに…。地面に横たわる顔面を砕かれた友人に視線を移す。奴はもう、“友人”ではなかった。仕方がなかったんだ。けどこれで終わりではない。『本体』を殺らなくては。雪は、背後の気配さえかき消していた
  92. 1161隣の部屋の音大生の歌声が煩い。毎日同じ歌を繰り返し、本当に迷惑だ。殺意を覚える。この件を大家に訴えると「貴方の為だからちゃんと聴いて」と返ってきた。事情を尋ねても大家は何も教えてはくれなかった。ある日、ひょんな事から歌が『鎮魂歌』なのだと知った。その途端、全てを思い出した
  93. 1160ある日、親友から“男性の手”を貰った。素敵な手…。私はすっかり魅了され、その手に見惚れる日々。すると手に異変が。手の甲が割れ、小さな翼が出てきた。飛び去ってしまう事を恐れた私は翼を鋏で切り落とすと、手は土色になり腐ってしまった。それを聞いた親友は優しく微笑み、別の手をくれた
  94. 1159始めての心霊体験だった。友人に誘われ心霊スポットを訪れ、体の崩れた少年を見てしまった。剥き出しの赤黒い肉。そこに這う無数の蛆。少年は僕に「ソックリ」と言い笑ったが、友人はこの貴重な恐怖を体験できなかったようだ。僕にとっては、最初で最後の体験だろう。体が、崩れ始めている…
  95. 1158会社には開かずの扉がある。噂では随分前に狂った上司が部下を閉じ込めて殺し、以来封じられたのだとか。今や真相を知る者はいない。気になるのは夜間の残業絶対禁止と、時々かかってくる「奴は中にいるか?」と問う電話だ。これに応じる事も厳禁。詮索せずこれらを守れば、何も起こらない筈…
  96. 1157この国での行方不明者は年間8万人以上だ。だがこれは警察が把握する数に過ぎず、未判明のものなど山程ある。そしてその殆どが殺されている。俺もこれまで何人も殺ったが、全員行方不明扱いだ。死体も出ない。だから、きっと見つからないだろう。俺は切り刻まれていく自分の体を呆然と見つめる
  97. 1156当美容整形クリニックでの出来事。ある肥満男性から吸引した脂肪は膿のような色と異臭を放っており、まるで腐敗した遺体を扱っているようだった。更に除去した脂肪は微かに動いており、念の為焼却処理した。その後男性は住居から腐敗した遺体が幾つも見つかり逮捕された。彼は死体愛好家だった
  98. 1155当美容整形クリニックには稀に奇妙な希望者が来院。ある女性は『顔の中にいる何かの除去』を要望。レントゲンでは異常は見つからない。が、検査により鼻腔から白い粉が。薬物吸引での幻覚を疑うも、粉の正体は『遺灰』だった。結局施術はせず、その後彼女は自殺。顔は凹凸に変形していたらしい
  99. 1154当美容整形クリニックには稀に奇妙な希望者が来院。細身に似合わぬ丸々と太った顔の彼女は、昔の自分に戻して欲しいと一枚の写真を提示。美人だが少々気の強そうな女性が写っていた。施術し入院中、彼女は事ある毎に看護師の容姿を嘲った。元の顔に戻った彼女は、数ヶ月後別の顔で再び来院した
  100. 1153住宅地の路上10m程の高さに『渦』が揺らいでいた。見ていると渦から何かが溢れ落ち、地面で固い音を立て転がった。石だ。再び見上げると渦 は消えていた。何か特別な石ではと持ち帰ったその晩「戻して…元の姿に…」と声が。まさかこの石…人?だが翌朝石は割れており、声も無いので川に捨てた
  101. 1152今日が新年の仕事始め。早々に各地での事故や自殺を耳にする。初詣の行列を作っていた地元の神社前を通る。ハァ、俺も死のう。…え?今何で死のうと思った?突然の悪寒。振り返ると、神社の前に黒い影が揺れていた。それは皆が落とした『厄』の塊だと知ったのは、俺が電車に飛び込んだ後の事だ
  102. 1151貴方が別の女と幸せになる。構わないわ。貴方の幸せを願うから。あぁ、やはりその女にも暴力を振るうのね。嬉しそうな顔して。“大事”にしないと死んじゃうよ、私のように。…え?何故貴方が苦しんでるの?その子は誰?まさか、昔亡くしたその女の…。ダメよ。彼を苦しめるなら、母親を殺すわよ
  103. 1150図書館で勉強中。隣の女が必死に紙に何かを書き込んでいる。覗くと『幸セ』の文字がびっしり。すると女が手を止めた。女の腕には『幸セ』と刻んだ無数の傷。「私も貴方も、皆幸せ…」そう低く言い女は去った。気を取り直し勉強を再開。…え?腕が血塗れだ。無意識に『幸セ』と刻み込んでいた
  104. 1149ある朝、母が二人いた。二人は鏡に映ったように反転した同じ動作をするが、互いに見えていない。家の中では当然片方が家具や壁にぶつかるが、その途端に消え、気づくとまた現れている。ある時二人並んだ母に同時に触れてみた。するとどちらも消え、母は戻らなかった。殺した事に…なるのかな?
  105. 1148「何よ、私の顔に何か付いてる?」「うん、顔が付いてる」「はぁ?」「だから、顔に『顔』が付いてるよ」「どういう事よ」「左目の下に口があって、右目の横に鼻がある。で、頰と額に目がある」「意味わかんないんですけど!」「あれ?もしかしてこれ、動かせるんじゃね?」「私ぁ福笑いか!」
  106. 1147玄関前に置かれた段ボール箱。『ゴメン、ありがと』とメモが貼られている。訝しんでいると、箱からモソ…と音が。あぁそういう事か。私から奪っておいて、何が“ありがと”だ。どうせ散々遊んで肉塊同然にしちゃったんでしょ。んなモノ要らないわよ。箱の脇の空気穴から覗く眼を、私は蹴りつけた
  107. 1146複数の女性に、同一の男性の体の部位が届けられた。女性達の共通点は不明。ただ、全員が独身であった。各部位を集めると左手のみ欠損。同時期、ゴミ置場に女性の左手が捨てられていた。──自分の動かぬ左手に口づけをする女。男のような手の薬指には指輪が。「幸せを独り占めにはできないわ」
  108. 1145畑の多いこの町にも新築の民家が増えている。畑を見つめる老人とすれ違う。「ここも終わりじゃ。そうじゃろ?」その言葉に振り返ると、老人は乾いた土となり崩れた。後にそこには民家が建った。人の新しい生活は何かの終わりの上に築かれるって事か。家に限らず…。今でもたまに老人を見かける
  109. 1144深夜の住宅街。前方に男の頭を抱えた少女がいる。恐らく父親の物だろう。別の家からは少年が窓から母親の頭を投げ捨てた。毎年この日は多くの親が子供により首を刈られる。少女の横を通る。「サンタはいないの…?」その言葉に私は無言で通り過ぎた。子供への『サンタからのプレゼント』を抱え
  110. 1143倒れる筈のないタンスが突然倒れた。下敷きになった夫は腹から下がペシャンコになり、目鼻口から血を吹き死んだ。続いて家が揺れると、息子が下に逃げ込んだテーブルが勢いよく崩れ、床に血飛沫が広がった。事態を理解出来ず、私は幼い娘を抱きしめる。急に体が重くなり、私は下にいた娘を…
  111. 1142ある男が終戦直後、女子供を売ったり殺したりし生き伸びた。その後男はカタギで起業し、財を成し老死。だが遺族や社員は、女子供の亡者達に体を裂かれる男の姿を毎晩夢で見るように。ある者は気が触れ、ある者は男を恨み遺族を襲った。遺族も会社も崩壊。男の墓は壊され、遺骨も行方不明である
  112. 1141女の自殺があった物件に好んで入居した友人からの電話。何の怪異もないとガッカリ声で話す。そりゃ普通は何も起こらないもんだ。それより引越しを手伝ってやったんだから、メシぐらい奢ってくれよ。そう話していると「そっちに女でもいるのか?」と友人。オイやめろよ。…まかさ、憑いて来た?
  113. 1140郊外にある人工池で、先月溺死した妹が顔を半分出していた。怨念の篭る眼。あぁ、妹は殺されたのか。妹の手前で飛沫が上がり、もがく手が見えた。誰かを沈めてる?数分後、水面に男が浮かんだ。恨みは晴らせた?翌週、池には私の彼氏が浮いていた。そっか。妹を殺したいって、冗談だったのにね
  114. 1139母は疲れていた。家族には常に問題があった。兄の自殺未遂と引きこもり。私の非行と厚生後の拒食。父の闘病と死。母は最近亡き父の部屋に大きな泥人形を作り、世話を始めた。弟か妹が欲しくないかと訊かれ、異常を感じ泥人形を壊すと、泥の山から「終ワラナイカラ…」と声が。母は憑かれていた
  115. 1138長身の女は大きな掌を男の頭に打ち込んだ後、その裂け目に両手を入れ、男を真っ二つに引き裂いた。鮮血と共にドシャと臓物が地面に落ちる。それだけに飽き足らず、男の首や腕を捻り、ちぎり取った。女はザクロの如く裂けた顔を更に醜く歪め、ちぎったそれらを無造作に投げ捨て、闇の中へ消えた
  116. 1137初めてのデートだった。彼女に恋い焦がれ、勇気を出した告白が成功した時には死んでもいいと思った。けど『死』とはそんな生易しいものじゃなかった。目の前で彼女の頭を手刀でカチ割ったザクロのように顔の裂けた女がこちらに歩み寄る。最期の瞬間には、恋した事さえ後悔し、全てを呪っていた
  117. 1136イラストの仕事がない日は似顔絵を描く。ある男性客が一緒に描いて欲しいと少女の人形を取り出した。普段は大抵の要求には応じるが、その時は言い訳をし断った。人形が睨んで見えたからだ。後日男の部屋から少女の遺体が発見された。だが男は殺害を否定。人形が僕に少女をくれたんだと訴えた。
  118. 1135イラストレーターの一環で似顔絵も描く。ある女性客を眼の前にしているが、どうにも特徴が掴めない。無難に笑顔を描くと女性はまじまじと絵を見つめ「これ、私…?」と言った。取り繕うようにそうですよと答えると「今日はこの女に見えるんだ…」と意味深な言葉を残し、女性は帰って行った。
  119. 1134イラストレーターの一環として似顔絵も描いている。ある日熟年夫婦が少年の写真を持参。亡き息子の成人姿を依頼された。想像で描き上げた絵に、夫人は悲痛の顔で泣き崩れた。黙って夫人の肩を抱く夫。絵には描き覚えのない歪んだ表情。後日自殺した夫婦の傍にあった息子の絵は、笑顔だったとか
  120. 1133ある少年が自分の体を何度も刃物で切りつけ死亡。体から蛆が湧いて出ると言っていた。彼は薬物使用者の親により薬を投与されていた。逮捕された親も自身の体を殴打や掻きむしる等をし、酷い有様で死亡した。体から息子が湧いて出ると喚きながら…。現在、他の受刑者達も体を掻きむしっている。
  121. 1132私は学校傍の信号で旗を振る『緑のおばちゃん』を勤めている。子供達の登下校時、その中に異質のモノをよく見る。子供にツいて行かぬよう、それらを別の場所へと導くのも私の役目だ。だがそれらが亡き親や兄弟だった場合、ツいて行く理由が愛情なのか悪意なのかがわからず、今でも判断に迷う。
  122. 1131また声が聞こえた。部屋にいると背後から「こんばんは…」と声が。一人暮らしの部屋の中で、だ。怖くて振り返らずにいるが、声は段々語気が強まっている。すると前方から「オイ、こんばんは」と聞こえた。顔を上げる事ができずにいると、「こんばんは!オイこんばんは!」と凄む声が耳の中で…
  123. 1130世の中には妙な蒐集家が大勢いる。人の足を蒐集し、毎晩その足で自分の顔を蹴りつけ快感を得る者。手の爪で体を傷つける者。毛髪を身に纏う者等…。そして俺の蒐集品は、眼球だ。殺した女達の眼を部屋のあちこちに飾る。見られていると、ゾクゾクする。最期には、俺の自殺を見ていてもらう。
  124. 1129執行人に躊躇いはない。完全に断ち切らず僅かに切り残す特殊なギロチンで次々男女の手足を切り、川へ投げ捨てる。捨てられた者は肉と筋だけで繋がった手足ではもがく事もできず、流れの中で四肢がちぎれるのを感じ、絶望しながら流されていく。これは夢だ、夢なんだ…。俺の腕を、執行人が掴む
  125. 1128「授業中に寝るな!お前は一度死んで生まれ変わって来い!」「先生今のは問題発言で〜す」「んな事ない!見てろ!」そう言うと先生は窓から飛び降り死んだ。が、翌日本当に別人に変わりやって来た。「遂にイケメンになれた!どうだ女子諸君!夜も眠らせないゼ〜」「先生今のは問題発言で〜す」
  126. 1127僕は外が怖い。母と二人で住む団地の部屋から、違う棟に住むおばさん達の立ち話姿が見える。肩や脚が痛いとでも話していそうだ。皆の肩や足元に〈何か〉がしがみ付いている。外に出る事は、それだけ色んなモノに触れ、連れ帰る恐れがあるんだ。外が怖い…けど、いつか外に出なきゃ、母の為に…
  127. 1126僕は外が怖い。母と二人で住む団地の部屋から、仕事帰りの母が見える。その背後には黒い影。母が帰宅すると、影は玄関前で立ち止まり消えた。今日の影は老人の姿だったけど、顔中に無数のムカデが這い回り、顔は確認できなかった。外にはああいったよく分からないモノが大勢いる。外が怖い…
  128. 1125外が怖くて外出できない。母と住む団地の部屋から、僕と同い年位の子供達が公園で遊んでいるのが見える。その後ろに、刀を構えた兵士が迫っていた。逃げて!窓を叩き叫ぶが届く筈もない。子供達は次々と兵士に切られ、公園は血塗れに。が、次の瞬間兵士も子供も、血も消えていた。僕は外が怖い
  129. 1124はい、教師をしておりました。えぇ、解雇されたんです。生徒のうなじ辺りをね、噛んだんです。何故って?悪いモノに取り憑かれた生徒はこうやって強く強く噛んでやると、大人しくなるんですよ。物凄い音が鳴りますけど。え?ギャーって音です。面白いですよね。あれ?あなた、何か憑いてますね
  130. 1123ビルから女が飛び降りたのを目撃。だが女はビデオ停止のように空中で静止した。暫くしても変化はなく、“アレは人ではないのだ”と結論づけた。何日経っても女は変わらず静止したまま。見慣れると「いっそ落ちればいいのに」とも思うように。やがて完全に忘れビルの下を通ると、女が降って来た
  131. 1122亡き祖父が他所の家に入って行くのを目撃。翌日その家の老婦人が変死。まさか祖父が?そんな中、祖母が突然発狂。母を刺そうとし、逆に刺されて死んだ。母曰く、祖母は赤の他人で、脅迫され家族を装ってきた。死んだ老婦人こそが本当の祖母なのだと。そして、オマエはあの女の子供なんだ、と…
  132. 1121毎晩就寝中、スッと短い音が床で鳴る。音は一晩に一度しか鳴らず、移動しているのか、寝床の傍を端から端まで移ると、少し離れてまた端から端へ。一応徐々に遠去かってはいるようだ。ある晩、音と同時に目が覚め瞼を開いた瞬間、金縛りに。人が大勢立っていた。毎晩、一人ずつ増えていたのか…
  133. 1120寒さでポケットに手を入れると、何かが指先を握った。引き抜くとそれは人形の手で「痛いよぉ…」と子供の声が聞こえた。聞き覚えのある声。そう言えば、最近隣家が静かだ。訪れた隣家ではバラバラの人形と旦那の遺体が。傍で妻が「痛いでしょ?」と人形の足を鋏で切り落とした。子供は…何処?
  134. 1119娘と帰宅すると、リビングから“娘”が駆けて来た。え?娘が二人?どちらかが、偽物?検査の結果、二人は同一人物と判明。そんな事って…。私達夫婦は二人を育てる事にした。そんなある日、一人が消えた。娘はそんな子知らないと言う。けど『物』は残ってる。私達は疑惑を呑み込み、生活を続ける
  135. 1118背後で人の気配がするように。けど振り向いても誰もいない。恐怖の余り、俺は気配の正体を『セクシー美女』なのだと思うようにした。するとどうだろう、気配がする度にドキドキするぞ!ウハッ、美女が俺を見てる!そんなある日、鏡に映る俺の背後に腐敗した男が。…ですよね。夢をありがとう…
  136. 1117血の匂いで今夜も目が覚めた。横では妻がもう厭だと啜り泣く。匂いは流産を連想させるのだと。何故か妻は流産を繰り返す。ある晩、妻の腹を啄み穿る鴉を一瞬見た。妻は無傷だが、鴉が子供を…?別の日、ベッドの下に木箱を発見。中には腹を裂かれた鴉の死骸と我々夫婦の写真が。誰が、何故…?
  137. 1116動物を虐待し残酷に殺した男の刑は軽くなる可能性が。許せない。被害に遭った動物達の無念を想うと胸が痛む。死者と話せる私は彼らとの交信を図る。が、恐怖以外の念は感じない。ただ怖かっただけ?恨みなど…ない?どこまで純粋なんだ。罪も人も許せないのは、所詮私が人間だからか。男を殺す
  138. 1115快晴の空を見上げる。あれは、何の群れだ?鳥ではないな。人…に見える。人が群れを成し飛んでいる。彼らが飛んで来た方向には、大きな黒煙が地上から高く上がっている。事故?昨夜友人達と酔って道路に悪戯をしたのは、あっちの方角だ。人の群れが、段々こちらに迫って来ている気がする…
  139. 1114バスの中、突然絶叫を上げた男が不自然にニヤケながら、顔から床に倒れた。男から流れ出た血が床に伸びる。乗客の悲鳴にバスは停車。外にはこちらを見上げ、自分の頬を指で押し上げて笑顔を作る子供達が。倒れた男の顔は笑顔のように切り裂かれている。するとすぐ横で「笑って」と子供が言った
  140. 1113火災後更地になった場所に、彼はまだ“居る”。幽霊は暗闇に現れるモノと思ってたけど、彼は住宅の隙間から溢れる陽が差す時間にだけ照らし出される。発狂した隣人の放火で死んだ彼。光の中で虚ろげに、けど純粋な瞳で私を見る。まだ私を想ってるのね…。アリガト、彼から解放してくれた隣人さん
  141. 1112頭の中で『死ネ』という言葉が絶えず響く。死んでたまるか。俺はこれまで大勢に死ねと浴びせ掛けてきた。多くを嫌い罵ってきた。自分の言葉はそのまま自分に還ってくると誰かが言った。今や俺は孤独だ。けど死んでたまるか。世界が滅びろ。俺の世界《居場所》が消滅した。死ねば許してくれる?
  142. 11114人の男は人差し指を立てこちらを見ていた。その晩電話が鳴り、出ると「上へ…上へ…」と複数の男の声で繰り返す。「何なんだよ!」怒鳴ると部屋の天井から男達が逆様で現れた。立てられた4本の人差し指が差すのは地面。男達は逆さのまま俺の手足を強く掴み、また繰り返した。「上へ…上へ…」
  143. 1110最近、夕方一人きりで川に石を投げている少年をよく見かける。噂では飼い犬が川で流されたとか。寂しいだろうに。ある日さり気なく話しかけてみた。少年は力強く石を投げるとヨシ!と拳を作り、「この時間、川から犬とか人が上がってくるから、やっつけてるんだ」とどこか楽しげに言った。
  144. 1109生徒達の間で『死んだふり』が流行っている。彼らは目を閉じているだけでなく、脈まで止める。始めは驚いたが今や慣れてしまった。ある昼休み、生徒達が脈止めの時間の長さを競っていた。午後の授業で教室に入ると、生徒全員が目を閉じピクリともしない。それ、死んだふり…なんだよな…?
  145. 1108その昔、人の赤子を食った猿がいた。味を覚えた猿は赤子をさらい食い続けると、知性がつき、体格も人のように。布で顔を隠し、赤子目的で人里へ。そこで里を襲っていた巨大な猪に遭遇。倒すと、里の者は猿を神と崇めた。そして現在。赤子食いの習慣を持つ某村の出身者は、各地に潜んでいる
  146. 1107「床から赤ん坊が出てくる」と母が言った。何故母まで?数年前に流産と離婚をし、精神を病んだ私を支えてくれたのは母だった。私はあの子が幻だと思っていたのに…。お願い、母を苦しめないで。床から這い出す赤ん坊を抱きしめる。その顔が別れた夫に似てた。…悪いのは、お前の父親だよ
  147. 1106アパートの隣の部屋をノックする音が暫く続いているが、住人は応じない。廊下側の窓の隙間から覗き見るとそこに人の姿はなく、可愛いぬいぐるみがあるだけ。が、その背中から灰色の手が長く伸び、扉をノックした。暫くして音は止んだが、後日警察曰く、恐らく同時刻に住人は縊死したとの事
  148. 1105信号下に供花とお菓子が置かれている。可哀想に、ここで子供が…。翌日も近くを通ると、あれ?供花は信号から離れた電柱下にある。次の日には更に離れた場所にあり、傍には女が。女は供花に液体をかけると、火をつけ、こう言った。「どこへ行くの?ママから逃げちゃダメと言ったでしょ?」
  149. 1104タクシー運転手歴5ヶ月。奇妙な体験なら…ある。大きなキャリーバッグを持つ男性客の行き先は墓地で、到着後も待機を指示された。戻って来た男性のバッグは余りにも重く、車に積むのを手伝うと、中身の察しがついた。後日男性は川で水死体に。砕いた墓石が胃が裂ける程に大量に入っていた
  150. 1103タクシー運転手歴4年。怖い体験は…ある。深夜、女を乗せ出発した筈が、サイドミラーには外に立つその女が映っていた。後部座席にも女はいる。更に前方にも同じ女がおり、思わず停車。振り返ると座席の女が前方を指差し「偽物を轢き殺して!」と叫んだ。狼狽していると、女は皆消えていた
  151. 1102投身自殺した生徒の机には『死ネ』と彫られていた。だが虐めはなく、皆が首を傾げた。数日後、別の生徒も投身自殺、机には同じく『死ネ』の文字が。学校中騒然とする中、今度はある生徒が母親を殺害。曰く、他所の家庭に嫉妬した母親が彼らを殺したのだと。その生徒の机には、『殺セ』と…
  152. 1101独身の友人の部屋で嬰児の泣き声が聞こえた。友人には聞こえないらしいが、発生元は棚に置かれた友人の彼女の写真からだ。彼女の足元には黒い影が。訊くと友人は彼女に妊娠と堕胎をさせた事を告白し、その子かもと酷く怯えた。いや、その子ならお前の足元に居るが、写真の声は複数だぞ…
  153. 1100B10:長い下り階段の途中にある部屋には『俺』がいた。その足元には男が倒れている。『俺』は気怠げに男に跨ると殴り始めた。〈ヤメろ!〉叫ぼうとするが声が出ない。いや違う。見ていたくて叫ばないんだ。…。結局『俺』は男を殺したのか?どうでもいい。俺はまだ続く階段を下るだけだ
  154. 1099気づくと青空を背に地に伏せていた。不登校になった友人を訪ね、出て来た母親に…。重い頭を上げる。地面には両目から“芽”を生やした友人の顔が。それを見下ろす母親。「この子は産まれたくなかったと言った。実は私もそう。皆同じよね?でも勿体無いから、肉体は地球の役に立てましょ」
  155. 1098某漁村で僧侶が嵐を収めたという伝承の真実を、曽祖母が死に際に語った。荒れ狂う海に不眠不休で合掌し続ける僧侶に食料を届けた若き曽祖母が見たのは、全身を無数の白い手に拘束され、目だけで助けを訴える僧侶の姿だった。曽祖母が逃げた翌日に嵐は収まり、僧侶は立ち往生していたという
  156. 1097深夜、外ではしゃぐ子供達の声が。カーテンの隙間から見ても誰の姿もないが、路上に幾つか小さな何かがフワフワと円を描き動いていた。シャボン玉?そこへ車が通過しそれらを壊すと声は消え、直後に車は電柱に激突。駆けつけると、運転手は痙攣し口から大量に泡を吹いていた。声が、再び…
  157. 1096彼は私の亡骸に化粧をし、別の女性の服を着せ、時折萎びた乳首に吸い付く。虚しい。私は死して彼氏の『癖(へき)』を見せられるとは…。ある日若い女が訪れ、私を見るなり泣き崩れた。「嬉しいだろ」という彼の言葉に、女は頷く。そして彼と共に私の乳首に吸い付き、「ママ…」と言った。
  158. 1095男が地面を“クロール”で泳いでいる?いや、何かに手を掴まれ引き擦られているようにも見える。一体いつからそうされ続けてきたのか、男は地面で少しずつ削られ、今では左上半身と顔半分しか残っておらず血の気のない土色だ。こちらが気づくと男の手は地面に落ち、何かの足音が迫って来た
  159. 1094私は子供を前に呆然とする。この子に、興味がない。必死な余り我が身を顧みず醜態を晒しながら育ててきたのに…。子供が血溜まりで泣き喚く。夫だった男を切り刻み憎悪が消えた今、この子は必要なくなった。不幸に産んでゴメンね。でもママ頑張ったの。…疲れたね。全部、終わりにしようね
  160. 1093事故を目撃。首が捻れ頭が真後ろを向き死んだ男が目に焼き付いた。以来前を行く人の頭が突然こちらを向くように。だが瞬きすると元に戻る。相談しに行った病院で大勢の頭が一斉に反対を向き、恐怖で逃げ出すと車に撥ねられた。首が捻れ自分の背中が見えると、あの時の男がしがみ付いていた
  161. 1092夜、人気のない路上で女性がフラつきながら何かを探していた。どうしました?と声を掛けると、「電話を…」と女性は掠れ声で小さく言った。確か以前この辺りには電話BOXが…。お困りならとスマホを取り出すと、「それも電話?電話を壊さなきゃ、奴が来るのよ!」と女は金槌を振り上げた
  162. 1091祖父から霊剣だという短刀を受け継いだ。刀は必要な時以外絶対抜いてはダメだと言う。けどそれはどんな時だろう…。僕は結婚して娘ができたが、妻は何かに取り憑かれたように娘に厳しくする。ある時遂に危険を感じた。今が『必要な時』なのか?抜いていいのか!?妻を、殺していいのか!?
  163. 1090台所の排水管が詰まり、業者に依頼。作業をしていた従業員が「あっ」と声をあげ、何事かと覗き込むと、シンクには乳白色の玉らしき物が。眼球…?排水管から次々と取り出される何かの眼球。「少し古いお宅だと、たまにあるんですよ」と従業員は言った。えっ?今、眼球が微かに動いた気が…
  164. 1089夏に買っていた花火の一本に火を点ける。勢い良く次々と色を変える炎は、彼女の瞳の中で煌めきとして彩られた。炎が消え、新たな一本に火を点ける。が、今度はただ地面を照らしただけだった。最期に花火をやろうと交わした約束。もう、逝ってしまったのか。せめて、笑顔であって欲しかった
  165. 1088幽霊って、切ない存在ね。うちのマンション、改築してエレベーター付いてもまだ階段を這って登ってる人がいるし、自転車置場に飛び降り続けてその度に自転車倒すから住人に凄く嫌われてるし。この部屋では床から人が顔を出すんだけど運悪く夫の尻の前に出たら、プゥ〜ってね…。あ〜切ない
  166. 1087帰宅すると、壁から血が滲み出ていた。それは赤黒い線を残して垂れ下がり、床で血溜まりを作っている。今日で何年目だ…。当時の彼女の失踪以来、毎年この日にはこうなる。けど何を訴えたいのか全くわからない。汚れた床と壁を拭きながら、当時親身になり助けてくれた今の彼女の帰りを待つ
  167. 1086最近息子が何か隠し事をしている。夜な夜な出かけたり、ふとした瞬間俺に見せる動揺からもそれは明らかだ。ある晩外出した息子を追うと、廃屋となった民家へ。ここは…。浴槽にはまだ“人の形”が残る大量の肉塊。それを手に恍惚とする息子。オイ、何故この場所を…?やはり、血は争えんな
  168. 1085墓参りを済ませ、帰りの下り階段で異様な光景が。階段の一段一段に人の頭が乗っている。意を決し下ると、嘘つき…と女の頭が言った。え?自分に思い当たる節はない。続く老人も同じ事を言い、記憶を疑う。次々と発せられる『嘘つき』。自分は…嘘つき…。急な罪悪感。自ら階段に身を投げた
  169. 1084頭上を飛び回る蝿がウルサイ。俺には奴らの顔が何故か人に見える。そしてそれらを躊躇いなく叩き潰す。ある日見た蝿に目を疑った。俺だ。俺の顔をした蝿が手を擦り合わせながら「所詮はお前も誰かの周りを飛び回る蝿だ」と卑屈に笑った。ウルセェ。だから潰される前に、潰してやってるのさ
  170. 1083フラと立ち寄った寂れた個人商店。入るなり「ダメだよ戻っておいで」と店主が言った。店内には私の他は居ない。「あぁダメだって!」店主が声をあげると、私の服に赤いシミが広がった。「ゴメンね。孫が…まだ居るんだよ。娘は捕まったんだけど、似た人を見ると、ツいて行こうとするんだ」
  171. 1082何処かで建築工事でもしているような音が聞こえてくる。だが近所にそれらしい様子はない。音は数ヶ月続き、ある時ぴたりと止んだ。最近この街では高齢の行方不明者が増えているらしい。彼らは身寄りのない孤独な老人ばかり。「俺も入りたいな…」母に先立たれた老いた父が、物憂げに呟いた
  172. 1081母曰く、私の腹の傷は幼い頃の手術の痕らしい。古傷が疼くのか最近腹の中がモゾモゾすると話すと、母は嘆息した。その晩、手足を縛られた私の腹に刃物を当て、母が言う。「お前の父親は私よりお前を愛した。だから殺して“ナニ”を腹に埋めてやった。まだ動くなら、トドメを刺さなきゃね」
  173. 1080体育館内を覆う壁板の板と板のほんの僅かな隙間に、チラチラと光が見える事がある。部活中に何となくそこを見ていると、隙間から橙と青の炎が吹き上がった。以前原因不明の火災で体育館は改装していたが、後日またもボヤ騒ぎが。壁板にはまるで積み重ねた人の山のような焦げ跡がついていた
  174. 1079最近、近所の廃ビルに入って行く女を見る。そこでは以前女が殺されたと聞く。まさか…幽霊?いや、女はポリタンクを持っていた。ある日廃ビルに侵入。空のフロアの隅に妙な容器を見つけた。中には赤黒い液体に漬かる人形が。「もうすぐ甦るのよ、娘が。あんたのも頂戴よ」背後に女が迫る。
  175. 1078一人残業中、同僚のオフィスチェアが独りでに回転。えっ?思わず声に出すと椅子は動きを止めた。ズサ…と鳴り、擦るような音が。ズゥ…ズゥと近づいて来る。次の瞬間体を引き摺り這う女が足を掴み「アイツが、私を…」と縋るように言った。あぁそう…。思わぬ形で嫌いな同僚の弱みを握った
  176. 1077昼の電車の中。座席には可愛い絵柄の児童用鞄を腹の上で抱えて眠る男が。傍にいた少女が「何してるの?」と鞄を見て可笑しげに言う。目を覚ました男が寝ぼけ眼で腹の上の物を見ると、うわぁ!と鞄を放り投げ怯えて走り去った。可哀想と少女が拾い上げた鞄に、小さな手が引っ込むのが見えた
  177. 1076毎晩父が布団の上で枕を叩く。母は父の後ろに立ちそれを見下ろす。父が精神を病み入院すると、今度は母が金槌で枕を叩いた。「ママが人を叩いてる」と言う幼い弟を、シッと黙らせる。両親が私達の為に殺した誰かが毎晩寝床に現れ、未だ殺し続けている。私は家族の秘密を守らなきゃならない
  178. 1075これは…現実?窓の外には怪物達が。時々すぐ近くで怪物の絶叫が上がる。怖い…。《ここに居れば大丈夫さ》誰かの声に安心する。空腹も痛みも感じない。あんなに辛かった日々。助けてと願い続けたら、この部屋に居た。そう言えば、ママは?まぁいいか。誰かが代わりに《僕》を生きてくれる
  179. 1074友人ら三人と心霊トンネルを訪れた。中に入り談笑しつつ暫く歩くと、靴紐が解けている事に気付いた。それを直す。後方に足音。前方に三人。…え?体が震え出し、動けない。近付く足音。そして、俺の横を通り過ぎた。姿はない。足音は三人を追う。アイツら…ヤバイかもな。足音が戻ってきた
  180. 1073ある男が動物愛護法違反で逮捕された。男は何匹もの犬の手足を切断し臓器を抜ぬいていた。曰く介護中の痴呆を患った母親が犬しか食べず、その為に犬を殺したらしい。母親は自宅にて死体で見つかる。胃の中は犬の臓器で一杯で、気管の奥にまで犬の手足が詰め込まれ、壮絶な表情で死んでいた
  181. 1072拾った千円札には茶色いシミがあったが、消せば使えるだろうとネコババ。水洗いでシミを薄め、アイロンで伸ばして完成。ある日駅の券売機へその札を入れると、液晶画面がプツンと消えた。文字が浮かび上がる。『ハナレタクナイ』券売機から戻って来た札は、鮮やかな赤いシミが付いていた。
  182. 1071祖母の失踪に両親は何も語らない。ある日大叔父からの電話で母は泣き、「私が守るから」と私を抱きしめた。閉じた仏壇がガタと鳴った気がした。後日、今度は母が失踪。大丈夫、成功すると父が呟く。ある晩電話の後、「すまない、いっそ親の手で…」と父が私の首を締めた。仏壇の扉が開いた
  183. 1070母が遺した宝飾品はどれも古い造りだが、一つだけ若者が使いそうなピアスを見つけた。摘み上げると指から抜けて床に落ち、拾おうとして、異様なモノを見た。床から白い手が現れピアスを掴み、消えた。思わず悲鳴をあげる。床に残る血の跡。…そうか。母が父の不倫相手をどうしたかを知った
  184. 1069中古の冷蔵庫から時々這い出す女に恋をした。彼女の体はほぼバラバラなのだが、顔は無傷で美しいまま。僕は彼女をこんな姿にした犯人を探し出した。時間をかけて仲良くなり、部屋へと招き入れる。冷蔵庫に酷く動揺を見せた犯人に刃物を突きつける。さぁ、僕をバラして冷蔵庫に入れてくれ
  185. 1068川遊びの翌日。痒みを感じ、掻くとズルリと皮が剥け赤い肉が覗いた。事態に戦慄する。全身が痒い。掻いてはダメだが痒みに耐え切れず、爪で患部を刺すと指先が食い込み、赤い泡が溢れ出た。皮下が膨張し全身の穴から血の泡と動く糸のような何かが出てきた。上流で、あの少年らは…何…を?
  186. 1067就寝前に髪を解く。櫛が引っかかるのは、あの女のせい。最期に私の髪を掴んだ“指”がまだ纏わり付いてる。漸く手に入れた彼も、このせいで去った。鬱陶しい。寝間着の袖を捲る。腕に付いた窪みを見て、薄く微笑む。ここにはまだ、彼が居る。 だから早く失せろ。足のお前はもう要らない
  187. 1066出かける途中、少年がアスファルトの上を前転していた。帰りに再び通ると、少年はまだ前転している。が、手足は力なくダラリと投げ出され、まるで子供に転がされる人形のように回転している。すると近くの民家から住人達が同様に転がって現れ、怖くて逃げると躓き転んだ。体が前転を始めた
  188. 1065落ちていた鴉の死骸を埋めたその日の晩、闇の中から幾つもの手足と頭を持つ女が現れ、恐怖で気絶。後日、ある森で虫や鴉に喰われ朽ちた女達の死体が発見された。別の日、ある男が鴉の群に顔面を啄まれ死んだ。女達の復讐だろうか。だが未だここに現れる彼女らは、何を求めているのだろう…
  189. 1064女が赤ん坊を抱え泣きながら歩いている。赤ん坊は全く動く様子がない。すると女が振り返りこちらに駆けて来て「お前が殺したんだろ!」と言った。が、見ると女が抱えるソレは短く幾つにも折られた卒塔婆。怖くて逃げたが、気づくと腕に木片を抱えている。無意識に呟く。「誰が…殺した?」
  190. 1063娘に御守りを渡すが、娘はママが持っててと言う。理由を訊いてもいいからと言うばかり。ある日、娘が事故で死んだ。私は悲しみで壊れそうな日々を送っていると、ある晩何かの影に襲われた。影が私の首に手を伸ばす。御守りを強く握ると、影は消えた。守られた…?けどあの影は、娘だった…
  191. 1062ガタ…。自室の押入れで音が鳴った。気にせずTVを観続けていると、ガタン!と大きく鳴った途端TVが消えた。静かに襖が開く。恐怖の余り慌てて外へ逃げようとするが、扉が開かない。背後で気配がし、振り返る。え…?薄ら笑い顔の自分がいる。今の自分に、体が無い。まさか…奪われた?
  192. 1061僕は結婚も子供も望んでいない。不幸ではないのにどうしても生きる事が苦しく、自分の結末は『自死』だと信じてるから。姉が離婚し子供を連れ戻って来た。渋々父親代わりをするが、こんな僕でも子供の笑顔は良いと感じた。数年後、姉が再婚する事に。この子と離れたくない…。それならば…
  193. 1060散歩中、犬が男の死体を見つけた。以来、時々犬の後を追いかける四つん這いの男が視える。敏感な筈の犬が気付いてないから、気持ち悪いが放っておいた。暫くそうしていると、男の姿を見かけなくなった。ある日、「メシをくれ」と犬が喋り出した。祓おうとしたが、今では良き相談相手だ。
  194. 1059娘の耳には障害はないが、“異常”がある。言葉は話せてもこちらの声は聞こえない。ある晩娘が絶叫を上げ、耳を両手で覆い泣き出した。その後漸く教えてくれた。娘には他が聞こえない程、常に死者の悲鳴や苦痛の声が聞こえているのだという。本来私が負うべき罰を負う娘を、強く抱きしめた
  195. 1058テーブルの上に彼氏の『頭』が載っている。誰がこんな事を!?私は彼の頭に泣きつくと、右耳が回せる事に気付いた。限界まで回し、手を離す。すると彼の口が薄く開き、オルゴールの音と共に私との思い出を語り出した。…その話は…もう聞き飽きた。私はテーブルから『ソレ』をなぎ落とした
  196. 1057中学の時に先生から聞いた実話。先生夫婦には強い霊感があるそうで、ある晩眠れずにいると、旦那が「ねぇ、起きてる?」と訊いてきた。先生はうんと答えると、今度は「じゃあ、視えてるよね?」と…。天井に二人を見下ろす男が居たという。「これ、日常だから」と先生は笑って話していた。
  197. 1056彼女と同棲し始めると、部屋は黴臭くなっていった。始めは部屋干しする洗濯物が2人分に増えたせいかと思ったが、 匂いは異常に濃くなるばかり。ある日彼女の服に黴が生えており、それは人の顔の形に見えた。それを見た彼女は発狂したように部屋を出て行ったきり、戻らず。黴臭さは消えた
  198. 1055浄水場には様々な汚水が流れ着く。何かの血肉や情念等が溶け込んだ汚水。それらの汚水は浄化され海に戻されるが、排除された物は焼却し灰にされ、各地で埋め立てや建材として再利用等される。そうして今度は我々の生活の場に溶け込んでいくのだ。その地に因縁はなくとも、怪異は起こり得る
  199. 1054朝、リビングに馬がいた。いや、正確には父の首から下が馬だった。傍には血を吐き倒れる母が。母は父に後ろ足で蹴られたらしいが、父を責めてはいけないと言い残し、息絶えた。父に人の意識はなく、暴れ馬に。引き取り手もない父を仕方なく殺すと、その遺体は人に戻り、替わりに僕の体が…
  200. 1053レストランでのパート。ある席に少年が長時間一人でおり、心配で声をかけると「あのね、今日は僕のお誕生日なの」と嬉しそうにした。が、すぐに「6月○日は僕の誕生日。2月○日は僕の誕生日。9月○日は…」と言い、その度に少年の顔が分裂し別の顔が浮かんだ。その中に息子の顔があった
  201. 1052彼女は僕の目の前で光となり、弾けて消えた。それが僕に残された記憶。彼女を失った僕に対し、皆が口を噤む。けど誰かが意地悪そうに言った。あんたの彼女は何者かに八つ裂きにされて死んだんだ。…違う。彼女は光になったんだ。僕の光。それでいいんだ。光を汚す奴は、生かしてはおかない
  202. 1051扇風機の風が臭い。何だかすえたような匂いだ。古いから遂にモーターがダメになったか?そんなある日、俺は視てしまった。腐った子供が扇風機の羽に指を突っ込み、少しずつ削れ土色の肉片を飛び散らせる。それを周りにいる子供達が見て笑っている。俺は扇風機を止め、やめろ!と叫んだ。
  203. 1050殺人で入所したばかりの奴が舌を噛みちぎり死んだ。根性無しが殺しなんてと皆で笑う。ある晩、部屋に奴が現れた。口から滝の如く血を流している。傍には老人や女がおり、奴は舌を引っ張り出され、頭と顎を押され舌を噛み、血を吐く。何度も、何度も…。死んでも復讐される?なら、俺も…?
  204. 10495階建てビルから人が飛び降り、地面にドサと激突。へぇ、意外と血は出ないもんだな。打ち所の問題か?そう考えているとまた人が降ってきて、今度は頭から地面に激突した。が、やはり血は殆ど流れない。ったく何やってんだか。俺ならちゃんと血を流すぞ。俺は惹かれるように廃ビルを登った
  205. 1048繁華街の路上に、坊主頭に何本もの釘を刺した男がいる。男は『一本五百円』と書いたボードを抱えたパフォーマーだ。俺は興味で試す事に。見ると随分深く刺さっている釘もある。どこまで刺さるか気になり思い切り刺すと、男は白目を剥き、釘で通行人を襲い始めた。俺は悪くない、悪くない…
  206. 1047「お前…女できた?」「いや。何で?」「女物の香水臭ぇぞ」「あ〜爺ちゃんが憑いてるんだわ」「え?そんな趣味が?」「違うよ超モテたんだよ若い女に。死んでもモテ²か〜」「おぉ我を救い給え〜」「そ、そうか!憐れな孫を〜」「あれ?肩が重い…」「爺ちゃん!死んでる女じゃなくて!」
  207. 1046赤ん坊はよく嘔吐するが、その日吐き出した物は『髪』だった。真っ黒い髪の塊。私は恐ろしくなり夫と話し、子供を寺に預ける事に。が、向かう車中、子供の口から長い髪の束が出、行くなとばかりに子供を引っ張る。運転する夫が「もうやめてくれ!母さん!」と、昨年亡くなった義母に叫んだ
  208. 1045 あの子達は双子だろうか。一人は母親と手を繋ぎ、もう一人は少し後ろを離れて歩いている。後ろの子が小走りで追いつこうとすると、母親は怖い顔でそれを制した。子供に差をつけてるのか?酷い母親だ。…ん?後ろの子の横に、母親と同じ姿の女が現れた。前方の親子が血相を変え逃げ出した
  209. 1044ある空き地の隅には、誰にも気づかれぬ程にひっそりと、雨曝しとなっている地蔵がある。柵で敷地に入れぬようになっているが、遊び場を求め忍び込む子供もいる。偶然地蔵を発見し悪戯を加えた子供は、成長と共に凶暴になり、殺人を犯すようになる。地蔵の頭には、雨風で磨り減った角がある
  210. 1043長年マンションの管理人として色々見てきたけど、一番気持ち悪かったのはアレだな。生きてる人間だ。訪問客が多い部屋があって、出て来た奴らは片目に眼帯をしていた。住人が病死すると、部屋の冷蔵庫から大量の『眼球』が見つかった。目的はわからんが、収集者も提供者もイッちゃってるよ
  211. 1042長年マンションの管理人をしてきて、まぁ色々見たよ。入り口で転ぶ人が多くて、監視映像を観てわかったんだけど、這いずり縋るように足を掴む女が映ってた。それがここに昔から住むオバちゃんだったから参ったよ。生き霊ってのかね?息子の暴力に悩んでるみたい。今も住んでるよ、その親子
  212. 1041長年マンションの管理人をしているが、そりゃ色んなモノを見てきたよ。若い女の住人が子供を連れているかと思ったら、それは子供服を着た爺さんで、ニタニタ笑い、足は動かさず僅かに浮くようにして進んでたよ。後日女はミイラみたいな遺体で見つかったけど、ありゃ何だったんだろうねぇ…
  213. 1040シンクを流れる水が赤く染まる。明日もちゃんと学校に行きなさい、と母は手を洗いつつ静かに言った。翌日登校するが、校舎は警察により封鎖中。教師と生徒数名のバラバラ死体が見つかったという。帰宅すると、母は自殺していた。傍には『私が殺しました』とメモが。母さん、なんかゴメンね
  214. 1039倉庫で品出しバイト。注文の品を集めるだけの作業だが、無数の商品から探し出すのは結構大変だ。更にここには『最恐の幽霊』が出るとの噂も。ある日、その霊を目撃。余りの恐ろしさに身動きが取れない。霊は品出しをしており、何の迷いもなく恐ろしい速さで商品を集めていく。さ、最恐だ…
  215. 1038少年時、僕らは友人を死なせてしまった。悪戯で深く掘った落とし穴に嵌った友人は、落下時穴の縁に顔を強打し動かなくなった。怖くなり、皆で友人ごと穴を埋めた。大人になった僕らは穴を掘り返すと、なんと骨は二人分出て来た。混乱した僕らは穴と骨について揉め、壮絶な殺し合いになった
  216. 1037強い日差しが照りつける住宅地の裏路地。暑さと蝉の声に苛立ちは頂点に達しそうだ。陽の眩しさで睨むように前方を見ると、路地の先に、鉄パイプを引きずり歩いて来る血塗れの男がいる。気狂いが…。苛立ちは頭痛を呼び、思考を停止させる。暑い…。前方の男が邪魔だ。怠い足を前へ踏み出す
  217. 1036幼い娘の服を買って帰宅。が、新品の服は全てがビリビリに切り裂かれている。購入時、店員が綺麗な状態の服を袋に入れるのを見ている。後日、店員が殺人容疑で逮捕された。トラブルから、ある客の母娘を殺害していた。後に店は閉店。無論、損傷した服への返金はない。とんだトバッチリだ…
  218. 1035一人暮らしの部屋。玄関の扉を激しく叩く音と、助けて!という女の声が。警戒しつつドアスコープを覗くと、血塗れの女が必死に助けを求めている。慌てて扉を開けると、こっちに来てと手を引かれ別の部屋へ。部屋は血の海となっており、「この人に殺される」と、女は男の死体を何度も刺した
  219. 1034犬が酷い状態で死んでいる。恐らく人の手によるものだろう。僕は別の場所に葬ってやろうとすると、亡骸から黒い影が現れ牙を剥いた。人間への恨みの塊と化している。いいよ、おいで…。鋭い牙が喉を抉る。お前の気持ちはよくわかる。僕も虐げられてきた。これから、一緒に恨みを晴らそう。
  220. 1033雨の中、少女がしゃがみ込みズブ濡れになっている。どうしたの?と声をかけると、少女は俯いたまま「治してるの」と言う。手に何かを握っている。風邪引くよと中腰になり傘に入れてやると、どけろ!と少女は傘を払い、皮膚のない顔を上げた。少女の手の上で、小さな肉片が微かに動いていた
  221. 1032虹だ。あんなに色鮮やかな虹を見るのは初めてだ。ふと目眩がし、意識が遠のく。気がつくと目の前に虹の橋があり、そこを渡る女性の後ろ姿が見えた。女性は振り返り、小さく手を振ると、また歩き出した。と、そこで目が覚めた。夢…?先日亡くなった母を想い、まだ空に薄く残る虹を見上げた
  222. 1031お前の正体は分かってる。ペットを殺し、ママやパパの顔も切り裂いた。二人は今、どうなってるだろう。お婆ちゃんが死んだ時、嫌な予感はあった。だから僕は押入れに隠れたんだ。聞こえていた荒い息遣いが消えた。襖の隙間から外を見る。お爺ちゃんの姿をした鋭い爪のソレの目が覗いていた
  223. 1030俺の部屋で知らない女が死んでいる。昨夜は呑み過ぎて記憶がない。死体には乱暴した形跡はないが、舌と眼球が半分飛び出し海老反りになっている。すると突然女の死体がバタンと跳ね、陰から蜘蛛のように手足の長い灰色の女が這い出てきた。その女は、毎朝通勤時に見かける女に似ている…。
  224. 1029バイト希望者の面接。容姿や態度に問題はなく、寧ろ良い感じだ。こちらから一通り質問を終え、疑問はないかと訊くと「こちら、怪奇現象が起きてますよね?」と言った。え?そんな事起きてないけど…。「ならこれから起こります。護って差し上げます」と目を剥く。え…あ、うん。どうしよ…
  225. 1028家族写真に写る妻と子供は溶けたように崩れている。一生守ると誓い結婚したが、俺に家庭は向いてなかった。耐えられなかった。妻達は池に沈めた。俺は自由になれると思ったが、何故か皮膚が溶け、今は病院のベッドの上だ。写真の崩れた妻達。だが、目だけははっきりとこちらを睨んでいる。
  226. 1027中学生の息子が血相を変え帰宅。手の甲に何本もの釘が刺さっている。曰く、突然同級生に押さえつけられ、教師に釘を打ち込まれたところを逃げて来たらしい。先程学校から息子が来ていないと連絡があったばかりだが、どう言う事?学校付近で金槌と釘を持ち死んでいた女は、関係ないよね…?
  227. 1026夏の海に娘を連れ遊びに来ると、浜辺は人でいっぱいだ。ルールを無視して飲酒し騒ぐ若者や、所構わず嘔吐している人もあちこちで目立った。酷い光景だ。すると突然娘は泣き出し、どうしたのかと訊くと「皆死んだ人をおんぶしてる」と言った。嘔吐している人は、海水を吐き続けているようだ
  228. 1025叔母の葬式。貴金属を身につけ読経する僧侶は、何だか厭な感じだ。すると僧侶の横に叔母が視えた。叔母は僧侶に耳元で何かを囁くが反応なし。耳にフーと息を吹きかけると、僧侶は体をビクッとさせた。あっ効いてる!叔母は更に耳に指を突っ込み、グリグリ…。オバさん!いいぞやっちゃえ!
  229. 1024隣の奥さんが絶叫しながら裸足で走り去って行った。何事かと隣の家を見、扉の隙間の黒い何かと目が合うと、次の瞬間バタンと扉が閉じた。以来隣人の気配は無い。何があったか知らないけど、好都合だ。隣の旦那の子を孕み、堕ろした過去がある。ある日夫が発狂し、その背後に黒い何かがいた
  230. 1023私は自分が信じられないから人も信じられず、自分も人も傷つけてしまう。人の親切に不審を抱き、笑顔に裏を探る。自分の良心に偽善を疑い、喜びに虚像を見出す。自分も人も景色も全てが色を無くした世界で、唯一鮮やかに映るものがある。血だ…血の赤こそが真実だ。私は真実に飢えている。
  231. 1022不動産屋の新人研修に心霊物件見学があり、立ち入り可能限界の物件に行った。部屋に入り、暫くして嘔吐。ビデオ撮影をしていた先輩が外に出るぞ!と叫び、それに従った。映像では背を向け壁際に立ち並ぶ血塗れの者達が、長い髪を揺らしゆっくり振り向こうと…。住居者は絶対に死ぬらしい。
  232. 1021不動産屋の新人の頃、研修にあった心霊物件見学は段階を踏んで強烈になっていった。その部屋はカーテンもなく外から室内が丸見えで、壁が波打って見えた。何もない室内をビデオ撮影すると、波の正体がわかった。壁から無数の白い手が生え、蠢いていた。住居者は漏れなく精神崩壊するらしい
  233. 1020不動産屋の新人の頃、研修の一環としてある物件を見せられた。それは所謂『事故物件』だ。室内は妙に臭く、締め切られた雨戸を開き換気しても匂いは消えない。先輩の指示で何もない室内をデジカメで撮影すると、それは写った。心中した一家の腐乱死体。彼らの腐った目は、こちらを見ていた
  234. 1019ホームレス仲間が死んだ。酒臭い奴の死体は警察が処理してくれるが、奴の所有物は仲間で分け合う。持たぬ者同士分け合うのが仲間のルールだ。奴のブルーシートの小屋で遺品を物色。壁に貼られた絵を剥がすと、裏に血文字で『死ね』と書かれていた。仲間と言えど、心も持たぬ者もいるよな…
  235. 1018友人のAが大学に来なくなった。心配で電話をかけるがすぐに留守電に切り替わり、何度メッセージを残しても折り返しもない。まさかどこかで死んでるんじゃ…。ある日別の友人とAの事を話していると、友人は突然白目を剥き「電話ヲシテクルナ。オ前ガ嫌イナンダヨ」と言い、泡を吹き倒れた
  236. 1017仕事帰りに自殺を考えていると、ちょっといいですか?と子供達に声をかけられ、ある部屋に案内された。部屋には工具や刃物が並び、「僕らに痛みを教えて」と彼らは目を輝かせた。一人ずつ切り刻むと皆、苦痛の余りに失神したが、どこか嬉しそうだ。自殺の前に、痛みを味わってみようかな…
  237. 1016夏の暑い日。街に出ると、笑顔で一人喋っている少女がいた。そこへ母親らしき女性がアイスクリームを二つ持ってやって来た。一つは少女に渡し、もう一つは溶けきるまで手に持っていた。少女を優しく見守る母親の顔には、痣がある。彼女らに何が起こっているのか、知ろうとする者はいない。
  238. 1015鳥の死骸を見つけ庭の隅に埋めてやったが、数日後そこの土は盛り上がっており、今にも何かが出てきそうだった。スコップで上から押さえつけると、ジワと黒い液体が染み出てきた。その場は土を被せ済ませたが、後日、庭には鳥の残骸が転がり、地面と塀を這ったような黒い筋が残っていた。
  239. 1014大きな事件を乗り越え、新校舎は完成した。初めは気味悪がった生徒達も、綺麗な校舎にすぐに馴染んだ。事件とは、ある日の労働者が全員死亡していた事だ。現場の状況から彼らは殺し合ったようで、後に複数の工事請負業者社長も自殺。事件の背景は謎のまま、生徒達はここで学び、心を育む。
  240. 1013居間でTVを観ていると、「あんたの部屋、誰か居るの?」と母が言う。以前友人を泊めた事はあるが、今は誰もいない筈。確認しに部屋の前まで来ると、ギャァァ!と中から悲鳴が。恐る恐る扉を開けると、男が首をもがれ死んでいた。警察に説明しても信じてもらえず、殺人容疑が掛けられた。
  241. 1012視覚障害があるが何故か幽霊画だけは青白く見える私は幽霊画蒐集家で、稀に絵の引き取り依頼が入る。私は快諾するが、中には引きとれない物も。絵が自宅に届くと、他の絵が真っ赤に騒めいて見えるのだ。これだけ集まれば受け入れられない物も存在するのだろう。生きている人間と変わらない
  242. 1011視覚障害のある私だが何故か幽霊画だけが青白く見え、その為幽霊画蒐集家をしている。ある日、女の絵が浮かんでは消え、数m先でまた浮んでは消えを繰り返していた。何かを訴え導いていると感じそれを追いかけると、増水した川に落ちた。人に救助されたが、絵はちぎって便所に流してやった
  243. 1010幽霊画蒐集家である私は、生まれつき目の障害で何も見えない。だがそんな私にも、何故か幽霊画だけは見える。闇の中にボンヤリと青白く浮かび上がるのだ。ある日、壁に掛けた一つの絵が紫色に見え、それに触れると指先が濡れた。潮の匂いがする。思案の末、海が見える寺で供養してもらった
  244. 1009口の中の異物の感触に目を覚ます。吐き出すと、それは髪の塊。異常事態に妻を起こすが、気のせいよと素っ気ない。別の晩も口に髪が入っており、再度妻に訴えると、妻の髪の短さに気付いた。犯人はお前かと詰め寄ると、「普段から私を見ないお前が悪い」と、離婚届とペンを眉間に刺された。
  245. 1008何スかこの女?と訊くと、兄貴は女の頭を木刀で小突き、組長の愛人だと答えた。兄貴は『組』を裏切るつもりだ。女は首から上に有刺鉄線を巻き付け全体を覆った姿で、恐怖で震えながら鉄線の隙間からポロポロと釘を溢してる。何だか、堪らねぇな…この女。俺は兄貴を殺し、組をも裏切った。
  246. 1007連休中に単身旅行で宿泊するホテルは、今の経済力にしてはかなり奮発した方だ。けど来てみると若いカップルが多く、自分の不甲斐ない現状を思い知った。人は人、自分は自分と自身を励ましていると、黒い影を背負ったカップルが何処そこで心霊体験をしたとフロントで訴えている。…ザマミロ
  247. 1006寝たきりの義母が「怖いから一緒に部屋で寝て欲しい」と言う。体が弱ると心まで弱ってしまうものだ。少しでも気が休まればと一緒に寝てやると、深夜、義母が呻き声を上げた。見ると義母は、人間ではない『何か』に犯されていた。日を追う毎に若返る義母。後日、義母は『何か』を妊娠した。
  248. 1005霊感があっても人によって“視えるモノ”が違うらしい。俺の場合は『必死な奴ら』が視える。勉強や仕事を必死に頑張ってる奴らだ。気の毒に、皆志半ばで死んだのだろう。彼らを見てると、生きてる奴らが怠けて見える。けど頑張ったせいで死ぬって皮肉だな。だから俺は、ニートでいいんだよ
  249. 1004彼女がこぼす涙を拭ってやる事もできず、僕の腕は崩れ落ちた。僕は、ただの泥人形だ。彼女は死んだ僕を想い、僕を形にした。けど話す事も動く事もない人形に、その虚しさから、彼女は泣きながら僕を少しずつ壊してく。伝えたい。僕は此処にいると…。最後に彼女は僕を振り上げ、地面へと…
  250. 1003アパートの便所に現れる子供の霊は、育児放棄で便所に監禁され死んだ子供らしい。独身の母親は子供を置き去りにし男の部屋へ。電気も水も止められた便所の中で、子供は便器の水を飲んで過ごした。俺は激しく同情した。最近交際し始めた子持ちの彼女。オイ、子供を大事にしねぇとブッ殺すぞ
  251. 1002商店街で買い物中、赤ん坊の激しい泣き声が。声のする方にはフラつきながら歩く女はいるが、赤ん坊の姿はない。泣き声は、女から…?すると突然女が「やめて!」と叫び、両目から眼球が飛び出すと、更に小さい手が突き出した。女は何度もゴメンナサイと繰り返し、フラフラと歩いて行った。
  252. 1001色々やり直す為、私は会社を辞め、SNSを辞め、髪型と服装を変えた。以来、捨てた筈の〈私達〉が現れる。もうお前らは要らない!だが幾ら逃げても、幾ら殺しても私達は次々と現れ、こう言い寄る。「お前が負った恨みも全て、私は背負ったまま。苦しい…助けてよ…」私はもう…死ぬしか…
  253. 1000『闇小噺』という、短くも恐ろしく、時に奇妙な物語集がある。これに触れた者は知らぬ内に、恐怖、或いは狂気に魅せられるという。闇小噺とは『闇を齎す話』や『闇を顕す話』との意味を含む。もし既に触れてしまったなら、鏡に微笑んでみるといい。その笑顔に、己の闇の姿を見るだろう。
  254. 999部屋の白い壁に名前を掘り終える。これで全員か。偶然にもその数は999人。上司。昔の担任。フラれた相手。コンビニ店員。問い合わせ窓口の担当、等々。殺したい人リストの完成。いや、まだ増えるかも。全員死ね…死ね…死ね…。呼び鈴がなり、出ると突然刺された。上司だ。全員狂ってる…
  255. 998夫が病で余命宣告を受けた。夫は自分より家族を案じ、ごめんと言った。別の日、私は医師に呼び出された。「病は嘘です。ですが確実に…」と医師は言い澱み、何故か私達の家族写真を取り出した。写真には赤いモヤが。医師がこう加える。「残念ながらあなた方ご家族も…。残りの時間を大切に」
  256. 997聴覚障害を持つ幼い娘が泣きながら駆けて来て、手話で「聞こえる」と言った。けど私の声には反応しない。泣き止まない娘に何が聞こえたの?と訊くと「“タ・ス・ケ・テ”って声」と答えた。娘を何とか落ち着かせ、寝かし付ける。私は押入れに隠した夫の屍体に、黙れよと再度刃物を突き刺した
  257. 996心霊スポットへ遠征。帰りの高速で見事に渋滞にハマった。腹減ったしトイレ行きたいし眠いし最悪だ。ふとルームミラーを見ると、後部座に青白い女が。車内を恐怖が襲う!すると女は高笑いしながら車をすり抜けて前方へと去った。スイ〜っと。渋滞の中を…。幽霊さん、一緒に連れて行ってぇ!
  258. 995彼氏の霊感のせいで死体に遭遇する、と友人が言う。霊感等を信じない私は偶然だよと返すと、二度や三度じゃないのよ!と友人はムキになった。そんな彼氏を紹介された日、私達は死体を発見。友人は私に「ほらね?」と言った。後日、二人の死を伝える電話が。電話の相手は「可哀想に」と笑った
  259. 994下を向いた女は、しゃがむと額を地面にグリグリと擦りつけ始めた。アスファルトは皮膚と肉を削り赤く染まっていく。女は顔が半分無くなると、拝むような姿勢で死んだ。その後すぐに市の処理班により、遺体と地面は綺麗に処理された。「儀式に邪魔が入った」「残念、彼女は無駄死にだね」
  260. 993心が壊れていた父は私の目の前で人を殺し、内臓を引きずり出し、一緒に遊ぼうとそれを差し出した。その時私は逃げ出したが、父は度々それを繰り返した。薄れていく感覚。腐って液体と化した母が沈む湯船に足されていく人間の欠片。最後に父の欠片を足し、私はそこに裸で浸かった。悦楽の絶頂
  261. 992児童保護施設で育った彼らは、互いを埋めるように求め合い結ばれた。だが彼には子供を愛する自信がなく、一方彼女は子供を欲した。彼は悩んだ末に子供を作ったが、生まれた子供は異形へと変化していった。絶望し子供を殺そうとする彼女と、守ろうとする彼。その果てに、異形の子だけが残った
  262. 991娘夫婦と同居を始めると、家の中で不気味な人影を見るように。霊能者に相談すると、『娘婿の生まれた土地が穢れている』と震えながら話した。娘婿はいい青年だが、祟られていたとは…。娘に別れろと言い出せずにいると、妻が発狂し自殺した。娘夫婦を追い出したが、穢れは未だ残ったままだ。
  263. 990街の真ん中を、中年の女が四つん這いで徘徊していた。私は目を逸らし、少し離れて横を通り過ぎる。暫く買い物をしたその帰り、家の近くで例の女を見た気がした。そしてその晩、窓を叩く音が。見ると女がおり、窓を割り部屋に入って来た。「ねぇママ…、ママなんでしょ?」と、女が這い寄る。
  264. 989会社の建物の二階からすぐ下に見えるのだが、高い壁で四方を囲み、更に板で全面覆われた『何か』がある。今し方吸い終えた煙草を悪戯に指でピンと跳ね、壁の中に放り込んだ。その途端板の隙間からブシュと黒い飛沫が飛び、板がガリガリと音を立てた。数日後、地元の神主が壁の前で切腹した。
  265. 988行って来ますと出て行った夫は、玄関先で何かを見て動かなくなった。視線を追うと、そこにはもう一人の夫が。魂が抜けた?けどその夫が何だか素敵に見え、こちらの夫が醜く見えた。こっちの夫は…要らない。私は置物で夫を殴った。そこへ私が現れ、やはり素敵に見えた。でも、お前は要らない
  266. 987正義の名の下に思想が違う相手を糾弾し、怒りと憎しみ、悲しみを拡散し続ける集団がいる。彼らの正義は人の心に闇を作る。そして人は善悪を説きながらも「クズだ」「死ね」などと誹謗中傷し、またそれを拡散する。どこを見ても『悪意の連鎖』ばかりだ。人間なんて、俺が全員ブッ殺してやる…
  267. 986タクシー運転手歴11年。怖い体験は…ある。一人の女性客を送る途中、ふと見たルームミラーに、鼻と唇と瞼の無い男が。驚くと、睨んで来た…女が。怖くて停車すると直後に女は逃走。後日顔の部位を削がれた遺体が発見された。けど遺体は女性で、特徴から恐らくあの女だろう。未だ謎の事件だ
  268. 985挨拶をしに訪れた彼女の実家は、ゴミ屋敷状態だ。だが彼女は平然と僕を中に案内する。ゴミの上を歩き、ゴミの山を登ると「パパママ、この人が彼氏の…」と僕を紹介し始めた。目の前には中の詰まった黒いゴミ袋が二つ。「あ、お兄ちゃんも居たんだ」と彼女が言うと、別の袋がゴソッと動いた。
  269. 984なかなか子供を授かれない私に、ごめんねと夫は優しく言う。けど私達に異常はなく、医師も首を傾げる。ある日家の前に子供が座っており、声をかけると「きっと嫌いになっちゃうから」と言い走り去ってしまった。後日夫が殺人事件を起こした。こうなると知って…。優しい子。早く君に会いたい
  270. 983痒がりの娘が背中を掻いてと言う。肌を傷つけないように軽めに掻いてやると、吹き出物に触れた。見るとそれは娘の顔をしており、他にも幾つかあった。潰そうにも娘の顔では手が出せない。娘が泣くと吹き出物達も泣き始め、誤って一つ潰すと全員が絶叫した。以来、娘に恨まれている気がする…
  271. 982吹き出す汗を拭い、震える手で顔を覆う。苛立ちで貧乏揺すりが起こり始めた。視界に入るモノに対し、ある衝動が湧き起こる。そうしていると意識が遠のき、『親友』が現れた。「さぁ、癒しの時間だよ…」親友はそう言った。禁断症状になると現れ、人体破壊衝動を許してくれる、唯一人の親友だ
  272. 981快晴の日、夫の布団を干そうと持ち上げるとハラリと何かが落ちた。形代?何故こんな物が…。形代は子供の布団からも出てきた。夫に訊くが「必要だから」としか答えない。ある深夜に目が覚めると、寝ている夫の布団に置かれた形代を、黒い女の影が切り刻み消えた。女の影は、私から伸びていた
  273. 980祖父母宅に到着すると、玄関前で数体の何かが陽炎のように揺れていた。何だあれは?家屋から祖母が出てくると彼らは炎のように赤く激しく揺れ出したが、刃物で掌を切りつけた祖母の血を見て落ち着きを取り戻した。後で祖母が言うには、いずれ引き継がなくてはならない習わしとの事。厭だな…
  274. 979タクシー運転手歴25年。怖い体験は…ある。その乗客は明確な行き先を言わず、方向だけを小声で言う。廃線となった踏切を通ろうとすると、その真ん中で車が動かなくなった。そこへ来る筈のない電車が迫り、「目的地はこの先…」と乗客が言った。その後どうやって助かったのか、記憶にない。
  275. 978道で血塗れの男に遭遇。男はフードを深く被り、手には血と肉片が付いた斧を持っている。俺はその姿に「格好いい」と感じてしまった。けど今は逃げよう。…俺もあんたみたいになりたい。…あんたを真似て大勢殺したよ。…あんたが復讐され死んだと聞いた。最後に殺されるってのも、格好いいな
  276. 977定年退職後に体を悪くし塞ぎ込みがちになった父を元気付けようと、家族で小旅行へ。父は若い頃来た事があるそうで当時の思い出を語る。が時々クソ…と口にした。帰宅後父は目を獣のようにギラつかせ「奴らをヤらねば死に切れん」と言った。とりあえず元気が出たようだからと、母も喜んでいる
  277. 976うちの猫『ニャウ太』が〈何か〉変だ。いや、いつも変だが、最近は突然パタリと倒れ、暫くして起き上がりしれっとする。ある晩酷い悪夢を見ているとニャウ太が現れ、闇を追い払ってくれた。目覚めると傍でニャウ太も起き上がり、毛づくろいを始めた。ニャウ太さん!まさかこの為に特訓を!?
  278. 975うちの猫『ニャウ太』は〈何か〉と話している事がある。宙を見上げ、グニュグニュと声を発する。初のデートの日には雨が降り、窓際で外を見て残念がっていると、ニャウ太は傍に来て空を見上げ声を発した。するとどうだろう、次第に雨が上がり晴れ間が覗いた。ニャウ太さん!君は何者なの!?
  279. 974某ビルの地下にある開かずの扉の解錠依頼を受けた。無事扉を開けると、酷い異臭と蝿の大群が溢れ出した。中には男女の遺体が。少し前に死去したオーナーは彼らを監禁し、先に自身が死んだ為に放置状態に…。以来電話で「許さない…」と女の声が入り、人違いだと伝えるが、今も時々電話が入る
  280. 973ある住宅の解錠依頼を受けたが、開けるとマズイ事になりそうだ。依頼主の夫人を適当に誤魔化し時間を稼ぐ。暫くしてやって来た同僚は夫人を見て数珠を握った。夫人は恐らくどこかで死に、魂だけで帰って来た死者だ。悪霊になる前に執着を捨て成仏なさいと、霊能力の高い同僚は夫人を説得した
  281. 972車の鍵開け依頼を受けたが、これはヤバイ。依頼主の男はトランクには触れるなと言う。ドアを解錠したが必要以上は触れず、代金も貰わずにその場を去った。作業中、座席に座る死者達が見えていた。恐らくあの男は車内で何人も…。去り際、トランクが独りでに開き、這い出ようとする何かも見た
  282. 971金庫の解錠依頼を受けた。他界したご主人の金庫。最近は専用機材を使用する業者が多いが、うちはまだアナログだ。ダイアルを回し、音と感触に意識を注ぐ。すると中で小さくカリッと音が鳴った気がした。解錠し扉を開けると、中には干涸びた人の手が。金庫の内側に、無数の爪跡がついていた。
  283. 970山で脚の無い遺体が発見された。そこでは行進する兵隊の足の目撃談があり、俺は関連を調査しに山へ。途中、数人の子供が現れ「遊ぼ」と取り囲まれた。仕事中だと断ると「行かせない…」と俺を取り押さえ、脚を切断。「今日は兵隊さんごっこ」と行進を始め、兵隊も現れ俺が死ぬまで踏みつけた
  284. 969ここ楽しかったねと彼女が出した写真には、俺ではなく別の男が写っていた。これ誰?と訊くが、彼女は笑い俺だと言う。他の写真も全てが違う男。自分を鏡で見ると、また別の顔だ。どうなってる?すると彼女も別の顔になっており、混乱した俺は逃げ出した。顔が違うだけで、恋人も自分も失った
  285. 968畑の前の歩道を、酷く腰が曲がり足を引きずる風格ある老人が鍬を手に歩いて行く。畑仕事は大変だな。するとご利益でもあるのか、老女がその老人に向かい必死に手を合わせている。自分も少しでもあやかろうとスマホで撮影。そこに映ったのは、老人の背の上と足に纏わりつく亡者の集合体だった
  286. 967自殺した先輩には苛め被害の噂が。私は優しい先輩が好きだった。だから加害者であろう奴らを呪い殺す。一人、二人と面白いように死んでいく。が、私の友達も自殺した。なんで!?まさか、呪いの代償?その後先輩への苛めはなかったと判明。先輩の死は、母を呪い殺した私のせいかもしれない…
  287. 966眠れない。一睡も出来ぬまま一週間経つ。意識が朦朧とし仕事もままならない為、今日は病院に向かっている。おや?黒い雲が苦痛に歪む人の顔のようにうねっている。地上では人々が後ろ向きに歩き、渦巻く地面に次々と呑み込まれていく。これは現実か?まるで悪夢の中だ。俺は…起きてるのか?
  288. 965老人がダンボール箱を重そうに抱え歩いている。手伝いましょうか?と声をかけると、老人は大丈夫と答えた。だが直後にふらつき、僕が思わず手を差し出すと「触るな!」と凄い剣幕で怒鳴った。僕は言葉を無くしていると「一人で運ばなきゃ」「じゃないと皆殺し」と箱から子供達の声が聞こえた
  289. 964電車に乗ると、乗客は全員ダラリと項垂れていた。不思議に思い見ていると、彼らは小刻みに震え「アァァァ」と声を発して一斉に立ち上がり、次の瞬間泥のように溶けた。が、気付くと車内は普段通り落ち着いた光景。額の汗を拭おうと手をやると、グチャリと皮膚が溶けた。何が…どうなってる?
  290. 963彼氏の部屋を初訪問。ベットに腰を下ろし談笑する。私はじきに始まる“初体験”への緊張を隠すように、手元の枕を抱きしめた。すると枕カバーの間から、黒い何かが幾つか出てきた。髪の束?良い香りがする。「元カノ達の髪だよ。これが無いと眠れなくて」と彼は言う。全部に頭皮が付いてる…
  291. 962怖い話ない?と最近怪談収集を始めた友人が訊く。あるけど余り話したくないなと渋ると、頼む聞かせて!と友人は手を合わせる。けど怪談を話すと怪異が起こりそうだからと断った。すると友人は「大丈夫、何も起こらないよ」と笑いながら、白眼を剥き血涙を流した。まだ怪談話してないのに!?
  292. 961若い頃、私はエレベーターガールだった。乗ってくる客は人だけではなく、人の姿をした『何か』も紛れていた。ソレは他の客を物色し、時には顔を舐め回していた。誰も気づかない。そしてソレは気に入った者がいると同じ階で降りて行った。ある日私もソレに頬を甘噛みされ、それを機に退職した
  293. 960他界した祖母の小さい棺は神社に引き取られた。「望み通り、看取ってやった…」と祖父は肩を震わせていた。ある日僕は神社で狐を見つけ、追いかけた先で少女と出会い、親しくなった。祖父は翌年他界したが、生前その事を話すと「お前は千年の命を絶つ選択に苦しむなよ」と言い、背を向けた。
  294. 959子供の肩には時々黒いススが付着している。手で払うと綺麗に除ける事ができる為さして気にしてこなかったが、目の前で突如現れたのを見て不審に思い、霊能者に視てもらった。曰く『悪い念を感じるが払えば問題ない。そしてそれは母親にしかできない』との事。私が居なくなったら、この子は…
  295. 958部屋の窓から解体中の民家が見える。古い家だったが、人が生活していた場所が壊されていく光景は妙に心惹かれるものがある。暫く見ていると、瓦礫の上に揺れる黒い影を見つけた。それは長い手足のように見え、まるで蜘蛛のように動き何処かへ去って行った。以来、床下に何かの気配を感じる…
  296. 957後輩がバイク事故を起こし、両手足の骨折で入院。見舞いに行くと「体が痒くても掻けない」と後輩はギブスを見て笑った。別の日再度見舞いに行くと「ここも痒い?ここは?」と女の声が。見ると口を塞がれた後輩に馬乗りになる女が、後輩の顔や体をメスで切り刻んでいた。女は全くの他人だった
  297. 956以前母の部屋で見たアレは何だったのか。ある日母の不在中に調べると、それは見つかった。この箱の中だ。開けると石が一つ入っている。手に取ると、それは頭だけのミイラだった。同封の紙には『享年2歳』、そして私の名が記されていた。どういう事?じゃあ私は?それに以前は三つあった筈…
  298. 955バイト先のパチンコ屋の外には数人の子供達が遊んでいる。パチンコに入れ込む親が小銭だけを与え放置しているのだ。事故や誘拐が心配だが立場上口出しできず、時々様子を見に来る。何やらはしゃぐ子供達。そこには顔のない男児が。男児は他の子供の顔面に手を突き入れ、何かを抜き取っていた
  299. 954幽霊が写ったと会社の後輩が突然写真を見せて来た。怖がりな私は悲鳴をあげ、他の皆を驚かせてしまった。後輩は悪びれもせず笑っている。地味な私をからかってるんだ…。すると同僚が写真の幽霊が私似だと言い出し、皆で更に私をからかった。そうだよ…私だよ。お前ら全員を呪ってるからな…
  300. 953弟が泣きながら帰ってきた。また近所の子らに苛められたのか。母はご近所トラブルを避け、「強くなりなさい」と弟ばかりを叱る。大人はずるい。なら私が仕返しを…。苛めっ子の家に忍び込み、家にある物で罠を仕掛ける。何人かが大怪我をした。よし、本番はこれからだ。お母さん、覚悟してね
  301. 952最近マンホールの穴を出入りする妙なモノを見かける。鼠じゃないし、何だろうか。よくわからないが、成敗してくれる!穴に爆竹を投げ込むと、中で激しい爆裂音が響き渡る。すると穴から『小鬼』がワラワラと溢れだし、皆怒りの形相で近隣の家を燃やし始めた。えっ!?うわぁ〜やめてぇ〜!!
  302. 951スマホに友人から『壁の中にいる』とメッセージが。どう言う事かと訊くと『部屋の壁』とだけ返って来た。友人のアパートに来ると、壁を叩く音が聞こえる。大家に頼み部屋に入るが、無人だ。本当に壁の中に?音のする壁を崩すと赤茶色の瓦礫が出ただけで、友人は見つからなかった。音が止んだ
  303. 950海外で話題の『人体ホテル』。壁や柱、装飾など外観や内装の至る所に美しく加工された本物の人体が使われている。その数は数千人分にも及び、史上最も悪趣味で非人道的だと叩く意見が飛び交う一方、宿泊の予約は既に数年先まで埋まっている。オーナー曰く「行き場の無い者への慈悲」との事。
  304. 949朝、駅の階段で転落した人を見たが、丁度やって来た電車に乗った。きっと誰かがさっきの人を介抱するだろう。駅から会社へ向かう途中、車と自転車の接触事故を見たが無視をした。誰かが通報するだろう。すると突然路上で何者かに背中を何度も刺された。皆素通りして行く。誰か…誰か助けて…
  305. 948某トンネルで老婆の霊を撮影したが、切ない背景に同情し映像を封印した。ある日撮影の関係者が死亡し、眼球は無く、枯れた花弁が詰まっていた。同情した背景は思い違いで、老婆は元々悪霊なのでは?映像を確認するが、老婆の姿がない。撮影した事で、トンネルから老婆を解放してしまった…?
  306. 947某トンネルに老婆の霊が現れると聞き、撮影。見事半透明の老婆を映像に捕らえた。老婆は何かを抱えている。枯れ果てた花束だ。後で聞いた話。昔トンネル内での追突事故で高齢の男性が死亡した。恐らく老婆はその妻で、自身の死後も花を供えに来ているのでは、と。それを聞き、映像を封印した
  307. 946俺は変だ。ゾンビ映画を観て『旨そう』と感じる。それは犠牲となる人間にではなく、腐ったゾンビの方にだ。土色の肉や内臓、ドス黒い血液に強く食欲をそそられる。けど人間にとって死肉は病原菌の塊だ。何とか食べる方法はないかを調べる。が、まどろっこしい!体の事は食べた後に考えよう!
  308. 945雨の日、近所の畑にじっと立ち尽くす子供達を見つけた。すると全員が振り向き、余りの不気味さにすぐその場を立ち去った。暫くして雨は上がり、再び畑の前を通ると子供達の姿はなかった。が、泥の中から幾つもの頭が浮かび上がり、逃げるように帰宅すると、家中に手や足の形の泥がついていた
  309. 944娘が頻繁に癇癪を起こし金切り声をあげるようになったのは、男に誘拐されてからの事だ。翌日には男は逮捕され、娘も保護された。だが娘の心は壊れてしまっていた。どれだけ尽くしても娘はよくならない。明日、男が出所する。私は男を殺す。それを娘の仕業と見せかけ、娘も…。私は母親失格だ
  310. 943スーパーの食品がかじられる被害が。鼠の仕業か?ある日中年の婦人が鞄から何かを出し、食品をかじらせていた。中年男性の頭だった。夫がこんな風になりお金もなくて…と婦人は語るが、頭だけの夫は「お前が俺をこんな風に!」と怒鳴った。事情はさておき、謝罪も反省も無いから警察呼びます
  311. 942指先から肘まで丸めるようにバキバキと折り曲げられ、苦痛で夢から目覚めた。最悪な夢だ…。翌日の夢では肩まで折られた。何故こんな夢を?翌朝母が「何故かあんたが心配だ」と言った。それって虫の知らせ?別の日、酷い夢の最中、激痛で目覚めた。指が折れてる。傍には白目を剥いた母がいた
  312. 941子供が集まる公園へ。鼻血や怪我をした子に優しくティッシュを差し出し、血を吸い込んだ紙を回収する。この紙は呪術に使用する。儀式の際、その子供は恐らく異常を起こし、時として死亡する事もあるだろう。だがその犠牲があり、本来の目的の相手を呪い殺す事ができる。子供達に感謝している
  313. 940事務所を新築の貸しビルに移転したが、絶対おかしい。通話中に別の声が入ったり、机の下に影を見たりする。大事な書類に血が付いていた時には流石に参った。新築なのに…。立地の問題か?ある日若い社員が失踪。移転前に心霊スポットに行ったのだとか。以来、社の規則でオカルト禁止になった
  314. 939ナンパした女とホテルへ。少しやつれた雰囲気のある女は、現実逃避したいのか意外と簡単に落ちる。女の服を脱がすと、全身に切り傷が。俺は逆に興奮し傷を舐めてやると、傷からサソリの尾のような物が飛び出し、俺の顔を刺した。「ごめんね。餌をやらないと私も死んじゃうの」と女は言った。
  315. 938「お前、彼女とはどうなのよ?」「どうって何だよ」「ほら、同棲して長いだろ?結婚とかさ、どうなのかなーって」「んー普段は良い子なんだけどさぁ、時々おかしいんだよ」「何?どんな風に?」「寝言でさ『この恨み、晴らさでおくべきか〜』って言うのよ。お前なら結婚する?」「しません」
  316. 937『Mil To Mirarel』という題名の動画を見つけた。動画の説明は何も記載されていないが、再生回数はそこそこ多い。何となく気になり観てみると、粗い映像に数人の男女が映り込み、皆憔悴した様子だ。こんなの何が面白いんだ?動画を消すと、「また来た…」と男女の声がした。
  317. 936天気が良いなと空を見上げ歩行中、腹部に鋭い痛みが。マスクをした男に刃物を刺されている。激痛に蹲ると、今度は地面に押さえつけられ、刃物を抜いた傷口に何かをねじ込まれた。その後男は逃走。気づくと病院だった。医師曰くねじ込まれた物は小さな袋で「中に精液が詰まっていた」らしい…
  318. 935宅配便で心当たりのない靴の箱サイズの荷物が届いた。開封したら金を請求されるっていう詐欺か?が、中から微かに声が。「出してぇ…助けてぇ…」何が入ってるんだ!?怖くなり交番に持って行くと、警官はその場で開封。中は空だった。以来「ありがとう…大好き…」と声だけがずっと聞こえる
  319. 934ある歴史の資料を調べていると、背後で人の騒めく声が。振り返るが誰もいない。その歴史には多くの人の死が関わっている。内容が特殊な為、妙な現象くらい起こるだろう。帰宅後、父が倒れ病院に搬送された。家族にまで影響が?だが知的探求の欲求は止められない。悪いが、皆犠牲になってくれ
  320. 933幽霊なんて信じてなかったのに、水溜りから出てきた手に足を掴まれて以来、水溜りが怖い。ある日の雨上がり。外出中にスマホを濁った水溜りに落とし、勇気を出し拾おうと手を入れた。水溜りは思いの外深く、中で大きな何かを掴んだ途端、水の中からくぐもった悲鳴が。これってもしかして…
  321. 932『祟り』とやらで愛する彼氏が死んだ。私は祟りの主を許さない。正体を暴き、地獄に突き落としてやる。祟りの影響か、更に私の家族や友人までが死に、私の体も腐食してきている。私を殺せばいい。同じ死者になれば、貴様に手が届く。彼氏への愛は見えなくなり、怨みのみで、生き地獄を行く。
  322. 931闇の交流サイトに『体の部位募集』とのスレッドが立っている。説明欄には「一人一部位」や「死者不可」、また「必要なパーツ」としてかなり細かい部位の名称等が記載され、現在までに必要部位の約半数が[済]となっている。この事から多くの提供者の存在が伺える。目的や手段等は全く不明。
  323. 930川で遊ばせていた子供が流され、慌てて助けると、誰かに足を掴まれたと泣き喚く。その日撮った写真には、女の…不倫相手の巨大な顔が。彼女とは、妻と別れ一緒になると約束している。けどこんな姿で、しかも子供に手を出すなんて…。約束を破棄しても無事では済まない気がする。どうしよう…
  324. 929就職面接の順番を廊下で待つ。先に面接を終えた者の表情は明るく、目が輝いていた。手応えあったのかな?自分の番になり、数人の面接官を前に話をする。途中一人が掌を向け8の字を描くと、意識が朦朧とし、声が響いた。「嬉しそうに帰れ。役立たずは自殺しろ」…はい、有難うございました!
  325. 928室内犬がボウルの水をずっと飲んでいる。そんなに喉渇いてるの?まだ飲んでるよ…。ってかもう水は無いでしょ?見るとボウルに水が湧き出している。え!?どゆ事!?まだ飲み続ける犬を止めると、水はボウルから溢れ出した。やがて部屋一杯になり溺れる中、犬が冷ややかな目を向け泳いでいた
  326. 927授業中、先生が「おいA!どこ見てる?」と注意したが、Aは先日から学校を休んでいる。その事を伝えるが、そこにいるだろと先生はAのいない席を指差す。またいつもの冗談かと皆が笑う中、先生は教室を出て行き、以来学校に現れなくなった…らしい。けど今先生は教壇に立ってるじゃないか…
  327. 926髪を滴り落ち、足元で〈赤い花〉が咲いた。乱れた息が落ち着くと、私は目の前の血と肉塊の惨状に嘔吐した。突如現れた長身の女に、全員頭を割られ殺された。お母さん…すぐに帰るね…。起き上がると、凄まじい衝撃と共に私の頭から脳が弾けた。最後に見たのは、ザクロ色に裂けた女の顔だった
  328. 925残業中、一息つこうと喫煙所へ。窓の向こうのビル群の灯りに、皆まだ残業中だなと自分に気休めをする。すると窓の外を何かが登って行った。窓際で見上げると、人だ。人が空に浮かんで行く。と次の瞬間その人はシャボン玉のように弾け、赤い飛沫を散らした。…よくわからないけど、早く帰ろ…
  329. 924真上の部屋の住人が死後数カ月の遺体で発見された。遺体は腐敗で液状化しており、床には遺体の形で体液が染み込んでいたらしい。部屋の汚れは遺品整理業者がきっちり清掃した筈だ。なのに何故そのシミがうちの“床”に滲み出すんだ?騒音がうるさいから、少し嫌がらせしただけじゃないか…。
  330. 923ある空き地の前に立つと、賑やかな子供達の声が。だが姿はない。聞こえ続ける声に全身粟立つ。見えない幾つもの手が体に触れる。「先生…お腹痛い…」と子供の声。ここはある保育園の跡地だ。当時給食調理員の母が起こした集団食中毒の死亡事故。亡くなった母を継ぎ、私は供花を備え合掌した
  331. 922人の背後霊が視えると苦労が多い。どれ程良い人であっても憑き物が悪いと周りに少なからず害を及ぼす。だからそういった人には近づかない。けど変な憑き物がいる人は余りにも多く、まともな人付き合いができない。で…、安全な奴ほど人格がズレてる。僕の周りには、そんなズレた人ばかりだ…
  332. 921心霊スポットに行って以来、人の背後霊が視えるように。幸い家族に悪い憑き物はなく安心したが、訪問客はそうはいかず、家に上がろうものなら落ち着いていられない。そして僕が視える事に客の憑き物が気付くと、残ってしまう事も。そんな時は「帰れ!」と怒鳴るのだが、直後に母に叱られる…
  333. 920百貨店のコスメショップへ。カウンターには先客の女性が背を向けメイクレッスンを受けている。が、化粧を施している従業員は声を震わせどこか怯えている様子。チラと女性の鏡を覗き込む。そこに映る女性の顔には、また幾つかの顔があり、その一つ一つに化粧を施していた。私は踵を返した。
  334. 919私は些細な行いでも『罪』を感じ、全てに臆して生きている。大丈夫だよと人は言ってくれるが、そんな気遣いをさせた事に罪悪感を感じる。〈生きる事が罪〉そう感じる。誰にも理解できないだろうけど、誰かに理解されたい。私は生きたい。でもそれを許せない。小さな部屋で、私は人生を彷徨う
  335. 918道路工事中に地中からブリキのロボットが出てきた。ブリキの玩具とは懐かしいなと掘り出すが、それは錆びて半分朽ちていた。その晩夢に男の子が現れ「僕はロボットになりたかった。君は?」と問い、僕もと答えたところで目が覚めた。以来体に錆が生える。あのロボットの様にはなりたくない…
  336. 917息子のズボンのポッケから石が幾つか出てきた。後で捨てようと棚に置き、家族の服を洗濯。棚からカタカタと音がし、見ると石が小刻みに震えている。息子にどこで拾ってきたかを問うと、どうやら朽ちた墓を壊し持ってきたようだ。なんて事を!以来息子は怪我をすると、傷口から石が出てくる。
  337. 916別れた妻に引き取られた9歳の息子に会いに行くが、まさかの他人行儀。何だよその態度と訊くと「僕は父親役ですから」と言う。それは頼もしいなと苦笑すると「そして母を自分の子として守って行くんです」と息子は言い、こう加えた。「でも言う事聞かないから、躾として檻で反省させてます」
  338. 915姉の髪は黒く綺麗だが、伸びるのが早い。一晩で1cm伸びる事もある。そして姉は何故か皆に避けられ、いつも一人だ。ある日姉は神社の神主から「髪に魅せられた〈魔〉が巣食っている」と言われ、全てを剃り落とした。坊主頭の姉には厭なモノを感じなくなったが、最近私の髪が早く伸びる…。
  339. 914仕事中同僚が痛てて…と呻き、見ると首と両肩が後ろに反れ、バギッと音を立てると動かなくなった。唖然としているとスマホが鳴り、出ると同僚の声で「◯◯を燃やしてくれ」と言ったが、音が不鮮明で聴き取れなかった。同僚の家族も次々死んでいるようだが、何を燃やせば良いのか、謎のままだ
  340. 913母が部屋の壁に頭を打ち付け、額から血を流している。やめて!と止めると「助けて!」と母は叫んだ。母の頭を押さえても動きを止める事はできず、壁との間にクッションを入れると、母は私の髪を鷲掴みにし、壁に強く打ち付けた。「あぁ!なんでこんな事に!」と叫ぶ母の顔は、醜く笑っていた
  341. 912以前、父が海で自殺。会社をクビになった父は、家族からも逃げたのだ。私は父を許せずにいるが、父の最期の場を一目見たくてやって来た。旅館の料理の味に、不思議と家族での食事を思い出した。どんな形になろうと、あの人には〈父〉だった過去がある。何も変わらないのに、涙が止まらない…
  342. 911海が見たいと親友が言い、数人で旅行にやって来た。宿泊した旅館の食事に、親友は好みの味だと感動していた。楽しい夜を過ごした筈だった。なのに親友は翌朝浜辺に打ち上げられた。以前親友の告白に同性ではどうにもならないと悲しませた事がある。女将の優しく悲しい目は、私の横を見ていた
  343. 910車のフロント硝子が割れ、車内に絶叫が響く。黒い何かが両手で彼氏の目から頭部を裂き、鮮血を浴びた私はそれが現実なのだと知った。逃げようにも身が竦み動けない。何かが私の足を掴み、腹を抉り、子宮を取り出した。バカな彼氏のせいでこんな目に…。山神の土地でも構わず発情したバカが…
  344. 909朝、教室には誰もおらず、校庭から声が。見ると人が集まっているが、頭巾を被り服装も歴史の教科書で見るような古い格好だ。すると彼らは突然逃げ惑い、ある者は燃え出した。凄まじい光景に唖然としていると、「おはよ」との声で教室は普段の光景に。校舎の隅にある慰霊碑の意味を漸く知った
  345. 908うちの猫『ニャウ太』には〈何か〉の力があるようだ。ある日窓に向かい威嚇しており、見ると外には大きな犬のような黒い影が。すると影は窓をすり抜け部屋に入ってきた。ニャウ太は飛びかかるが犬に弾き返され、何度も挑んだ末、遂に犬を追い出した。ニャウ太さん!お怪我はありませんか!?
  346. 907うちの猫『ニャウ太』には〈何か〉が見えているようだ。体調が悪い日、突然後ろからニャウ太に飛びかかられ転ばされてしまった。その後もニャウ太は威嚇の声を出しながら何かを追いかけ、窓際まで来ると落ち着いた。あれ?そう言えば体調が良くなっている…。ニャウ太さん…何やったの?
  347. 906うちの猫『ニャウ太』は〈何か〉に敏感のようだ。基本家猫なのだが箪笥には絶対近づかない。ある晩ニャウ太が箪笥に向かいシャー!と威嚇しており、見ると引き出しが開き、ゆっくり人の頭が出てきた。慌てて引き出しを閉じ、翌日確認すると、奥には髪の束が。ニャウ太さん…これ知ってたの?
  348. 905『アナザーズ』というオカルトドラッグが闇で出回っている。燃やした薬から出る煙を吸引する事で、死者の生前の記憶を追体験できるといいものだ。時として悲惨な記憶により精神が破綻する者もいるが、何より一度しかない人生で複数を体験できるとして人気が高い。原料には死者の脳も含まれる
  349. 904母が起きろと叫んでる。もう朝…?けど布団から出る事が出来ない。すると突然金縛りに。瞼すら開かない。何かが顔の間近におり、臭い息が顔に当たる。まるで入れ歯独特の厭な匂いだ。と、不意に体が自由になった。慌てて飛び起き母の元へ。母は祖父の遺影に向かい、グッジョブと親指を立てた
  350. 903子供の頃はよく廃屋に潜り込んだ。一緒に行ったAはある時何かを見て発狂し、今も入院したまま。Aは何を見たのか。それを知らぬまま普通に生きては行けない。危険を承知で廃屋へ。そこには天井から垂れ下がるAが。次の瞬間、俺は発狂した自分を見下ろしていた。Aが「ようこそ」と笑った。
  351. 902アパートの押入れがカビ臭い。天板を外し屋根裏を覗き込むと、カビに覆われた日本人形が見つかった。何故こんな所に…?大家に話す為会いに行くと、斑らにカビの生えた顔で涙を流し、何度も礼を言われた。後日人形は神社でお焚き上げしたらしいが、その晩大家は全身に火傷を負い亡くなった。
  352. 901妻がスーパーで買い物中、俺は駐車場に停めた車の中で煙草をふかし待つ。すると向かいのスペースに這う小さく黒い何かが目に入った。何だ?と思い見ていると、赤ん坊の泣き声が響き、車内が急に暑くなった。まるで炎天下に晒された車の中ようだ。妻が子供を欲しがらない理由と秘密に気づいた
  353. 900百物語で死者が蘇るという噂が立ち、そのやり方までが出回った。通常のやり方に加え、一話終える度に血を付けた形代を燃やすと最後に想い人が現れる、と言う。実行した者の多くが中高年であった。だが実現できた者はおらず、寧ろ行方不明者が増えた。人の悲しみを利用した悪質なデマだった。
  354. 899妙に気味の悪い子供が家の前の道路に黙々と文字を書いている。仕事から帰宅すると文字は増えており、擦っても消せない。以来外出中は体調が悪く不運も続く。霊感の強い知り合いが「いつもいる筈の守護霊がいないね」と言ってきた。まさかあの文字でのせいで、守護霊が家から出て来られない?
  355. 898夢の中に出てくる男が「お前は死ぬ」と私に言い、その翌日父が死んだ。別の日にその男の夢を見ると、今度は母が。『お前』と私を指しておきながら、何故周りの人ばかりが死ぬのか。ある日の夢で、私の姿はあの男だった。そこへ男が現れ「お前は死ぬ」と言うと、翌朝部屋で男が死んでいた。
  356. 897コンコンと押入れの内側からノックの音が。驚いたが「な…何?」と声をかけると、「出して…」と女の声が返ってきた。押入れに女が!?恐怖の余り何もできずにいると「出せ…出せ!」と叫び戸を激しく叩き出した。気絶から目を覚まし、恐る恐る押入れの中を見ると、元カノの写真が焦げていた
  357. 896スマホに入った留守録には、耳を裂くような騒音が。それは様々な動物達の苦痛に満ちた絶叫だった。別の日には、帰宅すると部屋中に転がる動物の死骸の幻を見た。先日初めて参加した動物愛護活動で知り合った先輩にその事を話すと「動物の悲鳴を受け止めるって、そういう事だよ」と言われた。
  358. 895死にてぇ死にてぇ言ってる奴らは、一体何がそんなに辛いのかね?だったら早く死ねよって思うわ。まぁ他人の事ぁどうだっていいから、俺はこうやって悪さしてるんだけどね。ある日仲間が全員殺された。怖ぇよ。不安だよ。寂しいよ。まともな社会じゃ生きられないんだ。死にてぇ…死にてぇよ…
  359. 894某幼稚園の送迎バスの運転手をしているが、一人表情のない子が乗っている。その子は毎日いつの間にか座っており、園到着後も降りる事はなく、またいつの間にか消えている。気にはなっていたが怖くて触れずにいたある日、その子が幼稚園で降りた。以来園児達の怪我が絶えず、幼稚園は閉鎖した
  360. 893某ビルの4階は空き部屋になっており、エレベーターでも階段でも行く事はできず、外から見てもブラインドが締め切られ中を見る事もできない。どうしても気になった俺は窓の清掃員にブラインドの隙間から写真を撮ってもらった。写っていたのは『墓場』。ビルの中に?墓の一つに、俺の名字が…
  361. 892ペットの犬が体調悪そうに丸くなっている。先程の散歩中に何か拾い食いでもしたか?背中を摩ってやろうと近づくと頭を上げ急にギャワギャワと苦しみ出し、大量の血を吐いた。血溜まりの中に何かがいる…。目だ。目玉が動いてる。それはギョロリとこちらを見て、血溜まりの中に沈んで消えた。
  362. 891子供と行った地元の歴史博物館に展示してある大昔の農具から、何故か妙なものを感じる。そんなある日街で殺人事件が起こり、博物館から盗まれた農具が凶器に使われた。恐らくあの農具は大昔にも殺人に使われ、変な念が染み付いてるんだ。でもあの農具、一目見た時から欲しいと思ってたんだ…
  363. 890妹が結婚し家を出て行く。私は祝うと同時に複雑な心境だ。妹は過去に人を殺し、私はそれを隠す為に犯罪に手を染めた。妹の幸せを願って来た筈が、残された私は不安に苛まれている。妹を守る事で自我を保ってきた。妹の夫を殺しに行くが「俺が彼女を守る。あんたは要らない」と何度も刺された
  364. 889ぷ〜んと蚊が飛んでいる。僕はこの音が大好きだ。寝ている時に耳元で鳴るこの音には、まるで女性の囁きのような心地よさがある。試しに数を増やしてみる。うん、良いね。多ければ多い程良い。部屋を締め切り充満する程に増やす。あぁ最高だ。僕の体は酷く膨れていくが、甘い音に包まれ幸せだ
  365. 888スマホに通知が。開くと画面には大量の『888…』の文字。ネット上でパチパチと拍手の音を表すのを見た事はあるが…。するとスマホが今度は勝手に喋り出した。「バイバイ、バイバイ…」そういえば88には『Bye bye』の意味も。スマホがまた喋る。「バイバイ、お迎えが行くよ…」
  366. 887屍となった娘はどこを目指し歩き続けるのか。街には歩く屍が溢れ、私はそれらを仕留めつつ娘の後を追い続ける。娘に危害を加えようとする人間を殺す事も。辿り着いたのは沢山の小さな地蔵が並ぶ寺。水子供養?娘は過去に中絶を?地蔵の前で膝をつく娘を暫く見つめ、目を閉じ斧を振り下ろした
  367. 886病気の弟の為に毎日祈りを捧げている。医師や霊能者にも突き放されてしまった弟。今では歩く事さえできず寝たきりだ。母は全て私達の幸せの為だと言い、昔から「邪魔者に災いを」と祈りを捧げてきた。けどそれは祈りじゃなく呪いだ。呪いは返ってくる。母さえいなければと、私は今日も祈る。
  368. 885「やっぱ犬は可愛いよ」「何が可愛いんだよ」「甘えてくるとことか、つぶらな目とか?」「じゃあ猫は?」「猫も可愛いな」「じゃあ豚は?」「ミニ豚ならな。とりあえず可愛けりゃ何でもいいよ」「じゃあ妖怪は?」「ハ?何言ってんの?」「うちに来い。見せてやる」以来、妖怪にゾッコンです
  369. 884脇道から婦人が乗る自転車が飛び出してきて衝突。徒歩の私は大怪我を負い、婦人は死亡した。以来脇道が怖くなり、家の廊下の角にも恐怖を覚える。ある日自室と廊下の繋ぎにも恐怖を感じた次の瞬間、突然部屋に何かが飛び込んできて壁に激突した。自転車だ…。廊下の先に、婦人を見た気がした
  370. 883家事や育児で余裕がなくて、指先のささくれに気づかなかった。ある日子供を抱き上げると、ささくれから皮膚が大きく裂けてしまった。傷からは血ではなく小さく黒い虫が溢れ出した。子供の顔の上を走る虫を払い除けるが、子供は虫を捕まえ口に運び、咀嚼し、笑った口から大量の虫が溢れ出した
  371. 882夜、部屋の灯りを落とし、落ち着いた音楽を聴きながら酒を愉しむ。この時間だけは誰にも邪魔されたくない。が、窓を叩く音が聞こえる。ここはタワーマンションの上層階。お前の、いや、お前らの正体は知っている。俺の邪魔をするな。お前らは敗者で、俺は勝者だ。俺は、屍の山の上にいる。
  372. 881母は優しいのに、私には母による暴力の記憶がある。転校先で出会ったAは私と瓜二つで、顔に大きな傷が。彼女の母親に会うと、私の母と同じ顔だ。あの記憶はAの…?私は暴力を問うが、逆上した母親を誤って殺してしまった。その途端Aは硝子のように砕け散った。帰宅すると、母も砕けていた
  373. 880鏡に映る私は髪が乱れ、服も肌も黒く汚れていた。どれだけ拭っても汚れは広がるばかり。服を脱ぐと体の白い肌に安心した。シャワーを浴び鏡の前に立つと、全身が汚れている。私は絶叫をあげ裸のまま部屋を飛び出すと、そこは廃村。外には発狂した彼氏がいた。同棲する為の部屋を探していて…
  374. 879『コピ・ルアク』という珈琲豆はジャコウネコの腸内で発酵し排泄された豆で、最高級品だ。だが俺はそれを超える味を持つ豆を生み出した。動物の死体に豆を詰め込み、腐敗の過程で発酵させる。その上で更に手間をかけると腐敗臭は消せる。ただ死体は数が手に入らない。いつか『人』で試したい
  375. 878元々感情に欠落があるのか、心底から喜びを感じた事がない。どれ程嬉しい事があっても同時に『虚無』を感じていると明確に気付いたのはごく最近だ。人として〈当然〉だと信じ結婚し、子供もいる。笑顔も絶やさない。けど日々虚無が心を侵食する。もっと早く気付けていれば、こんな事には…
  376. 877新任の先生が『泥人間』に見える。それだけでなく、クラスの数人までが泥人間に見えるように。きっかけは先生が来てからだが、原因が見つからない。ある日の修学旅行。突然の大雨で先生を含む数人が濁流に飲まれ、泥に埋もれた遺体で見つかった。以来「救えたのでは」と考えない日はない。
  377. 876私は彼氏を『頭蓋骨』で選ぶ。これまで私に言い寄って来た男性はまず頭を開き、頭部の骨の形を見る。その後好みのモノは顔を開いて目鼻の形や歯の並びなどを見る。それで残った物は更に首から切断し、骨だけにして全体を眺める。全てに合格したモノだけが、私の彼氏と言える。命は要らない。
  378. 875うちのホストクラブが放火にあった。幸い火はすぐに消されたが、以降も何度かボヤ騒ぎはあった。欲望を欲望で喰らうような街にある店だ。犯人は検討がつかない。そんなある日、近郊の用水路で身元不明の焼死体が発見された。最近後輩の後ろに見える丸焼けの女はまさか…。その後店は全焼した
  379. 874ホストとしては全く売れなかったが、性格が良く仲間内で好かれた奴がうちの店にはいた。だがそういう奴に限って悪人に目をつけられる。俺も何度か助けてやったが、とうとうそいつは店に出て来なくなった。暫くして頭の欠けたそいつが店の前に立つようになった。俺はずっとシカトを続けている
  380. 873ホストとして人気が出るとストーカーも現れる。これが亡霊だと厄介だ。四六時中常に女が視界に入り込む。ある日声をかけると女は消えたが、今度は背後に気配が。振り返っても見る事はできず、次第に背後から殺意を感じるようになった。お祓いしてもらうと、以来No.2のすぐ横で女を見る。
  381. 872ホストとしてそこそこ売れ始めると、正直嫌な客からの指名も受ける。その客がいると床に男が這っていたり、腐敗した半裸の女が店内を徘徊する。俺にしか見えてないけど、この客、これまで何をやらかして来たんだ?時々店の連中が失踪するが、こういった客が変なモンを連れ込むからだろうな…
  382. 871子供達が木にぶら下げた大きな麻袋をバットで殴っている。袋の底は赤黒く染まっている。何をやってるんだ!と叫ぶと、子供達は黒い目を向け笑いながら散って行った。重い袋を下ろし恐る恐る中を覗くと、空だ…。次の瞬間後頭部に衝撃を受け、気づくと袋の中。笑い声と素振りの音が聞こえる。
  383. 870妹が彼氏を連れて来たが、まともに挨拶もできないようなクズだった。妹の趣味を疑う。部屋で漫画を読んでいると突然彼氏が入って来て「その漫画、人から借りっぱのヤツっスよね?」と怖い顔で言った。そ、そうだけど…と答えると「スゲェ恨まれてるよ」と言い、クズだなと言い放ち出て行った
  384. 869育児ノイローゼかも。夫も娘も私を責めている気がする。娘の声を聞く事が、家にいる事が辛い。私はほんの数十分だけのつもりで外出し、ある住宅の角を曲がった所で突然暗闇に包まれた。出口を探しても見つからない。娘の顔が脳裏に浮かぶ。だがその顔は悪魔だった。私は闇の中で、心が壊れた
  385. 868息子の同級生が学校に刃物を持ってきたらしい。何事もなかったようだが、もし振り回されでもしたら…。その子には近づかないようにと息子に言い聞かせた数日後、その子の母親が学校に乗り込み「うちの子を危険扱いするな!」と喚いたらしい。だがその母親は自分の子供に刺され死んでしまった
  386. 867久しぶりに帰省した兄は、別人のようにやつれていた。家族全員で心配したが、兄は弱々しく笑い平気だよと言う。だか翌日兄は失踪。残されたメモには『ゴメン』とだけ書かれていた。その日から家族の様子がおかしい。兄は何をしに帰って来たのか。そんな事どうでもいいくらい、もう疲れた…
  387. 866祖父が亡くなったその日、季節外れにもかかわらず、祖父が可愛がっていた花が一輪だけ咲いた。「きっとおじいちゃんにお礼を言ってるんだね」と母は泣きながら語る。暫く咲いた花は祖父を埋葬した日に散った。以来花が咲く事はなかったが、産まれたばかりの私の子供は、微かに花の香りがする
  388. 865肘に出来物が。それは成長し赤い実になると、甘い匂いを発した。以来動物や女性が寄ってくる。ある日匂いをきっかけに女性と交際する事に。初めて共に過ごした夜、痛みで目を覚ました。彼女が肘の実を食べ、口を赤くしている。血の味…と呟き彼女は去った。新たな実が首にでき、犬に襲われた
  389. 864業界の風潮もありサービス残業が当たり前になっている。クライアントの無茶な要求や人手不足なのはわかるが、もう少し何とかならんもんか。お陰で平日は子供と全く会話ができない。先日子供の異変に漸く気付いた。宇宙人と交信してたよ。だからパパは要らないって…。頼む、早く帰らせてくれ
  390. 863新人の俺には長時間労働が苦痛で仕方がない。先輩や上司はそれが当たり前の時代を生きてきたのだろうし業界的にも根が深い問題なのだろうが、俺はもう限界、会社を辞める。割に合わないのによくやるよ。母にその事を告げると「じゃあ私も親辞めるわ」と言い、両親とも失踪した。えっマジで?
  391. 862有名タレントAが心霊スポットでの生中継で行方不明に。以来その場所には足を運ぶ者が後を立たず、Aの霊を見たと言う者まで現れた。だがAは帰ってきた。手には汚れた靴と鞄を握っていた。調べると別の場所で現在失踪中の人物の物と判明。メディアは騒いだが、Aは何も語らず直後に死亡した
  392. 861クラスの女子達がスカートを上げ「見てぇ私にも出来たのぉ」と腿を見せ合っている。気になるが女子の聖域に立ち入る勇気もなく、聞き耳を立てる。「わぁスッゴイじゃん」「可愛い〜」…何を見てるんだ?「でもさぁ餌が鼠でしょ?私まで太っちゃいそ」「わかる〜!」一体何を見てるんだ!!?
  393. 860夜、バイト帰りにつけてくる足音が。振り返っても誰もいないが、音だけは近づいてくる。そして足音は突然駆け出し、横を追い抜いた途端に消えた。翌日外出すると、人が怯えた様子でこちらを見る。一人が声をかけてきた。「見えてないのか?君の顔スレスレのところに、ずっと男の顔があるぞ
  394. 859飲みかけのペットボトルに口を運び、気づいた。中で小さい女が浮かんでいる。こ…これって漫画とかで見る『凸凹恋愛ストーリー』の始まりッスか?だがボトルの底から次々と女が浮かんでくる。外人もいる!皆が俺を見て「やだ…」「キモイ…」「Fu◯k…」と言う。俺は小さく生きる事にした
  395. 858お笑い芸人として売れる為に、新たなツッコミスタイルを模索。逆にシュールなスタイルはどうだろう。ボケに対し、人差し指で相方の鼻先をシュッとすくい上げる。地味だが客前で試すと笑いが起こった。ある日のステージ後、「鼻を返せ」と鼻が無い女が鋏を握って現れた。なんでそうなんねん!
  396. 857彼氏の運転でドライブ。エアコンをつけると線香の匂いが吹き出し、彼は慌ててエアコンを止め換気した。何これ?と訊いても彼は無言のまま。到着したのは山の何もない場所で、彼は私を置いて去って行った。微かな線香の匂い。道に転がるピアス。気づくとまた車の中。彼は怯え、崖に突っ込んだ
  397. 856一緒に登山中の子供が突然駆け出し、見失ってしまった。反対からの登山者にも目撃者はいない。滑落を疑い斜面を見ていると、後ろから「やめろ!」と男に呼び止められた。男は私の体から何かをむしり取る。蔓?いつの間に…。それより子供が!…あれ?子供って、誰?樹々が声のように騒めく。
  398. 855置き薬の補充で訪問。このお宅は傷用の薬の減りが早い。それとなく夫人に理由を訊いてみると「うちのコはヤンチャだから」と言う。だが子供がいる形跡はない。すると夫人は痛っ!と声をあげ、首筋に一筋の血を滲ませた。一瞬婦人の襟元に大きな蜘蛛の足が見え、早々に話をまとめて立ち去った
  399. 854「ただいま!」と元気良く帰って来たのは、息子ではなかった。どこの子?と訊くが僕だよと答える。声は息子のものだ。ふと気づいた。この子に見覚えが…。そうだ、ニュースで見た行方不明の子だ。もしかして…と声をかけると、そこにいたのは息子だった。以来、時々息子がドブ臭い泥水を吐く
  400. 853某分譲住宅の話。住人達の交流は挨拶程度だが、お互い干渉しない事で厭な噂を聞く事もない。ある日、とある家を中心にその両隣、そしてまた隣へと感染するように住人が死亡。中心となった一家は全員屋内で死亡していたが、遺体は真っ黒だったという。現在その住宅は全て空き家となっている。
  401. 852深夜、物音で目を覚ました。まだ朦朧とするがそれは『お経』だとわかった。声を探し上を見ると、天井で逆さに正座をする坊主がおり、悲鳴をあげると坊主は消えた。が、直後に耳元で「邪鬼よ去れ…」と声が。え゛?俺を『邪鬼』と言ってるの?ウルセェ!と叫ぶと「恐ろしや…」と坊主は消えた
  402. 851漸く雨が止み、外出。途中、男が四つん這いで道に溜まる水を飲んでいた。うわ汚ねっ!思わず声に出すと、男はミイラのような顔を向け、消えた。以来無性に喉が乾く。ある日出先で耐えきれず、目の前の汚水を飲んだ。皆が白い目で見る。そう言えば、お前らもたっぷり水を含んでるんだったな…
  403. 850「助けて」と女子生徒から電話を受け、駆けつけると幾つものバラバラ死体が。どうした!?と訊くが「男が…男が…」と生徒はまともに話せない。背後の気配に振り返ると、数人の血塗れの女達が現れた。一人が口を開く。「その子は今朝痴漢にあった。私達は男が憎い。皆殺しだ」冤罪より酷い…
  404. 849初めて祖母の田植えを手伝う。慣れない姿勢での作業に何度も音を上げそうになる。日が傾く少し前に漸く作業を終え、最後に祖母がカカシを立てた。が、それは全面御札だらけ。祖母に訊くと「土地柄寄ってくるのは動物だけじゃない。ホレそこ」と田んぼの中を泳いで逃げる人型の何かを指差した
  405. 848連日夢に現れる兄が不鮮明な声で「ぁすがない」と言う。兄の生活状況が心配になり電話で聞くが、問題はなさそうだ。ある晩夢の兄が「ぁすがない、…しをくれ」と私の足にしがみ付いてきた。後日兄は事故で両足を切断。夢の兄はハッキリと「足をくれ」と言う。段々私の足の痣が濃くなっている
  406. 847庭で土に半分埋まった人の頭を発見。警察に掘り出してもらうとそれは頭部のみで、状態はまだ新しいとの事。誰が何の為に…。別の日、また新たな頭部が。頭部は子供とモメた同級生の親だと判明。まさか子供が…?ふと爪の間の汚れを見て、思い出した。そうだ…子供の責任は、親が取らなきゃ…
  407. 846突然彼氏がすぐに同棲しようと言う。私は同棲など考えた事ないから即決できないと答えるが、それなら別れると興奮気味に言い出した。一体どうしたの?と訊くと、彼氏はこう言った。「部屋の隅で、 君を見てる…。沢山の女の『塊』が…」思い当たるのは、最近浮気した遊び人風のイケメンの…
  408. 845信号柱下に花を供える。以前ここで親子を撥ね、以来定期的に訪れている。あの時、信号はこちらが青だったが…。ドサッと車道に女が転がる。仰向けに倒れこちらを睨み、息絶える。その繰り返し。思わず供花を踏み潰す。子供は家族に取り憑き、全員発狂寸前だ。あんたらには、怒りしか湧かない
  409. 844いつも通るある場所の壁から『腕』が生えている。ずっとマネキンだと思っていたが、それは人の腕だった。棒でつついてみるが反応なし。勇気を出し握手をしてみると、グッと強く握り返えされた。恐怖で思わず腕を殴ると、折れた感触が。その後腕は消えたが、嫌な感触がこの手にまだ残っている
  410. 843私が産んでやったのに、あんたは全く言う事を聞かない。夫の◯君だって困ってる。なんで泣くの?どうして汚すの?最近じゃ◯君は私に触れてくない。あんたなんて産まなければ…。ある朝子供が死んでいた。こんな筈じゃ…。私達は幸せになる筈だったでしょ?ねぇ◯君、その刃物でどうする気?
  411. 842長い引きこもりから立ち直り登校して来た同級生には『女』が憑いていた。だが別の時間では老婆、また別の時間は子供に変っていた。どうなってんだ?さっきまでの女や老婆はどこへ?翌日、クラスの2名が休んだ。あ、今日は子供じゃなくて男に変ってる。足に何かが触れ、見ると子供の手だった
  412. 841穴に落ちた。中は深い筒状になっており、全く身動きが取れない。すると見えない足元から苦痛と恨みに満ちた声が、体を這い登るように上がってくる。そして顔の横を抜け、それらは穴から溢れ出した。「誰か!助けてくれ!」必死にそう叫ぶが声は風の音にかき消される。やがて、雨が降り出した
  413. 840私は深夜、無意識に会話をしている。相手が誰かはわからず内容も覚えてないけど、怖いとも感じない。ある晩会話を録音してみると、声は私一人だけ。「大丈夫だから、心配しないで…」と、私を案じる誰かに答えているようだ。だが会話には続きが。「うん…ちゃんと殺すから…」私は、一体…
  414. 839暫く車を運転し、気づいた。走った道に赤い線が残っている。慌てて車を降り下を覗くと、何と子供が…。どこの子だ?服が車体に引っかかっており、最早顔が認識できる状態ではない。子供が隠れていた事に気付かず何キロも…。車と子供の遺体は処分したが、以来歩いた場所全てに赤い線が残る…
  415. 838夜、林の前を通ると妙な視線が。見ると林の闇の中に『目』だけが浮かび上がっている。慌てて逃げたがそれは後を追ってくる。前方にいた人に助けを求めるが、その人には目がなかった。そこへ追いついた目がその人の顔に結合し、目を見開きこう言った。「怖がらないで。ただ見てただけだから」
  416. 837「あれって何?」と妻が窓の外を指差す。狭い庭の変化を探していると、妻は「ホラあそこに白いモヤが…」と言い、フラフラと庭に出た。俺にはモヤなど見えず「オイよせ」と声をかけるが、妻は一点を見つめ全く動かなくなった。その後庭に小さな小屋を作り、点滴を打って妻を生かしている。
  417. 836俺は正直ロックは苦手なのだが、普段大人しい彼女は超ド級のハードロック好きで、彼女がロックを聴く時はイヤホンを使用する。ある時俺の顔にバシバシ何かが当たるので振り向くと、イヤホンをし軽く体を揺らす彼女の後ろで猛烈なヘドバンをしている背後霊の髪だった。だからロックは苦手だ…
  418. 835母には本当に感謝をしてる。初めての一人暮らしでは不味い手料理か安い弁当ばかりで、母の料理の有難味を痛感したものだ。俺が幾つになっても相変わらず心配してくれるのはいいが、自宅に電話はやめてくれよ。妻が驚いてしまう。でも俺も頑張らなきゃな。安心して成仏してもらえるように…。
  419. 834飛行機への搭乗者を笑顔で迎える。挨拶を返す人、無視する人など様々だが、違和感を感じる人も。生気がないのだ。案の定その人は古いチケットを手にしている。そういう人は搭乗させると直後に消える事が多い。たまに業務中背後に立つ事もあるが、その地まで『想い』を届けるのも私達の仕事だ
  420. 833事故物件は本当に安い。貧乏な俺が安くいい部屋を借りられるなんて最高だ。前の住人はベランダから飛び降りたらしい。ある晩何かの気配に振り返ると、部屋の片側一面を覆い尽くす巨大な顔が。顔はゆっくりとこちらに迫っている。逃げようにも玄関は顔の向こうだ。逃げ場所は…、ベランダだ!
  421. 832生きたまま顔の肉を中心から左右に剥ぐように裂かれた遺体の傍には『正体を見た』と書かれた紙が。他にも同様の遺体が複数発見される。被害者は皆カウンセラーで、犯人は相談者に絞られた。だが新たに慈善団体の職員が被害者となった。犯人は特定できぬまま、今もなお被害者は増え続けている
  422. 831雨が降っているが、息子には雨合羽を着せ共に外出。途中息子は水溜まりでバシャバシャと飛び跳ね出した。やめなさいと注意するが、息子はやめようとしない。手を掴みやめさせると、息子は私を見て「ママに意地悪しようとする人がいるからやっつけてるんだよ」と言った。私の足を誰かが掴んだ
  423. 830妻が話す事は愚痴かボヤキか後悔か嘆きばかり。全ての会話に溜息を付ける。もういい加減声を聞くのも嫌になって、離婚を考えている。実は最近気になる人がいるんだ。その人の声は優しく、ついその声に誘われる。静かな空間に響く優しい声。そこは廃屋だ。妻を殺してでも、ずっとそこに居たい
  424. 829その昔、この地では神に供物を捧げ、その見返りに豊作を得たという。だがこの神は物欲の神でもあり、際限なく「おくれ」と欲する事から『オクレ様』と呼ばれた。供物の内容は遺されていない。ただこの町は昔から多産である事から察するに…。今でもオクレ様への供犠は続いているのだろうか…
  425. 828靴先に仕込んだ小型カメラでスカートの中を撮影。所謂『盗撮』だ。勿論犯罪だが販売したりせず個人で楽しむ。その日も撮影したモノを観ていると、“目”が合った。スカートの中に〈顔〉があり、カメラを睨んでいる。慌てて消そうとしたが、別の考えが浮かんだ。これはネットに流してやろう…
  426. 827ここの焼却場で毎日処理する大量のゴミには、妙な物が混じっている事もあるだろう。時々炎の中に『何か』がもがく姿が見える。だがそれは生きているモノではないだろうから、炎を止める事はしない。私は燃えるゴミを通し、人の無責任さや無情さを知った。何もかも、燃えてしまえば良いのに…
  427. 826夜、リビングで一人読書に耽っていた。内容は、死の病を抱える青年の自発的奉仕により、ある男が人生を取り戻していくというものだが、うむ、胸を打つ展開の連続に涙が…。するとキッチンで物音が。見に行くと、痩せた亡者が冷蔵庫を漁っている。…うん、いいんだよ。今は何でもあげちゃう!
  428. 825父が私を殴るのは、私を愛しているからだという。私は殴られる度に、どれだけ辛くても愛を感じ喜ぶ事を努めた。ある時、私も父に愛を示す事にした。すると父は愛ではなく『怒り』を返してきた。私は薄れる意識の中で「上手く伝えられなかった」と悔い、次こそは必ず喜んでもらおうと誓った。
  429. 824学校からの帰宅途中、スーパーの袋を重そうに運ぶ少女がいた。向かう方向は私と同じだし、手伝おうか?と声をかけると、少女は大丈夫と言った。ん?袋の中が赤い…。中身が僅かに透け、切断した人の手足だとわかった。恐怖で腰を抜かすと、少女は『手』を抜き取り「バイバイ」とそれを振った
  430. 823車で女性を撥ねてしまい救急車を呼んだが、救急隊員が妙な事を言う。「事故は何時間前に?」いや、まだ20分も経ってないけど…。聞くと女性は既に冷たくなっているという。その後この事故で重い罪を受ける事はなかったが、その時やって来た警察が「女はこれで何人目だ?」と話していた。
  431. 822『優しい人』になりたい。僕は努力する事で優しさが身につくと信じている。自然や動物の写真を見て、笑顔を作り感動を述べる。子供などか弱き者にも笑顔で穏やかに接し、困っている奴らには手を差し伸べてやる。どいつも皆汚い笑顔で僕への感謝を口にする。どうだ?僕は優しくなれてるだろ?
  432. 821曇りの日は気が滅入る。仕事中、窓の外をボンヤリ眺めていると、向かいの建物の間を大きな何かが横切った。しっかり確かめようと目で追うと、それは民家の高さを超える巨大な白く半透明の女。女はゆっくりと移動していく。あぁ、いつも曇りの日に見えてた物はアレだったんだ。胸の霧が晴れた
  433. 820夜になっても息子が帰らず、その友達の親からも子供達が戻らないと連絡が。嫌な予感。案の定子供達は神社にいた。だが息子だけがおらず誰もが知らないと言い、更に私を「先生」と呼ぶ。この子達は…私の“今”の生徒達だ。息子はずっと昔この神社で…。未だ過去にいる私は、神社に火をつけた
  434. 819バーで一人飲んでいると、女性が一人でカウンター席に。一人?と声をかけると、彼女はグラスを見つめたまま「いいえ」と言った。待ち合わせかと訊いてもいいえと答えるが、彼女は先程からずっと一人だ。誰がいるの?と訊くと、彼女はグラスの中の赤い塊を指差し「元彼とその家族」と言った。
  435. 818この旅館では海での自殺者を多く泊めたが、若年性認知症の母親と病を患う息子の親子も。翌日には息子は母と心中するつもりだろう。二人は食事に満足し就寝。だが翌朝、母は一人浜辺で遺体に。残された息子は闘病するも虚しく、後に亡くなった。時々笑顔で現れる母親は、それを知らないだろう
  436. 817この旅館に泊めた海での自殺者の中には知り合いも。その日訪れたのは、以前雇っていた女性とその娘。夫の遺灰を海に流しに来たと言う。だが二人は昼食を終え海へ行ったきり、戻らなかった。私は事前に彼女らの決意は動かせないと感じていた。時々、浜辺で妻と娘を探す灰色の男性が目撃される
  437. 816またロープが万引きされた。ある日万引きの現場を発見、犯人は女子高生だった。こんな物どうすんの?と問い質すと「万引きが流行ってる」と答えた。後日女子高生達が頻繁に首を吊っていると知った。TVで某コメンテーターが「今、女子高生達は自殺ブームを作ろうとしている」と話していた。
  438. 815鉛筆の先端を見つめ、このまま頭に刺したら死ねるのかな?とぼんやり考えていると、「ダメ!鉛筆で自殺なんかしちゃダメ!」とクラスの女子がこちらに向かい大声で叫んだ。皆がざわつく。えっ、思考を読み取った?その事がきっかけでクラスで居場所がなくなり、今、本気で鉛筆を見つめている
  439. 814突然部下が「俺を殺してください!」と泣きついてきた。なだめても落ち着く様子はなくひたすら殺してくれと喚き、他の社員が部下を引き離してくれた。すると部下は「お前のせいだからな!」と私を罵り、舌を噛んで死んだ。部下のPCが黒い煙を上げている。こいつ、ちゃんと仕事してたのか?
  440. 813「デカイ虫を見に行こう」と友人に誘われ、遠く山奥の薄暗い場所までやって来た。すると友人は地面から土を取りそれを食べ、「ホラあそこに見えるぞ!お前も食え!」と言った。渋々と舌先で土を舐め取り飲み込むが、虫など見えない。文句を言おうと見た友人の頭に、巨大な虫が吸い付いていた
  441. 812急に雨が降り出し駆け足で目的地へ向かう途中、すれ違う人達が皆赤い傘をさしその場で佇んでいる事に気づいた。何だ?と思い振り返ると、ギョッとした。その者達が全員こちらを向き、真っ赤な目から血の涙を流している。慌てて逃げようとして少女に接触。少女に赤い傘の先端で目を突かれた。
  442. 811彼女が強姦され殺された。俺は犯人を見つけ出し殺すつもりだ。普段は不便で使わないが、俺には『超嗅覚』という犬にも勝る能力がある。彼女の遺体から嗅ぎ取った精液の匂いを辿り突き止めた犯人は、彼女の同僚だった。俺は奴の局部を少しずつ切り取り、殺した。が、新たな強姦殺人の報道が…
  443. 810すぐ来てくれと友人から電話があり、彼が住むアパートに駆けつけるが、姿がない。途方に暮れていると、ふとテーブルの上に落ちている1本の長い髪に目が行った。友人に彼女はいない筈。おもむろに髪を摘み上げる。美しい髪だ…。そのあと俺は友人の事を一切思い出さず、その髪に夢中になった
  444. 809夜帰宅中、背後に近づく「あぁぁ…」という女のか細い声に振り返ると、髪の乱れた女が地面から少し浮き滑るようにこちらに迫って来ている。恐怖で腰を抜かすと、女は途中である民家に入って行った。…助かった…。後日その家では葬儀が。ある晩また女と遭遇。逃げたが、家の中までついて来た
  445. 808最近夜間に不審者が目撃され、この区域の大人達で見回っていると、木刀を振り回す男を発見。すると男もこちらに気づき「近寄るな!」と怒鳴った。が、直後に壮絶な絶叫を上げ、バキッと海老反りに折れ血を吐いて死んだ。えっと…何がどうなってる?あの男が不審者?何かの足音が近づいて来る
  446. 807「顔色悪いぞ」と同僚が声を掛けてきたが、俺はコイツが嫌いだ。一緒に働くこんな小さい会社の社長令嬢と結婚したくらいで、まるで部下でも気遣うように俺を扱う。調子に乗りやがって。ある日社長が死に、同僚が後任。新社長夫人は最近オカルトにハマってるらしい。んな事より、体調が悪い…
  447. 806えっ俺の恐い体験談?正直微妙だよ、聞く?わかった…。有名な都市伝説『ターボばあちゃん』ってヤツ。以前そんなを見たんだよ。けど少し違う点がある。高速移動するババァだけど、実はその下にジジィがいて、ババァを肩車してすっげぇダッシュをしてんの!つまり早いのはジジィだったって話
  448. 805大型連休を利用し子供とキャンプに。キャンプの醍醐味は極力現地の自然の物を利用する事。子供に燃えそうな物を集めさせ火を起こす。すると子供が火に向かい合掌し低い声でお経を唱え始め、立ち昇る黒い煙が子供の口に吸い込まれて行った。以来子供の様子がおかしい。あの時何を燃やした…?
  449. 804向かいのアパートの一室は事故物件らしい。家賃も俺の部屋より大分安く、住んでる若い男にも何事もない様子。 不公平だ。俺にはあっちの部屋で女が睨んでるのが見えてるし、更に呼んでる気がする。ホラ、気付けばまた俺は向かいのアパートで刃物を握ってるし。俺の部屋こそ安くするべきだろ
  450. 803父が川で自殺し、以来そこでは男の霊が目撃されるように。父の自殺の理由を知らない私達家族は、霊能者の力を借りて父から直接聞く事にした。が、川に来るとすぐに霊能者は取り乱し「これは罠だ!ここにあるには別の男の念!そう、そいつの!」と兄を指差した。兄はスタンガンを取り出した。
  451. 802安旅館に宿泊。深夜、廊下で何かの這いずる音が。暫くするとウワッ!と男の声があがり、廊下に出ると旅館の主人が血相を変え走り去って行った。翌朝、主人は建物脇にある犬の墓に手を合わせていた。え?あの這いずる音は、犬の大きさではない気が…。そこに埋まっているのは、本当に犬…?
  452. 801夫が床に何かを落とした。御守り?どうしたの?と訊くが、夫はそれを拾い黙って自室に入ってしまった。その晩金縛りと共におぞましい姿の女が現れた。えっ何?まさか夫が?御守りはこの為?どうして?どうしていつもそうなの?あなたは…いやお前は、私を不幸にしかしない!死ね!死に腐れ!
  453. 800今やネットを繋げれば、容易に無数の怪談が手に入る。多くの怪異が科学的に実証されたが、人は新たな怪異を求め、自ら闇へと踏み入る。百物語による恐怖を知らない世代。ある若者達は心霊スポットと呼ばれる場所で百物語を行ない、うち2名が直後に消息を絶った。人は何度でも過ちを繰り返す
  454. 799家族で食卓を囲み、無表情のまま向き合っている。食べないの?と訊くと次の瞬間、家族全員が皿の上の食事に顔を埋め突っ伏していた。が、瞬きをすると先ほどと同じ無表情で向き合っている光景。瞬きの度に目の前の光景が切り替わる。私は記憶と現実を行き来し、死を受け入れられずにいる…
  455. 798「お前の母ちゃんさ、毎朝家の前で塩撒いてるのな」「だったら何だよ」「いやさ、出ちゃってるのかなーって思うじゃん、幽霊とか」「出てるんだよ」「えっマジ!?」「マジ。でもさ、なんか変態っぽいんだよそいつ」「お前の母ちゃん美人だもんな」「ブッチャけるけど、あれ父ちゃんだから」
  456. 797ある音楽家が、集めた〈霊の声〉を使用し楽曲を作った。曲は話題となり多くの者が耳にしたが、トラブルが多発、発狂者や自殺者まで続出し、規制された。だが一度ネットに浸透した曲は、通信機能を持つあらゆる機械から勝手に流れ出す。音楽家は何者かに殺されたが、事態は何も解決していない
  457. 796僕には学校の天井を這い回る男が見える。男は皆の様子を静かに見ている。ある日の授業中、男は天井で“逆さ”に立ち上がり、生徒Aの首を鎌で刈った。が、Aには何も起こらず、男は満足そうな笑顔で去って行った。その後もAには何も変化はないが、川で男の頭が見つかった。訳がわからない…
  458. 795妻が外出し自宅に一人で居ると、二階から物音が。誰だ!?と叫ぶとガシャン!と窓を突き破り、何者かが庭に落ちてきた。それは近所のAさんで、首が折れガラス片も刺さっており、こちらを睨んで死んだ。警察の現場調査が入ると、妻の部屋から近隣住人の名が貼られた藁人形が幾つも出て来た。
  459. 794大学の卒業式は、曽祖母が戦後貧しい時も手放さなかった着物を着用。友達と写真を撮ると、私の横に女が写り込んだ。祖母に話すと、着物は曽祖母が親友から譲り受けた物だと語り「ずっと大事にしてるから嬉しくて現れたんだね」と言った。が、私はそれを信じない。女はそんな表情をしてない…
  460. 793骨折で入院。夜、微睡んでいると突然看護師に「Aさーん!Aさーん!」と声を掛けられ、医師による電気ショックで気絶。目を覚ますと静かな病室。看護師に訊くが夢ですよと素っ気ない。だが毎晩夢で臨死を体験する。流石に辛い。すると他の病気が発覚し、入院は延長。もう死んでしまいたい…
  461. 792父の死後、花屋を引き継いだ。父曰く、人と花は深い関わりがあり、時として死者が花を求め現れると言う。それは時期により、個人だったり集団だったり。厄介なのは、孤立無縁となった死者が現れた場合。花を与える事は『供える』と同意。憑いてしまうので、可哀想だが無視するしかないらしい
  462. 791父の花屋を引き継いだ。父は生前、人と花の関係について多くの持論を語っていた。人が想いを表現する際、多くの場で花を用いる。《花言葉》など、人により意味付けされたものがあるくらいだ。花は生者だけでなく死者とも深い関わりがある。時として死者は花に何かを求め、店に現れると言う。
  463. 790幼い子供が「殺す」「死ね」などの言葉を使うように。他所の子の影響で覚えて来たのだろうが、いくら注意しても直らない。ある日全く理解できない言葉を口にするようになり、誰の真似かと訊くと「お空から目の大きい人達が来て、よくお話ししてるよ」と。…、どこに相談すればいいのだろう…
  464. 789ある女子生徒が放課後ピアノを練習中に壊してしまい、気が動転し自殺。その生徒の霊が出ると聞き、霊感のある私は確認に行くと、音楽の先生がいた。先生は「彼女、本当に上手だった…」と嗚咽し語った。そうか。ピアノ破損の原因は先生の嫉妬の念だ。そして生徒をここに縛り付けているのも…
  465. 788結婚し新居に越して来て荷ほどき中、夫の荷物の中に見慣れない指輪が。夫に訊ねると躊躇しつつ「死んだ昔の彼女の物」と言う。そんな話は初めて聞くし、事情は事情でも正直気分が悪い。以来喧嘩が増えると毎晩女が現れ「◯君と幸せになれ…」と凄む。夫への愛は冷めたが、離婚も出来ずにいる
  466. 787一人暮らしの部屋の壁にシミが。指で触れると急に自分の事が愛おしくなり、鏡に映る自分を舐めまわし、衝動的に鏡を激しく叩き割った。そして殺意が湧き、割れた鏡の破片で自分を刺そうとした所で、ドアを叩く音に我に返った。出ると音を聞いたと言う心配顔のお隣さん。あ、この人の感情だ…
  467. 786《8人目》むせ返る程の腐敗臭で目を覚ました。何かの隙間から細い光が入り込むだけの薄暗い場所。起き上がると首に痛みが走り、血を吹き倒れた。《13人目》足元が黒く濡れている。一歩踏み出すと、腹を切り裂かれた。《21人目》腐敗臭と死体の山、そして何かの気配。瞬時に絶望を悟った
  468. 785椅子を引き転ばせる悪戯がクラスで流行。僕も何度もやられてるが、無益な報復はしない。唯これ以上被害がないよう仏壇を拝んだ。ある日、また椅子を引かれた。が、僕は転倒せず宙に腰をかけている。皆はオォ!と歓声を上げたが、僕には見えた。四つ這いで椅子になる必死な表情の爺ちゃんが…
  469. 784両親が死に、中学生の私は一人残った。私を引き取ろうとする親族はいたが拒否。何故なら、両親の死が〈怨念〉によるものだと知っていたから。親族を巻き込む事はできない。が、次々と親族は死んでいった。両親との血縁関係者達。私は心の何処かで、『根絶やし』を願っているのかもしれない…
  470. 783女の首なし遺体が続出、一人の女性が警察に駆け込んだ。女性は顔を薬品で潰されており、ある男に監禁され何度も強姦されたという。その際、女性の枕元には男が気分で選んだ『女の頭』が置かれていたらしい。男の住居では幾つもの被害者の頭を発見。男は薬品を被り、全身溶解し死亡していた。
  471. 782上司が自殺。皆に慕われる良い人だったが、奥さんを亡くした事で、彼の信頼は崩れた。初めは皆が同情したが、仕事に支障が出始めると流石に容認できなくなった。鬱の傾向にあったのか、彼は仕事中に「妻が呼んでる」と言い、窓から飛び降りた。皆は「これで良かったんだ」と口々に言った。
  472. 781ある日突然全ての人が死人に見えるように。そして死人となった友人が「元気?」と話しかけてくる。馬鹿げた話だ。相手は実際に死んでる訳ではないと思う。だが相手の表情が死んで見える為、感情が読めない。そのせいで遂には皆に愛想を尽かされ行き場を無くし、死人のような生活を送っている
  473. 780心霊専門の写真家として、彼らの様々な『想い』を撮影して来た。その中には痛みや怒り、恨みといった〈負〉の感情も幾つかあった。写真の中の彼らは恐ろしい形相。残念な事に写真を見る者は単純に怖がり、面白がる事が殆どだ。私は非力さを思い知るが、時として現場に慰霊碑が立つ事がある。
  474. 779私が心霊専門の写真家になったきっかけは、父にある。病が原因で突如意識不明になり、そのまま息を引き取った。いよいよ遺体を火葬する直前、私は父の死に顔を撮影した。できあがった写真に写っていた父は、何故か少し若く見えた。それを見た母は号泣。父は最期の想いを『写真』で伝えたのだ
  475. 778私は心霊専門の写真家。山や海等、目撃情報があればどこへでも撮影に行く。だがやはり簡単に写せるものではない。だから予め、言葉をかける。「私は写真家、写真のプロです。今の貴方の真実の姿を撮り、伝える事ができる」その言葉に応じてくれた者は、写真に写る。その多くが、どこか儚げだ
  476. 777俺のラッキーナンバーは7。『ラッキーセブン』だ。俺は7のつく日時に産まれ、高校の受験番号も7の連番。当たった宝クジも7が多く付いてた。これまで何かあれば、そこには《7》があった。だから俺は7のタトゥーを入れ、手と足の指も7本に揃えた。お陰で俺の人生は順調!…の筈なんだ…
  477. 776「助けて!」と聞こえ駆けつけると、そこは空き地。誰もいない?よく見ると地面から伸び左右に揺れる手が。が、おかしい。声を発する顔が見当たらない。これは人間ではないと考え、その場から逃げた。翌日、空き地から遺体が掘り出された。死後半日。あの時逃げた自分に、今でも苦しんでいる
  478. 775その家からは子供達の声が聞こえ、出生届けのない無戸籍児童の疑いがあり確認に。出て来た中年の女性は何の抵抗も見せず、家の中に通してくれた。すると奥から大きめの玉が幾つか転がって来た。笑い声が聞こえる…。玉に見えたそれは子供の頭。女性は「こんな子しか産まれなくて…」と泣いた
  479. 774内装業で某アパートの部屋の壁紙の張り替え。ススけた壁紙を剥がすと、地の壁に人型のシミが滲み上がっていた。洗剤を使っても落とせず、仕方がなくその上から新しい壁紙を貼った。その晩、何かを掻きむしるような音を聞いた。気になりアパートに行くと、壁紙は剥がされシミも無くなっていた
  480. 773その石階段には子供が現れると言う。昔そこで転落死した子だろう。そしてそこでは同様に転落者が続出。子供の仕業か?検証の為訪れると、本当に子供は現れた。「落ちないでね…」と子供は悲しげに言う。恐らくこの子は事故を憂いている…。と思った瞬間「落ちたら負けね」と突き飛ばされた。
  481. 772招かれて行った友人の実家にはあちこちに御札が貼ってあり、正直気味が悪い。けど友人は笑顔で何でもないと言う。暫く友人の母親とも話しをしていると、母親は会話の最中に宙を目で追い始め、まるで蝿でも仕留めるように御札を壁に貼り付けた。そして何事もなかったように話を続けている…
  482. 771僕が好きなコには既に彼氏が。けどその男には悪い憑き物がおり、彼女を取り込もうとしている。僕は彼女を救いたいが、憑き物が邪魔で彼らに近づく事ができない。ある日彼女は完全に憑き物に覆われそうに。考えた結果、僕はボウガンで男を殺すと憑き物は消えた。人殺しになったが、悔いはない
  483. 770僕は花粉で発作を起こす重度のアレルギー症持ちだ。その為常にガスマスクをし、通常の食事を摂る事もできない。更に自宅の部屋を防花粉仕様にし、隔離されたような生活を送っている。部屋から見える景色は、僕にとっては汚染された世界だ。人は全員毒をまとって歩いている。家族でさえも…
  484. 769ナンパした女が友達と合流したいとやって来たのは、ラブホ。この女、結構遊んでるな。俺は3人でのお愉しみを期待し友達がいると言う部屋に入るが、その姿はない。すると女は俺をベッドに横にさせ、「アイツ、毎日私にも死ねってうるさいから、代わりに一緒にいてあげて」と首を締めてきた。
  485. 768夢を見た。寝ているとベッドの下に気配が。怖くて下を覗く事もできず、身動きも呼吸すらもままならない。どうしよう…。するとソレはベッドの下から這い出し、立ち上がってこちらに顔を近づけてきた。ソレは“自分”だった。思わず悲鳴をあげると「寝てる時くらい体を寄越せ」とソレは言った
  486. 767食事中、妻が突然怒り出した。「今まで我慢してきたけど、箸の持ち方がおかしい!異常だ!狂ってる!」その剣幕に何も言い返せずにいると「お前は人間じゃない!低俗生物だ!」と俺を罵る。もう箸の話どころじゃない。結局その後離婚。自信を喪失した俺は人の世を捨て、山で物ノ怪と暮らした
  487. 766友人が山の心霊スポットから戻らなかった。何を思ったか友人の両親は自ら子供を探しに山へ行き、同じく戻らなかった。親族の要請で警察による捜索が行われると、友人は発見されたが気が触れており、野人と化し両親を食い殺していた。その昔、そこでは猿を使用した儀式が行われていたらしい。
  488. 765豆大福が大好きだ。豆の仄かな塩っぱさと餡子の甘さの絶妙なハーモニー。頂きます、と大福を口に運ぶと豆が蠢き、二つに割れ『眼』が現れた。ギャッ!と悲鳴をあげ大福を放り投げる。見ると全ての豆が眼を開き、瞬きを…。気持ち悪くて丸めた本で叩き潰すと、もっと気持ちの悪い事になった…
  489. 764駅のホームで電車を待っていると、向かいのホームで女が爪を噛みながらこちらを見ている。青白い顔に真っ赤な唇のその女、不気味な上に何かがおかしい。ふと気づいた。女は爪ではなく指をかじり、血で唇を赤くしていたのだ。そして女はニンマリ笑うと消えた。以来女は電車内ですぐ横に立つ…
  490. 763季節も少しずつ暖かくなり、今日は天気も良く穏やかな日だ。折角の休日、妻と子供を連れ遊園地に行こう。少し遅い出発だが、のんびり行くのも悪くない。遊園地の駐車場に到着すると、走って来た子供を撥ねてしまった。泣き喚く子供の親を見て何故か激しい苛立ちを覚え、その親も轢き殺した。
  491. 762スマホをうっかり泥の中に落とした。けどこのスマホは濡らしても壊れない筈。近くのスーパーの手洗い場で石鹸を使い泥を洗い流すが、スマホを洗った水に、土色ではなく墨のような黒が混じっている。黒はどんどん出て、暫くして出なくなった。後日、何となく人間関係がスッキリした気がした。
  492. 761取引先と電話で会話の最中、相手が全く返事をしなくなった。だが何かをしている物音は聞こえる。暫く待っていると「もしもし…」と低い声。大丈夫ですか?と尋ねると、相手は静かな口調で「もう、この会社で生きてる奴はいないよ。ここと関わりがあるなら殺しに行くから、待ってろ」と言った
  493. 760少女は着ている服をハサミで切り刻み、自分の体を傷つけてもそれを続けた。更に髪を滅茶苦茶に切り、美しかった彼女は無残な姿に。だが彼女は「これでお友達になれるね」と身なりの貧しい少女に微笑んだ。それを見つけた母親は「ダメ!」と叫び、「死んだ子とは友達になれないの!」と言った
  494. 759小さな居酒屋を経営。男二人が喧嘩を始め、店への被害を案じ仲裁に入ると、ビール瓶を頭に受け気絶。目を覚ますと男達は店中に油を撒き、火をつけようとしている。慌てて床に転がる割れた瓶を拾い男達を追い払うと、一緒に黒い何かが去って行った。とりあえず、埃を被った神棚を綺麗にした。
  495. 758小さな居酒屋を経営。ある晩、誰もいない席に白いモヤが揺らめいていた。厭な感じはなかったので酒をグラスに入れ置いてやると、暫くしてモヤは消えた。後日、ある老夫婦が来店。唐突に謝礼金を差し出され訳わからず断ったが、「息子が穏やかに逝きました」と二人は深く頭を下げ、消えた。
  496. 757小さな居酒屋を経営。痴情のもつれか、若い女が一人で号泣。女は散々酒を呷り、挙句潰れてしまった。閉店後床にダンボールを敷いて女を寝かせ、念の為警察に連絡。すると黒い影が女の口に手を入れ裂こうとしている。オイ!と叫ぶと影は消えた。暫くして女は警察が保護。その後の事は知らない
  497. 756小さな居酒屋を経営。昔常連だったAは、悪い奴ではなかったが口調がコロコロ変わり、一つのお題に対し幾つもの意見が飛び出すので、まるで複数人と話しているようだった。そんなある日、Aは体がバラバラにちぎれた状態で見つかった。だが一番驚く事は、暫くはそれぞれが動いていたとの話だ
  498. 755家族と自宅で祖母の最期を看取った。祖母は私に「お前の本当の母親は…」と言いかけ、事切れた。ふと見た母の顔は怒りに満ちていたが、私に悲しい笑顔を見せ、首を横に振った。すると父がもう耐えられん!と母に飛びかかった。母は父の首をもぎ取り、「行こうか…」と血塗れの手を差し伸べた
  499. 754家主の死後、親族の意向で取り壊しが決まった家。その家の外塀に顏を近づけ、まるで説教のように一人で喋る老人が度々見られていた。老人が立つ位置の塀の反対には黒く大きなシミが。重機で塀を崩すと黒い煙が上がり、すぐに消えた。後日その老人は死亡し、発見時には黒い煙が目撃されている
  500. 753顔面が縦に裂けた長身の女『ザクロ女』は手刀で人の頭をカチ割り殺す。女の姿を一度目にした者は命を狙われる事から、目撃者は常時ヘルメットを着用した。だがその目撃者もまた遺体で見つかる。頭部への損傷は無かったがヘルメットは凄まじい力で割られ、その衝撃で首が体に食い込んでいた。
  501. 752身長約2mで顔面が縦に裂けた通称『ザクロ女』という女が存在する。女は場所や昼夜を問わず神出鬼没に現れ、目にした人物の頭を手刀でカチ割り殺す。目撃者や何らかの方法で撃退した者もいたが、その後彼らも頭を割られ遺体で発見された。女の姿を見てしまった時点で、命を狙われるようだ。
  502. 751彼女が浮気をしたから殺してやろうと思い、刃物を忍ばせた。俺は相手が誰だかを調べ、既に住居も知っている。呼び鈴を鳴らし出て来た男に刃物を突きつけ部屋へと押し入る。そこに彼女が下着姿でいた。「殺してやる!」と叫ぶと、男はこう言った。「いっそ殺してくれ!この女は狂ってる!」
  503. 750廃屋ツアーから帰宅。その晩から変な夢を見るように。ある家の娘として家族と食事中、突然発作を起こし死亡した夢。次の日は老人になり、年老いた奥さんに介護されながら死亡した夢。廃屋で過去に起きただろう夢を、毎日誰かの記憶を廻るように見ている。そして本来の自分を忘れてしまった。
  504. 749体調が悪くて寝込んでいると、微かに声が聞こえた。耳を澄ますと「シネ!」「シネ!」と聞き取れた。怠い頭を起こして声のする方を見ると、小さな鬼同士が文具を手に取り戦っている。なんだアイツら!2匹とも凄まじい文具さばき。見ていて興奮し、いつの間にか体調の悪さが吹き飛んでいた。
  505. 748幼い息子が泣くのでどうしたの?と訊くと、「怖いママがいた」と言う。私はここにいるし、『怖いママ』とはどう言う事か。別の日また「怖いママが」と息子が泣きながら、今度は窓を指差した。見に行くと、外には髪型や化粧、服装まで私の真似をした、実家にいる筈の『母』が睨んで立っていた
  506. 747人気のファストフード店の長い行列に並ぶ。ようやく席に着き食事をすると確かに美味しかったが、期待し過ぎて正直物足りなかった。食事を終え暫く街をブラブラしていると、先程の店で客として見かけた人がおり、突然腹が破裂し死亡した。街では次々と同様の死亡者が。まさか、あの店が…?
  507. 746不動産屋の担当者の案内で部屋を見学。だが何処も妙に気持ち悪く、事故物件かと訊くがそれはないらしい。すると担当者は「一応こんな物は持ち歩いてるんですけどね」と御札を取り出した。担当者には見えてないようだが、御札には長い髪がまとわりついていた。何処で手に入れた御札ですか…?
  508. 745風が強い日、出勤途中で目にゴミが入った。目が痛くて仕事も集中できない。痛みは引かないまま無理やり眠って翌朝、鏡を見ると目が黄色く変色し、薄っすらとブツブツが。それは爬虫類の鱗のようだった。病院に行くと、目にトカゲの手足が生えているとわかった。どうなってしまうのだろう…
  509. 744授業中、先生が突然「おい、何立ち上がってるんだ?」と言った。だが立ち上がっている生徒はいない。皆がキョトンとする中、先生は「よせ!」と大声をあげると窓の方に駆け寄り、そのまま窓から落ちた。命に別条はなかったが、木の枝で顔と目をエグられ退職。別の先生もまた「おい」と言い…
  510. 743現地直輸入の宝石店に就職。仲介が無い分他店より数段安い価格で宝石を売っている。ごく稀にだが、かなり希少価値のある宝石が入って来る。だがその宝石の殆どが闇ルートから流れて来た物だ。その過程で幾つもの命が奪われている。そうとは知らず購入して行った者は、大体短命に終わっている
  511. 742部屋の窓から見える木に不思議なモノを感じ、写真を撮ると、枝に留まる肉眼では見えない鳥が写り込んだ。ある日呼び鈴が鳴り、出るとそこにはやや大きな鳥が。鳥は「我々を見つけた貴方も、本来は私と同じ姿をしている筈」と言い、顔の肉を散々啄んだ挙句、「違ったか」と吐き捨て飛び去った
  512. 741チカチカと明滅する街灯の下、少女が立っていた。だが少女に気づく者はいない。この少女もまた、今にも消えて無くなりそうだった。足元には小さな花が。すると通行人の男が吐いた唾が花にかかった。それを見た少女は、最期に悲しい目をして消滅した。その後すぐに花は枯れ、街灯も消えた。
  513. 740朝、目を覚ますと娘がいなくなっていた。家中や近所を探して回ったが娘は見つからない。家に戻り頭を抱えていると、電話が鳴った。出るとザーというノイズ音の中に「車のトランク…」と娘の声が。慌ててトランクを開くと、古い人形が入っていた。夫がここに〈娘〉を隠したんだ。許せない…
  514. 739ある男はコンビニ内を一周回って何も買わずに出て行く。特に害はないのだが、それを毎日見ている従業員としては正直気分が悪い。ある日品出し中に男がやって来たが、何かを呟いている事に気づいた。そして出て行く間際「今日は何もいない…」と言った。えっ?「今日は」って…何かいたの?
  515. 738幼稚園の卒園式。運動場に用意された保護者用スペースでビデオを構える。子供達が入場すると、ビデオ撮影をしている保護者達がざわついた。カメラには全ての子供達の肩に乗っている『手』が映り込んだ。保護者達が騒然とする中、装束姿の男性が現れ大幣を振りかざすと、手は静かに引っ込んだ
  516. 737私や知人を不快にさせた青年がいる。彼に悪気は無いのだろうが、私達の気持ちを察したのか一旦姿を消した。だがすぐにまた現れ、平然とした様子を見せる。反省どころか罪の意識すら無かった…。更に彼は若干整形し「初めまして」と現れた。その後彼は大物になったが、私は彼がトラウマだ…
  517. 736ある団地での事件で、売るだけの為に産まれた子供達。彼らは様々な形で売られて行ったが、中でも恐ろしいのは『食材』として売られた事だ。世界には一部で人間の赤子を好んで食する者がいる。そうして奪われた命は、事件で殺された母親の念が残る団地へと戻り、更に〈恨み〉を増大させるのだ
  518. 735ある事件で恨みの巣窟となった団地から逃げた者は、誰もが事件に関して口を閉ざした。だがその者達も次々と自殺。一人が自殺未遂で病院に搬送中、「何も聞いてない!何も知らない!」と叫んだ後に痙攣、泡を吹いて絶命した。彼らもまた、団地に巣食う恨みの呪縛から逃れる事ができない…
  519. 734その団地では次々と人が死ぬ。住人は怯えたが、低所得者が多く賃料の安いその団地を出る者は少なかった。一体何が起きてるのか。それはある男女の自殺で発覚。男女は部屋に女性達を監禁、売る為の子供を産ませ、果てに女性を殺していた。悲劇に誰も気づけなかった団地は、恨みの巣窟となった
  520. 733スマホをイジりながら時々俺を見る彼女が吐いたタバコの煙が天井へと上がる。俺は煙をボンヤリと目で追うと、その煙は紫色に見えた。今日の彼女には優しさが必要だ。彼女の気持ちは煙の色でわかる。優しい言葉をかけると彼女は急に泣き出し、俺の目を見て「あなたの死が見える」と言った。
  521. 732ある時、妹がガソリンを浴び自身に火をつけた。妹は火達磨になったが父に消火され、命を取り止めた。だが全身に酷い火傷を負い、元の姿は見る影もない。妹曰く、自分の姿が死んだ母に見え、衝動的に火をつけたらしい。父は妹の『若さ』を愛していた。母は父に〈老い〉を罵られ、自殺したのだ
  522. 731部室には使われていないロッカーがある。そのロッカーに道具を入れると、必ずその道具で怪我をしてしまうからだ。俺は嫌いな先輩の道具をコッソリ入れてやった。先輩は道具を探し回り、ロッカーで発見すると怒り狂った。その時先輩は怪我をしたのだが、俺も巻き込まれ再起不能の怪我を負った
  523. 730母が教えてくれた。僕は元々双子で、右手が弟と結合していた。弟は産まれた時には死んでいたけど、弟の物でもある右手は僕に残った。それを聞いて僕は納得した。時々右手が話しかけてくる気がしたんだ。言っている事はわからないんだけど、鬱陶しくて、僕はわざと事故を起こし右手を切除した
  524. 729父が『失敗しない除霊』なる本を買って来た。曰く、霊能者に除霊をお願いすると金がかかるし、一回で成功するとは限らず、また本物の霊能者かどうかもわからないから自分でどうにかするという。でも父は除霊がうまくいかず、結局高い本を買い漁っている。そもそも貴方に霊感なんて無いでしょ
  525. 728夕方、バイトを終え帰宅する途中、女の泣き喚く声が聞こえてきた。だが他の人達は我関せずといった様子。何かあったのだろう程度で素通りしようとするが、どこまで行っても泣き声が聞こえてくる。少しでも聞こえないようにとパーカーのフードを被ると、中からピアスが落ちた。えっ誰の…?
  526. 727僕の魂は水の中を漂う。目を瞑り、そんな想像をする。仰向けになれば、水面で光が乱反射する美しい光景。すると誰かが僕の手を握り、沈みだした。その手の滑らかさは恐らく女性だ。どこまで沈むの?と尋ねるが、女性は答えない。女性の正体が〈絶望〉だと知ったのは、僕が死を決めた後の事だ
  527. 726部屋は暖かいのに背中が寒い。上着を羽織ろうと立ち上がり鏡の前を通ると、背中に張り付く若い男が映った。恐怖に震え「何…?」と訊くと、「貴女の背中、温かい…」と男は言った。え…なんか嬉しい。…じゃなくて寒いし!「もう少しだけ…」と憂いの眼差しで私を見る。う…少しだけだぞン♡
  528. 725赤ん坊がマンションの窓から投げ落とされた。犯人である母親は酷い鬱状態で会話もままならない。数日後、また別の建物からも赤ん坊が落とされた。その母親が捕まった時には錯乱状態で、「全ての恐怖から子供を解放したのよ!」と叫んだ。事件後、児童相談所の職員が退職、宗教を立ち上げた。
  529. 724同僚のAが連日無断欠勤し、上司の指示でAが住むアパートへ。すると部屋の扉の前に女性が座っており、「Aのお知り合いですか?」と声をかけると女性は顏をあげ「A君、どこに行ったのでしょうか?」と泣き出す。僕も探してるんですと答えるが、以来女性は「A君どこ…?」と僕に憑きまとう
  530. 723大手企業のテレビCMにノイズが入るようになったのは、ある社員が死んでからだ。CMは別の物に差し替えてもノイズが入る。ネットでは『殺』の文字が見えると騒がれ、企業もCMを一時中断。死んだ社員が誰かを殺す、または殺されたなど憶測が飛ぶ中、企業は衰退。役員が次々と自殺した。
  531. 722ママはいつも僕に「ガッカリさせないで」と言う。僕は頑張ってるつもりだけどママの理想とは違うみたい。僕はすっかり自信を無くし、もっと叱られるように。するとある時ママが「私の何が悪いの!?母親失格なの!?」と泣く。僕にはよくわからないけど、パパが「死んでしまえ」って言ってた
  532. 721穏やかな休日、珈琲カップを片手に外に出る。熱い珈琲をすすっていると、目の前を黒猫が通った。妙に不吉さを覚え部屋に戻ると、そこには黒猫が。どこから入った?追い出そうとするが部屋中を逃げ回り、猫が珈琲カップを倒した。床に広がった珈琲が真っ赤に染まり、中から赤黒い猫が出て来た
  533. 720消えてしまいたい。死にたいのではなく『無』になりたいのだ。誰かを傷つける事に意味はない。寝ていても意味がない。生まれてしまったら逃げ場がない。生きたくない。死にたくない。もう意味はいらないから放っておいてくれ。……寂しい。一人になりたくない。生きたくない。死にたくない…
  534. 719その喫茶店には画家や作家が集まり、その為画材や本が売られている。不思議な事にその店に足を運んだ者は『泉』を題材に作品を作る。店主にその事を話すと、不思議だねと窓の外に目をやる。ふと気づいた。店主と話をしていると、頭に泉の映像が浮かぶのだ。店主と泉の関係に触れる者はいない
  535. 718オカルト好きで心霊スポットに行ったりするけど、まさか本当に取り憑かれるなんて思ってなかった訳よ。大概皆そうだろ?痛い思いをするまでやめないんだよ。ネットを通じて一緒に行ったAさん、行方不明になったのに毎晩電話して来るんだ。え?信じない?まぁ止めねぇよ。身辺整理はしとけよ
  536. 717愛し合ってる筈なのに冷たくするから、一緖に死ぬ為に彼を刺した。最後に彼を感じたくて、彼の胸に耳を当てる。トク…トク…と心臓が5回鼓動し、動かなくなった。やっと素直になってくれた。最後の5回の鼓動で『ア・イ・シ・テ・ル』と言ってくれた。でも正直、今ので冷めたわ。一人で死ね
  537. 716ベランダで洗濯物を干していると、上空から飛んで来る何かを発見。それは地面に落下しドスと鈍く跳ねた。よく見ると、人の頭だ…。するとまた頭が飛んで来て、今度は歩行者の頭部に激突、歩行者は倒れた。暫くして救急車がやって来たが落下した頭は見つからず、倒れた歩行者にも頭がなかった
  538. 715私は全盲として生まれたが、成長するにつれ視界の中に小さな光が見えるように。親や医師は驚き、視力が宿る事を期待した。だが私がいくら成長しても光は光のまま、他には何も見えない。やがて年老いて死の淵で視界は完全に光という『闇』に覆われた。〈死後〉に何を期待すればいいのだろう…
  539. 714車の事故を目撃。運転手は死亡。その際に飛んできた破片で顔に傷を負ったが、傷は治らず痒みも消えない。傷の周辺をボリボリと掻いていると、「出してくれ…」と声が。えっ何?すると傷口から何かが飛び出そうとしたので慌てて手で塞ぎ、絆創膏を貼った。以来、呻き声に悩まされ続けている。
  540. 713子供の頃、先生が『躾』だと言い、僕は手足を結ばれプールに投げ込まれた。今であれば社会問題になるが、当時は教育の一環だとされ親達も目を瞑った。その時僕は水中で沢山の顔を視た。死者は出ていないが水中に皆の〈念〉が残っている。僕達はどこに何かを残したまま、大人になっていくんだ
  541. 712卒業式の日、私達はある事を約束し、その後バラバラに別れ合わなくなった。だが誰かが話してしまうのではと不安に駆られる。現に二人が、恐らく不安に耐えられなかった誰かに殺されてしまった。私達は好奇心からある友人を殺し、皆で食べたのだ。遺体は出ない。私達には、永久に卒業はない…
  542. 711〈ザクロ殺人事件〉被害者は脳が飛び散る程の力で頭を割られており、山での滑落事故死の一例を引用しそう呼ばれ、目撃者もいた為に殺人事件とされている。証言では2m程の女が手刀で人の頭をカチ割るという。更に女は顔面が縦に裂けており、肉が覗いていた事から『ザクロ女』と呼ばれている
  543. 710妊娠と同時に、私には老婆が視えるようになった。老婆に嫌な雰囲気はなく、義母にその事を話すと「昔近所に住んでたお婆ちゃんかも。仲良くしてたから」と義母は言う。その後私は女の子を出産。話ができるまで大きくなると、「息子の嫁が殴る…いっそ私を殺して…」と夜な夜なうなされている
  544. 709バスに乗車中、突然悲鳴が上がった。見ると男が刃物を振り回している。だが何か変だ。男は宙に向かい何かを叫んでいる。バスは緊急停車し、乗客は我先にと逃げ出す。暫くして警察が来た時には男は自ら首を切り死んでいた。だが妙なモノも見た。後部座席に死んだ筈の男と、笑う女が座っていた
  545. 708家族が会社や学校に出かけた後、私は家中を掃除。床はロボット掃除機に任せる。ひと段落して椅子に腰掛けお茶をすすり、まだ頑張っている掃除機に目をやると、その横を別の何かが一緒に滑っている。楽しそうな目をした鼻から上の子供の顔だ。掃除機と遊んでる…?その日の内に掃除機は捨てた
  546. 707私の心は何故か常に『怒り』をまとっている。久しぶりに会った母の貧相さに怒りを覚え、手を振り上げる。ゴメンと泣く母を何がだと怒鳴り上げると「父さんへの怒りが止められず、幼いあんたの目の前で殺してしまった…」と母は言い、気づいた。私は…自分の無力さに怒っていた?心が崩れる…
  547. 706廃神社の雰囲気に惹かれ、暫く写真撮影をしていると、微かに鈴の音が。するといつの間にか廃神社は昔の美しい姿になっており、中から次々と人が出てきた。そこへ刀を持った男が現れ、一人また一人と首をはねていく。カメラを向けると廃神社に戻り人の姿もない。レンズに血飛沫がかかっていた
  548. 705会社から出ると若い男が声をかけてきた。聞くと「あんたは賭けに負けたんだよ」と言う。何の事かわからず考えあぐねていると「あんたの高校時代の元カノ、先に結婚したからあんたの負け」と言い、俺は車に押し込められた。まさか、あの時喧嘩別れで俺が吐いた捨て台詞か?じゃあこの後俺は…
  549. 704父が首を吊り死んだ部屋はキィと家鳴りが酷い。音の原因を考えていると、ダンッと天井から音が。何事かと押入れから天井裏を覗くと、紐で吊るされ揺れている赤子の遺体数体と、落ちて這った形跡のある一体が見つかった。どれも父の子と判明し音の正体も察する事はできたが、産んだ人物は不明
  550. 703回転寿司でご飯粒が散らかった皿が回ってきた。流れの後方を見ると、10cm程の小鬼達が食い荒らしている。他の人には見えない様子。成敗してやろうと近づくと小鬼達はケヒヒと笑い逃げたが、一匹を手ではたくと皿の寿司の上に落ち、それを客が手に取り口に運び…。ウゲッ、見てられない…
  551. 702ある生徒が連日無断欠席し、連絡もつかない。私は生徒宅を訪ねると凄まじい寒気に襲われた。〈生徒の一家は呪われている…〉それを知った私は霊能者に相談するが、手を出すなと言われた。学校側の立場上見放す事もできず、再度生徒宅を訪問。すると何者かに背中を刺され「邪魔するな」と…
  552. 701ある日母の背中が割れ、中から奇妙な生物が。だがソレは自らを母だと名乗った。記憶が曖昧だと言い父の質問には一切答えられなかったが、不思議とペットの犬がソレに懐く。犬は母に一番懐いていた。ある晩犬がいなくなり、家族でソレを殺害。ソレの背中が割れ、知らぬ女が死体で出てきた。
  553. 700数百年にも渡り行われて来た百物語。数多くの怪異と悲劇を起こして来た。しかしそれは人が起こした事。百を語らなければ起らなかった事なのだ。人々は『怪異』に魅了され、それを求める。悲劇と成り得ると知りながらも、人の〈心〉を完全に止める事はできない。百物語に、終わりのないのだ。
  554. 699幼い頃の私の写真に亡くなった祖父が写り込んでいる。だが祖父は愛情深い人だから、その写真は“悪いモノ”ではないと母は言う。写真の中の祖父を見ていると、突然祖父の目がズズと動き下を見た。そこで気づいた。私の足元に、鼻から上の顔が薄ら写っていた。私の片足だけが育たない原因は…
  555. 698彼女が入浴中、押入れから物音がするので原因を探すと、奥からビニール袋が。中にはラップで何重にも巻かれた『赤ん坊』。上がって来た彼女に訊くと「あぁ、赤ちゃんって難しいね。練習の為にさらって来たらすぐに死んじゃった。本番は失敗しないから結婚して」と言った。袋がガサッと動いた
  556. 697常に動物達の声が響き、私の耳には他が聞こえない。私は『呪い』の力を得る為、多くの動物を殺害。私に惨めな思いをさせた一家を呪い殺す。ある日一家の娘が獣のような赤子を出産、娘は噛み殺された。父親は赤子を殺すと自身が獣のように。一家は大勢死んだが、私は獣の気配に気づけなかった
  557. 696妻と死別したある日、久しぶりの煙草に軽い目眩が。〈酔い〉にも似たその感覚に浸りゆっくりと瞬きをする間、霞む視界の中に女を見た。そのシルエットは、妻だ…。思わず目を見開くと、女は消えていた。もう一度煙草を吸うが目眩は起こらなかった。あぁ…俺はまだ、殺した妻を愛している…
  558. 695餃子定食を食べようとすると、まさに開いた口が塞がらない光景が。餃子の一つが宙を浮き、ぽとりと床に落ちた。…。そしてまた一つが浮き、ぽとり。更に一つが浮いた所で「オイ!」と声をかけると、頭を叩かれた。いつもの見えない『アイツ』だ!貴重な餃子をよくも!俺達の喧嘩は終わらない
  559. 694「俺アイツ嫌いなんだよ」と友人が指差した先には誰もいない。友人にその事を話すが「いるだろ。あ、こっち来やがった」と言い身構え、てめぇコノ野郎!と一人で喧嘩を始めた。周囲の目もあり俺は止めに入るが誰かに背中を蹴られ、それ以来友人と共に見えない『そいつ』と喧嘩を続けている。
  560. 693遅れて朝礼中の体育館に入ると、床や壁、天井に巨大な虫の大群が…いや、生徒達が虫のように四つ這いで動き回っている。こちらに気づくと一斉に集まって来たので慌てて体育館から逃げ出す。すると「これを買って来た!」と先生が見せたのは大量の強力な霧状殺虫剤。使用後は悲惨な光景だった
  561. 692林で遊んでいて死体を発見した。その後警察が来て騒ぎになり、地域では僕がちょっとした有名人に。『死体を発見すれば有名になれる』と考えた僕は、死体を作り、僕が見つけた事にしようと考えた。それに適した場所を探していると、また死体を発見。「お前を有名にしてやるよ」と背後で声が…
  562. 691エステ中はスタッフの女性とも話す事が多い。話の流れで「スタッフさんはエステを受けたりしないんですか?ちょっと疲れて見えるから」と悪気なく口にすると、スタッフは急に表情を変え「これはエステじゃ取れねぇんだよ!」と叫んで襟元を開き、胸元にしがみつく灰色の子供の手を見せた。
  563. 690兄が腕を組みPCを睨んでいる。聞くと彼女が何かに憑かれ苦しんでおり、除霊できる霊能者を捜し二人まで絞ったという。一人は霊能者らしからぬ若く可愛らしい風貌。もう一人は少しの陰と妙な色気がある熟女系。兄はう〜んと唸り、声を挙げる。「どっちもイイよなー」早く彼女を助けてやれ!
  564. 689満員電車で後ろの男が「おい人殺し」と耳元で言う。ハ?と返すが男は同じ言葉を繰り返し、怖くて場所を移ると後をつけて来て尚も人殺しと言う。我慢の限界で「黙れ!」と振り返るが男はおらず、傍にいた女が「私は人殺しじゃない!」と暴れ出した。止めに入った勢いで女を死なせてしまった…
  565. 688幼い息子が激しく泣き、訊くとオバケがいたと言う。嘘でしょ?と問うと息子はキョトンとし、何事も無かったように遊び出した。それから数年、息子は『嘘』に対する罪悪感がない事を知った。ある日、息子が学校から血塗れで帰宅。「いっぱい殺してきた」と平然と言った。それも…嘘でしょ?
  566. 687怪談ではないけどタクシー運転手から聞いた実話。ヤ◯ザ風の若い男二人を都心で乗せ、二つ先の県を目指す事に。彼らは移動中非常に緊張しており、ずっと電話で通話。すると途中で「ヤったのか!?」と男が大声をあげると、帰るように指示。危うく何かに巻き込まれる所だったと運転手は話した
  567. 686ある家族の連絡を受け、介護ヘルパーとして訪問。ご老人は体が動かせず寝返りもできない状態。床ずれを心配したが、妙な物を発見した。手足胴首を、床から伸びる手が掴んでいる。お祓いを勧めると既に助言を受けたと言い、ごめんなさいと謝られた。その晩から、布団から起き上がれなくなった
  568. 685ある日『人間の使い道』と題された制作者不明の芸術作品が公開され、世界中から絶賛。だが題名が示す通り〈人体〉を使った物とされ、倫理的理由から壊された。それでもある種の哲学や表現の自由を訴える者達は批判者を殺し、その体で作品を模倣したが、オリジナルには到底及ばなかった。
  569. 684母が「妹を燃やす」と火をつけたのは『人形』だった。母は決意と憂いの表情で燃える妹を見ている。そこへ父が現れ、母の頬を叩いた。私はやめてと叫ぶと、父は私にも火を放った。すると妹が父に覆い被さり、炎は父を包み込む。母は両手で顔を覆っているが、何もできない私も、所詮は人形だ…
  570. 683出張で泊まるビジネスホテルの部屋は、入った時から妙な雰囲気があった。御札を探して回ったが見当たらず、気のせいかと安心して寝ると、寒気に目を覚ました。廊下で寝ていた。すると初老の清掃員が通りかかり「あんた、変なモン憑けてるから部屋から追い出されたな」と笑った。えっ俺!?
  571. 682僕は骸骨のように痩せ細る程に、長年悪夢に苦しめられてきた。医師の非公式の勧めで後退催眠を受けると、僕は自分を「俺」と呼び、乱暴な言葉で話し始めた。施術は途中で中止となり、これ以上追求出来ないと言われた。あの時術師は怯えていた。だが以来、俺は悪夢を見なくなった。…ん?俺?
  572. 681室内で飼っている犬がこちらをじっと見ていたので、おいでと言うと、普段ならすぐに来る筈が、逆に威嚇するように低く唸った。こちらから近づくと犬は跳ね起き、牙を剥いて吠えた。何かいるのかと背後を振り返ると、顔の左半分が陥没した女がいた。あ、ヤバい。犬のせいでバレるかも…
  573. 680防空壕として使用された洞窟は、今や心霊スポットだ。そこへ行くと、突然強烈な地響きと、ゴゴゴというくぐもった爆撃音が洞窟に響き渡った。思わず頭を抱えしゃがみ込むと戦時中の服装の人々が現れ、目の前で次々と爆発していく。すると軍服の男に「覚悟を決めろ!」と、手榴弾を手渡された
  574. 679俺はバスケの試合で二段ジャンプを披露すると、会場は異常な盛り上がりを見せた。ゲームの世界にしかないと思われている『二段ジャンプ』俺にはそれができる。だが勿論それには協力者が必要だ。所謂守護霊ってヤツに手を借りタイミングを合わせる。ただ守護霊が老人だから、苦労させている
  575. 678妻は妙な程に俺の帰宅時間を気にする。伝えた時間よりも早くコッソリ帰宅すると、妻の楽しそうな声が聞こえてきた。やはり浮気か?音を立てぬように妻の方へ行くと、妻は砂嵐のTVに向かい会話をしていた。声をかけると妻は飛び上がり「違うのこの人は…!」と言ったが、問題はそこではない
  576. 677帰宅途中、男がある家に向かい土下座をしていた。すると突然女が現れ家に入って行き、暫くすると幼い子供の手を引き出て来た。男は土下座の姿勢から逆立ちで女を止めに掛かったが、次の瞬間消滅し、女は子供を連れて去って行った。噂では男は子供を残し病院で亡くなったらしいが、女は…?
  577. 676都合上、毎日斎場の前を通るが、ある日少女が斎場に手を振り笑顔で走り去って行った。その後すぐに母親らしき女性が泣いて取り乱しながら出て来た。お節介と承知で「お子さんは笑顔で逝かれましたよ」と伝えた。母親はそれをどう受け取ったかはわからないが、少しでも楽になると事を願う。
  578. 675都合上、毎日斎場の前を通るが、一度だけ妙なモノを見た。葬儀の最中だったと思うが、斎場の門の前で黒い何かが蠢いていた。どうやら地主の葬儀らしい。昔からその地にいる一族には、人ではないモノが憑いてしまう事もあるのだろう。その一族の行く末を考えてもどうにもならないが、心配だ…
  579. 674都合上、毎日斎場の前を通る。時々だが昼夜関係なく、直感で〈霊〉とわかる人を見るが、彼らに怖い雰囲気はない。夕方通りかかると、ある葬儀を終え解散となったであろう帰っていく喪服の人達一人一人にお辞儀をしているソレを見た。亡くなっても礼を尽くせる人の生前の様子を思い浮かべた
  580. 673体から白い糸が出ていたので引き抜くと、それはクネクネと動いた。寄生虫かと思ったがどうやら他の人には見えないらしく、何だか特別な物を発見した気分になり、それを瓶に入れ鑑賞した。糸は他の人からも出ている事に気付き、引き抜き瓶一杯になるまで集めたが、何故か皆不幸になっていく…
  581. 672この辺の住宅地では夜になると蝙蝠が飛ぶ。我が家は造りが古いので、雨戸の戸袋に蝙蝠が入り込んでいる事もある。過去に一度だけだが部屋に入って来た時には大パニックになったものだ。妻がほうきで外に追い出そうとすると「うわっ危ねぇ!」と声を聞いたが、あれは蝙蝠だったと信じたい。
  582. 671郵便受けに無記名の封筒が。機械文字で私への感謝が手紙に書かれていた。どうやらこの人物はストーカー男に悩まされ、私がたまたま自転車で通ると逃げ出した男が車に撥ねられ死んだのだとか。ストーカーと言えども私が原因で人が…。ある日歩行中車道に突き飛ばされた。あの中年の女は…誰?
  583. 670目を覚ますと、森の暗闇の中。傍でガサガサと音がし、慌ててその場から逃げ出した。一緒に旅行に来た友人達は?旅館の女将から露天風呂の場所を聞いて…。必死に走り続けると、目の前に巨大な何かが現れ、赤黒い唾液を滴らせ女将の顔で笑った。足元の石を投げつけ逃げたが、すぐに捕まった。
  584. 669転んだ少女を助けようとすると「ダメ!」と中年の女性に怒鳴られた。驚き手を引くと、少女は空洞の目を向け消えた。な…何だ?すると女性は「この辺はね、沢山子供が死んだのよ」と言い、「でも寂しくないわよね…」と独りごちるように呟き去って行った。女の後を大勢の子供達が追って行った
  585. 668「皆言わないだけで、実は色んな性癖やフェチがあるよね〜」と女友達が言う。まぁそうかもねと答えると、「物にも霊が憑くって話も、絶対フェチなんだよぉ、キモ〜」と彼女は身を震わせ楽しそうに言った。視線を落とし、彼女の靴や足にむしゃぶり付いている男を視て、まぁそうかもねと答えた
  586. 667君の笑顔を見たいんだと彼は言う。私は彼に依存し、彼にも〈私〉しかいなかった。私が『死』に興味を示すと、彼はあっさりと人を殺してみせた。私は今、死の魅力に取り憑かれている。だから彼は私の中に現れ、人を殺し続けている。彼は言う。君の笑顔を見てみたいんだ。いつか、笑えるかな…
  587. 666ママは幼い私の肩に、ある数字を刃物で刻んだ。そして毎晩その数字にキスをした。でも私が歳を重ねるにつれママはキスをしなくなり、私にも冷たく当たるように。「お前は違った…」ママはそう言った。私は自殺を図ったが死なず、ママは「この子だ」と私の数字にキスをし、嬉しそうに自殺した
  588. 665父が妙な骨董品の壺を買ってきた。案の定深夜に壺から人の手が伸び、中から出ようともがいていた。翌日は足を出してもがき、更に翌日には頭から出ようともがいていた。うむ…出 られないんだな。ある晩妹が壺の口に見えた顔にペンで悪戯書きをし爆笑したのを見て、流石に中の人が不憫に思えた
  589. 664隠れんぼ中、引越した筈のAを見つけた。Aは「見つかっちゃった」と笑い、「でも俺はここにはいないけどね」と続けた。どういう事?と訊くと、「◯◯に埋まってる。俺を見つけて」とAは言い消えた。僕はその事を皆に話したけど信じてもらえず、その後Aの家族や親戚の『死』以外は知らない
  590. 663取引先の企業ビルへ。受付で暗い表情の女性とすれ違い頭を下げるが、女性は素通り。嫌な感じだ。女性はエレベーターも降りる階も一緒に。目的の人物に挨拶中、なんとすぐ傍に女が現れ、その人物に重なり中に入っていった。するとその人物は表情を変え「聞いて…」と、長い悲惨な話を始めた。
  591. 662『祭り』を題材にした卒論の為、稀に行われるというある村の祭りを取材。村に入る前、何故か簡単なお祓いをし、いざ祭りが始まると、老若男女がそれぞれに蛇を掴み、引きちぎったり、鉈で首を切り落としたりした。こんな祭りが日本に…。彼らは蛇の血を盃で飲むと、一瞬顔が蛇のようになった
  592. 661近所の火事を野次馬見物。住人は無事だが、自宅が燃える様子を呆然と見ている。すると炎の中から幾つもの白い浮遊物が飛び出し、どこかに去って行った。まるで〈魂〉のようだ…。野次馬は誰も気づいていない。白いそれを目で追うと、住人と目があった。以来、時々身の危険を感じる事がある。
  593. 660隣の家族はおかしい。会えば愛想はいいが、その目に不気味さを感じる。ある日、近所でペットがいなくなったと騒ぎに。きっとあの家族の仕業に違いない。自宅からさりげなく隣の様子を伺うと、なんと旦那と目があった。恐ろしい目つき。が、“我が家の敷地”で動物を貪る黒い何かを見つけた。
  594. 659最近できたという地元の心霊スポットに来た。傍には住宅もある何の変哲も無い道。ここで人が死んだなんて話もなく、何故最近になり妙な噂が?すると何かに足を掴まれた。見るとアスファルトに最近できたようなヒビから男が這い出し、服を掴み這い上がって来た。意識が戻ると30年過ぎていた
  595. 658白い入浴剤を入れた風呂に浸かっていると、湯の中から何かが浮いてきた。でっかい桃?んな訳ない。尻だ…。えっ尻!?なんで尻!?慌てて風呂から上がるが、尻はまだそこにある。じっと見ていると無性に腹が立ち、その尻を全力で叩こうとすると割れ目が開き、現れた牙に手を食いちぎられた。
  596. 657母は愛のない妊娠をし、堕ろす金もなく未婚で私を出産。その後私を憎むかの如く事ある毎に罵り、叩いた。何故私を産んだの?何故私は…。ある日私が部屋の隅で餓死すると、母は発狂し自殺した。母は自由になった筈なのに…。母の亡骸に触れると、母が抱えてきた『絶望』を知り、私は発狂した/li>
  597. 656校庭でのドッジボール。球を受けた生徒が突然の絶叫。見ると指が折れている。皆が慌てて保健室に連れて行こうと腕を掴むと、今度は腕が折れた。生徒は激痛で仰け反って倒れ、その勢いで地面でペシャンコになった。親に連絡すると「魚や牛乳が嫌いな子で…」と言ったが、絶対他に何かがある…
  598. 655ある家に酒を宅配に行ったバイトが戻らない。注文書に電話番号の記載はなく、店主としてその家に伺うと、出てきた男が俺の頭をマジマジと見た後、バイトを連れて来るから上がって待っていてくれと言う。すると男は白い器を手にし「彼は良い盃だよ。君のは要らんが、帰られちゃ困る」と言った
  599. 654人通りのない夜道。後方遠くから男の笑い声が聞こえ、それは段々と近づいてきている。見ると男が笑いながら走ってきている。が、更にその後ろを女が追いかけている。咄嗟に道の端に寄ると二人は通り過ぎて行ったが、女が立ち止まった。そして振り返り、刃物を構え笑顔でこちらに走ってきた。
  600. 653自宅の階段を上がると、見知らぬ男と鉢合わせた。男は上に駆け上がり、高校生の娘の部屋に入って行った。娘が男を連れ込んだ?娘の名を呼ぶと、悲鳴が返ってきた。慌てて戸を開けるが男の姿は無く、娘が怯た様子で天井を指差した。見ると男は天井に磔にされ、死んだ祖父母に首を捻られていた
  601. 652俺には何の才能も無い。何をやっても上手くいかない。ある日、職場の工場で事故があり、それは社外秘になった。すると先輩がある人を紹介してくれた。目の前で人がバラバラにされ、隠ぺいを指示され作業をすると、褒められた。工場の事故を片付けたのは俺だった。思わぬ所で才能を発見した。
  602. 651え、これどういう状況?目の前で、全身にチョコを塗った全裸の女が、指をクイと動かし俺を誘惑している。いいん…ですか?俺は女に近寄り、脚のチョコを舐め取った。女は小さく声を漏らし、俺は全身を舐め続けると、腐敗臭を発する肉体が露わになった。この後、俺をどうなるのでしょうか…?
  603. 650その昔、円盤型の乗り物を操る生物が、地球で『人間』に遭遇。生物は友好的交流を図ろうとしたが、人間は言葉を持たず、木や石の武器、そして火を用いて生物を捕らえた。野蛮な人間により無茶苦茶な交配を繰り返した生物は、やがて言葉や知性を失い、四つ足歩行に。それが、今の犬や猫である
  604. 649祖父が古い写真を見つめ嗚咽している。私はどうしたの?と声をかけ、ふと写真を見ると、少年達が写っていた。祖父とその友達かな?すると「遂に出て来た…」と祖父が呟いた。そして私の名を呼び「ごめんな。皆、もう生きられん…」と言い、少年達の背後の黒い影を指差した。母の絶叫が響いた
  605. 648教室に入ると、珍しく生徒達が静かに席に着いている。悪戯かと思ったが、全く反応がない。すると生徒達の視線が『何か』に向けられている事に気づいた。教卓の上に、白いハンカチが置いてある。それを手に取ると、頭が真っ白になった。あれ…?とりあえず…立ってよう。ハンカチ…綺麗だな…
  606. 647ママは私が一番だと言ったのに、弟が産まれるとあまり構ってくれなくなった。弟は確かに可愛い。良い事考えた!これならママは私も弟も構ってくれる筈。私と弟の顔を取り替えっこするの。弟はこれでよしっと。そうだママも!ママは上手に取れなかったけど、まぁいっか。あれ?これ、痛…い…
  607. 646貸しアパートでゲームをしていると、波の音が聞こえてきた。気にせずにいると、尻に湿り気が。わっ!畳が濡れてる!慌ててタオルで拭き取るが、水は際限なく滲み出る。すると畳にゆっくりと『男』が浮かび上がり、ゴバッと大量に水を吐くと、男は水のように崩れた。不動産屋に訊いてみよう…
  608. 645息子と市立公園に行くと、遊具で大人数人が首を吊っていた。それを子供達が笑顔で見上げている。すぐにその場を離れようとすると息子がグギィーと奇声をあげ、子供達の方に駆けて行った。そして彼らと一緒になると全員でこちらを向き、手を長く伸ばした。私はそれらに掴まれ、手足を折られた
  609. 644私は入浴中スマホを弄るのだが、ある時彼氏から連絡が。話に夢中で長時間風呂に浸かっていると、鼻からタラリと血が溢れた。長風呂し過ぎて鼻血が出てしまった。彼氏に伝えると「えっ?今どんな感じ?どんな感じなの?」と急に興奮し出した。その声に私も興奮し、鼻血で風呂が真っ赤になった
  610. 643ホラー作品を執筆中、奇妙な体験をする事も。ある日、登場人物の一人と同姓同名の女性と知り合った。彼女は作中の人物とは外見も性格も全く違うのだが、会う度に似てきている気がした。作品は公表前だ。ある晩執筆中、違和感に振り向くと、天井に大きな彼女の顔が覗いていた。そういう事か…
  611. 642ホラー作家としてネタを探していると、奇妙な経験をする。怪談会と称して居酒屋に数人で集まった日、ある人物が話を始めると、突然店の電気が落ち真っ暗に。騒然とする中明かりが戻ると、その人物の目には何本もの箸が刺さっていた。後日、その人物は〈舌〉も失い、とうとう話せなくなった
  612. 641ホラー作家である私は、底が尽きぬようにネタを探して歩き回る。そして時として奇妙な経験もする。「街で幽霊を見た」という何の刺激もない話をある人物から聞いている最中、なんとその人物の首がゆっくりと後ろを向き、360度回転して元に戻ったのだ。後日その人物は首を失って死亡した
  613. 640張り切ってジョギングをしたせいで、いつものコースの途中で息が上がってしまった。ちょっと休むかとその場に腰をかけると、ズルリと手を舐められる感触が。見ると真っ黒に焼き爛れた犬がいたが、次の瞬間には消えていた。手についた汗を舐めたのか?以来、時々水とドッグフードを供えている
  614. 639仕事で外回り中、私はずっと後をつけてくる男に気づいた。勇気を出し、何の用!?と男に迫ると「お前こそ何なんだ!」と男は怒鳴った。訊くと毎朝玄関前に動物の死骸を置く女の後をつけて来たらしく、それが私なのだという。身に覚えはないが、そう言えばいつも服に動物の毛が…。私は一体…
  615. 638その患者は死ぬだろう。私には時々あるモノが視える。それは、入院が決まった患者を病室の前で迎える『亡者達』の列だ。そしてその患者は決まって死亡する。私は患者と共に、呻く亡者達を無視して病室へ。ある日、私は仕事中に倒れた。気づかなかった。あの時亡者達は私を迎えていたのだと…
  616. 637スーパーのタイムセール。国産豚の味付き肉が激安。どうせ悪い肉だろうと思ったが、商品はすぐに売り切れた。後日、店長失踪が騒がれ、あの肉が店長だったと判明。犯人は店員数名で「あるパートさんの命令で…」と全員が言ったが、その人物は数年前に店の裏で自殺。発見時は何故か全裸だった
  617. 636女子にフラれ部屋に篭っていた兄が久しぶりに出てくると、何と目頭に金属棒を刺しており「悩みが吹き飛んだ」と言う。それって…ロボトミー?兄は「お前もやれよ、楽になれるぞ」と私を押さえつけ、強引に目頭に金属棒を刺した。すると確かに不思議な気分だ。兄や母を殺しても、何も感じない
  618. 635行方不明だった友人が山道で裸で保護された。聞くと〈何か〉にさらわれ、暫く檻に閉じ込められていたらしい。その時に『人』らしき肉を食べさせられたと言う。友人は精神病院へと移された。毎日発作的に肉を欲し、人に喰らいつくのだ。ある日友人は病院から姿を消し、再び行方不明になった
  619. 634授業中、前の席の男子がガクリと頭を後ろに倒し白目を剥いた。すると男子の口がモゾモゾと動き、中から色んな虫が湧くように出てきた。皆がパニックになる中、先生がペンを使い男子の口から虫をかき出すが、「痛っ」と言うと倒れて痙攣した。男子と先生はそのままに、暫く教室は封鎖された
  620. 633お前さ、虐めはダメとか言ってるけど、虐められる側の〈雰囲気〉を見た時に『コイツなら仕方がない』って、実は少し思うだろ。そういう奴なんだよお前も。人が誰かに嫌悪感を抱くってのは普通の事だぜ?理屈じゃなくて、感性だよ。虐めも人間的表現の一つ、『アート』さ。お前も材料になれよ
  621. 632例え私の話に興味がなかろうと、私は彼氏に『言葉』をぶつける。するとどうだろう、彼氏がどんどんやつれていくのだ。フフ…。その様子が面白くて、とてもじゃないけど止める事などできない。最近妙な病気が発覚したとか言ってたけど、最終的に彼氏がどうなるのかを見てみたい。楽しみだわ…
  622. 631彼女は俺が興味のない話を延々と続ける。こちらの生返事も一切意に介さない。まぁ女性にとって話すという行為は大事な儀式の一つのようだが、彼女の場合『吐き出す』と言う方が正しい気がする。恐らく本当に毒でも吐いてるんだろう。お陰で妙な病気が発覚したよ。聞き手も楽じゃないんだぜ…
  623. 630パン工場でバイト中、中種を作るミキサーの中に、一瞬人の苦しそうな顔が浮かんで消えた。気のせい?先程見た顔が気になり、ベルトコンベアを流れる分割された中種を見ていると、幾つかと『目』が合った。そしてそれらは焼かれ、普通に出荷。その後も時々顏を見る。時には指を噛まれる事も…
  624. 629住宅街を通行中、ある家から負傷した中年女性が飛び出し「息子が発狂した!」と走って逃げ去った。そして刃物を持った若い男が雄叫びをあげながらそのあとを追って行った。それを呆然と見ていたが、男は「皆を殺しやがって!」と女性に叫んでいた気がする。でもその家は随分前から廃屋の筈…
  625. 628父は死後も家に現れる。正直父の死は微塵も悲しくなかった。死しても留まる父に憤りすら感じる。更に父の姿は日々醜くなり、怪物のようだ。世に未練を残すとこうなるのか…。すると母が父を前に「一緒に行きましょう」と刃物を自身に突き立てた。両親の間にあった悲しみと愛に、初めて泣いた
  626. 627いつからか私は虐められるようになり、体育館の倉庫に閉じ込められたその日の夜、ガラと扉が開き、助けに来たよと男子生徒が。誰?館内はまるで人の体内のような膜と筋が脈打っている。「怖い?」その問いにただ彼の手を握ると『生』ある熱と脈を感じ、首を横に振り未知の世界へと踏み出した
  627. 626ストリート系ダンスのインストラクターAさんのレッスンはあまり人気がない。だが私はAさんが掛け持ちする教室全てに足を運ぶ。正直私もAさんには興味ないが、その“後ろにいる人”のダンスが凄いのだ。こんな人が憑いてるのにAさんは…。Aさんがこっち見ろって怒ってるけど、我慢我慢…
  628. 625車を運転中寒気がし、ふとミラーを見ると知らない男が。驚いているとドン!と人を撥ねてしまった。慌てて降りると、目を疑った。俺が倒れている…。車に戻りミラーで自分を見ると、あの時の男だ。じゃあ俺は…?気が動転し車で逃げ出すと、返せよ…と後ろから首を締められ、対向車に激突した
  629. 624晴れの日は頭痛が酷い。だが必要あって外出すると、後ろから「大丈夫ですか?」と声をかけられた。ちょっと頭痛がと答えると「貴方、太陽が苦手な怨霊に取り憑かれていますよ」と言われた。その手の話を信じ易い私は興味を示すと、「助けてあげますよ」と腐敗臭漂う暗い部屋に閉じ込められた
  630. 623痛っ!妻に代わり慣れない料理中、誤って指を切ると「大丈夫?」と幼い子供達が心配してくれた。大丈夫と答えると「見せて」と言い、血が溢れる傷口を見せる訳にもいかず、台布巾で指を隠した。すると子供達は「チだ!チを見せて!」とヨダレを垂らして言い、妻はそれを優しい表情で見ていた
  631. 622深夜寝つけず天井を見ていると、天井から男が現れた。生気のない顔をしてやがる。さてどうするつもりだ?俺はもう人生に絶望していて死んでも惜しくはない。さぁ来いよ。が、見るとその男は『俺』だった。何だよ、俺の知らない内に俺が一人歩きしてるのかよ。どうりで俺には自分がない訳だ
  632. 621私は水に触れる事すら出来ない。水分は果物や野菜、牛乳等から補給する。もし川や水道水に触れると、私は気絶してしまう。何故なら水には生者や死者の様々な『念』が無数に溶け込んでおり、それらが私の中に流れ込んでくるからだ。私は何故こんな体質で生まれたのか、意味があるなら知りたい
  633. 620人混みが怖い。私は以前、人混みで突然背中を刺された。犯人はその場で取り押さえられたが、皆の前で笑顔で舌を噛んで死んだ。以来街に出る時は、必ず誰かと一緒だ。友人と街に出たある日、私はまた背中を刺された。見ると友人が刃物を握っており、「久しぶり」とあの時の犯人の笑顔で言った
  634. 619学校から帰宅すると、母が「あら彼氏?」と言った。何の事?私一人だけど…。だが母は誰かと会話をするようにして客間に向かった。呼び止めるが応じない。後を追うと「良い子じゃないの、イケメンだし」と言い、更に暫くすると「この子、私にちょうだい…」と、母は目を血走らせ鈍器を掴んだ
  635. 618私が描く女性画は、売れる物には共通点があった。どの絵も『無表情』なのだ。笑顔ではむしろ批判された。試しに無表情を暗い色彩で描くと評価を得、以来私は暗い絵を描くように。だが暗い絵は私の心を侵食し、遂には私自身が表情を無くした。試しに赤で潰ぶした絵が絶賛され、そして私は…
  636. 617電車内で読書中、隣の車両から妙な男が移って来た。男は乗客一人一人に「合格」と言っている。するとある婦人に「不合格」と言い、突然頭を金槌で殴りつけた。男は他の乗客に取り押さえられたが、こちらを見て「お前も不合格だ!」と叫んだ。殴られた婦人の背後から、黒い何かが逃げ去った。
  637. 616部屋に掃除機をかけていると、突然ゴォーと音を立てて詰まった。フィルタを確認すると、ガサゴソと動いている。どこかで虫でも吸い込んだかと思ったが、妙な声が聞こえてきて怖くなり、直ぐに捨てた。翌朝近所でゴミ収集車が事故を起こし、運転手と通行人が死んだ。私のせいじゃないよね…?
  638. 615引っ越し先はアパートの一階。建物は古いが内装は綺麗だ。荷解きに疲れ、その日は早々に布団に入った。深夜、焦げ臭さに目を覚ますと、なんと布団が燃えている。慌てて消したが、妙な物が目に入った。火の玉だ…。出火の原因はこれか。後日、床下から土葬のような状態で遺体が発見された。
  639. 614一人でファミレスに入ると、隣席の女がこちらを凝視している。怖くて席を移るが、女は音も無く向かいの席に座り「貴方…これ見えますよね」と前髪をかき上げた。見ると額から〈指〉が数本突き出し、額を裂こうとしている。そして女は「助けて下さい…」と血涙を流し言った。怖すぎて気絶した
  640. 613「僕に任せて」と彼が言ったので信用したが、いつまでも報告がなく、聞くと「許せない事があってね」と言う。さも自分は正しいと言った口ぶりだ。こちらは経過や結果の『報告』を待っているのだ。詳しく聞くと「信用できない奴を殺したんだ」と平然と言った。彼の『信用』とは何なのだろう…
  641. 612朝、寒気が酷く風邪を疑ったが平熱で、とりあえず薬を飲んで登校。途中後輩から声をかけられ「今すぐ神社に行きましょう」と言われた。境内に入ると寒気は取れたが、代わりに後輩が激しく震え出し、その場に倒れ、暫くして目を剥いて死んだ。愕然としていると、寒気が。あんな風に死ぬの…?
  642. 611会社のトイレの入口で同僚と遭遇。意味なく「オゥ」と挨拶を交わし中に入ると、今会った筈の同僚が手を洗っている。あれ?と声に出すと「ん、どした?」と同僚。無視して奥に進むと、今度はその同僚が用を足していた。お前何なんだよ!と怒鳴ると、「お前こそ何なんだよ!」と普通に怒られた
  643. 610子宝祈願で有名な神社に訪れたが、鳥居をくぐると気分が悪くなった。とりあえず祈願だけを済ませ振り返ると、異様な光景が。鳥居に巨大な女が逆さでぶら下がっており、祈願後鳥居をくぐる女性に、蠢く黒い塊を貼り付けているのだ。そういえば、どんな子が産まれるかまでは聞いた事がない…
  644. 609貴方を想うと、私は人を殺したくなる。これまでも幾人か殺したが、それで満たされた事はない。私には貴方が必要なのだ。けれど貴方を失う事が怖い。そして今日も人を殺し、貴方を想い浮かべ、生温かい血と肉で戯れる。あぁ、一度だけ…唯一度だけでいいから、貴方のハラワタをえぐりたい…
  645. 608交番には落し物がよく届くが、中でも奇妙な物は『財布』だった。一見普通の財布だが、中には数枚の女達の写真が入っており、ふと見ると交番前にその女達が血を流し立っていたのだ。後日持ち主の男がやって来たが、その後を女達は追って行った。一応調べるが、男はその内女達に殺されるだろう
  646. 607交番には色んなヒトが来る。先日は妻を殺したと血塗れの男がやって来たが、死んでいるのはこの男で、奥さんはとうの昔に男を殺し自殺している。だが困った事に、男が言う場所へ行くと、女性の遺体が。女性は全くの他人で、この男に取り憑かれ殺されたのだ。真実を報告書には書けない…
  647. 606警官として深夜巡回中、ある空き地で女性が爪の無い指で必死に地面を掘っていた。どうしました?と声をかけると「ここに…ここに子供がいるの」と彼女は言う。多分ここじゃないですよと教えるが、既に彼女の心は壊れているようだ。土の中じゃない。すぐ傍に、ずぶ濡れの膨れた子がいるのに…
  648. 605自宅で幼い娘といると、窓を叩く音が。見るが誰もおらず、今度は別の窓を叩く音がし「入れてくれ!」と叫び声が聞こえた。私は恐怖に襲われ、娘を抱き上げ別の部屋に移動し、ジッとしててねと娘を下ろした。恐る恐る元の部屋の様子を見に行くと娘の悲鳴が聞こえ、慌てて戻ると窓が開いていた
  649. 604大勢の人が行き交う交差点の真ん中に、鼻から上の『人の頭』が放置されていた。それは行方不明中の政治家の物で、日を分け更に数名分もの頭が放置された。ある日駅前に、全員の遺体が正座の姿勢で放置されており、それぞれの胸に「私は国民を足元から見つめ直す事を誓います」と刻まれていた
  650. 603パパが知らない女の人と帰ってきた。でもママは知らんぷり。その人誰?と訊いても、二人共暗い顔で答えない。女の人がパパの首を締めようとしたからパパの手を引っ張ったら、パパは凄い悲鳴をあげた。女の人が私を睨んで怖いよ。パパもママも「ナム何とか」って言うけど、意味わからないし…
  651. 602彼氏に連れられやって来た場所は、廃屋。彼氏は扉の鍵をピンで開け、廃屋の不気味さに「フ~」と陽気な声をあげた。すると埃臭い畳の上に私を押し倒し、半ば強引に“事”を始めたが、変だ…。私に触れる『手』が多い。見ると彼氏は口から泡を吹き天井に張り付いている。私に触れていたのは…
  652. 601母は私の髪を撫で「お前は美しく生きるんだよ」と言う。そんな母は数ヶ月に一度、〈美〉を保つ薬だと言い、私に奇妙な液体を飲ませる。だが私は薄々気づいている。母は度々誰とのものとも分からぬ子を妊娠するが、私は未だ一人っ子だ。恐らく液体は…。髪の毛から赤ん坊の泣き声が聞こえる
  653. 600人だけでなく、街一つを消し去った百物語。人々は恐れたが、その驚異に魅了される者もいた。力を利用しようとする者、奇跡として信仰を始める者。求めるモノは違えど双方共に結果は同じで、人や街を消し去る力は、人類の脅威に他ならなかった。だが、未だ百物語の正体を解明できた者はいない
  654. 599廃病院へ侵入。古い機器や医療品が散乱している。友人が車椅子に乗り遊んでいると、その車椅子が勝手に動き出した。友人は慌てて飛び降りようとするが体の自由が利かず、助けてくれ!と叫ぶ中どんどん加速し、遂には壁に激突。負傷した友人は無人のストレッチャーに何処かへ運ばれて行った
  655. 598妊娠2ヶ月の妻と娘を連れ、ド田舎にある実家に来ていた。畑道を歩いていると、ふと昔聞いた話を思い出した。黄昏時、ある地蔵の前を子供が目を閉じて通ると『オツレ様』にさらわれる、と。僕は娘にその事を話した。するとある地蔵の前で、妻が突然黒い影にさらわれた。まさか、お腹の子が…
  656. 597気づくと、ビルの屋上で柵の外に立っていた。何故こんな所に?あぁそうだ…。僕はこれまで無意識の中で人を何人も殺した。動機も原因も不明だ。だから僕は死のうと思ったんだ。でも何故直前まで意識が?すると携帯が鳴り、出ると相手がこう言った。「お前は用済みだが、最後は自分で決めな」
  657. 596一緒にアニメを観ていた兄が、突然「私は魔法少女!」と叫んだ。ど、どうしたの?と訊くと「私は魔法少女なの!」と奇妙なポーズ。呆れていると「私こそが魔法少女!」と父が現れ、「私が!」「私こそが!」と言い争いに。すると「やかましい!!」と母が怒鳴り、兄と父は血を吐き吹っ飛んだ
  658. 595付き合い始めた彼女と遊園地の観覧車へ。高いねぇなどと暫く景色を楽しみ「狭い密室で二人きり、何だかドキドキする」と言うと、彼女の表情が急に強張り、「本当に二人きりだと思う?」と言った。どういう事?と訊くと、彼女は服を脱ぎ始め、「元カレがね…」と胸にできた『呻く顔』を見せた
  659. 594住宅街を通ると、危険な目つきの男が走り回っていた。私は通報しようか迷っていると、いつの間にか男が背後から駆けてきて、私に飛びかかり羽交い締めにした。「大人しくしろ!死ぬぞ!」男はそう言い、私の首に巻き付いた黒い何かを引き離した。だがそれは男の首に巻きつき、男を絞め殺した
  660. 593路上で人が死んだその現場には、いつも赤い供花があり、その前を通る度に何故か目が行く。が、この違和感はなんだろう…。花言葉を調べたが特別変な意味はない。雨の日、違和感の理由を知った。供花の色が溶け、地面に血のような赤が滲んでいた。恐らく、この供花は『死者への呪い』なんだ…
  661. 592高層のオフィスビル。夜警の俺は妙な噂を聞いた。深夜の某エレベーターは5階なら5人、24階なら24人と、その階数と同じ人数が乗り込んで来るという。全ての階に止まれば数百人になるが…。どうなるか試すと、姿無き者達に押し潰され、ブザーも鳴らぬまま、機は重量に耐え切れず落下した
  662. 591学校から帰宅すると、母が刈り込み鋏を持ち、剪定をすると庭に出た。僕は部屋着に着替えてから見に行くと、母が全身血塗れだ。庭の木には近所のおじさんが縛り付けられており、両目が潰されている。そして母は「一番邪魔なこの手が、硬くて切れないのよ」と言い「このスケベ野郎!」と叫んだ
  663. 590幼い時に行方不明になった息子が発見され、警察から連絡が。だが息子は人殺しになっていた。世間の私達親への声は冷ややかで、当時の親としての監視責任を問う声もあった。今更私達にどうしろと言うのだ。せめて理解しようと息子が生きてきた道を調べると、息子ではなく〈人殺し〉を理解した
  664. 589家で怪奇現象が起こるので霊能者に視てもらうと、これを使いなさいと、中に霊を封じるという高額な水晶を購入させられた。効果はあったが、暫くすると再び怪奇現象が。霊能者に相談すると、水晶の中が一杯だと言い、また水晶を購入させられた。ふと気づいたけど、これに寄って来てるような…
  665. 588上司が普段より厳しい。何か憑いてんじゃないの?などと思い、『何とかウォッチ』みたいに腕時計をかざしてみた。ま、何にもいるわけがない。すると同僚が「それ何だ!?」と言う。何が?と訊くと「その腕時計、凄い妖気を放ってたぞ」と言った。祖父の形見だけど…。てかお前何が見えたの?
  666. 587母の遺品を整理中、小さな木箱を手に取ると、ゾッとした。何だこれ?厭な予感がして雑巾で掴もうとすると、箱が一人でにゆっくりと開き始め、赤黒い液体が溢れ出した。今、液体の中に何か見えた?このままではマズイ!そう思った途端、バチン!と箱が勢いよく閉じた。一瞬、母の匂いがした。
  667. 586私の自慢の綺麗な髪が、ある日から抜け始めた。病院でも原因はわからず、私は鬱病に。その為深夜に悲鳴をあげ目を覚ます事もあり、一緒に母が寝てくれるようになったある晩、悲鳴をあげたのは母だった。聞くと今風の女が恐ろしい形相で私の髪を咀嚼していたとの事。接客仕事は二度とできない
  668. 585TV台の下にオモチャが入って取れないと子供が言う。休日しか会えない俺は、父の見せ場とばかりに「任せろ!」と台の下を覗き込む。と、そこには黒い何かがおり、下から飛び出し子供の方へ。それは真っ黒で俺の姿をしており、子供にオモチャを手渡すと消えた。それ以来、子供が俺に怯える…
  669. 584女子公衆便所を使用中、ドンドン!と強めのノック。余程焦っているのか叩く音はどんどん激しくなる。怖くなり声も出せずにいると「大丈夫!?」と外から声が。恐る恐る出ると、女性が「ドアを激しく叩いてたけど…」と言う。え?ノックは外からじゃ…。私の肩を見た女性の顔が青ざめていく
  670. 583父が人を殺し、僕は〈人殺しの血が通う子〉と呼ばれた。遺伝子ではなく血ならば、入れ替えればいい。僕は他人を監禁し死なない程度に血液を奪う事を繰り返した。その度に自分の体に流し込むが、いつ混ざったのか、僕は人殺しに目覚めた。父だけではない。誰もが人殺しの血を持ち得ているのだ
  671. 582布団の訪問販売でとある家を訪ねると、夫人は丁度新調したかったと購入を即決。後日商品を届け古い布団を引き取ると、その布団には大きなシミが付いており、妙に気味が悪かった。軽ワゴン車で社へ戻る途中、後ろで物音が。ルームミラーを見ると腐乱した老人が映っており、車は電柱に激突した
  672. 581私は同じクラスの彼女を、いつか何とかしなくてはと思う。彼女の笑顔は素敵だが、大きく笑った口の中に〈男の顔〉が見えるのだ。男は口から這い出し教室の窓から外に出て行き、暫くすると帰って来て彼女の口の中に戻る。そんな日は決まって何処かで変死体が発見される。彼女は何も知らない…
  673. 580私の家系は若死にが多く、妹も幼くして他界。母が代わりにとくれた人形を、私は妹のように扱い大事にし続けた。大人になり結婚が決まったある日、なんと人形が「ネネチャン…」と私を呼んだ。違う、妹じゃない…。この呼び方は、独身で亡くなった叔母のものだ。「ネネチャン、ズルイ…」
  674. 579バッティングセンターで空振りを繰り返し、漸く当てると、ガギン!と硬い音と感触が。飛んで行った物を見ると、それは石だった。すると次の石が顔をかすめた。あっぶねぇ!とマシンの方を向くと、目の前は暗い墓地だった。何これと目を疑っていると、暗闇から飛んで来た石が顔面に食い込んだ
  675. 578雨で水嵩と勢いを増した川に沿って歩いていた。すると前方の歩行者が柵を乗り越え川に落ち、流れに飲み込まれ一瞬で見えなくなった。自分から落ちた?呆然と見ていると、川の中に幾つもの黒い物が浮かんで集まり、大きな塊になった。人…の塊だ…。その塊は川から飛び出し、襲いかかって来た
  676. 577世界中で拡大している狂人達による『人食い事件』と便乗犯罪。教室に入ると、数人の生徒が腹から臓器を引き出され、傍に血塗れの生徒が一人立っていた。教師である私は咄嗟に椅子を掴み、生徒を叩きのめした。生徒は「ちが、う…」と呟き、絶命。違和感を感じていると、外で悲鳴が上がった。
  677. 576ニュースでは連日、海外での人食い事件を報道。犯人は〈人〉としての思考を失っており、『生き物の臓器を喰らう』のみを求めるという。その症状は世界中で拡大を見せている。俺はTVを消し、学校へ向かう。途中、悲鳴を聞いた。遂に来た…この時を待っていた。俺は嫌いな奴を殺しに向かった
  678. 575帰宅すると、玄関から中へと床に血の筋が続いている。アイツが来てしまった…。傍にあった先端の細い傘を手に取り、構えながら中に入る。ソファーの陰に母の足が見えた。すると後ろから男が現れ、咄嗟に首に傘を突き刺した。男は兄の姿で「まだ終わらないぞ」と、血を吐き笑いながら絶命した
  679. 574最終バスの乗客は僕一人。運転手はルームミラーでこちらを気にしている。目的の停留所に到着し下車しようとすると、運転手が声を震わせ「お客さん、忘れ物…」と言う。振り向くと、座っていた席から長い腕が4本伸びている。僕は席に戻り、置き去りにしようとした両親の分骨袋を拾い上げた。
  680. 573ネットでアンチを賑わせ注目を浴び、売上に繋げる『炎上商法』という言葉がある。私のようなホラー作家は、不謹慎だが当然の如く〈死〉を扱う『恐怖商法』を行う。これは既に一つの文化だが、そのうち炎上商法も文化と成り得るかも知れない。乗り遅れる前に、実際に人を殺し敵を作っておこう
  681. 572金に困っている奴らを利用し、人を殺させている。俺は人間は全く怖くないが、唯一『幽霊』は怖い。だから呪われないように人を使う。生き霊なんてもんがあるらしいが、幸いそれに遭遇した事はない。でも働きすぎだな。左肩が凝って仕方がないから、仕事終わりにマッサージでも受けに行こう。
  682. 571棚を作る為に板を買ってきたが、木目が妙に人の目に見える。暫く睨んでいると、木目が瞬きした。やっぱり!捨ててしまおうと思ったが、この木で棚を作ったらどうなるのかが知りたくなり、完成させた。だが棚に目は無くなっていた。ある日、自分の脇の下に目を見つけ、こうなるのか…と思った
  683. 570寝たきりだった父が、突然布団の上で飛び跳ね出した。母はそれを見て嬉しそうにしてる。母は父の介護に悩んでいた。私が助けていれば良かったのだが、仕事を理由に帰宅後も父の様子を伺う事もなくなっていた。何があったの?と訊くと、母は「呪術よ。でも兎を沢山使ったわ」と赤い瞳で言った
  684. 569仕事帰り、ある住宅の二階から窓を突き破り人が落ちた。僕は慌てて駆けつけようとすると、向かいの住人が顔を出し「行っちゃダメだ!」と叫んだ。人が落ちた場所から苦しそうな呻き声が聞こえる。「でも今人が」と言うと「関わると巻き込まれるよ。可哀想だが、そういう家なんだ」と言った
  685. 568彼氏にフラれ、夜の公園で一人、ブランコに座り泣いていた。すると「大丈夫?」と子供の声。涙を拭いながら顔をあげると、少女がいた。こんな時間に?「平気…ありがとう」と答えると、「でも、お姉ちゃん…」と少女は何かを躊躇う。ふと見ると、私の体に泥のような子供達が纏わり付いていた
  686. 567友人Aが事故で車椅子生活に。退院後、酒好きのAを励ます為に皆で試飲会。それぞれが珍しい酒や好みの物を漬けた酒を持ち寄る。一番クセが強かったのはAの酒で、取り出した瓶の中には『人の足』が。そしてAは「使えなくなったから漬けてみたけど、自分には“自分”が一番合うわ」と笑った
  687. 566女一人は寂しいので、インコを飼い始めた。幾つか言葉を覚えさせたが、ある時妙にくぐもった声で「ソノ服、似合ッテルヨ…」と喋った。だが数日後、インコは嘔吐し死んでしまった。吐瀉物には小さな黒い物が。それはザザッとノイズ音を立てると「死んじゃったか。でも君を見てるよ」と喋った
  688. 565あるアパートの一室で、風呂場の排水管が詰まったと大家から連絡が。長いワイヤーのパイプブラシを排水管に入れるが、確かに何かが詰まって動かない。管内用カメラで見ると、モニターで何かと目が合った。その途端大家が発狂し絶叫をあげ、後ろか頭を掴まれ凄まじい力で排水口に押し込まれた
  689. 564大学のキャンパスには、昼間であろうと〈人の脚〉だけが視える場所がある。無害だし、そういう場所なのだろうと特に気にせず過ごしていた。ある日、座って校舎の外壁に寄りかかり読書をしていると、突然校舎の窓ガラスが割れ降ってきて、脚を切断された。そういう場所なのだと、思い知った。
  690. 563子供の情操教育の為に金魚数匹を購入。尾の長い金魚は優雅で美しかった。だが翌日金魚は減っており、水槽の底にはバラバラになった残骸が。共食いか?そこへ子供がやって来て、水槽に手を入れ金魚を捕まえ、握り潰した。何してんだ!と叱ると「綺麗だから、壊したくなっちゃうんだ」と言った
  691. 562SNSにある写真が投稿されると、瞬く間に「美しい」と話題に。以前、桜が満開の時に墓地の墓石が大量に倒されていた。そしてその墓地には立派な桜があり、その木で女が首を吊っていた。話題となった写真はその光景で、アングルが絶妙だった。墓石倒壊の目的はその為だろうが、撮影者は不明
  692. 561付き合い始めて数ヶ月、やっと彼女の部屋に上げて貰える事に。玄関では既にいつもの香水の匂いが濃く漂う。彼女に導かれ中に入ると、部屋中が真っ赤に塗装されている。だが1箇所、壁の地の色で白い部分がある。彼女は玄関に鍵を閉め「そこに貴方が必要なの。ずっと一緒にいましょ」と言った
  693. 560厳格な父に殺された少女が現れるという廃屋。友人とのバツゲームで侵入し、暫くすると少女の泣き声が。そして前方に現れ外を指差し、それに従いごめんなさいと逃げ出した。すると外で待っていた筈の友人の姿がない。地面には廃屋へと引きづられた跡。背後の気配に振り返ると、男が立っていた
  694. 559中小企業経営者の私は、社員の生活を守る為に毎日身を削っている。問題が起これば自ら面に立つし、責任や問題を幹部に押し付けたりもしない。だが社員達は何かと不平を漏らし、昇給や福利厚生の充実を求める。だから私は悪戯でお茶に青汁を混ぜて社員に配った。結果、私は八つ裂きにされた。
  695. 558『可愛い子には旅を』と、小学生の息子を一人で田舎の母の家に向かわせた。でも父さん、こっそり後をつけてたんだ。お前が危険な寄り道ばかりするから、父さんは物の怪とも戦ったぞ。それで元の世界に帰れなくなった。息子よ、後は頼んだぞ。だが、最後に父さんに手を振ったのは気のせいか?
  696. 557母親殺害で逮捕された青年。彼は母一人に厳しく育てられたが、返って自信を喪失し異性との交流が持てずにいた。殺害のきっかけとなったのは母親の再婚。彼は母親の腹を刃物で切り裂き、頭を腹の中に突っ込んだ状態で再婚相手に発見された。青年の精神は崩壊しており、赤子のようになっていた
  697. 556クラスメイトに磯臭いぞと伝えると、服を捲り背中にビッシリついた小蟹を見せてきた。キモッ!と声をあげると、そいつは「便利なんだぜ。口の中を綺麗にしてくれるし」と言い、1匹摘み上げ「腹が減ればこうさ」と食べた。後日そいつは遺体で見つかり、皮膚に開いた穴から蟹が出入りしていた
  698. 555夜道で角を曲がるとおぞましい光景が。人が壁に激突したように木っ端微塵でへばりついている。すると前方の暗闇から巨体の何かが男を鷲掴みにし現れ、大きく振りかぶると男を壁に投げつけた。男は壁で破裂し肉塊に。恐怖で腰を抜かすと、後ろから頭を掴まれ「コイツは明日の分…」と言われた
  699. 554結婚し妊娠が発覚したその日、自宅前で少女が二体の人形で遊んでいた。微笑ましい姿に「お人形遊び?」と声をかけると、彼女は「うん、これはおばさんが堕した子で…」と言った。私は10代で中絶を経験していた。彼女はもう一体を差し「これはおじさんが殺した子」と血塗れの人形を見せた
  700. 553身寄りのない老人が自宅で孤独死。空き家となった家は古かったが、安いからと外国人家族が購入した。その家族は愛想が良く評判も良かった。だが徐々に妻の奇声を聞くようになり、夫や子供までも奇行に走った。近隣から「やはり外国人は怖い」などと陰で言われる中、その家族は火事で焼死した
  701. 552背中の腫瘍を切り開くと、なんと中には胎児が。だが胎児には牙や鋭い爪があり、人の子ではないと言われた。更に驚く事に、過去を遡ると同様の症例が幾つか存在し、取り出された胎児は、いずれも財団を名乗る正体不明の組織により引き取られた。その時現れた人物は、皆マスクと手袋をしていた
  702. 551離婚裁判の末、娘の親権は夫に。泣きながら連れられて行く娘に、私は心が壊れそうだった。以来常に娘の幻覚を見るように。病院に通うも娘は消えず、苦しい日々を送った。ある日、夫から娘が自殺未遂をしたと連絡。曰く私に会えない寂しさで自殺を…。大丈夫よと娘を抱きしめると、幻は消えた
  703. 550バイクでいつもの道を走る。もういい加減見飽きた景色だ。信号で停車すると、隣にバイクが並んだ。何気なく見ると、首がない。首なしライダーだ!信号を無視し逃げようとするが、ハンドルがない。それどころか、バイクも体も…。あれは俺の…。俺はまた、頭だけで見飽きた景色を走っていた。
  704. 549何となく気になり拾った金属片を持ち帰り、机で暫く見つめる。う~ん、もしかしたら…。隣の部屋にいた弟の頭に手をやる。弟には生れつき頭に小さな穴がある。これだ。何だよと言われながらも穴に金属片を差す。すると弟が顔をハッとさせ「僕を妊娠中の母さんを刺した犯人は…!」と叫んだ。
  705. 548倉庫の中から扉を叩く音がし、慌てて開けようとするが鍵がかかって開かない。向こうも必死にドアノブを動かし「頼む!頼むよ!」と叫ぶ。急いで鍵を持って来て扉を開けると、出て来た人に「頼むから替わってくれ!」と中に突き飛ばされ、外から鍵を閉められた。中は暗闇で、何かの気配がした
  706. 547登校中、前方に思いを寄せる女子を発見。その後ろ姿に胸が高鳴る。彼女は友人と楽しそうに話している。チラと見えた笑顔が綺麗だった。すると奇妙なモノが見えた。隣の友人を取り巻く幾つもの黒い影。あんな子の傍に彼女が!だが黒い影は、彼女の口から出ていた。胸の中で何かが冷めて行った
  707. 546以前会った事のある人が犯罪を犯したとニュースで報道。この人は温厚な良い人として評判だったが、まさかこんな事をする人だったなんて。人は見かけによらないよなと呟き、リモコンでテレビを消す。そう、人は見かけによらないんだよ。妻と子供が寝たのを確認し、刃物を忍ばせ外へと出かけた
  708. 545養豚場で、ある豚が産んだ子は人間の姿をしていた。豚の子であるその子は戸籍が取れぬまま、僕が男手ひとつで『人間』として育てる事にした。子供も大きくなったある日「ママってどんな人?会いたいな」と言われた。僕は「君のママは出荷されたよ」とは言えず、黙って豚肉料理を口に運んだ。
  709. 544同窓会の招待状が来たが、気が乗らない。俺はどの仕事も長続きせず、今も無職だ。昔悪さをして、散々虐めた奴らも来る筈。そいつらは普通に家庭持ちになっているに違いない。そうだ、昔のように同窓会でも暴れてやろう。俺は出席を決め、会場に行ってみると、実は俺への『復讐会』だった。
  710. 543宿題をやっていると、外の方から悲鳴が聞こえた。多分、近所だ。けど…怖い。カーテンの隙間から外を見ると、目の前の窓に血塗れの男がへばりついている。驚きカーテンを引き千切りながら転倒。窓に男の姿は無かった。何だったんだ?と立ち上がると、床のカーテンも血を滲ませ盛り上がった
  711. 542僕はその時の衝動に従い、粘土造形を作る。出来上がった物は大抵訳のわからない異形の生物だが、SNSで画像を投稿すると「購入したい」と言う人が現れた。安い値で譲ると、数日後に購入者から連絡が。「指を喰い千切られた」と言う。そんな事有り得ないと返すが、その後返事はなかった。
  712. 541朝、母の様子がおかしかった。床に膝と肘を突き、生の米を貪っていたのだ。その晩、母は裸で現れ、僕を羽交い締めにすると無理矢理性行為を始めた。母の目は赤く光っていた。それ以来僕の中の何かが壊れ、母は自宅で僕の子供をどんどん産んだ。だがその顔は、どれも鼠のようだった。
  713. 540飼い始めた子猫は全てが猛烈に可愛いが、抱っこをしようとすると暴れる。なんとかチューしてやろうを寝ている隙に顔を近づけると、パッと目を覚まし唇を引っ掻かれた。その晩、夢で沢山の猫に囲まれ「あのお方はお主より格上ニャ」と言われた。それ以来、何故か頭の上が猫の所定位置となった
  714. 539競馬場には家族連れや若い男女も多く、勝手に想像していた『オヤジ達の社交場』とは随分違った。レースが始まると物凄い声援。勇ましい馬達の姿に見惚れていると、後方から黒く巨大な馬が次々と他の馬を突き飛ばし、駆け抜けて去って行った。子供達が見ている前で、落馬した騎手達は死傷した
  715. 538初めて行く美容院で10cm程カットを要求するが、男性スタッフは「5cm位の方がお似合いですよ」と言う。う~んと渋ると、耳元で「今、貴方の髪に誰かとのご縁が結び付います。それを切っちゃうのは勿体ないですから」と言われた。後にこの人がストーカーになるなんて思いもしなかった…
  716. 537夜に犬の散歩中、人気のない道をヨタヨタと歩く老婆を発見。認知症による徘徊を疑いその背を見ていると、手に握る何かに気づいた。…斧?こんな夜に老婆が斧を持ち徘徊している。通報するべきか迷っていると犬が吠え、老婆が振り返った。その顔に両目は無く、「そこか…」と言い駆けて来た。
  717. 536私に迷惑をかけた奴が『死んでお詫びします』と手紙を寄越した。私は〈死〉ごときじゃお前を許しはしない。死んで逃げるんじゃない!早々に捕まえ、「死ぬ前に何人か殺せ」と命令。だが奴はそれにも失敗。私の名を出し、私は報復された。迷惑しかかけないあいつを、私は死んでも許しはしない
  718. 535商店街を歩いていると、突然水をかけられた。状況を理解できずにいると、更にホースで水責め。何するんですか!と叫ぶと、水をかけてきた豆腐屋の店主は「あんた、全身が燃えてたよ。平気なのかい?」と言った。昨日行った廃ホテルは火災が原因で…。服には焦げ跡があり、手の形をしていた。
  719. 534突然時が止まったように街にいる人々が動きを止め、僕も動けなくなった。すると奇怪な姿をした〈何か〉が、次々と人々を殴り殺していく、…という夢を見た。嫌な気分のまま外出。街で信号を待つ間に瞬きすると、瞼が開かず体も動かない。すぐ傍でビシャと音がし、鉄臭い液体を顔に浴びた。
  720. 533何か臭うなと、部屋の中で匂いの発生源を探す。匂いはクローゼットやソファーでも感じたが、結局発生源は分からず外出。電車に乗ると、皆がこちらを見て鼻を押さえたり咽せたりしている。すると声をかけられた。「腐った男が背中に憑いてますよ」…あいつか。その場は「ハァ?」と白を切った
  721. 532年上の彼女と初デートで食事。時折見せる少女のような仕草に心が騒めく。すると彼女がナイフを落としたが、ナイフはいつの間にか彼女の手元に。グラスのワインが少なくなると、それも気づくと注がれていた。彼女は「早く皆新しい人を見つけてくれればいいのに…」と呟き、グラスを口に運んだ
  722. 531彼女の微笑みを見て、僕は少しだけ安心した。彼女が父親に性的暴力を受けていると知り、僕は彼女を守りたくて刃物を手に彼女の家に向かった。そこからの記憶はなく、気づくと父親は血塗れで死んでいた。傍には半狂乱の彼女がおり、床に転がる刃物を拾い僕を刺すと、ありがとうと微笑んだのだ
  723. 530学校で聞いた噂話。深夜、校舎内にある鏡の前で「私の運命の人を教えてください」と声をかけると、その人物が背後に立つと言う。私は恋をしたいお年頃。一人こっそりやってみると、本当に後ろに男の人が。しかもイケメン!私はその人との出会いを長年待ち続けたけど、婚期を逃した気がする…
  724. 529雨の降る夜、同棲中の彼氏がズブ濡れで帰宅。風邪引くよと風呂に入る事を勧めるが、彼氏はこのままでいいと言う。いや濡れた格好で部屋に居られても困ると言うと、ならお前が出て行け!と怒り出し、突然口からゴボゴボと水を吐き出した。床に広がる水に女が映り込み、彼氏はニンマリと笑った
  725. 528その道では頻繁に車が壁に突っ込む。事故の生存者の証言では、壁に人のようなシミが浮かび上がり、そこに車が突っ込むのだと言う。また別の生存者は「運転手が見知らぬ男の顔になり、『消え失せろ!』と叫びながら壁に突っ込んだ」と語った。事故現場は徐々に何処かへと向かっているようだ…
  726. 527大きな荷物を宅配。その荷物は大きさの割に空のように軽く、それを届けると、受け取った男性は「助かった、助かった」と目に涙を浮かべていた。だが後日、その男性は娘に殺されたと噂で聞いた。荷物を届けたあの日以来、植物状態だった娘が目を醒ましたが別人のようになってしまった、と…
  727. 526あるお宅宛に大量の要保冷の荷物を宅配。送り主は全て同じだが、荷物の大きさはバラバラだ。届け先は立派なお宅で、受け取りに出てきたのはまるで人形のようなリボンとドレスで着飾ったご婦人。彼女は目を輝かせながら、シワの浮かんだ笑顔でこう言った。「待ちわびたわ。新しいお父様なの」
  728. 525河川敷にいた汚い子犬は、石を数発ぶつけるとぐったりした。何だよつまんねぇなと子犬を掴み上げ、地面に投げつける。完全に動かなくなり蹴り転がしていると、腕に激痛が。見ると子供が噛み付いており、周囲にも子供達が。子供達は怒りに満ちた犬のような顔で唸り、一斉に飛びかかってきた。
  729. 524友人が女を連れて現れ、誰?と訊くが、友人はハ?と片眉を吊り上げる。すると女が笑顔で友人の耳に指を突っ込んだので、目の前でイチャつくなよと思っていると、友人が白目を向き「ああぅ」と呻き出した。大丈夫か?と声をかけると、友人が急に痙攣し口から泡を吹いた。女が笑いながら消えた
  730. 523仕送りまでして通わせた大学がある東京で、息子はすっかり遊び呆けるようになった。せめてまともに働けと叱る為に電話を入れると、息子は妙に焦った声で「実家に帰えりたい」と言う。何事かと心配したが、帰ってきた息子が腐った女を三人も背負っていたのを見て、二度と戻るなと蹴り返した。
  731. 522介護本で寝たきりの母を抱え起こす方法を学び、実践。それまでの苦労が、ずっと楽になった。が、ある時また持ち上がらない。重い…。やっとの思いで起き上がらせ、濡れタオルで体を拭こうと服を脱がせると、背中全体に黒紫の痣が。翌日、母は何かに押し潰されたようにぺしゃんこになっていた
  732. 521朝、これから外出するので子供に服を着せようとするがヤダ!と叫び、無理矢理着せようとすると暴れて抵抗をする。なんで着ないの!?と叱ると、服が触ると言う。そんなウソを言うなら服燃やしちゃうよ!と言うと「ヤメロ!」と服から声がし、袖から鼠のような足が飛び出し逃げ去った
  733. 520親友が転校してしまったが、直後に転入して来た子は親友と瓜二つだった。全くの別人でも親近感を覚えた私は、積極的に仲良くしようとした。だがその子は何故か私の事を毛嫌いし、理由を訊くとこう答えた。「あんたの顔は元々私の顔なの。私達は目的もわからず顔を入れ替えさせられてるんだ」
  734. 519私が運転した車の事故で娘を死なせて以来、不眠症に。罪悪感と絶望感が常に心を巣喰う。ある時久しぶりに意識が遠のき、私はそれに身を任せた。娘、がいる…。私はごめんねと泣いて縋り付くと、娘は優しく「いいよ」と言ってくれた。ふと意識が戻ると、すぐ横に頭と顔の潰れた娘が立っていた
  735. 518以前行った事のある廃墟が心霊動画に出ていた。それは床が崩れてできた穴に女の顔が浮かぶという映像。俺と友人は確認しようとその廃墟に足を運んだ。だがそこで発見したのは懐中電灯の光に浮かぶマネキンの顔。発見時は驚いたが正体を知って笑っていると、穴から手が伸び引きずり込まれた。
  736. 517時々わからなくなるのは『私は何でこの人と結婚したのだろう』と言う事。顔は好みではないし、性格が特別良いとも思えない。ついでに収入だって良くない。テーブルで頬杖をつき、旦那の顔を見つめる。するとふと思い出した。占い師にこいつがいつか人を殺すと言われて、監視する為だった…。
  737. 516終電を終え駅を閉めようとすると、一台の自動改札機が反応しストッパーが閉じた。駅内に客はおらず改札口を通る者もいない。すると次々と別の改札機が反応し、全ての機でストッパーが閉じた。故障を疑い道具を取りに駅員室へ戻ると、ふと見た監視モニターに、戦時中の負傷兵が大勢映っていた
  738. 515学校も家族も、自分さえも嫌になった私は家出をし、体を捧げる覚悟で『神待ち』と掲示板サイトに。連絡をくれた人に会うと、少し冴えないごく普通の男性。あぁ、この人が初の相手か。だが男性は刃物を取り出し「泊める替わりに、僕を残さず召し上がれ」と、笑顔で自分の鼻や耳を削ぎ取った。
  739. 514高所恐怖症の僕は、克服しろと友人の強制で様々な事に挑戦。壁から飛び降る事に始まり、ジャンプ台のあるプールにも行った。そうする内に恐怖はある程度克服できた。ある日、じゃあ本番と言いバンジージャンプのある橋へ。だが友人は橋に着くなり、もう怖くないだろと僕の手を引き飛び降りた
  740. 51330代女性の遺体が病院裏の林で発見された。頭部は皮膚を剥ぎ取られ、髪は無かった。彼女はガンにより鬱病も発症した母親の事で悩んでいた。病院では度々母娘の喧嘩が目撃され、彼女が薬の副作用で髪の抜けた母親を罵る事もあったと言う。ある日、母親は皮膚のついたカツラを被っていた。
  741. 512彼女と買い物中、店のショーウィンドウに映る彼女の横に、もう一人別の男が。彼女はそれに気づいていない。嫉妬深い俺は彼女が浮気でもして生き霊でも憑いたのではと疑い、訊いてみた。だが彼女は平然とした顔でこう言った。「その男なら見えてるよ。憑いてるのは私じゃなくてあんたにだよ」
  742. 511ポケットに何かが入っていた。見ると黒い炭の欠片で、ガソリン臭くてそれを道に投げ捨てた。翌日、同じ場所に黒く大きな犬がうずくまっていた。素通りしようとすると、それがズリッと地面を這った。犬だと思ったそれは全身焼き爛れた『人間』で、唇のない口でこう言った。「探して…指を…」
  743. 510私は、自殺した生徒の悩みに気づけなかった。皆に心当たりを訊いて回るが、誰もが知らぬ存ぜぬ。私は不甲斐なさを感じながら生徒の机に花瓶を供えると、手を滑らせ花瓶を倒し、水が床へと流れ落ちた。すると水はみるみる黒く染まり、ある生徒達の席へと伸びて行き、漸く自殺の理由を知った。
  744. 509会社のシュレッダーがすぐに止まる。書類の紙が絡んだか?と見てみるが、それらしい様子はない。すると誰かがすく横に立った。見ると、指が無い手の先から血を流し、呆然としている男が。悲鳴をあげると男は消えたが、過去の社内の壮絶な虐めに気づき、成り上がりの上司に脅迫文を送りつけた
  745. 508校舎裏の外壁には、ある男性教師が失踪した時から苔が生え始めた。苔はどんどん濃くなると「ごめんなさい↓」と読み取れた。矢印に従い真下の地面を掘ると、なんと失踪した教師の朽ちた遺体が。だが「ごめんなさい」とは?遺体を見る皆の目が、ある一点に注がれる。ブルマ…履いているよな…
  746. 507ある生徒が自宅で不自然な怪我をし入院。担任の私は親による虐待を疑い家を訪ねた。だが親も憔悴し、体中に怪我を負っている。親子喧嘩か?すると奥から犬のような唸り声がし、親は表情を変え「帰れ!」と私に叫んだ。私は外へ追いやられると、奥から飛び出して来た老婆に頬を食いちぎられた
  747. 506スーパーでレジ打ち。ライターと線香のみを差し出す男性客は、ブツブツ何かを呟き落ち着きがなかった。私は警戒したが、男は普通に買い物を済ませた。暫くすると店内に線香の匂いが漂い、グァァ!と男の絶叫が。男は火のついた線香を両目に押し当て「もう見えないぞ!」と狂ったように笑った
  748. 505息子には、幼い頃から常にその後を追う影があり、私は手を尽くしたがその影を切り離せなかった。成人した息子が、ある日交際相手だという女性を連れて来た。だが私にはこの女があの影なのだとすぐにわかった。交際を反対すると、息子は女と失踪。後に息子一人だけが、遺体となり発見された。
  749. 504先輩の引越しの手伝い。荷物をレンタル軽トラックに積み終え、先輩はそのトラックで先に出発した。正直この先輩がいなくなってせいせいする。出発した先輩を見送り、追うのをやめた。あの荷物が何なのかは知らないけど、トラックの後を沢山の黒い影が追っていったから。途中で事故ればいい
  750. 503TVの生放送番組を娘と観ていると、突然画面にノイズが走り、「見ルナ…私ノ…」と女の声が。えっ今何か聞こえた?と娘に訊くと、娘はノイズの中に一瞬女が映ったと言う。するとまたノイズが走り、とうとう画面は砂嵐に。暫くして画面は戻ったが、番組では◯◯がいない!と騒然となっていた
  751. 502深夜に突然体調が悪くなり、漸く開いている病院を見つけて訪れた。すると院内にはまるで昼間のように人が大勢おり、皆妙に嬉しそうだ。ソファに腰を下ろすと「あんたもかい?若いのに」と老人に声をかけられた。何ですかと尋ねると「これから皆で安楽死さ。お陰で寂しくない」と笑顔を見せた
  752. 501はいお年玉と叔父がくれたポチ袋は、手に取ると微かに動いていた。えっ何これ!?と驚くと、叔父はお金より良いモノさと言った。勇気を出して袋を開けるが、中には何もない。何だこれと袋を両手でパン!と叩くと、叔父は「あっ!」と声を上げ、残念そうな顔をした。袋から黒い液体が流れ出た
  753. 500一人の行方不明者から始まった百物語連続失踪事件。留まる事を知らず日本各地で失踪が相次ぎ、その数は千人に達しようとしていた。だが具体的に取り締まる方法はなく、もはや国はお手上げ状態だった。そんな中、ある街が丸ごと消え去った。そこで漸く、人々は百物語の恐ろしさを痛感した。
  754. 499会いたくて、家を飛び出したんだ。会いたくて、必死に走ったんだ。会いたくて、ずっと待ってたんだ。でも叶わなかった。気付くと真っ暗だった。それでも…、会いたくて、暗闇を抜け出したんだ。会いたくて、必死に走ったんだ。会いたくて、会いに来たんだ。会いたくて…。ねぇ、開けてよ…
  755. 498「トマトが怖い」と彼氏が言う。理由は元カノに似てるからと言うが、他はわからないらしい。確か以前車の事故で頭を打ったと聞いている。ある日、テレビの料理の場面でトマトを潰す映像を目にした彼は絶叫し「あの時、元カノの頭が…」と言った。そして誰かが元カノの遺体を運び去ったと…。
  756. 497授業中、隣の席の男子が机をガタッとさせた。あぁ居眠りしててよくなるアレかと思ったが、男子は突っ伏したまま顔を上げない。先生に気づかれない内に起こしてやろうとペンで突くと、男子の手がダラリと膝から落ちた。え?し、死んでる?すると机の棚の中に、不気味な男が笑ったのが見えた。
  757. 496早朝、私は見るからに遊び帰りで仕事着の人々とすれ違うと、背後から「ちょっと!」と中年の女性に声をかけられ「そんな傷でよく歩けるわね」と言われた。は?別に怪我してないけどと言うと、女性は顔をハッとさせ「これから気をつけて」と言った。以来、私は外が怖くて引きこもりになった。
  758. 495子供が「怖い…怖いよ」と私の足にすがりつく。どうしたの?と訊くと「お爺ちゃんがついてくる」と言う。振り返るがそんな姿はない。「なら、怖いの怖いのあっち行けって言ってごらん」と教えると、子供は何故か「怖いの怖いのやって来た」と言い、まるで老人のような皺くちゃの笑顔を見せた
  759. 494廃ビルの前を通ると「助けてください!」と女が飛び出して来た。どうしました?と訊くと「とにかくこっちへ!」と手を引かれてビルの中へ。すると突然後頭部に激痛が。頭を抱えてうずくまると「ごめんなさい。どうしても今すぐ死体が必要なんです」と女は言い、手にした物を振り下ろした。
  760. 493新築の高級マンション。だが入居者から次々とクレームが。壁から血が滲み出ると言う。建築に携わった業者を調査したが原因は掴めず。仕方なく霊能者に頼ると、壁の素材の原料に多くの“人”が練り込まれていると言う。製造元は海外で、連絡がつかず追及不可に。建設会社は莫大な損害を負った
  761. 492仕事に追われるあまり、人の信用を失った。私としては目の前の事に必死になっていただけ。何かを手に入れる為に、何かを失う事は仕方がない。でも信用を失うと同時に、反感や怒りを生んでしまう事もある。それらは私が守りたいモノを奪おうとする。それを阻止する為、“仕事”に手をつける。
  762. 491以前は沢山の幻が見えていた。それらは街や部屋の至る所に見え、声も聞こえ、触れられた事もあった。でも母がくれた薬のお陰で見えなくなった。母に何の薬かと訊くと、ただのビタミン剤だと言う。全ては気持ちの問題だ、と。でもおかしい。視界も狭くなってる気が…。これ本当にビタミン剤?
  763. 490友人とチャットで意味のない言葉を繋げて遊ぶ。「ラーメン→ピザそうめん→イタリアわさび祭→からしのヒヨコ添え→爺さんの懐の卵→丼ぶり婆さん→天寿観音→墓穴パーティ→窓際族幽霊→天井に女…」おい、急に怖い言葉だな…。「天井に女が張り付いてる、助けて」え、これマジなヤツ?
  764. 489夫が風邪で寝込んでしまった。正直面倒臭いと思いながらも、お粥や水枕を用意する。私は別室で本を読んでいると夫が激しく咳き込み、様子を見に行くと、なんと夫の口から白い煙みたいな物が飛び出している。エクト…何とかだ!初めて見るそれに興奮していると、スッと口の中に戻った。…チッ
  765. 488夜の静寂を引き裂く爆音。今日もバイクの音が遠くで鳴り響く。全くよくやるよと、煙草を買いにコンビニへ。傍まで来ると、音が近づいている事に気付いた。煙草を買って店から出ると、目の前を暴走族が勢いよく通り過ぎて行く。が、様子がおかしい。後ろから波のような亡者の群れが迫っていた
  766. 487玄関前に石が積み重ねられていた。「誰の悪戯だ?邪魔だな」とそれを蹴り崩してどかす。だが翌日もまた石が積み重ねられており、崩そうとすると「鬼!」と子供に叫ばれた。お前の仕業かと声をかけると、子供は「パパママごめんなさい…」と泣き崩れ、スゥと消えた。電柱の陰で女が泣いていた
  767. 486釣り人にとって季節は関係ない。川のいつもの人気のない場所へ行くと、今日に限って数名の先客が。面倒だから挨拶はせずに彼らの後ろを通ると、釣った魚を入れる容器の中が見えた。白い何か。…頭蓋骨だ。彼らは人骨を釣っている。すると突然の大雨。すぐに退避したが、彼らは濁流に飲まれた
  768. 485街でスーツ姿の女に「死んでみませんか?」と呼び止められた。ハァ?と返すと女はパンフレットを差し出し「死後の世界へのツアー旅行を実施してます」と笑顔で言った。興味はあったが後日に改め、電話をすると番号は使用されておりませんとの機械音声が。あの時参加を決めておけばと後悔した
  769. 484卒業アルバム用に集合写真を撮影。だが何度撮影しても写らない5人がいる。結局この5人は別枠扱いになったが、出来上がったアルバムの集合写真の右上には白い丸が5つ並ぶだけで、彼らの写真はなかった。その後彼らは全く別々に行方不明に。以来、毎年卒業アルバムに写り込むようになった。
  770. 483友人宅に泊り込みで飲み会。強烈な尿意で深夜に目を覚まし、トイレに向かう廊下で突然金縛りに。笑い声をあげ女が宙を泳ぐように迫って来る。恐怖に襲われるが、それ以上に尿意が。友人宅で漏らす訳にはいかない!すると女はフッと消えた。俺は恐怖に勝った!が、トイレで女が待っており…
  771. 482タクシー待ちの一人一人を指差し「死ね!お前もお前もお前も死ねー!」と怒鳴る男がいた。すると男は突然車道に飛び出し、やって来たタクシーに跳ねられたが、誰も反応しなかった。別の日、その場所にまたあの男が。あんた死んでるよと教えると、以来「死ねー!」と俺だけに言うようになった
  772. 481母が嬉しそうにカレンダーにバッテンを付けた。どうしたの?と訊くと「お父さんがね、生まれ変わる日なのよ」と目を輝かせる。カレンダーを見るとある日付を赤丸で囲っている。すると父が手に包帯を巻いて現れ、父にもどうしたのかと訊くと「生まれ変わらせられるんだ」と顔色を悪くし言った
  773. 480道に沢山の人の顔が浮かび上がるという心霊スポットに行くが、そこには顔ではなく大量の血が広がっていた。すると前方で少女がケンケンパをしており、その度に地面から血飛沫が上がっている。「あそぼ…」突然目の前に現れた少女に言われると、次の瞬間地面から顔を出し夜空を見上げていた。
  774. 479大型連休に入ると、近所の子供達の声がうるさい。1時間程度なら我慢できるが、毎日朝から夕方までとなると気が狂いそうだ。耐えきれず「うるさい!」と怒鳴ると子供達は去って行ったが、翌日から執拗な嫌がらせを受けるようになった。あまりに酷い為通報すると、家の前で警察が殺されていた
  775. 478「なぜ生きてるんだろう?」という疑問が常に頭にある。『生きる意味は自分で作ればいい』と人は言うけど、そもそも生きる事に興味を感じない人生に、自らそれを見出す事は難しい。だが何故か人が苦しむ姿を見る事は楽しいと感じる。意味を見出すのであれば、唯一そこに道がある気がする…。
  776. 477「最近さぁ女の犬がしつこく付き纏うんだよ」「あ~しつこいのは人間でも犬でも困るよな…ってオイ、『女』の犬って、お前彼女いたの?」「違うよ、犬が女なんだよ」「《メス》じゃなくて?顔が女、とか?」「いや兎に角『女の犬』なんだよ。ほら今お前の足元に」「うわっ!『女の犬』だ!」
  777. 476割引価格で購入したホールのケーキに包丁を入れると、ブズと音を立てて赤い液体が溢れ出てきた。怖くなって警察に通報すると「お宅で20軒目ですよ」と言われ、更に「でも貴方もどこで購入したか覚えてないんじゃないですか?」と言われた。確かに覚えがない…。今年最悪の思い出になった。
  778. 475連続婦女誘拐事件が発生、自首した男には両足がなかった。男の住居には被害者の女達がいたが、女達は男を教祖の如く信奉していた。曰く男は人類存続を目的に、絶望的食糧難でも子孫が残せるようにと身を呈して『人食』を勧めた。男の自首理由は、人食にハマった女達の狂気に恐怖した為だとか
  779. 474車を有料駐車場にバックで止めようとするが、まだ後ろのタイヤ止めまで距離があるのに障害物センサーが鳴る。バックモニターにも、車から降りて確認しても何もない。構わずバックすると、グシャと何かを潰した感触が。後日そこは刑場近くで晒し首があった場所だと知った。あれはつまり…
  780. 473図書館に行くと、まだ幼い子供がブツブツ呟きながら『解剖術』という本を読み耽っており、時々クスクス笑う。そのページを見ると内臓摘出の写真が。変な子だなと思っていると、その子は「僕の内臓が見たいって、変な事言うなぁ」と本と会話しており、怖くて立ち去ったが、その子の身を案じた
  781. 472私だと思ってね、と彼女はフランス人形をくれた。ある日遊びに来た友人が突然人形を掴んで外に行き、それに火をつけた。人形からはキィィと奇怪な声があがる。「お前が貰ったのは人形じゃなく彼女自身だ」と友人が言う。彼女は目をくり抜いた俺の写真を貼り詰めた部屋で、焼死体で発見された
  782. 471彼とは特別な夜を共にする筈だった。だが彼は現れず、殺されていた。「お前を殺せる筈だった…」と彼の残留思念が囁く。本来は私が殺され、終える筈だった。だが彼も誰かに命を狙われ、私に辿り着く前に殺されてしまう。そしてまた蘇り、殺される。私が死なない限り、私達に終わりはないのだ
  783. 470ある日友人が血だらけで現れ、どうしたの?と訊くが、何が?と訊き返された。全身血だらけだと言うと、頭おかしくなった?と頭を軽く叩かれた。すると友人から血は消え、普通の姿に戻った。その晩、鏡に映る自分が血だらけで見えた。考えた結果、翌日全く知らない人の頭を小突いて逃げた。
  784. 469ある電柱に男が首を吊ってぶら下がっていた。だが通行人の誰も気づいていないようだ。あれは自分にしか見えていないのか?そう思いなるべく気にしないようにした。がある日、電柱に首吊り男がおらずどうしたのかと思っていると、「気づいてるなら何とかしてくれよ」と背後から声をかけられた
  785. 468プロを目指し漫画を描いていると、ページの1コマに描き覚えのない人物が。それは何度か続き、その人物と背景に動きがある事に気づいた。絵を辿るとある建物の前で立ち止まり、表札には某有名漫画家の名があった。私はその先生に描いた漫画を送ると、ある日アシスタントが刃物を持って現れた
  786. 467「サンタさんはいるもん!」「いないよ!ね、先生?」「う~ん、サンタさんは信じる子の所には来るし、そうじゃなければ来ないかな」「じゃあ私の所には来るね!」「でもこいつの言う事信じない方がいいよ、この前も幽霊いるとか言ってたし」「いたもん!先生の横に!」私は流石に苦笑いした
  787. 466私は悲しくて泣いていると、「大丈夫ですか?」と男性に優しく声をかけられた。心に響く声。『一耳惚れ』とでも言うのだろうか、私はその声に恋をした。だがなぜか彼の顔はモヤがかかり見る事ができない。私達は交際に至ったが、彼の声に意識を注ぐ為に目を潰すと、彼は悲しみ、去って行った
  788. 465家族旅行から戻り、撮影したビデオを鑑賞中、ふと気づいた。色んな場所で撮影したが、途中から何処でも、必ず一瞬同じ男が映り込む。移動の何気ない風景、見晴らしの良い峠、昼食のお食事処、帰りの車中…。すると画面が今まさに映像を見る我々に切り替わり、その背後にあの男が立っていた。
  789. 464会社に地味で仕事のできない女の同僚がいた。俺は彼女を辞職に追い込もうと、陰で嫌がらせを繰り返した。それから暫くして彼女は辞職。俺は腹の中で爆笑した。後日彼女は全く別の分野で才能を発揮し有名人に。彼女のファンがネット上に俺の全裸写真と個人情報を公開し、俺は社会から消された
  790. 463人が少ない深夜の駅。終電を待っていて、ふと何かに気付いた。ホームに、鼻から上だけの人の顔がある。その顔はチラとこちらを見たが、すぐに線路側を向いた。暫くして電車がやって来て戸が開くと、口から下の人の体が降りて来て、ホームの顔を拾い、再び電車に乗った。私は終電を見送った。
  791. 462過酷な過去を持つ殺人犯が『生きる為に殺した』と発言。世間では同情の声もあったが非難も多かった。当然だ、どんな理由があろうと人を殺していい道理はない。私は厳しく罰するべきと口にした。その後私はある事で多額の借金を負った。妻の保険金が頭に浮かぶ。妻が珍しくお茶を入れてくれた
  792. 461金を貸した友人に取り立てに行くと、何の事?と返ってきた。初めは冗談かと思ったが、本当に覚えていないと言う。都合良すぎだろ!と怒ると、友人が突然白目を剥き、ちょっとごめんと席を立った。暫くして戻ってきた友人が、悪かったなと血のついた金を差し出した。その顔は別人のようだった
  793. 460今の吸血鬼のイメージは映画の影響が大きいが、魔術や蝙蝠に化ける等の話は、その者の中に催眠術を操る者がいた事に起源する。大蒜はそれを解く効果があり、また十字架を象徴とする強い信仰心を持つ者には通用しない。吸血鬼は心弱き者を操る事から、現在政治や企業の頂点に君臨するとの説も
  794. 459自殺をしに樹海に入ったが、「やめておけ」「後悔するぞ」「死ねば楽になると思うな」「死でも苦しみが待っている」「寧ろ『死』には苦痛しかない」「『死』は地獄だ」という死者達の声が聞こえてきた。僕は死ぬ事が怖くなり、生きる事にした。だが『生』に囚われるあまり、その身を滅ぼした
  795. 458ギャッ!と夫が声をあげ、どうしたの?と訊くが苦笑いで「何でもない…」と言う。そしてまたグワッ!と言うので大丈夫?と訊くと、青い顔で「大丈夫…」と答えた。そんな事が暫く続き、私は夫の会社に『不倫男』とFAXを大量に送りつけた。夫は会社をクビになったが、悲鳴は聞かなくなった
  796. 457都会の雨は汚いと聞くので、僕はグラスで雨水を受け、全て蒸発して乾くまで放置してみた。うん、確かにグラスの底に灰色の何かが残っている。するとそれが微かに動いて見えた。その何かを学校の顕微鏡で見てみると、それは苦悶に顔を歪ませる『人』の集合体だった。僕は水すら飲めなくなった
  797. 456「またこいつSNSでの発言で炎上したんだってよ」「そんなバカ相手にすんなよ」「でもムカつく奴には言いたくなるだろ」「お前はバカか?バカを相手にする奴は同等かそれ以下のバカだけだ」「そういうお前は何様だよ」「俺はいつか総理になる男だ」…ねぇ、あの人ずっと一人で喋ってるね…
  798. 455男に首輪とリードをつけて歩く女がいた。その手の趣味の人達なのだろうを素通りしようとすると、女に声をかけられた。「貴方、犬が欲しいんじゃない?」図星だった。女は男を繋いだリードを私に差し出す。「いや、これ人間だし」「よく見なさい。犬よ」彼女に言われると、男が犬に見えてきた
  799. 454バイトの休憩中に非常階段でスマホを弄っていると、上から下りてくる足音が。だが姿は見えず、足音だけが通り過ぎ下って行った。この体験を店長に話すと、店長は訝しげな顔でこう言った。「君、この前も同じ事言ってたけど、そもそも非常階段なんてないから。一度お祓いにでも行ってきな」
  800. 453新人モデルのテスト撮影。だがどうしても顔が強張る。埒があかないのでとりあえす撮った写真を確認するが、どれも真っ黒だった。撮影し直すとモデルに言うと、モデルは限界ですと泣き出し、こう言った。「カメラマンさんの背後から、大きな女が覆い被さるようにカメラを覗き込んでるんです」
  801. 452巨大な蛇に全身を締め付けられる夢を見た。次の晩の夢でも巨大な蛇が僕を締め付けたが、黒い犬が現れ互いに噛み合い、死闘の末に両方とも死んだ。翌朝玄関前で、蛇が獣に食いちぎられたように裂かれて死んでいた。祖父は蛇の亡骸を包むように手に取り、亡くなった祖母の名を呼び抱きしめた。
  802. 451大学の友人達が他殺体で発見され、皮膚を切り取った箇所にパズルのピースが置かれていた。ある日大勢の女達が俺を囲みに、こう言った。「残り1ピースで『贖罪』ってパズルが完成するの。協力してもらうわ」俺達は一人しかヤッてないのに…。幾つものピースで、女達のパズルが出来上がる。
  803. 450海外での長い一人旅から戻ると、家族は皆殺されていた。連絡手段もなかった為、何も知らなかった。犯人に面会すると「お前は放蕩者だから家族を守れなかったなぁ」と言い、嘲笑された。メディアでも僕はそう言われており、世間に味方はいなかった。僕は刑務所前で、自分の身に火をつけた。
  804. 449昔の家族写真を見ていると、赤ん坊の僕の横に見知らぬ女性が写っていた。母に訊くと急に改まり、僕の実母だと言う。実母はこの写真を最後に病で亡くなったそうだ。するとまた幼い僕と別の女性の写真が。母はこの人も実母だと言い、外身は知らない人、と加えた。まさか今の母も?母が微笑む。
  805. 448部屋を薄暗くして雰囲気を出し、一人怪談本を読んでいると急にゾクリとし、後ろに気配が…。振り返ると女が立っており「その話、私の事…」と言った。え!そうなの!?と驚くと、「私の事、ってことにしておいて、自慢できるから…」と言って消えた。え…誰に自慢するの?っていうか今の誰?
  806. 447「運命感じるわ~」が俺のナンパの決まり文句。けどそれで女がついてくるわけじゃなくて、まぁ取っ掛かりってヤツだな。でもこの前声かけた激カワの女から「うん、運命だわ」って返されたもんだからビックリしたよ!今も仲良くしてるよ~。え?額のこれ?あぁ、焼きゴテ。運命の証だってさw
  807. 446部活の早朝練習。欠伸混じりに皆で校庭をランニング中、誰かが突然「ダーッシュ!」と叫び全力疾走を始めた。それを皆がオリャー!と追いかける。元気だなと追わずにいると、先頭の奴がチラとこちらを見て消えた。先生に報告すると、意味深な表情で「お前の為だ、退部しろ」と肩を叩かれた。
  808. 445クリスマスの夜が怖いの…。それまで毎年靴下に普通のプレゼントが入ってたのに、去年のプレゼントが血だらけだったの。私が夜こっそり見たサンタさんも、カクカクって動いて変だったし。あ~あ、パパがいてくれたら怖くないのに。パパはどこ行っちゃったんだろ。ママは教えてくれないし…
  809. 444親友から自殺すると電話が。私は必死に説得するが「何もわかってない!」と一切応じない。切羽詰まった私は「なら私も死ぬ!」とつい口走ると、親友は無言で通話を切った。着信が鳴り、画像とメッセージが届く。何枚もの死体の写真。「秘密を持ってくから」の文字。私は「ごめんね」と返した
  810. 443旦那が珈琲豆を挽きながら「豆の栽培園で働く子供達には、親の借金や誘拐被害のせいで一生無給で働く奴隷同然の子もいるんだよ」と話し、私は気の毒で飲む気が失せた。旦那は上機嫌に珈琲をすする。が、突然天を仰ぎ見て聞き慣れない言語を口にし、涙を流してスプーンの柄を首に突き刺した。
  811. 442妻がDIYを始め、俺の知らぬ間に棚や小物入れ等が増えていく。用途不明の物まであるが、口を出すと後が怖い。だがそれに使う金は元々俺の稼ぎだ。「結構材料費がかかるだろ?」と訊くと、木材はほぼタダだと言う。ある日物置で妙な物音がするので見てみると、そこには大量の卒塔婆があった
  812. 441奥歯が痛くて鏡を見ると、歯に『眼』がついてた。別の日は奥歯がモゾモゾするので、見ると今度は『手足』が。段々大きくなるそれは、口からはみ出すと、やがて新しい『僕』になった。僕は古い肉体を捨てると、家族は古い僕に泣きついた。今の僕には、ただ古いだけの前の自分の価値が解らない
  813. 440スマホでコスメサイトを閲覧中、「ママあのね」と何やら一生懸命話す娘に「へぇそうなんだ」と気のない返事をする。娘は度々ママと呼ぶので、買い物ページを開いていた私は「ママも忙しいの!」と叱った。暫くしてまたママと呼ぶ娘を見ると、手首から大量の血を流し「お話聞いて…」と言った
  814. 439風邪っぽい…。怠そうな僕を友人が大丈夫かと心配する。う~んと曖昧な返事をすると、クシュンと出たくしゃみの勢いで鼻から何かが飛び出し、それは〈ギィ〉と鳴くとすぐに引っ込んだ。友人が目を丸くし僕の鼻を見ている。えっ今の何?と訊くが、友人は目を逸らし、う~んと曖昧な返事をした
  815. 438電車に乗っていると、これをどうぞと小さい花を一輪ずつ乗客に配る老女がいる。変な人だなと思いつつも差し出された花を受け取ろうとすると「あんたにはやれん!先祖の仇!」と老女は花を捨て鞄から小刀を取り出した。慌てて逃げるが男に遮られ「諦めて覚悟しな」と言われた。老女が歩み寄る
  816. 437授業中、突然先生が「えーーー」とフリーズしたPCのように止まった。先生大丈夫?との声にも反応がない。先生肺活量スゲェ!と誰かが叫ぶと、確かにスゲェ!と皆が歓声をあげた。ある女子が先生に近づき「去れ」と言うと、先生は何かが抜けて崩れるように倒れた。先生は既に酸欠死していた
  817. 436荒廃した世界に生まれた子供達。彼らは必死に集めた水を僅かに口に含むと、残りを乾いた大地に注いだ。何故そうするのかと尋ねると、ここに緑を育てるのだという。旧世代は個が生に縛られ破滅した。だが新世代の子供達は種を繋ぐ為に生きている。私は受け取った水を躊躇いもなく口に運んだ。
  818. 435知り合いからお歳暮で立派な魚を貰った。魚は冷凍された状態で、解凍後も鮮度がよく美味しく頂いた。が、その日から食べた皆が夢でうなされるようになった。埠頭に立つ女が、振り向くと頭から血を流し、恨めしそうな目を向け海に落ちるのだ。知り合いに夢の事を話すと、翌日から失踪した。
  819. 434親友の祖国は嘘をつき、僕の国を騙す。僕は彼の国が許せず、彼の事も憎むようになった。我々が正義!彼が僕の前に現れ、叫ぶ。「何故国でなく僕を見てくれない!?」「お前の国は悪だ!だからお前も!」彼が僕の手を引き、僕は彼を刺した。彼は僕を強く抱きしめ、息絶えた。僕は、正義だ…
  820. 433二階の部屋で娘を遊ばせていると「あっコトリさんだ」と窓に駆け寄った。窓を開けたので危ないよと声をかけるが外に身を乗り出そうとし、私は慌てて止めに入った次の瞬間、娘が吸い込まれるように窓の外に消えた。娘が目の前で行方不明になった。『コトリ』とは、小鳥?…ことり…子盗り…
  821. 432彼氏が「かき氷食べたい」と言い、私はかき氷機を押入れから出す。氷に苺シロップをかけて彼氏に出すと、ヤッホーと口に一気に掻き込み、直後に「痛ぇ~頭が割れる」と悶絶。当然でしょと言ってやると、彼氏の頭が割れ血が吹き出し、作り途中の私のかき氷が苺シロップをかけたように染まった
  822. 431死後の世界と行き来できる機械が開発された。愛する者を亡くした人々はこの機械の登場を喜んだが、費用はまだ高額で、実質富裕層のみに使用が許された。中にはあちらに渡ったまま帰らない者も。それとは逆に死者を連れ戻し、犯行への利用を目論む組織も現れた。その為厳しい法令が作られた
  823. 430「パパ…」娘の声がする。不妊治療を経て授かった念願の子供。だが僅か数年で失った。妻が育児ノイローゼになり娘を…。なのに何故警察は僕を?娘を殺したのは妻だ。「パパ…」再び声がした方を見ると、娘の遺体が。駆け寄ろうとするが警察に止められ、こう言われた。「お前に娘はいない!」
  824. 429朝起きると、ドアポストに新聞が投函されている。え?契約してないけど…。新聞を引き抜くと、ポロリと中から何かが落ちた。血に塗れた肉片だ。外には警察が来ており、近所にも同じような肉片が配られたらしい。後日、肉片はこの地区担当の新聞配達員の物だと判明。犯人も目的も判っていない
  825. 428ペットの犬が噛んだと娘が泣き喚く。テーブルの下で噛まれたと言うので、叱るように犬を呼び屈んで見ると、血塗れの犬がそこにいた。ドクドクと広がる血。私は悲鳴をあげ駆け寄ると、足に鋭い痛みが走り、血が流れ出た。その場に肩から倒れると、犬の死骸から這い出た何かが飛びかかってきた
  826. 427付き合って暫くすると、彼氏は愛情らしきものを示さなくなった。それとなく「私なんかより良い人は一杯いるよね」と彼氏の気持ちを伺うように言ってみた。すると彼氏は「いや、他の女はいつか殺してやろうと思ってるけど、君はそう思わない」と言った。別れるべきだろうが、何故か嬉しかった
  827. 426一人残業中、停電で真っ暗に。おい何だよとスマホのライトをつけ廊下に出る。すると「大丈夫か?」と前方から誰かに声をかけられた。「いやぁ参りましたね」と返事をすると、「無理すんなよ」と耳元で声がし、驚いて転倒した。明かりが戻ると誰もおらず、傍に死んだ上司の手帳が落ちていた。
  828. 425散歩中、上を向き同じ位置でグルグルと回る男がいた。そういう人なのだろうと素通りするが、傍で女も同じように回っていた。見れば他にも大勢が回っている。すると皆がほぼ同時に歓声をあげ、次の瞬間口から泡を吹き次々と倒れた。世間ではカルト教団の集団自殺として騒がれたが、真実は不明
  829. 424「バーカ」「あ、バカって言った奴がバカなんだー」「じゃあ死ねぇ」「何ぃ?お前が死ね!」「いぇ~死ね死ねぇ~」「ちょっと男子やめなさいよ」「ウッセ黙れブス」「いぇ~ブスブス~」「何よ~殺すわよ」「やれるものならやってみな~」「やってみ…えっ何それ?」「イイノカ?喰ッテ…」
  830. 423復讐を果たした。男達は私に薬物を投与し、3日間強姦し続け、飽きたからと繁華街の真ん中に私を裸で捨てた。保護され病院に入り、長く苦しい禁断症状と戦ってきた。私は積もる恨みを抑えきれず病院を抜け出し、男達を殺した。だが男達はまだ私の前に亡霊として現れる。苦しみは終わらない…
  831. 422スマホに「こんにちは」とメッセージが。画面に送り主の表示はない。次に「君は僕を好きになる」と来た。気持ち悪さに総毛立つ。続いて「会いに行くよ」と…。恐怖に震えていると「今、君の後ろにいるよ」と入り、恐る恐る振り返ると、そこには『子犬』がいた。え~?やだぁ~超カワイイ~
  832. 421美しい女性が倒れていたので、家に連れ帰った。その女性は肉体的にも素晴らしかったが、特に僕を魅了したのは『鎖骨』だった。例えこの女性を失ったとしても、鎖骨だけは…。僕はまだ息のある女性から鎖骨を取り出した。が、違う…。これは女性の一部だから美しかったのだ。僕は途方にくれた
  833. 420民家に火をつける。すぐに燃え広がり、住人の悲鳴と逃げ惑う足音が騒々しく響く。その光景に恍惚とする。が、燃え尽きてしまえばまた虚しい日々を思い出し、人を死なせてしまえば激しい自己嫌悪に。帰宅すると自宅が燃えている。何故?母と弟が火に包まれ窓を突き破った。僕は火に飛び込んだ
  834. 419戦争で負傷し寝たきりとなった僕を、恩があるからと現れた女が世話をしてくれると言う。だが女は毎日違う容姿で現れる。もしや人ではないな?思い当たるのは戦場で介抱した猫。あの後死んでしまった。『猫の恩返し』と言ったところか。増え続ける女の行方不明者。僕は、口をつぐむ事にする。
  835. 418豪華な生活ぶりをSNSで披露。毎日豪華な食事や高級ブランドで着飾った写真を投稿する。「羨ましい」と言うフォロワーのコメントに充実感と優越感を感じ、満たされる。だがいつからかフォロワーから「大丈夫?」「痩せ過ぎ」とコメントが。大丈夫。いつか臓器を全部買い戻せばいいから…。
  836. 417公園で、娘が突然泣き出した。訊くと足に女がしがみついていると言う。見ると確かに手形が。私はどうしたらいいかわからず、娘の足の周りを木の棒で払ってみた。泣き喚く娘と棒を振る私を見た他所のママが「何やってるの!?」と止めに入った。いや、違うんです!娘の足元で女の笑い声がした
  837. 416映画を観た帰りの車中、残ったポップコーンを助手席で見事にひっくり返した。拾おうとすると座席の下から白い手が伸び、散乱したポップコーンを鷲掴みに。そして次々と座席の下に運び込み、咀嚼の音を立て、全て運び終えると、最後に親指を突き立て静かに引っ込んだ。お気に召したようで…
  838. 415厄介な事になった。新しく取ったパスポートで海外旅行に来たのだが、まさか写真に変な顔が写り込んでいたとは…。初めは小さくて気づかなかったが、旅行中にそれは段々大きくなり、帰る頃には完全に顔を覆い隠す程になっていた。つまり、今や写真は別人の顔になっているのだ。国に帰れない…
  839. 414電子レンジの扉を開くと、中に男の頭が。驚いたが瞬きをするとそれは消えていた。トイレの扉を開くとさっき見た頭が転がっており、またすぐに消えた。何が起こってるんだ…?そして押入れを開けるとまた頭があったので、「一体何のつもりだ!」と叫ぶと、頭は「気にするな…」と言って消えた
  840. 413塾から帰ると、母が父の喉を喰いちぎっていた。鮮血舞うその光景に、手から鞄が抜け床に落ちた。音に反応した母が振り返る。「あら、お帰り…」全身血に染まった母が普段と同じ声で言う。何これ?となんとか声にすると、「お父さんね、浮気してたのよ…」と母は口から血を垂らし小さく笑った
  841. 412VRゲームの課題として、プレイ中は没入する余り現実の周囲に注意が及ばず、怪我や盗難、器物破損や痴漢などの様々な点が残されている。またゲームと現実の区別がつかなくなり犯罪に走ったり、仮想現実に取り込まれ、肉体から魂が抜けてしまった恐ろしい例も報告されている。魂の行方は不明
  842. 411バスを待っていると、後ろから髪を引っ張られた。振り返るが離れた場所にスマホを弄る人しかいない。誰が髪を…?周囲を探しているとバスがやって来たので乗り込もうとするが、突然何かに髪を鷲掴みにされ「お前はアレに乗れ…」との声が。やって来た黒いバスには『闇行き』と表示されていた
  843. 410ゲームの最中、携帯が鳴った。見ると友人から。今良い所だからと無視するが、着信は鳴ったり切れたりを繰り返す。鬱陶しいが流石にここまで無視しておいて今更出る事はできない。すると遂に着信が途絶えた。後日友人が他殺体で発見された。今でも入る友人の電話から、断末魔の叫びが聞こえる
  844. 409自転車日本一周の旅に出発。だが早々に車に接触し危うく轢かれそうになった。暫く走ると田園風景が広がったが、なぜかハンドルを取られ田んぼに突っ込んだ。それにもめげずに進むと山道に突入。が、今度は何かに弾き飛ばされ、自転車は崖に落下し大破した。数時間で旅を断念し、寺に向かった
  845. 408私は子供を夫の暴力から守る為に逃げ出した。あの時は子供の事に必死で、飼っていた犬を置き去りにしてしまった。室内で糞の粗相をした時、まだ子犬なのに蹴り飛ばされていたのを思い出す。最近、子供の写真に必ず小さい光が写り込む。あのコは人を憎みもせず子供の傍に…。本当にごめんね…
  846. 407自殺した画家の数百万円する未完の絵を購入。この画家はオカルトに傾倒し、絵具に自分の血を混ぜたという。他にもそういう画家はいるが、この人の絵はもっと破滅的で、そこに心惹かれた。絵に顏を近づけ、ズルリと舐める。実は絵具には猛毒も混ざっている。吐いた血を浴びせ、絵を完成させた
  847. 406朝、窓から差す眩しい陽の光のおかげで部屋が明るい。家賃を少し奮発して日当たりの良い部屋を借りて良かった。気持ち良く食パンをかじっていると、床に当たる光の中に人のような影が差した。窓際には何も遮るものはない。すると影の両横から手が伸び、見えない何者かに首を締められた。
  848. 405高血圧で、医者の指示で断酒。だが夜は酒が恋しくなり、酒の代わりに何かないかと台所へ行くと、『鬼』がいた。細く筋肉質な鬼が、あぐらをかいて一升瓶で酒を呷っている。鬼は俺を見るなりだらしなく笑い、旨ぇぞ~と酒臭い息で言った。俺はおにぎりを投げつけ鬼の形相で鬼を追い出した。
  849. 404死を迎える少年がいる。彼は薄い曇り空を見上げ、静かな眼差しで舞う鳥を追う。すると複数の影が視界に入り、どこか慌てた様子で立ち去った。少年はふと思い出す。彼らは僕を友達と呼び、僕は何をされてもそれを信じた。なのに…。でも僕には家族がいる。帰らなきゃ…帰らなきゃ…帰ルカラ…
  850. 403胴から両断され内臓を抜かれた遺体の切断面には、獣の牙のような痕が。だがそれはどの大型肉食動物よりも大きく、未知の生物の仕業かとも囁かれた。が、解体業の男が自首。自作の獣の歯型を取り付けた重機で、通りがかりの人物を襲ったという。男は語る。「獣の捕食ってそういうものだろ?」
  851. 402広い公園を彼氏と手を繋ぎデート。すると子供がこちらに駆けてきたので避ける為に手を離そうとするが、彼氏が離さず逆に引っ張った。私はぶつかったと思ったが、子供の姿がない…。彼氏に子供の事を訊くと、こう言った。「子供は見てないけど、変なデカイ女が君の首を締めようとしてたぞ!」
  852. 401すっかり陽が沈んだ時間、塾へ向かい自転車で急いでいた。ライトの調子が悪く点かないのでそのまま暗い道を行くと、何かを轢いて自転車ごと跳ね、勢いよく転倒した。あちこち擦りむき血を流すと、「いいニオイだ…若い血のニオイだ…」と言いながら、黒い何かが地を這いワラワラ集まってきた
  853. 400百物語が原因で生徒2名と教師1名が行方不明になった。騒動を恐れた学校はこの事を隠蔽。だが逆に勝手な噂が立ち、百物語が地域の密かなブームに。行方不明者が続出し、事の重大さに漸く気づいた学校は事件を公表、危険を訴えた。百物語は多くの犠牲を出しながらも、真実は不明のままである
  854. 399自信のない私は、鏡に映る自分に『大丈夫』と自己暗示の声をかける。私は大丈夫、大丈夫…。ふと『何が大丈夫?』と浮かんだ。大丈夫、何が?大丈夫、何が大丈夫?何が大丈夫なの?大丈夫じゃない…。全然大丈夫じゃないよ!気づくと、母が首を掻きむしる私を「ごめんね」と抱き止めていた。
  855. 398生徒達に紙粘土で仮面を作らせた。すると割と目立たない女子生徒がとても綺麗な女性の面を作った。モデルは誰なんだい?と訊くと、死んだ母親だと言う。僕はその仮面に魅了され、補修を加えよりリアルな物にして返すと、生徒は発狂し仮面を叩き割った。割れた仮面が「早くおいで…」と笑った
  856. 397友人に別荘へ招待された。玄関で虎の剥製に迎えられ、リビングでは熊や狼が待っていた。他にも沢山の剥製がある。凄いねと友人に話すと、お爺さんが趣味で集めた物らしい。深夜、獣の唸り声で目を覚ますると銃を持った老人がおり「動物達の魂はまだ生きている。すまんが餌の時間だ」と言った
  857. 396大勢の人が行き交う駅の地下通路で、赤ん坊が地面を這っていた。私は危ない!と人を掻き分け駆け寄るが、そこに赤ん坊はいなかった。気のせいかと先に進むと、ホームで「私の赤ちゃん見なかった?」と女性に声をかけられた。すると女性は「あ、いた!」と、電車がやって来た線路に飛び降りた
  858. 395私はおっとりした性格で、名前の漢字が似ているからとクラスの男子から『ノロマの呪子』とあだ名を付けられた。机の中に釘を刺した人形や怖い本を入れられ、女子からも呪われるからと無視されるように。反対に親や先生は私を気遣い優しくしてくれた。それが欲しかった。人を操るのは簡単だ
  859. 3945歳の娘の話には『擬音』が多い。「これがカッシャってなってビューってなるとポンってなるんだよ」まぁ何となく言っている事がわかるので特に注意する事もなかった。ある日「モワッとした人がドンッてなってプラプラしてたの、お部屋で」と話した。ここは賃貸アパート。へぇ~そうなんだ…
  860. 393スマホの文字入力でどうやっても『ミ』と入力され、仕方なくミはそのままに続けると、次に『t』『E』と入力された。何だか嫌な予感がしたが最後まで入力すると『ミtE他デ書?』となった。そこで着信があり、画像が届いた。窓際に立つ女。あ、昼間見たマンションの女だ。あの後まさか…。
  861. 392山道のカーブで崖に落ちた車と遺体が引き上げられ、損傷の激しい遺体には両目が無かった。調べでは、どの時点でかは判らないが両目はエグられており、それが事故の原因とされた。身元確認では遺族が「もうダメだ…」と泣き崩れていた。後日遺族も遺体で発見され、全員両目をエグられていた。
  862. 391思春期の息子が珍しく声をかけて来た。「ねぇ、体調悪くない?」少々怠かったが大丈夫と答えると、ふぅんと自室に戻って行った。別の日息子の部屋を掃除中、血の付いたお札を数枚見つけた。息子に訊くが答えないので追及すると「毎朝玄関に貼ってあるよ!恨まれてんじゃねェよ!」と怒鳴った
  863. 390商店街を歩いていると、建物の間から「あぅ…助けて…」と言う呻き声が。見ると誰かが倒れており、大丈夫ですかと駆け寄ると、それは人ではなくボロボロの毛布だった。でも今確かに呻き声が…。すると突然現れた男にバットで頭を血飛沫が飛ぶほど殴られた。「あぅ…助けて…」あ、自分の声…
  864. 389「◯◯死ね」という言葉が流行語に選ばれ、批判が出るのは当然だよね。でも流行になった背景が選考の大きな理由な訳っしょ?ヒップホップだって社会への怒りをラップに乗せた事がルーツだし、言葉の上部しか見ないのもどうかと思うね。と言う事で、俺は『ブチ殺す』で流行語を狙うぜMEN⤴︎
  865. 388祖母が亡くなった祖父の昔のコートをくれた。祖父は若い頃はお洒落だったらしく、確かにコートはいい物だった。ん?胸に補修の跡が。祖母に訊くと、おじいちゃんは昔ヤンチャだったからねと微笑む。すると祖母が急に項垂れ「あの時確かに刺した筈なのに…殺した筈なのに…」と繰り返し呟いた
  866. 387タバコを買いにコンビニのレジへ行くと、店員が無表情のまま反応しない。あの、と声をかけるが無反応。おーいと店員の目の前で手を振ると「みえてるよ…失せろ」と店員は呟いた。何だよその態度!と言いかけると店員は急にニッコリし「失礼しました。憑いてたので祓っておきました」と言った
  867. 386郵便配達員として配達中、バイクがエンジン不調を起こした。見るとマフラーから黒い物が出ており、引っ張ると赤黒く濡れた髪がズルズルと出てきた。なんとか全て取り除くとバイクは動くようになり、配達を再開。ある封筒を手に取ると、凄まじい寒気が走った。宛先は霊能者宅になっていた。
  868. 385歌声の美しい女性がいた。だが彼女の普段話す声は男のように低い。彼女はどんどん有名になり、歌声と話す声のギャップについて訊かれると、秘訣があると言う。そんなある日、彼女は母親を亡くしたが悲しみの中にもステージに立った。だが歌声の中に低い声が混じり、口からは亡霊が飛び出した
  869. 384クラスの友人がチューブわさびを持参し「わさびってさ、青虫をすり潰した物だと思って食うと辛くないんだぜ」などと言う。試してみろと強引に勧められチューブごと吸ってみると、確かに辛くない…が不味い。すると友人が爆笑し「スゲェ!マジで青虫食った!」と言った。奴の舌を切ってやった
  870. 383不完全な状態で産み落とされ、余りの醜さに捨てられた男児がいる。彼は歩く事の出来ない体でゴミ溜めの中を這いずり回り、少年にまで育った。人を全く知らない彼は、それでも心に宿る欲求に従い生きる。やがて彼は人に出会い、石を投げられ死ぬのだが、最期の瞬間まで『母の温もり』を求めた
  871. 382ある小学校の付近に不審者出没の報告。目撃談では、汚い服と頭に麻袋を被っていたとの事。翌日から子供の登校には親が同伴、だが中には同伴しない親もおり、その親に対しネグレクトの噂がたった。実は不審者の正体は教師で、親への荒い注意勧告だったと言う。後日、教師は撲殺され発見された
  872. 381冷たい風に耳が痛くなる。耳当てが欲しいなと思っていると、ゴゥと突風が追い越して行った。と同時に耳が熱くなり、手を当てると耳が無い。ドクドクと溢れ出る血に気が動転する。更に突風を顔に受けると、今度は口が縦に裂けた。か、鎌イタチ?そう思っていると、包丁を持つ醜い女が現れた。
  873. 380政治家のA氏がお忍びで、様子がおかしくなった妻を霊視してほしいとやって来た。代々政治家一族であるA氏の評判は悪くなかったが、その陰に奥さんの助力があったのも間違いない。だが彼女は禁忌呪術に手を出し、真っ当な一族の血を汚したと怒ったA氏の先祖に祟られていた。これは厄介だ…
  874. 379私の元には曰く付きの物が送られてくる。それらに憑いたモノを落とし、時として丁寧に送り返してやる事もある。だが1件のクレームが入った。送り返された物が届いた直後にまた怪奇現象が始まったと言う。私は、原因は貴方達母娘ですよと言った。厳しい母親が、まだ早いと娘の靴を奪ったのだ
  875. 378悪霊が出ると言う家にやって来た。除霊を依頼されたのだ。家に入ると刺すような空気を感じる。家主に会うと確かに強烈な念を負っているのがわかる。ふと畳についた細かい傷に気づいた。これは…。私は家主に問う。「貴方、ここで猫を殺しました?」いいえと答える家主の頰に傷がついた。
  876. 377親友のA子から手鏡を貰った。が、それを使っていると妙な違和感を感じるようになった。私、こんな顔だったっけ…?日が経つにつれ、鏡の中の私の顔は段々見覚えのある顔に。…A子だ。他の鏡でも徐々に変化していて気づかなかった。A子に話すと「私達、身も心も通じてるのね」と言った。
  877. 376俺には自傷癖がある。リスカではなく、手の皮膚が裂けるまで兎に角何かを殴り続けるのだ。勿論その後仕事にも影響する。ある時美しい女と知り合った。彼女は俺のボロボロの手を見て、滑らかな手でそっと包みこう言う。「どうか自分を傷つけないで」そして声を変え「オ前ハ私ノ物ダカラナ…」
  878. 375好きでもない男の子供を妊娠、堕胎して以来、男性と性的関係を持つ事ができない。罪の意識が重くのし掛かり幻聴を聴くようになった。赤ん坊の泣き声だ。私はこの苦しみを男への恨みに変えた。男など全員クズだ。何人か殺したが幻聴は更に酷くなり、子供の声でこう言う。「お前はクズだ…」
  879. 374両親が死に、私は20年以上引きこもり続ける兄の全ての面倒をみてきた。昔の兄は私に優しかったからだ。だが私は結婚する事になり、兄には替わりに“女”を与えた。あらゆる弱みを握り、絶対服従させる事で兄の面倒をみさせる。使えなければ自殺させればいい。替わりは幾らでもいるから…。
  880. 373うちは小さい企業だが、最近社長が社長室に女を連れ込む。見兼ねた部長がどう言うつもりかと訊くが、社長は顔を青くし知らないと言う。数日後社長が事故で死亡。社内は後処理に追われる中、あの時の女が社長室からスゥと出て行った。社長室に入ると、青年が椅子に腰掛け、隠し子だと名乗った
  881. 372認知症のけがある義母が何度取り払っても家の中に石を並べる。石は近くの神社から拾って来た物で、玄関や庭側の窓から始まり、いずれも私の寝室へ続くように並べる。我慢の限界で語気を強めて訊くと、神様がお越しになり悪いモノを連れ帰ってくれてるのだと言う。そういえば最近悪夢を見ない
  882. 371俺はオタクではないが、たまたまハマッたアニメのキャラの際どい服装のフィギュアを、中古だがネットオークションで落札。届いた箱から取り出すと、臭い…。そしてペチャペチャと妙な音もする。見ると首だけの男がフィギュアを舐め回していた。このオタク野郎!◯◯ちゃんは俺のモノだぞ!
  883. 370授業でリコーダーを吹くが出たのは音じゃなくムカデだった。皆が悲鳴をあげる中、虐めっ子のAが笑っている。僕は虐められっ子にはならないぞ!仕返しにAの体操着に剃刀の刃を入れ背中を真っ赤にさせた。その関係は中学を卒業するまで続き、お互い目鼻耳手足を失ったが、今では無二の親友だ
  884. 369天気予報では今日は晴れとなっていたが、今の天気は妙にスッキリしない。毎朝飲む事が習慣となっている水一杯をグラスに注ぐが、蛇口からは真っ赤な水が出た。トイレには長い髪の毛が沢山落ちており、玄関には誰かの泥塗れの足跡が。今日に限って何が起こってるんだ?本当にスッキリしない…
  885. 368父は少女を殺し獄中で病死、母は自殺した。天涯孤独となった私だが、一人になれなかった。父に殺された少女が現れる。彼女は何もせず、ただ悲しい目で私を見る。ある日「私にどうしろと言うの!?」と叫ぶと、彼女は歩み寄り「お姉ちゃん可哀想…」と私の頭を撫でた。堪えてきた全てが溢れた
  886. 367夜だが濃い珈琲を飲む。寝たくないのだ。寝ていると深夜に必ず金縛りに遭う。旅行先、漫画喫茶など場所に関係なく…。だが起きていれば心配ない。朝までラジオを聴く事にする。お、懐かしい曲だ。目を閉じ思い出に浸る、と金縛りに…。寝ていると、じゃなく、目を閉じていると、だったのか…
  887. 366商品に対するクレームが入った。一応低姿勢で応じていたが、相手は次第にエスカレートし脅迫めいた事を言い出した。通話が録音中であると伝えるが収まらず、仕方なく警察に通報、相手は逮捕された。が、釈放されると私個人に嫌がらせを始め、もう何年も経つ。最後に物申す。死んで償え…。
  888. 365時期的にいる筈もないのに、A君が森に虫を捕りに行こうと言う。昼間だが森は日陰ばかりでやはり寒い。暫く歩いているとA君が「あっ、いた!」と叫び、木に登って捕って欲しいと僕に言う。が、僕には視えた。木の枝に擦れた痕がある。多分あそこで何人も首を…。A君、なんでここに来たの?
  889. 364古書店に立ち寄ると、気になる書籍が。僕はそれを手に取り開くと、見慣れた人物の絵があった。母や以前写真で見た若い頃の祖母に似ている…。読み進めるとその女性の数々の悪行が書かれている。すると背後に巨大な憎悪を感じた。因縁に気づいた僕は振り返える事なく書籍を買い、燃やした。
  890. 363私は母に暴力を振るい続けた父を殺した。そして私は父に呪われ、それを解く為にはある池で身を清めるしかない、と母が言う。私は母の言う通り池に入ると、青白い手が伸び私を掴んだ。水面から男の顔が浮かび上がる。父だ。父は母に言う。「醜い女だ。己の自由の為に娘を騙し殺そうとは…」
  891. 362SNSの皆の書き込みを見ていると、奇人変人な自身が好きだと感じ取れる内容が多い。僕とは真逆の彼らを知りたくて、色々質問しているとブロックされた。どうしても気になるので直接会いに行ったが変質者と誤解され、逮捕された。でも絶対知りたい。こんな探究心を持つ真人間な自分が嫌いだ
  892. 361繁華街を血塗れになった少女が歩いている。誰もが不気味がり手を差し伸べようとする者はいない。微かに地鳴りがすると少女は手にした数珠を強く握り、声にならない声で「サヨナラ…」と呟いた。その途端少女の体は木っ端微塵に弾け飛び、爆風と共にグォォと何かの雄叫びが空へと登って行った
  893. 360あの人を待ち続け、もうどれくらい経つだろう。生前私達はお互いを求め破滅的に愛し合い、壮絶な死を迎えた。共に死んだ筈だが、彼の姿がない。もしや仕損じたのかと、彼を信じ待ち続けていた。だが人は私を邪悪な者と呼び、強制的に昇天させられた。あぁ、貴方はここで私を待っていたとは…
  894. 359授業中、後ろから伸びた手が私の腕を上に引き上げた。先生が手を挙げる私を見てどうした?と言う。ちょっと何するの!?と後ろの席の男子を見るが、両手とも机の上。じゃあ誰が私の手を?と見上げると、母の指輪をした手が…。母は普段から消極的な私を叱る。でもタイミング今じゃないし!
  895. 358休日、子供が起きてこないので部屋に見に行くと、姿がない。もしや隠れているなと押入れを開けると、子供が関節を折られ押し込まれていた。私は悲鳴を上げると、どうしたの?と子供の声。見上げるとそこにいたのは、私が子供の時に大事にし、ダンボールにしまったままのぬいぐるみだった。
  896. 357現世での行いが来世に影響すると言うが、それは本人の問題に留まらず、『業』となり子に、孫にと永遠に引き継がれる。罪深さは苦しみや恨み、呪いを生み、一族が滅び去るまで深い根を張る。そして輪廻する魂はいつしかその根の元に戻り、膨らんだ『業』を背負う汚い花として咲くのである。
  897. 356ただいまと帰宅すると、彼女が無言で背を向け座っている。また勝手に不貞腐れてるな?どうしたと声をかけると、彼女がゆっくりと振り向こうとする、と玄関から彼女が帰って来た。え"!?見ると座っていた彼女がおらず、振り返ると玄関にも誰もいない。おや?そもそも俺彼女なんていたっけ?
  898. 355父が膝が痛むと言うので見てみると直径1cm程の出来物が。触れると出来物が破け、なんと植物の芽が顏を出した。抜こうとすると父は悲鳴を上げる。病院へ連れて行と、既に小さい出来物が全身にあり手の施しようがないと言う。それから暫くして父の体は硬質化し、文字通り植物人間になった。
  899. 354有名な占い師に視てもうが、占い師は終始怯えた様子。見かねた付き人が歩み寄り「先生これ以上は…」と言い、私に絶対に振り返るなと言う。そして「私が行きます」と後に控える客の方へ行くと、占い師は「あぁ、ダメだよ…」と頭を抱え呟く。暫くして戻って来た付き人は、別人のようだった。
  900. 353プロ・アマ問わずデザイナーが参加するイベントへ。面白い物が沢山あるなぁと展示ブースを見て回っていると、背中に強烈な視線を感じた。振り向くと、あるブースに奇怪なお面が並んでいる。ブースの前に立つと出品者の男性が「あぁこのコ達、貴方を凄く嫌ってますね…」と言った。気分悪っ!
  901. 352友人達とその家族を招いての食事会。友人の一人がお前の奥さん1日貸してくれよと下品な事を言う。酒の席だが妙に癇に障り語気を強めてふざけるなと言うと、奥さんがエビチリの刺さったフォークをそいつの頭に突き立て、据わった目で笑顔を見せた。俺は今度1日貸してやろうかなと思った。
  902. 3512歳の娘はよく喋るようになり、事ある毎に「ママァ!」と叫ぶ。買い物中でも、疲れてソファーでうっつらしていても「ママァ!」だ…。母親は皆こうなのだろうが、あまりの余裕の無さについ苛立ち「もう何なの!?」と怒鳴ってしまった。すると娘が笑顔で「ママ」と、半壊した女に歩み寄った
  903. 350占いに今日のラッキーアイテムは『セロハンテープ』とあり、鼻で笑った。パート先の店で在庫整理をしていると、頭上から何かが降ってきた。古いお札だ。見上げるとコンクリートの梁に痕が…。するとウゥと呻き声が響く。え?あっセロハンテープ!慌てて貼り直そうとするが、届かない。脚立!
  904. 349晴れの日、一人ツーリングで誰もいない道を気持ち良く走っていると、一瞬強い向かい風を感じた。その途端、青い空は紫色に染まり、大きな翼を持つ鳥ではない何かが何匹も飛んでいた。するとバイクの後部席に重みを感じ、頭に声が響く。「運悪ク迷イ込ンダナ。翼ノ者達ガ来ル前ニ引キ返セ…」
  905. 348友人達とスノボーをしに雪山へ。だが一人が戻って来ない。捜索隊も出動し一週間費やしたが発見できなかった。が、地元に戻り暫くするとスマホに「寒い」「出して」と行方不明の友人からメッセージが入り、直後に警察から電話が。山の食堂の大型冷蔵庫から、友人がバラバラ死体で発見された。
  906. 347帰宅中、某ビルの前を通りかかると上から何かが降ってきて地面で跳ねた。見るとハサミだ。危ないなと見上げると今度はブラウン管テレビが降ってきて地面で砕けた。何なんだと後ずさると、次に目の前で人が地面に激突、血飛沫を顔に浴びた。悲鳴をあげ後ろに仰向けに転ぶと、頭上に車が…
  907. 346子供の頃、私が漕ぐ自転車の前輪に黒猫が飛び込み死なせてしまった。それ以来私の頭上高い所には常に鴉が飛んでいる。不吉さにいつか何かがと恐れながら過ごし大人になった。そんなある日暴漢に襲われそうになった時、鴉が男を撃退、事なきを得た。私は護られていた?昔の事故は鴉にとって…
  908. 345擦り傷がカサブタになると、同僚がそのカサブタをくれと言う。剥いたら痛いしそんな物どうするんだ?と訊くと、同僚は頼むと手を合わせ、彼女の好物なんだ…と。んな気持ち悪い女とは別れちまえよと言いかけ、同僚のデスクの上の誰も写っていない風景写真と傷だらけの腕の理由に気づいた。
  909. 344朝家を出ると一面雪で真っ白。嫌だなと思いつつも仕事へと出発。すると異様な光景が。宙に雪が積もり浮いている。ここに何かあるのかと手を伸ばすと、誰かの記憶が流れ込んできた。登校する我が子の背を見送る母親に、雪でスリップした車が…。私は宙に浮く雪を払い、前を行く成年の背を見た
  910. 343俺は心霊系に懐疑派だが何故かその類が好きである。ある日ネットで知り合ったオカルト好きのオフ会へ。会場の居酒屋に行くと、凄い人数だ。どうも◯◯ですとHNを名乗り、大勢集まりましたねと言うと、幹事が不思議そうにまだ4人ですけどと言った。いやいや俺は信じないよ。嘘…ですよね?
  911. 342人に裏切られた。甘い言葉=下心、優しさ=上部、そんな裏切りだった。つまり私は騙されたのだ。今は人を拒絶したい。私は部屋に篭り、負の感情に落ちていく。だから私はダメなのだ、と心の中で自分が言う。だったら死んでみる?と別の自分。いや、アイツを殺そう…。私が言うと、皆が頷いた
  912. 341自首した少年が家族殺害を告白。曰く彼の家庭はごく一般的だったが、兄を階段で誤って死なせ、それが原因で家庭が崩壊、両親も殺したと言う。だが殺されていたのは全く他人の家族。彼に虚言や精神異常の様子はなく、身元も特定できなかった。真実は不明のまま、ある日彼は忽然と姿を消した。
  913. 340許せない男を呪う為、丑の刻参りに森に来たが、釘を打つ音が聞こえる。先に誰かが?音を辿ると、見つけた。私は痛みを理解できると思い声をかけると、彼女は私を見て驚き、その後意気投合。二人で樹に釘を打っていると、彼女は絶叫をあげ装束の胸を開いた。その体には苦痛に歪む男達の顔が…
  914. 339犬の散歩をしていると、突然犬が何かに向かい物凄い勢いで吠え出した。見ると男が真っ赤に充血した目で犬を見ている。その異様な雰囲気から危険だと感じ犬のリードを引くと、犬と男が同時にパタリと倒れ、口から泡を吹き痙攣を始めた。暫くして犬は起き上がったが、その目は赤く充血していた
  915. 338PC作業に疲れて伸びをした所で体が動かなくなった。暫くすると同僚が何やってんの?と書類で頭を叩いた。クソ、反応できない。辛うじて動く目で助けてくれ!と訴えていると、顔の横にニュッと冷たい手が現れ顔を覆った。あっ目が冷んやり気持ちいい…。が、結局20分もそのままだった。
  916. 337過激描写の多いホラーゲームに熱中していると、暴力的な物は精神衛生上良くないからやめなさいと母が言う。わかったよと空返事をし続けていると、いい加減にしろ!と母がバットでゲーム機とテレビを叩き壊し、やめないと殺すゾ!と言った。確かに、母にとって精神衛生上良くなかったらしい…
  917. 336堕胎児大量遺棄事件があった場所に肝試しへ。それ以来俺のお腹は膨らんでいき、産婦人科で皆のドン引にも耐えエコーでお腹を見ると、モニターに沢山の顔や手足が映り込んだ。霊能者を頼り除霊したが、母性に目覚めていた俺は、喪失感から『ワタシ』になった。妊娠経験有りの奇跡のオネェよ!
  918. 335高齢の主人が誤って人を死なせてしまった。慎ましい生活だが孫達からも愛され、もう何も思い残す事はないと言っていた程なのに、人生終盤で罪を負ってしまうなんて…。でも主人は善人なのだ。絶対悪い何かの仕業に違いない。罰なら悪いモノに与えなくては。例え狂ったと思われても、私は闘う
  919. 334私は何故か泣いていた。これで良かったのよと女性が私の肩を抱き締める。一体何の事?僅かに顔を上げると、目の前で家が燃えている。誰の家?この女性は?…あれ?私は…誰?すると彼女は「辛い事は忘れていいの。これからの事を考えましょう」と私を強く抱き締め、痛む後頭部を優しく撫でた
  920. 333立ち寄ったコンビニで買い物をすると、『ご自由にお持ち帰り下さい』と清め塩がカウンターに置いてあった。これ何ですか?と店員に訊くがはっきりとは答えてくれない。噂では最近亡くなった筈の常連客が現れ、他の客にツいて行ってしまうのだとか。塩を貰っておけば良かったと、男を見上げた
  921. 332定食屋でカレーと黒烏龍茶を頼む。カレーを口に入れるが、味がない…。するとラーメンを食べていた客が「おいカレーの味がするぞ!」と店主に言い、店主はそんなバカなと喧嘩腰。おいおいこっちは味すらないぞと思いつつ烏龍茶を飲むと、近くの客が苦ぇ!と水を吹き出した。どゆ事?
  922. 331廃ビルの解体中、コンクリートの床から母娘の遺体を発見。遺体に腐敗はなく、傷だらけの母親に抱き締められる幼い娘は無傷だった。二人の身元は判明せず、無縁仏となり埋葬された。本来関わるべきではないが、これも何かの縁。時々こうして足を運ぼう。墓の横に季節外れの野花を二輪見つけた
  923. 330中休みの廊下。数学の先生がぼーっとした様子で階段を上がって来て「ここは何階だ?」と訊いてきた。3階ですと答えると、先生はそうか…と階段を上って行った。あれ?この上は屋上だけど…。するとその先生がまた下からやって来て「ここは何階だ?」と。先生…あの子に手を出したばかりに…
  924. 329地元の社会人サッカーチームに参加。全員経験者だが昔のようには動けないとボヤきつつ、それでも練習を頑張っていた。そんな中、仲間の一人が足を負傷。見ると結構な傷で、消毒液を塗ると赤い泡を立てた。何か変だと泡を拭き取ると傷口が深く裂けており、中に人の指が引っ込んだ。
  925. 328朝、近所の子供達の元気な声で目を覚ます。カーテンを開け外を見ると、子供達が我が家の前に。そして私に気づくとニカッと笑い、手にした物を高くかざした。猫や鴉の死骸。するとその死骸の首を子供の物と思えぬ力で引き千切り、走り去って行った。玄関前に血文字で『おやすみ』と残っていた
  926. 327女子トイレの列で私の番が来ると、突然後ろの人が私を壁に押し付けた。列の人達は誰も助けてくれない。するとその女は顔を近づけ、頬に噛み付いた。歯が食い込む激痛に絶叫。次の女も私を押し付け今度は腕に、その次は腿に…胸に…首に…。終わりのない痛みに意識が遠のく。なんで…私が…?
  927. 326女子トイレの長い列に並ぶが進みが遅い。すると私を横目に女性が列を無視して入って行った。ちゃんと並べよ!と心の中で怒っていると、トイレから悲鳴が。何事かと駆け込むと、さっきの女性が腰を抜かし指差す先に、全身についた嚙み跡から血を流す女の死体があった。あれ?さっきの列は!?
  928. 325「あの国やあの人はパクリばっかりでヤバイよな」と友人が言い、ファッション誌を広げた。お前も服装をパクるんだろ?と言うと「話しが違ぇだろ!」と言う。いや、ビジネスや次元に関係なくどっちもパクリだろと言うと、友人は「あ、カノジョ殺害計画のパクリは許してくれよな…」と言った。
  929. 324近所に買い手がついてもすぐに出て行ってしまう中古物件がある。怪奇現象が頻繁に起こるというのだが、実はその現象の正体は近隣の住人達による人為的なものであった。何故そのような事をするのか。それはこの地域での行方不明者達と関係している。だが家の中で感じる悪寒との関係は不明。
  930. 323居酒屋で俺達男3人は酔って女性だけの席に「お邪魔しま~す」と乱入。彼女達は驚きもせず迎え入れてくれた。楽しく話してると女性の一人が「女じゃなくてもダルマにすれば、男も売れるのよね」と言った。何それ?と返した後、記憶がない。気付くと船の上、友人が手足を切られている所だった
  931. 322夜道を歩いていると「うぅ、助けてくれ…」と声が。呻き声のする場所を探すと、木の陰に人が倒れている。大丈夫ですかと駆け寄るが、男性が喉を切られ目を剥いて既に死んでいた。この状態でどうやって声を…。すると後ろに気配がし「あれ?どうして見つかったの?」と、女が刃物を取り出した
  932. 321企業ビルの受付を担当。様々な人が来る中、若い男性が宙を見つめたままゆっくりとやって来た。すると先輩が「◯◯は生憎外出しております」と言い、男性はボソッと返事をして引き返して行った。数時間後、またやって来た男性に先輩は同じ対応。それは30年以上も前から続く受付の役目との事
  933. 320親が子供を殺す痛ましいニュースをよく目にする。父はそれを見て「何て事を…」と溜息を漏らす。母が怯えながら父にお茶を出すと、熱すぎる!と怒声を浴びせ母を殴る。理屈で善を語れても人の本質は違う事が多い。そんな父は私に怯える。私は父似だから、父を殴るのだ。母は父方の祖母を…。
  934. 319魂の重さは21gだという話がある。それを検証する場に立ち会った。今夜確実に死を迎えるという男性を観察して数時間、何故か男性の体重が若干増加の反応をみせた。すると男性は苦しみだし、直後に死亡。体重は減少していた。男性の死の直前に何が入り、何が出て行ったのだろうか…。
  935. 318記者として多くの犯罪者を取材していると、レコーダーに不可解な音が入っている事がある。時としてそれは「助けてくれ…」と聞こえたりするが、一度だけはっきりと「この人は私を殺してない」と入っていた。その事件を深く調査したが、どう考えてもその人物が犯人。誰も救われない事件だ。
  936. 317駅でうずくまる人がいたので大丈夫ですかと声をかけたが誰もおらず、皆に見られ恥をかいた。川で子供が流されていたので慌てて飛び込んだが誰もおらず、無駄に風邪を引いた。車に飛び込もうとする人がいたので止めに行ったが誰もおらず、轢かれそうになった。霊感と正義感は共存できない…。
  937. 316自動車整備業務で車の下に潜り込んでいると、突然激しいブレーキ音が。当然車は動いていない。何だったのかと作業を続けると、今度は顔に何かがへばりつき、見るとそれは真っ赤な肉片だった。慌てて飛び出すと、同僚が腰を抜かし声も出せず車の下を指差している。が、俺には何も見えなかった
  938. 315部屋に帰ると床に蛆が這っていた。どこから湧いたのかと見回すと、もう一匹の蛆が隅の小さな穴から這い出している。壁の裏に鼠の死骸でもあるのではと、とりあえず穴の中に殺虫剤を吹き入れると、ドンドンドン!と激しく壁を叩く音がした。見ると潰れた無数の蛆が、壁のこちら側に付いていた
  939. 314あのお宅の奥さんは誰々と浮気してるのよ。あの奥さんはブランド好きだけど子供はガリガリよね。あぁあそこの奥さんは…。ベラベラベラベラ喋るこの女。きっと私の事も…。適当に相槌を打つ。が、次の言葉に耳を疑った。「あとあなたの旦那さん、あなたを殺す計画してるから気を付けてね」
  940. 313自作のつまらない超短編怪談にイメージとして背中に人の顔がついた画像を作ったけど、どうもしっくりこない。せっかく作ったから画像に名前でも付けてやろう。『背中おじさん』取り憑いた人の気持ちを勝手に漏らしたり、励ましたり、相談に乗ったり…。「そりゃつまらん」えっ誰!?背中!?
  941. 312ママは僕をとても大事にしてくれた。部屋から出なくても済むようにと何でもしてくれた。部屋ではいつもコメディーアニメを観た過ごしたよ。動物達が猟師の人を斧やハンマーや爆弾で撃退するんだ。何回観ても笑っちゃう。ママは死んじゃったけど、お外に出てまたあんな事をしてみたいな。
  942. 311僕は縄跳びが飛べない。先生も根を上げ、僕には無理なんだと諦めていた。ある晩、寝ていると突然体が動かなくなった。すると暗闇からヌゥと鎧武者が。恐ろしい表情の仮面。武者はゆっくりと仮面を外し、兜の鍬形を指差す。そして「これに引っかかるのじゃ…」と申し訳なさそうな顔を見せた。
  943. 310物置から音がするので鼠かと思い罠を仕掛けた。すると翌日見た事もない小さな異形の生物が引っかかっていた。珍しさから鳥籠に入れ飼う事に。見た目の不気味さから肉食だと考え豚肉を与えると、凄まじい勢いで喰らい付いた。もしや飼い慣らす事ができるか?こいつを使って色々できそうだ…。
  944. 309露天風呂で一人晩酌。贅沢な時間を満喫していると、誰かの気配が。だが姿は無い。まさか霊?いや神様か?そう思い酒を注いだお猪口を乗せた盆を暫く湯の上に漂わせた。するとドポンと盆ごと湯に飲み込まれ、底からドス黒い何かが浮かび上がってきた。慌てて飛び出し、裸のまま逃げ出した。
  945. 308個人業者の手作り箪笥を注文した。納品まで随分待ったが、届いた箪笥はイメージ通りに部屋に収まった。が翌日、衣類に赤い染みが。箪笥の中を調べると上部から赤黒い液体が滲み出している。業者に問い合わせると、職人と連絡がつかないので返金すると言われた。職人が無事ならいいが…。
  946. 307ふらっと入った古道具屋に『あなたに必要ない物』と張り紙があった。暫く店内を見て回り、それとなく手に取った物は木彫像。確かに全く必要ない、が購入。帰り道、やはり必要ないとゴミ置場へ。翌日、殺人事件が発生。凶器は木彫像だった。古道具屋の張り紙にはもう一枚。『誰かが必要な物』
  947. 306腹部を切除された男の遺体が発見された。他にも、部位は様々だが目や乳房など体の一部が無い遺体が続出。調査によると彼らは一様に体に悩みを抱えており、欠損はその部位。切り口や現場の状態から自ら切除したと推測。死因は出血性ショック死。全員『再生』と書かれた形代を所持。出所は不明
  948. 305私は近所を騒がすピンポンダッシュを注意すべく、玄関で待ち伏せていた。《ピンポ~ン》来た!…あ、宅配便。《ピンポ~ン》今度こそ!扉を開け子供の背を見たが勢い余って転倒、頭部を強打、私は死亡し、霊になってしまった。あれから10年、呼鈴は鳴らない。私は今でも待ち続けている…
  949. 304私は絶対のし上がってみせる。この国に生まれたのに、人は私を血が悪いと虫ケラの如く扱い、女だと知ると男達は犯し続けた。やがて子宮が破裂、陰部から流血すると女としての価値も失った。私、いや俺は男として生きていく。この屈辱、怒りを消さぬ為に、今でもやつらを地下室で生かしている
  950. 303息子の要望に応えスポーツ用品店へ。サッカーボールを物色中、突然背中に衝撃が。振り返るとボールが転がっている。どの子がやったのかと見回すが、それらしい子はいない。床のボールに手を伸ばすと、ボールの陰から小さな手が伸び、腕を掴んできた。息子よ、サッカー選手の夢は諦めてくれ…
  951. 302理科の授業でカエルの解剖。初めは皆気持ち悪がりながらも次第にのめり込み「おい、まだ心臓動いてるぜ!」と誰かが言うと、誰かがハァハァと興奮気味に「人間のも見てみたい…」などと言いだした。すると皆が同調し「なら老い先短い校長をバラそうぜ!」と、全員で校長室へと向かった。
  952. 301 グラスに残ったウィスキーの香りをクンと嗅ぎ、両肘の間にグラスを下ろす。バーテンダーは俺の憂鬱さを意に介さず、空いたグラスを気にしている。最後のナッツを口に放り込み、グラスの中に5年はめた指輪を入れた。まさか神様に奪われるとは…。周囲への言い訳が見つからず、溜息をついた
  953. 300教え子2人がいなくなったのは、百物語を終えた直後らしい。私は教師として危険を承知で原因究明に乗り出した。誰も巻き込まないよう、集めた怪談をたった1人で語り蝋燭を吹き消す。静けさに空気が凍てつく。…ん?なんだか意識が、遠の…く…。百物語の結末を知る事なく『無』となり消えた
  954. 299俺はもうダメだと項垂れている男がいる。彼は自分が運転する車の事故で家族を失い、失意で仕事や家など全てを失った。家族の墓の前で、俺も早く死んでこの中に入りたいよと涙を流す。すると別の男が隣に腰を下ろし、こう言った。「俺達一家を巻き込んで殺したんだ。簡単には死なせない…」
  955. 298死んだ母によく似た女性を父が連れてきた。街で見かけ、あまりに似ている為に思わず声を掛けると意気投合したそうだ。でも家に来るなんておかしい。食事だけして引き取ってもらおうとすると、「私、貴方達を想ってあの女と替わろうと努めたわ。これで家族になれるわよね?」と女は目を剥いた
  956. 297何かの催しで露店が並んでいた。あ、紐クジだ、懐かしいな。1等のゲーム機など当たる訳ないが挑戦。すると店員が鐘を鳴らし、何と特賞が出たと小箱を手渡された。開けると何かの骨の欠片が入っている。何これ?と顔を上げると、全ての露店が消えていた。えっこれ、どうすりゃいいの…?
  957. 296警察に職務質問されたが自分の職業が思い出せない。無職って事でいいねと言うので否定すると、警察が怪訝な顔で語気を強め、じゃあなんで思い出せないの!?と言った途端、誰かの絶対的命令の口調と凄惨な殺戮現場を思い出した。ダメだ、これ以上思い出しては…。俺は全力で逃げ出した。
  958. 295朝起きてSNSを開くと、不気味な霊が写る怖い画像がアップされている。朝一にこれはキツイなと思っていると、また同じ画像がアップされた。ん?いや、若干違う。拡大されてるんだ。同じ画像だが霊の顔が徐々に拡大され次々とアップされていく。そして気付いた。霊の瞳に、私が映ってる…。
  959. 294小学校へ上がる息子の為にランドセルの広告を睨み、高いなと唸る。すると義父が古く潰れたランドセルを持ってきた。中には怖い幽霊の絵が沢山描かれた古いノートが入っており、聞くとランドセルが悪霊を吸い込みノートに封じるのだとか。今では息子が悪霊をコレクションして喜んで使っている
  960. 293幼くして亡くなった妹の誕生日には毎年ケーキを準備する。蝋燭の数は19本。そして私は今年結婚をする予定だ。既に子供は授かっている。お腹の子が妹の生まれ変わりだといいねとケーキを前に家族で話していると、大きく燃え上がった蝋燭の炎に顔が浮かび「これ以上私を縛るな…」と言った。
  961. 292路上でオバちゃんが「お前の正体は判ってる!正体を現せ!」と傘の先端を向け、行き交う人々を手当たり次第威嚇している。暫くして警察が駆けつけた時、オバちゃんは首輪のない犬に「遂に見つけたぞ!」と言い、傘を突き刺そうとした。警察が止める間も無く、巨大な口が彼女の頭を噛み砕いた
  962. 291星の少ない夜空を見ていると、彼氏が「すっごく綺麗だ…」と遠くを見て恍惚の表情を浮かべている。すると「呼んでる」と呟き、なんと宙に浮き何かに引き寄せられていく。その先をよく見ると、巨大な何かが浮いている。彼氏が何かへと向かっている途中、急にそれは消え、彼氏は落下していった
  963. 290クラスの不思議系女子が「猫飼ってる?」と訊くので、少し戸惑うも「いや、犬なら飼ってるけど…」と答えると「あぁ、あなた自身が猫なのね」と言った。その場は深く突っ込まなかったが、それ以来彼女は遠くの席から猫用のおもちゃを見せつけるようになった。その仕草に前世の繋がりを感じた
  964. 289怪談朗読を録音。その話はある女性の悲劇を文章にしたものだ。確認の為録ったものを再生すると、途中から私の声に別の女性の声が被り始めた。そして声は完全に女性のものと入れ替わり、余りの臨場感に本人の体験談として聞こえた。その壮絶さは私の胸を打ち、ただ泣くしかなかった。
  965. 288腹を切り裂かれ内蔵を抜かれた遺体が発見され、警察は容疑者の家に踏み込んだ。足を踏み入れた瞬間、凄まじい異臭が鼻を突く。家中の窓が板で塞がれ、蝿が飛び回っている。そして奥の部屋で、全身に臓物を塗りたくった容疑者が海老反りで死んでいた。手には『破魔』と書かれた札を握っていた
  966. 287最近アイドルが怪談を語るのがブームなのか?と好きなアイドル出演の怪談動画を観ながら友人が言う。可愛いと寄って来んじゃね?人間も霊も、と答えると、動画の中のアイドルが「以前イベントで前の席のお客さんが、空中にもいたんです」と語った。すると友人が、あ、これ俺の事だ!と言った
  967. 286私の知人が亡くなったとSNSで報告したのに「死ね」とか「死んだ」などと『死』と言う言葉を頻繁に使う不謹慎なフォロワーがいる。まぁこの人には関係のない事だが、気分が悪くてブロックした。あれから暫くして気持ちも落ち着いたのでブロックを解除。「死にます」を最後に書き込みがない
  968. 285営業先へのアポ時間までまだ空きがあり、裏路地で自販機を探していると突然背中に寒気が。何かと思い振り返ると、自販機があった。ここにあったかと小銭を投入しコーヒーのボタンを押す。が、出て来た物を取り出すと、それは目をエグられた人形の頭だった。人形から子供の泣き声が聞こえる…
  969. 284スケールが小さい男!と彼女にフラレた。確かにネットに悪口や愚痴ばかり書き込む男だ。それから俺は世界に目を向け始め、様々な情報を目にしたが、そのうち世界とはそれほど大したモノじゃないなと思うようになった。後日「世界は小せぇよ」と入力途中のスマホを握る白骨死体が発見された。
  970. 283できない上司から八つ当たりで叱られた。その失敗はお前が無能なせいだろ!と心で叫ぶと、なんだその口の利き方は!と上司がキレた。えぇ!?口に出してないのに!すると突然上司が耳を抑え苦しみ出し、何でこんなに皆の悪口が聞こえるんだぁ!と逃げ去ったまま、二度と会社に現れなかった
  971. 282雨音響く寒いボロ部屋。作家を目指す貧乏人に暖房は贅沢だ。布団に包まり執筆を続ける。ふと気づくと、雨音が消えている。窓から外を見るが雨は降っており、小首を傾げながら振り返ると、机に突っ伏す自分がいた。…あぁ、志半ばで死んでしまったか。この体験を書けないなんて、勿体ない…。
  972. 281昼間から酒とはいいご身分だなと、完全に酔っているオッサンがオッサンに挨拶。ダハハと下品な笑い声を上げ「あいつに、献杯!」「おぉ献杯!」とグラスを高く上げた。それを一気に飲み干し、よし!と腰を上げ、「今回こそは仇を討つ!」とポーチから数珠と五鈷杵を取り出し廃寺へ向かった。
  973. 280ママ見てあの人と娘が指差す窓の外を見ると、道路に水溜まりがあるだけで誰もいない。雨降ったっけ?と思っていると、玄関の方で音がした。侵入者を警戒し確認しに行くと、廊下は水浸し。雑巾を取りに戻ると、異常に体が膨張したずぶ濡れの男が娘に手を伸ばし「俺…池…見つけて…」と言った
  974. 279父親が電力会社勤務というだけで、クラスの皆に「被爆するから近寄るな」と言われ、汚染除去だとホースで水を掛けられた事もあった。そんな高校生活を経て、僕は大学へ入った。核の研究をする為だ。でも忘れてはいない。僕はあいつらのいる街の配水所に、大学から盗み出した核物質を仕掛けた
  975. 278自殺したAの霊が出るという噂が、学校から地域にまで広まった。そんなある日、Aの仕業と思われる犠牲者が出てしまった。それは噂を広めた張本人で、口を裂かれて死亡。その後も数人の死者が出た。街が騒然となる中、Aの家族が学校に「噂に苦しめられ殺害した」と告白文を送り、心中した。
  976. 277幼い息子は負けず嫌いなのか、ゲームや遊びでも負けると必ず泣く。男の子なんだからグッと堪えろと言うと必死に我慢してみせるが、やはり泣いてしまう。ある日おしりの痣に気づきどうしたのかと訊くと、躊躇いがちに小さい声で「負けるとお婆ちゃんがツネるの…」と、祖母の位牌を指差した。
  977. 276慌ただしい朝の出勤。いつもの電車にギリギリ飛び込むと、中は暗闇だった。手探りで手すりや吊革を探すが何も掴めない。すると、ひたひたと足音が。怯えていると「お前は巨万の富を築く…」と言う声が聞こえ、次の瞬間毎朝見る満員の風景になった。よくわからないが、“今日から”頑張ろっ!
  978. 275彼を想えば胸が苦しくて苦しくて、彼を目にすれば頭が痛くて痛くて、彼が存在するなら私自身が邪魔で邪魔で…。どうにもならない私にはこうするしかなかった。自分の胸に包丁を突き刺し、猟銃で頭を吹き飛ばし、最後に粉砕機で粉々になって私自身を消した、彼の目の前で。これで心が繋がる…
  979. 274歩きスマホをしていると、あれ?今体を何かがすり抜けた?振り返るが何もない。気のせいかと前を向くと、おじいさんがニヤつき立っていた。驚いたが横を抜けようとすると「お嬢ちゃん、エエ体しとるの~」と言い「これは事故じゃ。わしが人ならぶつかってたぞ~、キッヒッヒ…」と笑い消えた
  980. 273中古だが一戸建てを購入。入居翌日、なんと別の家族が普通に生活していた。話しかけても反応はなく、まるで我々が存在していない様子。だが妻も子供も何故か構わないと言う。ある時入浴中、“向こう”の奥さんが入って来て慌てていると「なんかいる…?」と言い、後日霊媒師がやって来た。
  981. 272旅行で予定より早く目的地付近まで来た為、近くの遊べる牧場へ。独特の匂いが漂う柵の中には牛やヤギがおり、別の柵の中に白と黒の子ヤギが戯れ合っている。可愛いねなどと言い見ていると、黒い方には頭が無い!白い方が押し倒されると、黒い方の体から大きな口が現れ、白い方を丸呑みにした
  982. 271夢に知らぬ男が助けてくれと現れる。その男の事を何となく母に話すと、母はそう…とだけ答え、数日後に突然自殺してしまった。母の遺書には『あの人を助けに行きます』とあり、それを見た父は、地獄に落ちた男の事だと遺書を破った。以来男と母が助けてくれと夢に出る。でも何故僕の夢に…?
  983. 270加工食品工場の機械が原因不明の停止。やむなく暫く工場を閉鎖した。数日後、産廃業者の外国人スタッフが片言でどうしても工場を見せて欲しいと言うので見せると、機械に向かって手を払って外国語で何かを言った。そのあと機械は復活。「動物ノ念、塊ニナテ詰マテマシタ」と言い、笑った。
  984. 269寝返りを打つと布団が濡れていた。見ると一面が真っ赤に。跳ね起き、とりあえず体についた赤い液体を流そうと風呂場へ行くと、湯船にバラバラになった女が入っていた。ヒィッ!と悲鳴をあげると女が眼をこちらに向け「助けて…、パパ」と呟き、消えた。昨日妻が病院で出産したばかりだった。
  985. 268「俺の背後霊がいなくなったのは、お前が色目使ったからだろ!」「だから違うって!…お前の為に黙ってたが、この前お前の親父と一緒にいたぞ」「えっ親父と!?」「あぁ。しかしお前ら親子揃ってグロ霊好きとはな…」「霊は見た目じゃねぇよ!」「待てよ…俺は白骨霊がたまらん」「ハァ?」
  986. 267子犬が捨てられていたので少ない小遣いから牛乳を買って与えた。暫くそうやって面倒を見ていたが、ある日子犬は弱って死んでしまった。牛乳では子犬への栄養が足りないと後で知り、自己嫌悪に。それから拒食症になり、言葉も失い、家族にも見捨てられ彷徨っていた所に、犬が骨を持って来た。
  987. 266彼は良い人なのだけど、何故か皆に嫌われている。理由を聞いても誰もが首を傾げ「なんでだろ…」と言い「良い人なんだけどね」で終わる。だが彼に話しかけられたある時、不快感の原因を見つけてしまった。ふと見た彼の瞳には、映る人全員に頭が無いのだ。彼には皆がどう見えているのだろう…
  988. 265寒くてエアコンの暖房をつけるが一向に暖かくならない。風に手をかざすと、冷たい…。リモコンの設定は間違いなく暖房だ。本体の調子が悪いのかと風の吹き出し口を覗くと、黒い何者かと目が合った。驚くと次の瞬間には目は消えており暖かい風が出始めたが、「見たぞ…」と低い声が聞こえた
  989. 264幼い息子が何かを企むような目で俺を見て笑っている。そんな時はいつも可愛い絵を描いており、後でくれるのだ。何描いてるの?と訊くと慌てて隠す。それもいつもの事。しつこく見せろーと言うと、あ”ぁ”もう限界!と妻が俺を鈍器で殴った。息子の絵にはその様子とパパ大好きの文字があった
  990. 263天気はいいが風が強い。前方から来る自転車に乗った主婦が風に煽られ、後ろから来た車に跳ねられた。駆け寄ると、私を睨みながら絶命した。それ以来不可解な事が身の回りで起こるようになり、現在も命の危険を感じている。何故彼女はあんな目を…。私はただ歩いていただけだというのに…。
  991. 262一人で酒を呑みたい気分だった。寂れ具合が好みの店を見つけ、グラス2つと安い酒を頼む。父が好きだった酒だ。今日は父の一周忌。面と向かって酒を呑み交わした事がなかった。父と語れなかった、語りかった多くの事を想い、グラスに父の分の酒を注ぐ。乾杯と言うと、父の酒に波紋が広がった
  992. 261元カノとは別れた後でも友達になったが、ずるずると肉体関係が続いていた。だが俺に新しい彼女ができると流石に遠慮してか、距離を取るようになった。そんなある日、俺の誕生日会で久々に元カノも参加、ぎこちなくも今の彼女とも仲良くやっていた。プレゼントを開けると、堕胎児が入っていた
  993. 260川沿いの広場でよく見る少年達が野球をしていた。だがピッチャーが投げたのは兎のぬいぐるみで、バッターが打つと皆で大はしゃぎしていた。その翌日から彼らを全く見かけていない。ある日、川の下流で少女の遺体が発見され、30代無職の男が逮捕。兎のぬいぐるみは少女の宝物だったそうだ。
  994. 259俺みたいなホームレスジジイにとっちゃ、ちょいと悪さしてムショで過ごす方が快適に冬を越せるのさ。勿論変な派閥はあるが、ジジイはあんまり相手にされねぇしな。でもよ、あれはイヤだなぁ。ほら、殺しやってる奴も多いだろ。だから出るのさ、幽霊。そりゃもう凄ぇ数よ。んで…あんた人間?
  995. 258深夜、エレベーターで9階の自宅へ。だが突然途中で停止し機内が真っ暗になった。すると誰かの気配が…。隅で怯えていると、やがて灯りが戻り再び上昇、機内には誰もいなかった。翌朝管理人が訪れ、9皆に刃物を持った男がいたと言い「あんたを守るよ」と笑いながら下に床をすり抜けて行った
  996. 257彼はクラスの皆と普通に喋るが、大らかで独特な雰囲気は他の誰とも違う。ある日帰りが一緒になり話も尽きず歩いていると、前からフラフラと視点の定まらない女がやってきて「見つけた…」と言った。すると彼は穏やかに「ダメだよ家にいないと。罰として今日は“クスリ”無しだね」と言った
  997. 256私は結婚間近に婚約者を亡くし、それ以来まともに笑う事ができない。皆の同情の目にも耐えられず、誰も私を知らない地に逃げてきた。置いてきた両親の遺体が気がかりだが、知り合いのも一緒だから寂しくはないだろう。あの時は少しだけ笑えた。でも今はまた、彼といた時の笑顔を探している
  998. 255飛行機の窓側に座る。上空数千mの所でシェードを閉じようとすると、窓の外に何かが見えた。よく見ると老婆が機体にへばりついている。老婆は指で銃を作り、バン!と口を動かすと、同じ並びの奥の席の男がウッと声をあげ死んだ。老婆は私を見て額から二本指をチャオと振り、飛び去って行った
  999. 254心霊スポットとして知られた電話BOXがなくなった場所に、今でも霊が出ると言う。その霊は土地そのものに憑いてるのかなと友人と話し見に行くと、確かに出た。二人して怖がったが、霊の体から何かが後ろに伸びているのを見つけた。すると鈴の音がし、何本もの紐を握る白装束の女が現れた。
  1000. 253派遣の肉体労働で詳細を知らされずに地面を掘っていた。こんな深夜に重機も使わず少人数での作業。なんだか怪しいと感じながらも掘り進めると、髪がビッシリと絡みついた刃物が出て来た。すると責任者が作業を止め、髪を剥ぎ取って奇妙な文字の書かれた紙で包み、じゃあ埋めてと刃物を戻した
  1001. 252嫌な事が続き凹んでいると、ネガティブになってるとまた悪い事が寄ってくるよと友人が言った。半ば自暴自棄の私は、いいのよどうなっても!と返すと、ある日から友人や家族が死んだ。何故私を殺さないの!?…私の知らぬ所で、以前ネットに書き込んだ「皆消えちゃえ」を誰かが実行していた。
  1002. 251この前の女子会楽しかったねと皆でその時の写真を見ていると、全てに表情のない見知らぬ男が写っていた。何これ気持ち悪いと騒いでいると、一人が突然あ”ぁ”ぁ”ぁ”!と絶叫し、「彼は死んでも私の傍に居たかったんだ…。私の彼を侮辱するな!!」と泣きながらハサミを振り回し暴れ始めた
  1003. 250友人と歩いていると、突然外国人が物凄い勢いで話しかけて来た。だがその剣幕が怖くて友人と走って逃げた。すると言葉を理解した友人が「あいつヤベェな。お前が俺に殺されるとか言ってたゼ」と走りながら言い、逃げて来た方を振り返ると友人とぶつかり、突き飛ばされた所に車がやって来た。
  1004. 249朝起きると廊下に赤い飛沫が広がっていた。居間で母が血塗れになり、洗面所では父が、トイレでは妹が死んでいた。犬…犬はどこだ?名前を呼ぶと、何処かで吠えながら近づいてくる。が、現れたのは犬を抱えた女で「このコ、可愛いですよね」と嫌らしく笑みを浮かべて言った。動物病院の先生…
  1005. 248小学校の飼育小屋の動物達が死亡する事件が相次いだ。だが人が侵入した形跡はなく、子供達は怪談として噂するようになった。そんなある日、犯人が判明。それは翌年小学生になる動物嫌いな子供で、学校に人間以外の生物がいる事が許せないのだそうだ。殺害方法は自宅の神棚に祈るだけとの事。
  1006. 247別れた時に写真すら捨ててしまった彼が今になって忘れらず、彼の絵を何枚も描いた。あの時、この時と、色んな表情の彼を。だが1枚だけ何の表情か解らない絵があった。この物憂げな表情、この目は…。突然思い立ちタンスの棚を引き出す。…切り取った人の顔がある。あぁ、彼の最期の表情か…
  1007. 246授業をサボってギャル友と繁華街行きの電車に乗車。だべりながら化粧を直していると、隣の車両から悲鳴をあげて人が移って来た。すると「え?ヤバイよ…」と友人が私の肩を叩き、「ヤダこっち来た!」と血相を変えて逃げ出した。取り残された私には何も見えず、縮こまるしかなかった。
  1008. 245ジョギング中、狭い歩道を陣取る老人がいた。ガードレールで逃げ場がなく、走りながら体をひねり老人を避ける。が、同じ老人が今度は寝そべっており、それを飛んで避けた。障害物競走かよ!そして次にいた老人を避けきれず汗だくの体が触れると「塩かぁぁ!」と悶絶し消えた。汗ってスゲェ!
  1009. 244子供の背を優しく叩き子守唄を歌う。今日はどんな夢を見るのかしら?ゆっくりお休み。骨が浮き出した胸を摩る。あなたには何の罪もないのに、私の所に産まれて来てしまったせいで、こんな狭い部屋に閉じ込められて死なせてしまうなんて…。私ももう限界だけど、その前に夫だけは殺さなきゃ…
  1010. 243丘の上を目指し長い階段を登る。途中、男が下って来たので道をゆずり、すれ違い際に頭を下げ、再び上を目指した。頂上に到着すると人が倒れており、駆け寄ると先程すれ違った筈の男が死んでいた。とにかく警察に連絡をとスマホを出すと、背後に「兄貴の後を追うか?」と瓜二つの男が現れた。
  1011. 242連休に一人旅。宿泊する旅館の部屋に到着すると、荷物を投げ捨て寝転ぶ。畳の匂いを楽しんでいると腕にチクリと感じた。頬を畳に擦りつけ見ると、畳から黒い毛が何本も出ており、摘んで引っ張ると長い髪の毛が出て来た。仲居さんを呼ぶと「あら出て来ちゃった」と言い、別の部屋が用意された
  1012. 241一人残業中、背後の窓を叩く音が。振り返ると友人が窓の外にいる。え!?ここ6階だぞ!窓際に寄ると、友人はロープでぶら下がっている。どうしたんだよと窓を開けると、クラッカーを鳴らし、おめでとう!と言った。何が?と訊くと俺の手を握り、あの世への旅プレゼント!と外に放り出された
  1013. 240娘の将来を考え進学校に進ませ、健康の為に嫌いな物でも食べさせ、品行の為に男子との交流を断たせた。例え嫌われようとも全てを娘の為に注いで来た。なのに何故大事な娘が殺されなくてはならなかったのか。送られて来たビデオに映る教師が叫ぶ。「あんたの娘を苦しみから救ってやるよ!」
  1014. 239「童謡って実は怖いって本当?」と妹が訊くので、あぁそうだよと答えると「じゃあカエルの歌は?」と訊く。実は全く知らぬが思いつきで「その歌って輪唱で歌うでしょ?実は頭の中をカエルの鳴き声が響くと言って自殺した人が作ったんだよ」と答えると、私もそうなるかなと耳を塞ぎ頭を振った
  1015. 238仕事から疲れて帰宅。「おかえりなさい…」ただいま、って俺一人だし!あー肩凝った。「どう?気持ちいい…?」お、いいね、って俺一人だし!あぁ、独身が長いと人肌恋しくなるよな。「こうすると暖かいでしょ…?」ヒャッ!冷たいよ!って俺一人だし!毎日優しい誰かとこんな感じです…。
  1016. 237死体を発見したと通報を受け現場の家屋に駆けつけると、遺体がない。通報者の初老の女性に事情を訊くが、ついさっきまで確かにあったと言い取り乱している。とりえず落ち着かせると、天井から物音が。見ると遺体を引き上げる何本もの腕が伸び、そのまま遺体と一緒に天井に吸い込まれて行った
  1017. 236クローゼットを開けると女の死体が入っていた。だがその死体に心当たりはない。静かにクローゼットを閉じ、もう一度開けると死体は無くなっていた。混乱していると呼鈴が鳴り、恐る恐る出ると隣に越して来たという女が挨拶に来た。へぇ~可愛いじゃん…。上がってお茶でもと強引に腕を引いた
  1018. 235儚げな表情が美しい…。だが彼女は生者ではなかった。僕は勇気を出し言葉をかけると、彼女は静かに振り返る。長い髪の切間に覗く虚ろげな眼差しに鼓動が跳ねた。そして彼女は囁くように言った。「私は業を負う者。温もりに触れるは許されぬ者…」僕は消えゆく彼女に手を伸ばし、空を切った。
  1019. 234幼稚園児達の料理体験。先生は肉を出して「牛さんも豚さんも鶏さんも皆と同じ生き物だから、感謝して頂こうね」と言うと「なんで人は食べないの?」と訊く子がいた。先生は「お友達は食べないでしょう?」と言うと「え~おいしいのに~」と皆が騒ぎ、うちは食べてるよと言い出す子までいた。
  1020. 233ブランドは不明だが立派な腕時計が中古屋で安く売っていたので、若い店員に理由を訊くがわからないと言う。まぁいいやと購入、翌日早速はめて出かけようと家を出た途端、何しに出て来たのか忘れてしまった。あれ?見た事ない腕時計をしている。高そうだから、とりあえず中古屋に売りに行くか
  1021. 232色々疲れて都心の会社を辞め、祖父母の田んぼで米収穫の手伝いをした。風に揺れる稲はまるで黄金の海のようで感動、ここに来て良かったと思っていると、一面の稲の所々に何かが見えた。それは稲と同色の生気のない人らしきモノ達で、稲と一緒に揺れていた。すぐに都会でやり直す事を誓った。
  1022. 231自分の弱さや煩悩に打ち勝つため、一週間滝行に参加した。参加者は皆滝から出てくると唇を青くしガタガタと体を震わせている。自分の番となり滝に入ると、激しい流れの音の中に「お前には無理だぁ」「お前は無価値だぁ」「お前は…」と言う低い声が聞こえた。だが一週間後には動じなくなった
  1023. 230ここは何処かと体を起こすと、拡大し切り抜いた私の写真が沢山貼られた部屋だった。状況を飲み込めずとにかく部屋を出ようとするが、片手に手錠をはめられベッドと繋がれていた。するとキモオタ風の男達が入って来て「目が覚めたね」「君は狙われている」「僕達が守るよ…」と近寄って来た。
  1024. 229タバコの吸い殻をマンホールの穴に捨てると「オイ!」と下から聞こえ、中に作業員がいたかと慌てて逃げた。自宅に戻り洗面所で手を洗うと、排水口からもオイ!という声。キッチンでも風呂場でも、下水道と繋がっている排水口から声をかけられるようになった。時々排水口に『眼』が覗いている
  1025. 228天井裏で鼠が賑やかな足音を立てて走り回る。様々な対策をしたが一向に結果がでない。特に現代の鼠は賢く、学習する為に一筋縄にはいかないらしい。そしてある日、とうとう部屋の中で足音が聞こえた。が、姿は確認できず、音だけが走り回っている。こりゃどうにもならんと、引越しを予定中。
  1026. 227心霊スポット巡りはやめられない。きっと何か大きな被害があるまでやめないだろう。仲間も何人か死んだし両親も壮絶な死に方をしたけど、俺にとってはまだまだだ。そんな事でひるんじゃオカルトマニアの名が廃る。でも、先日小指を骨折した時は、流石にちょっとやめようかと思ったな…。
  1027. 226保育園に娘の迎えに少し遅れていくと、娘は「遅い!」と不機嫌になりいつまでもゴネる。いい加減にしてと強引にヘルメットを被せて自転車の後部席に座らせ、泣くのも構わず出発。ママだって一生懸命なのに!泣きたいのは私よ!と娘に言うと、私の頭を撫で「いいコいいコ…」と男の声で言った
  1028. 225中間管理職者の自殺が多い事に納得。会社では部下と上司の板挟み、家に帰れば妻や子供の愚痴や嫌味を浴び、ストレス発散で呑んで酔えば不潔なモノ扱いだ。おまけにいくら稼いでも消費される。そうなれば生きる意味を見失い頭に自殺がちらつく。夜な夜な現れる自殺者達の手招きに従う事に納得
  1029. 224肩こりが酷くて生活にも支障が。マッサージなどでは全く良くならず、別の原因を考えた。“何かに憑かれている?”ネットでそこそこ評価の高い霊能者を探し視てもらうと、霊能者は首を横に振りこう言った。「首と肩が完全に霊と同化して、祓えない。そのうち頭もそうなるよ。生前整理しな」
  1030. 223「あーもうマジ死にてぇわー」が口癖の友人にいい加減死ねよと言うと、ウッセェよと返って来た。ある日そいつが彼女とベタベタしているのを目撃。彼女にも「もぉ、なら早く死んじゃえ~」と甘え声で言われると、友人はウッセェよ~とニヤついていた。だがあの彼女は去年死んでいる筈…。
  1031. 222女性向けファッションのセレクトショップで勤務。ある日、靴を見せて欲しいと綺麗な女性客がやって来た。が、見ると女性の足は膝から下が消えている。私は言葉をなくし女性の顔を見ると、青白い顔で「あ、私…、足がないわ…」と呟き消えた。店長はまたかと呆れ顔を見せ、盛り塩を用意した。
  1032. 221野球のナイター試合観戦におっさん3人で来ていた。黒髪ボブヘアのスタイルの良いビールガールを呼ぶと、彼女は眼帯をしていた。その姿に「眼帯萌え~!」と俺達はテンションMAX。すると彼女が「ホームランの飛球にご注意を」と眼帯をめくり、潰れた目と鼻と口から血を流し消えた。
  1033. 220残り少ないホットココアを飲もうとカップに顔を近づけると、臭っ!見ると餓鬼のような姿の小さなモノがカップの中で残りを飲み干し、こちらを見て申し訳なさそうに後頭部に手をやった。そして慌てて飛び出し部屋の何処かに逃げて行った。……、っておいおい!この部屋にあんなのおるんかい!
  1034. 219俺と彼女は深く愛し合っている。だが彼女は自身の精神疾患に苦しみ、別れようと言った。俺はそんな彼女を無言で抱きしめる事しかできず、去ろうとした時、彼女の背後から現れた大きな影が彼女に喰らいついたのを見て、何故彼女の言う『怖い気配』を信じてやれなかったのかと深く後悔した。
  1035. 218自室で大あくびをすると、口が閉じない。寧ろこじ開けられている感覚だ。慌てて全身鏡を見ると、強引に口の中に入ろうとしている女の姿が。悲鳴すらまともに上げられずのたうち回っていると、体の中に入られたのを感じ、口は閉じた。それ以来、無意識に色んな物を口の運ぶようになった。
  1036. 217大空には『龍』が踊るようにうねっている。人生を善人として真っ当に生きた者の魂は死後に天に登るが、その全てが登れるわけではない。この龍により善人の魂は殆どが捕食されてしまう。そして排泄され再び汚れた地上に落ち、新たな“命”として苦痛溢れる“生きる”を繰り返すのである…
  1037. 216幼い少女が涙を拭っている。傍に親は見当たらず、どうしたの?と声をかけると、死んだ猫が戻って来たから嬉しいのだと言う。少女はしゃがんで足元の空間を撫でている。私には何も見えないが、少女の痣と傷だらけの手足を見て、普段の過酷な生活と猫の末路を想像し、少女を優しく抱きしめた。
  1038. 215子供が宝石だと言い川遊びで拾ってきたリバーグラスをくれた。その晩から瓶で頭を殴られ橋から川に落下、浅場の岩で激突死する夢を見るようになった。気持ち悪くて原因として唯一思い当たるグラスを捨てると、今度は毎晩女が現れ「何故…捨てた…何処に…」と言い部屋を徘徊するようになった
  1039. 214大学の友人に頭は良いが変な奴がいて、事ある毎に「日本壊滅を目論む某国の陰謀だ!」と騒ぐ。天候が急に変わっても、渋滞にハマっても、だ。正直面倒で距離を置こうとしていたある日、そいつはトイレで死んだ。ただその時、立ち去る黒服男が目撃されている。う~む…まるでベタな作り話だ…
  1040. 213目を覚ますと横にミイラが転がっていた。驚き飛び跳ねるとミイラの服装に目を疑った。私の…?このミイラは私?状況が理解できずアタフタしていると鏡に自分の姿が映った。え、誰?するとどこからか声が聞こえた。「頼む…、その体をやるから復讐してくれ…」その言葉に殺された怨みが蘇った
  1041. 212某アイドルグループの握手会で、メンバーAとファンの男が握手したまま死亡。Aは男の手を握ると突如悲鳴をあげ、直後に二人は倒れた。二人の手は薬品により皮膚が溶けて結合しており、医師の調べでは掌に毒針が刺さっていたとの事。男のA宛の手紙には「永遠に離れる事はないよ」とあった。
  1042. 211気分が悪くなり保健室へ行くと、先生が僕の顔を見るなり深い溜息をついた。何となく、ス、スイマセン…と謝ると、先生は「◯◯先生の授業だった?」と訊く。はいと答えると「あの先生、無意識にいろいろ飛ばしちゃうから、授業中に居眠りとかしない方がいいよ」と僕の背中を何度か強く叩いた
  1043. 210義母が痴呆を発症、介護が必要になった。私だって高齢だ。義母との仲は良かったが、これから数年、長ければ20年を介護に縛られてしまう。私の残りの人生は終身刑の如く自由がないに等しい。そんな時義母が「ずっとこうしたかった!私が私じゃなくなる前に、殺してやる!」と私を襲ってきた
  1044. 209世間一般には全く知られていないが、神隠しの原因の一つに、ある昆虫がいる。『蜂』である。その蜂は日本各地にごく少数生息、凶悪な毒を持ち、ごく稀に人を襲う。その毒は生物の体内に入るとわずか数秒で体を液体・無色化、そして破裂させてしまう。その為被害者は発見されないのである。
  1045. 208腕に痣ができていた。結構な濃い色なので大分強くぶつけたのだろうが、いつの間にと痣を指先で触れてみると、一瞬目に軽い圧力を感じた。なんだ?と思い少し強めに押してみると、目から血が溢れ出し止まらなくなった。慌てていると口や鼻からも溢れ、出血多量の前に血で溺れ、意識が途絶えた
  1046. 207学校の個室トイレで用を済ますと、扉が開かない…。扉の下から数人の影が見え、開けろ!と怒鳴ると影は消えたが、結局扉を登って上から出た。一体誰がと怒り教室に戻ると皆が驚いた顔を向け、この数日間どこで何をしてた?と先生が言った。混乱する僕の背後で、数人の子供の笑い声が聞こえた
  1047. 206人間ピタ◯ラス◯ィッチと題した動画が投稿された。内容は、人通りの多い場所でボールを転がし、転んだ人が次々と傍の人を巻き込み幾つかの仕掛けが作動、最後に旗が上がるというもの。動画は即削除されたが、凄い数のコメントが残った。その殆どが『婚約者転んで死亡お前特定済Xす』だった
  1048. 205公園で子供を遊ばせ、ベンチでママ友同士話に夢中に。すると砂場にいたママが悲鳴をあげ、見ると子供達が何かに群がっている。何事かと駆けつけると、砂に埋まった男の遺体が顔を出していた。慌てて抱え上げるママを振り払い、子供達は笑いながらシャベルや枝で男の顔を刺し、ほじくり出した
  1049. 204妻は室内の植物によく話しかけている。そうやって気持ちを伝える事で育ちがよくなるのだそうだ。確かに『植物には意思が存在する』との記事を読んだ事がある。ある朝、鋭い痛みに目を覚ますと、棘のある植物の蔓が首に巻き付いていた。助けを求め、妻を見ると、笑顔で植物に何かを話している
  1050. 203男の子ってのはヒーローになりきり常に何かと戦っている。最近では朝からず~っと自分で考えたオリジナルの仮◯ライ◯ーになり、けたたましい効果音を口で言いながら必殺技を何かに向かってくり出している。ただ、うちの子の場合、本当に『何か』と戦っているらしく、部屋中穴だらけである…
  1051. 202中学生の姪の誕生日が近づき、欲しい物をメールで訊くと、返信に『日本酒』の文字。驚いて直接電話をするが雑音が酷く、声が聞き取れない。メールで「電波悪いね。部屋?」と送ると「うん。やっぱいるのかな~。お酒を置いて確認したいの~」と、可愛いオバケのイラストと一緒に返って来た。
  1052. 201横道から出て来た女の子が棒の付いた飴玉を美味しそうに舐めている。すれ違い際にその飴が目玉のように見えてギョッとすると、横道の壁にもたれ片目を抑えている男が視界に入った。駆け寄り大丈夫ですか?と声をかけると、男は「大丈夫です…。貴方にも、あげますよ。私の目…」と言った。
  1053. 200以前、百物語を終え部屋を出ると友人が消えていた。あの時何が起こったのかを確認する為、再度百話を終え蝋燭を消した。あの時同様何も起こらない。が、部屋を出ようとするが扉が無い。気づくと一人だった。すると床が崩れ、落下。果てしない闇の中を落ち続け、やがて百物語りの結末を迎える
  1054. 199静かに過ごす事を世間は許してくれない。一度殺人を犯したからだ。俺は本来善良なんだ。善を尽くし生きれば誰かが認めてくれるだろうが、裏切られるのが怖い。この苦しみが罰なのか。心が壊れそうだ…。狭いアパートで震えていると母が優しく言った。「どんな事も許すから、正直にやりさい」
  1055. 198ある入院患者が怖い夢を見ると話した。亡者が現れ「目をくれ…」「心臓をくれ…」など体のあらゆる部分をくれと言うのだそうだ。私は「大丈夫。きっと手術を怖がっているだけ」と勇気づけた。その後手術も無事に終え退院。だが帰りにトラックに轢かれて体は裂かれ、跡に血溜まりだけが残った
  1056. 197町外れに誰の手も施されず荒れ果てた、誰の物かもわからない墓がある。子供の頃、親に「絶対行ってはいけない」と言われたのも忘れ、高校生になり軽いノリで友人と墓場の敷地に入った。はしゃいでいた友人が急に静かになる。その背後で巨大な坊主が折れて尖った卒塔婆を友人に突き刺していた
  1057. 196大学で仲良くなった女子に『歴史的悪女』を課題に卒論を書いている子がいる。普段は笑顔の多いその子は論文の大詰めまで来て沈みがちになった。励ます為に飲みに誘い(下心あり)、店で格好つけて「なんでも協力するよ」と話すと彼女は笑顔を取り戻した。翌日彼女は鋸と大きな壺と用意した。
  1058. 195懐事情が厳しく公園でカップ麺を食べていた。すると視線を感じ振り向くと、骨と皮に痩せこけた目のない侍がいた。え、何?と訊くと侍は「いい匂いじゃ…」と言うので、口に運びかけた麺を一口どう?と差し出すと、「異国の物は食わん!」と怒って消えた。死んでもこの時代で苦労するのね…
  1059. 194人付き合いは苦手だが一人は寂しい。以前コミュサイトで揉めた事がトラウマで、ネット上でも人と繋がれない。人が嫌いと言ってみるが単に自分に自信がないだけ。そんな私はきっと惹かれた相手に依存してしまうだろう。そして今、私は恋をしている。二次元でも三次元でもない、異界の住人に…
  1060. 193腹を空かせて帰宅すると、母と妹がトカゲのように天井に張り付き、父は庭の土を勢いよく掘っていた。唖然とし何やってんのと訊くと、母は「驚いたでしょ?夕食用の虫を捕ってたのよ」と言った。え!?と驚くと母は「でもあんたには普通の食事を出すから」と加えた。とりあえず現在害はない。
  1061. 192自殺した姉の机に残された日記を開くと、何ページにも渡り一面真っ黒になるまでグルグルと円が描かれていた。姉の精神の異常を感じた事はなかったが、身内も知らない姉が日記の中にはいた。そして最後に「◯◯神様 ありがとうございます」と書かれていた。神の名が私の脳裏に焼き付いた。
  1062. 191資格試験中、前方に座る男が後ろを向いた。首だけが後ろを向いている。誰もこの異常事態に気づいてないのかと周りを見ると監視員に注意された。男について説明できず戸惑っていると、男は長い舌を出して笑っていた。…結局試験は不合格。以来何故か男から毎日励ましの電話が入るようになった
  1063. 190ある日突然拉致され、密室で5つの箱から1つを選ぶように迫られた。選ぶとすぐ解放され家族の元に戻された。渡された箱には字ではない何かが彫られた木片が入っていた。その日から家族全員の不眠症が始まり、私以外皆気が触れ自殺。生き残った私は再び拉致され4つの箱を前にし、舌を噛んだ
  1064. 189ビルの窓ガラスを鏡代わりにダンスの練習。仲間と合わせていると、自分の動きが全員とズレている気がした。すると誰かがオイ!と言い、続いて大声が上がると皆どこかへ走って行った。あれぇ?思考がうまく働かない…。窓を見ると、頭にボウガンの矢が刺さっており、直後にもう1本射られた。
  1065. 188通学中。今日は随分カラスが多く飛んでいる。こういう日は誰かが死ぬんだよな、と迷信を思い浮かべる。何となくいつもと違う人気のない道を通るとカラスの群れが道を塞ぎ、追い払うとそこには腐乱死体が転がっていた。なんでだ?この光景は何度も見た気がする。そういえば俺は、いつから…?
  1066. 187人に迷惑かけんじゃねぇよ!と子供に大声で口汚く叱っている母親がいる。皆見て見ぬ振りをする中、男性が勇敢にも「そんな言い方は子供がかわいそうだし、大声出しちゃ逆に迷惑ですよ」とたしなめた。だが母親はお前のせいでと子供に当たり、男性はいい加減にしろと母親を刃物で何度も刺した
  1067. 186ここでは除雪車で脇に退けた雪が積もり積もって高い壁になる。そこを一人で歩くと足音が反響し誰かにつけられているようで、私は怖くて逃げ出した。すると誰かが私を追い抜き、スゥと消えた。その人の後頭部は血で濡れていた。恐らく同じように怖くて逃げて、凍った路面で転倒死した人だろう
  1068. 185住宅街に猿が入り込んだとニュースに。警察による捕獲作戦中、被害が出てしまった。赤子が拐われたのだ。怒った地域の住民も参加しようやく捕獲に成功。だが猿は鬼のような顔と角を持ち、胃袋から赤子の肝を喰らったと判明。これらの詳細は非公開となった。近日山にて『鬼猿』の駆除を予定
  1069. 184実話です。一人暮らしのある日、寝ていると金縛りに。アパートの階段を上がる足跡が聞こえ、それは部屋に入ってくると呻きながら私の周りをグルグル回るのです。私は動かない体で必死にもがくと解放されました。でも金縛りは基本的に脳が見せている現象だと私は信じてます。例外は別として…
  1070. 183戦争から帰ってきた夫の容姿は別人で、暫く共に過ごすがやはり夫ではなかった。私は騙され辱めを受けたと男を殺害。そしてある日、本物の夫が帰ってきてくれた。だが夫は私が別の男と過ごした事を知り憤慨、男を埋めた場所で私を殺し、埋めた。私は死しても辱めを受け、男を呪う怨霊と化した
  1071. 182娘を殺した犯人は未だ不明、数年経った今も時々担当の刑事が訪れ、何も思い出さないか?と探るように訊く。いいえと答えると大人しく去っていくが、あの異様な目つき、思い出されては困る何かがあって監視しているようだ。刑事の後を追ってみると、何かが意識を支配した。アノ刑事モ殺ソウ…
  1072. 181新入社員は必ず座らされるデスクがあり、使用した新人の中には暫くすると辞めていく者もいる。だが部長曰くそれは“使えない人材”なのだそうだ。私もそのデスクを使ったが何も起こらなかったので、今もこうして働き続けている。ただ、去った新人達の怯え様から、相当怖い体験だったようだ
  1073. 180「怪談の恐怖が生まれる過程として、その前に誰かの哀しみがあって、もっと遡れば夢や希望、愛情ってのがあったりしてさ…」と知った口ぶりで語る男が目の前にいる。おい、お前に身を以て思い知らせたい事がある。恐怖の前にはもう一つの側面に、別の誰かの怒りや殺意ってモンがあるんだよ。
  1074. 179病死した父は僕の頭をよく撫でてくれる優しい人だった…。ある日、林で男の人の手を拾った。恐怖より好奇心が勝ち、父親のいない僕はその手を『父さん』と呼んだ。だが日に日に朽ちていく父さんに、僕は哀しみを抑えられなかった。それから僕は、男性の手を集める事で心を満たすようになった
  1075. 178この旅館では海での自殺者を多く泊めてきたが、ある男性客が印象的だった。一人分の食事を届けると男性は家族写真を眺めていた。翌日男性が退館される時、駆けて来た少女に私は「走ったら危ないよ、お嬢ちゃん」と声をかけると、男性は一瞬驚き、深く一礼して悲しく優しい最後の笑顔を見せた
  1076. 177この旅館では海に入水自殺をする客を多く泊めてきたが、自殺志願者と判っても止める事はしない。ただせめて最後に美味しい食事をと最善を尽くす。そしてまた女性が来館。女性は食事を終え「美味しかったです、今回も…」と小さく言った。私は言葉を無くし、願った。彼女の『死の終わり』を…
  1077. 176同級生のAが自殺。いじめはなく遺書もない為原因は不明だった。葬式で皆が泣く中、突然棺を叩く音と「出してくれ!」というAの声がし、泣き声は悲鳴に変わった。Aの父親が慌てて棺を開けるがAは遺体のまま。だが直後にAの絶叫が響き、続いて「死ンデモ逃サナイ…」という声が聞こえた。
  1078. 175水族館で巨大鮫を見ていると突然女性客が悲鳴をあげ、連れの人に「鮫の口に人の腕が…」と言った。場はどよめいたが誰にも見えていない様子。見間違いだろうと誰もが思っていると今度は「あぁ!出て来た!」と女性が叫んだ。皆気持ち悪がりその場を去るが、俺にも上半身だけの男が見えていた
  1079. 174私は中学の頃塾帰りに強姦されたらしいが、頭を打ったせいで記憶はなく、むしろ同情の目が辛かった。成人すると初の飲酒は私を支え続けてくれた家族とし、少量で酔い潰れてしまった。自室で目を覚ますと体に残った感触に記憶が蘇り、私は絶叫した。酔った私を抱えここに運んだのは、父だった
  1080. 173ドローンで上空から広大な田畑の映像を撮る。安物なので数分しか飛ばせないが壮大な映像を期待した。撮ったものを早速PCでチェックすると、地上に長い棒を持った人が数人映った。人なんていたか?と思い拡大して見ると、着物とモンペ姿の女性達が必死にドローンを竹槍で落とそうとしていた
  1081. 172気合を入れ露出度高めの魔女に仮装し、友人とハロウィンパーティーに参加。会場は怪しい照明とEDMで人がごった返しだ。吸血鬼姿の男が血ぃ吸わせろーと近寄ると、友人が逆に吸わせろーと男に噛み付いた。私は唖然としていると、友人が「この時期だけね」と口元を赤くし可愛く舌を出した。
  1082. 171私は亡くした子供に会いたい、触れたいと願い救いを求め、魂との交信を通して触れ合えるというある土地の秘術に辿り着いた。犠牲にできる物は全て払い、遂に子供と再会できる儀式の最中、私を恨む者達が火を放ち、肉体諸共私の願いは燃えて消えた。魂となった私は尚も子供を求め彷徨い続ける
  1083. 170人生に絶望し、天井から紐を垂らし輪っかを眺めていると人影が。だが部屋には誰もいない。それは輪っかの中だけにおり徐々に歩み寄って来る。驚き踏み台から転げ落ちると頭を打ち気絶、目覚めると実家にいる筈の母がおり虫の知らせがあったとの事。あの人影は亡くなった父だったかもしれない
  1084. 169ホラー映画の撮影。キュー出しカウント1まで数えると、続いてハクションッ!と入った。そこはアクションだろ!とツッコむが誰もクシャミはしてないと言う。霊の仕業と考えた監督は風邪薬と霊除けに塩水を適当な場所に備え撮影を再開した。3!2!…!ゲホゲホッ!今度は塩水にむせたらしい
  1085. 168大入りの映画館で鑑賞中、どこからか女の啜り泣く声が。泣けるシーンでもないのにと思うと、前方で女が立ち上がって振り向き「誰か…助けて…」と言った。だが誰も反応しない。まさか誰も見えてない?すると女が俺を見て絶叫を上げ、俺は恐怖で飛び跳ねた。気付くと女と二人、廃墟の中にいた
  1086. 167帰宅すると同棲中の彼女が縮こまり震えていた。どうした!?と駆け寄ろうとすると「こっちに来ないで!」と彼女が泣き叫ぶ。そして「もう一緒にはいられない」と俺を突き飛ばして部屋を出て行った。その時スカートから伸びる彼女の脚が赤ん坊の顔に覆われているのを見て、俺は立ちすくんだ
  1087. 166ダイエット法をネットで検索。完全野菜食のヴィーガン、出刃包丁刺激法、脳手術まである。色々ある中で一番気になったのは『呪いダイエット』。自分の藁人形を作り針で刺すだけの簡単ダイエット!これなら根性無しの私にピッタリだわ!(だが私は命に関わる重要な注意書きを見落とした)
  1088. 165不発弾が発見され処理班により大規模な撤去作業中、「それに触れてはならん!」と老婆が騒ぎ、警察に連行されていった。その後撤去は滞りなく完了したが、撤去跡から『樽』が出て来た。処理班がそれを掘り出すと突然重機が動き出し、掘り起こした穴に落下。処理班他6名が下敷きになった。
  1089. 164水泳の世界大会がTV中継されたが苦情が殺到、ネット上でも大騒ぎとなった。見下ろしの映像でトップを泳ぐ選手に人影が重なり、選手を手助けしているように見えるのだ。だが別角度の映像ではそれは映っていない。運営側での審議は重ねられたが結局謎のまま問題は棄却、以降恐怖映像と化した
  1090. 163私が営むペットショップに品のある婦人が来店。だが直感で『虐待目的で動物を飼う人』だとわかった。一体何匹が犠牲に…。私は丁寧に接客しつつそれとなく虐待を話題に出すと、婦人は悪魔のような目つきで「お黙り!」と言った。すると店の動物達が一斉に吠え出し、婦人は逃げ去って行った。
  1091. 162「彼氏が高級車買ったの~ドライブが超楽しみ~」と友人が自慢げに言う。私は「え~よかったね~」と喜んで見せたが、どうせ中古車だと勘ぐった。翌週、友人はやつれた顔で現れ、どうしたの?と訊くと「車が…、車が変なの」と震えながら言う。私は友人を強く抱きしめ、そしてほくそ笑んだ。
  1092. 161新任のその教師には教師たる資格がない。僕が猫に石を投げていると一緒になって石を投げ始めた。早く馴染もうとこんな事に必死なのが無様だ。ある日僕は初の人殺しを試みようとすると、教師が現れ「そんなんじゃダメだ。見てなさい」と鮮やかな殺しを披露した。以来彼は僕の『先生』になった
  1093. 160窓際の観葉植物がすぐに枯れる。ここだけ妙にひんやりするので念の為霊感のある友人に視てもらうと、確かに霊はいるそうだ。だが友人はどんな霊かは答えられないと言い、害の有無すら教えてくれない。俺はしつこく追及すると、根負けした友人がこう言った。「お前だよ。お前の生き霊がいる」
  1094. 159部室で一人着替えていると、奥のロッカーの戸が独りでに開いた。なんだ?と中を見ると、上半身だけの自殺したAがいた。俺は驚き倒れると、今度は戸が激しく開閉を始めた。やめろ!俺はお前を虐めてない!そう叫ぶと急に静かになった。ゆっくり瞼を開くと目の前でAが「誰でもいいんだよ…」
  1095. 158私が勤める介護施設の老人達は、皆身寄りがなく寂しそうである。ある晩「ゴゥジレ…」と言うしわがれ声が聞こえ恐怖したが、すぐにそれは老人達の心の叫び『殺して』なのだとわかった。翌日私はお茶に薬を混ぜ飲ませると、老人達は一瞬苦しそうにしたが、最期は穏やかな表情で息を引き取った
  1096. 157役所の環境課勤務でゴミ屋敷のゴミ処理。家主は他人のゴミを持ち帰り続け、天井まで届く大量のゴミに埋もれて死亡した。作業をすると、まぁ色々出てくる。乾いた血のついた刃物。新生児を包んだ新聞紙。バラバラ殺人の未発見だった手足。家主の死因は本当にただの埋没死だったのだろうか…
  1097. 156彼女の描く抽象画は色彩が奇跡的に美しい。彼女曰く高台から街を眺めているとそれが見え、そしてそれは『死者の魂』なのだそうだ。魂とはこんなにも美しいのか。街では毎日誰かが死んでいるが、もっと彼女の絵を、魂の色を見てみたい。そう思ったのは逮捕された彼女の父親も同じだったようだ
  1098. 155夫には義母が絶対だった。流産の責任は全て私にあると義母が言うと、夫も私を責めた。私は身も心も傷つき、孤独だ。そんなに母親が好きなら子宮に詰め込んでやる!夫と義母の殺害を決意した翌朝、二人は廃人のようになっていた。その周りを小さい影が纏わり付いている。私の赤ちゃん…なの?
  1099. 154鏡を見ると、目が酷い充血。目薬を差すがスッキリせず、ホットアイマスクもダメ。誤って指先が軽く眼球に触れると、あれ?気持ちいい。思い切って摘んで揉んでみると、うわぁ~気持ちイイ~。もう少し強く揉んでみる。するとプチュンと音がし、視界が真っ暗になった。じゃあ、エグってみるか
  1100. 153クラスで意中の女子が来て「この封筒を破って捨てて欲しいの」と包帯を巻いた手を見せて言う。俺は助けてやろうと封筒を破ると、女子はありがとうと言い笑顔でバイバイ!と去って行った。カワイイ…。破った封筒の中をこっそり覗くと、ちぎれた人の形の紙に赤黒い字で俺の名前が書いてあった
  1101. 152二階の自室で漫画を読んでいると一階から笑い声が。すると母親が「昔家族でお世話になった◯◯さんがいらしてるわよ。あんたも挨拶しなさい」と呼ぶ。誰だっけな?と思いつつもとりあえず客間に行くと、家族が皆楽しそうに“白目を剥いて”話す向かいの座布団に、日本人形が置かれていた。
  1102. 151誰かの声がずっと頭の中で響き渡る。夜眠れず仕事もできなくなり精神崩壊寸前だ。だが段々その声の言っている事がわかるようになった。「○○石碑を壊せば解放される…」俺は必死に石碑を探し出し破壊すると、低い笑い声と共におぞましい気配を感じた。俺は何を解放してしまったのだろうか…
  1103. 150今日は急に寒くなったせいか、犬が小屋から出て来ない。小屋の前に置いたエサも食べず、体調でも悪いのかと心配になり小屋を覗き込むと、人の生首があった。生首はクゥーンと鼻を鳴らすと小屋を飛び出し、何処かへ飛び去って行った。暫く唖然とし、突然我に返る。あっそうだ、犬は何処?
  1104. 149「なぁ紹介しろよ、誰だよこのコ?」「ハァ?誰もいねぇだろ」「いや、お前の隣に座ってるじゃん」「やめろよ気持ちワリィな」「おいおい、ふざけてんのか?」「あ"?ちょっとこっち来いや!」「んだよっ!」そしてトイレにて「ごめん、『私の存在を意識したら殺す』って脅されてんだ…」
  1105. 148誘拐した子供の親に電話をするが、親は妙に落ち着いた声で「もしうちの子を傷つければ、貴方の身が危ないですよ」と言う。脅しとはいい度胸だなと返すが「そうじゃなくて、子供の体に寄生してる『蟲』が宿主を守る為に何をするか…」と言った。そう言えばさっき首の後ろがチクリとしタ、ナ…
  1106. 147母が訪ねて来て、私は近所付合いが好調である事を話すと、そんな人達はいないと言う。でも今朝も玄関先で会ったと話すが、母は神妙な顔で「この世に存在しない」と言い、こう加えた。「ここは病院なんだよ」そんな馬鹿な!じゃあ私に見えてる光景は?それに母さんはなんで体が後ろ向きなの?
  1107. 146ベッドに横たわり、穏やかな水の中を浮かぶイメージをする。何となくだが浮遊感を感じ、癒される気がする。遠くで微かに私を呼ぶ夫の声がするが、瞑想状態から抜け出せない。するとふわりと天井から見下ろす視界に切り替わり、ベッドの上の私に近づく黒い影と、私を呼ぶ瀕死の夫が見えた。
  1108. 145母の遺品整理をしていると色褪せた田舎の風景写真が出て来た。私は何故か使命感に駆られ、写真を頼りにその場所を探し出した。景色を眺めていると背後から「土地を奪い返しに来たか」という声。振り返ると老人が鎌を構えている。私は母に導かれた事を知り、初対面の老人に強い殺意を抱いた。
  1109. 144夜中に玄関で物音がし、見に行くと小さい人影があった。ギョッとしたが、それは知っている少女だった。あぁ、信じられない。僕に会いに来てくれたんだ。大好きだった少女。遠くで見ているだけだった少女。勇気を出して会いに行って誤って殺してしまった少女。これからはずっと一緒にいようね
  1110. 143アパートでシャワーを浴びているとジュワァーという音と強烈な異臭がし、慌てて風呂場を飛び出し振り返るが、何もなかった。またある日は一瞬湯船に体の溶けかけた人が横たわっているように見えた。不動産屋は過去に事故事件はないと言う。きっと表沙汰になっていない事件があったに違いない
  1111. 142美食家で有名なタレントがトーク番組で「子供の頃は貧乏で虫とか色々捕まえて食べましたよ」と語る。MCは嫌な顔を見せつつも、一番美味しかった物は?と訊くと「虫じゃないんですがね、やっぱりこの辺かな」とMCの頬を指差した。MCが驚くと、タレントは冗談ですよと目を細くし笑った。
  1112. 141僕の家の居間には『え』という赤黒い一字が額に入れられ飾ってある。他にも親戚のAの家に『つ』、Cの家には『な』がある。あともう一字あるらしいが叔父のBがそれを燃やし自殺してしまったとか。4兄妹の末っ子である母曰くその字は『ぐ』だったらしい。母達は何かを背負っているようだ。
  1113. 140廃墟の洋館に潜入してビデオ撮影。地下に入ると空気が変わり悪寒が走る。すると頭上で何かの蠢く音が。見ても何もないが音は録れた筈。暫く探索して地上に上がり録画を確認すると、地下の天井に人が大勢吊るされ苦しそうに悶えていた。そして最後に「お前もこうなる」という声が入っていた。
  1114. 139家計簿をつけていると、数字を読上げる電卓が勝手に喋り始めた。「キルユー、キルユー、キルユー…」。『殺す』ですって!?さらに電卓の液晶画面に文字が表示された。「HILL YOU」あぁ、『K』と表示したいんだろうけど『H』になっちゃうのね…。私は丘に登って電卓を踏み壊した。
  1115. 138洗濯中の洗濯機の回る様子を見ている。洗い終わった服はビリビリになってしまうので、犠牲にしていい物を洗う。じっと見ていると、見えた!回る服に紛れた赤い爪の女の手。俺はこの手の美しさに魅了されている。一体どんな女性の手なのか。するとチラと女の顔が見えた。が、髭が生えていた…
  1116. 137ビジネスホテルに泊まっていると遠くから絶叫が聞こえた。気のせいかと思ったがまた聞こえ、何事かと廊下に顔を出すと、今度は先程より近い場所で絶叫があがった。どんどん近づいてる?すると隣の部屋で絶叫が。怖くなり部屋に戻ると、そこにいたモノが裂くような絶叫をあげ、俺は気を失った
  1117. 136私の顔には大きな火傷の跡がある。母は、私が赤ん坊の時に御守りを触れさせると焼き爛れたが、呪いからは救えたと言う。ある晩トイレに起きると、父と母の晩酌の会話が聞こえた。酔った父が「熱した油をかけたのには笑ったな」と言うと、母が「あの時は殺す気だったけど、今は幸せだわ」と…
  1118. 135父が珍しく昔話を。大学生の頃に冬山で遭難、夜に凍えていると何かの声と抱擁の温もりを感じ、眠ってしまった。翌朝目覚めると麓におり、父は助かった。しかし問題は、父がその何かに成人する息子の腑を捧げる宿命を負った事だと言う。そこまで話すと静かに母が現れ、化け物に変貌した。
  1119. 134長い行列を待って入ったラーメン屋には1席空きがあり、誰も座ろうとしないその席のカウンターに熱いラーメンが置かれた。不思議に思いつつも食べ終えると、なんとその席のラーメンも空になっていた。後で聞いた話ではその席には神様が来ているらしい。土地の邪悪な神を鎮める為の席との事。
  1120. 133朝から我が家の前で両隣の旦那が揉めて、遂には刃物を持ち出し互いを刺し始めた。泣き喚き止めに入った奥さん方も刺されて血を流している。私はそれを家の二階からコッソリ見ている。彼らをたぶらかしたのも、揉めるよう仕向けたのも私。だって盗聴したらあの人達、多分私達を妬んでるから…
  1121. 132姉は出産後もお乳が出ないと嘆いていたが、久しぶりに姉夫婦を尋ねると赤ん坊はふっくらしている。粉ミルクを飲ませてるのだろうと思うと姉は手に巻かれた包帯を解き、短く削れた指を赤ん坊にしゃぶらせた。姉が見る見る憔悴していくと、旦那さんが補給しろと異臭放つ奇怪な肉塊を持ってきた
  1122. 131新入社員応募の履歴書の志望動機に「会社を自分で操る為」と中二病全開で書かれた物があった。普通なら即不採用だが、どの程度か確認してやろうと面接をする事に。しかし会ってみると至って普通でつまらなかったので引き取ってもらうと社長室で首切自殺、血を浴びた社長は気が触れてしまった
  1123. 130胃潰瘍で入院。暫くストレスから解放されて休んで下さい、と会社の部下達が千羽鶴ならぬ百羽鶴をくれた。面倒だが可愛いヤツらだ。ある日の深夜、カサカサという音で目を覚ますと鶴の束が揺れていたが、特に気にせず眠った。後日の検査で胃カメラを飲むと、幾つかの折り鶴が映り込んだ。
  1124. 129最近近所で深夜に通り魔が多発、私は深夜に外出する夫を疑っていた。ある晩夫を追った先で誰かが襲われており、見ると犯人はやはり夫。だが後ろから夫がもう一人現れ犯人を取り押さえた。夫は別の自分の犯行だと知り、毎晩探していたとの事。私はバレぬようにと、犯人と被害者を消す事にした
  1125. 128深夜、受験勉強中に背後で物音がし振り返るが何もない。何度か後ろを見ると机の方で音がし、顔も戻すと、先日プレッシャーで自殺した塾講師の頭が乗っていた。怖かったが連日寝不足で気が立っており「生徒が必死な時期に自殺で逃げて、更に邪魔までするな!」と怒鳴りつけると、スゥと消えた
  1126. 127ある墓地の前を通ると不思議と心地良くなる。墓地とは亡くなった方が休まる神聖な場所。でもここにはもっと特別な何かを感じ、住職を伺うと美味しいお茶と共に深い歴史を聞かせて頂いた。するとなんだか心地良くなり瞼が重くなってきた。霞む視界に不敵に笑う住職。これを予感していたのか…
  1127. 126若い患者が五十路の女医である私に恋をしたと言ってきた。その患者との接点は診察だけだったので本気にせずにいると、患者は数日後に胸を抑え亡くなってしまった。遺族の許可を得て解剖すると色々とわかった。私へのドキドキも彼の死も、心臓に長い髪を巻き付けた何者かのせいだろう。
  1128. 125俺は女にモテないが何故か子供にはモテる。それで遊園地でのバイト。ある日、俺の周りに十数人の幼児達が集まってきた。皆一斉に俺の手を引っ張って何処かに連れて行こうとするが笑顔で応対していると、同僚の女の子が「一人で何やってんの?」と冷めきった表情。子供だけは俺に優しい…
  1129. 124毎朝飲んでいるサプリメントのカプセルが入った瓶を手に取ると、新品なのに開封の跡が。記憶違いで昨日開けたのかもと朝食後にそれを飲み、時計を見て慌てて家を飛び出した。翌朝も飲もうとすると、瓶の中でカプセルを割って孵化した虫の子がビッシリ詰まっていた。嫌な想像が頭を過ぎった。
  1130. 123いじめられっ子の交流サイトに暇潰しで参加。傷者同士の馴合いばかりだが『クリア希望スレ』というスレッドを覗くと幾つかの「クリア」の文字。俺は冷やかしで「お前ら全員クリア」と書込んだ。だが後になって知った。クリアとは『私を消去して』の意味だと。さっきからノックの音がうるさい
  1131. 122○○池でカッパ目撃!?というゴシップ記事が出て、地元商店街は便乗商品で若干人を集めた。ある日自称研究集団が池に道具を放ち、あるモノがかかった。それは頭頂部の皮を切り取られた人の他殺体で、後日組合長を逮捕、商店街は一気に静かになった。だが目撃談ではカッパは歩いていたとの事
  1132. 121合コンで知り合った男性との初デート前に鏡に向かってメイクをしていると、映る自分に妙な違和感が。注意深く見ていると、“目”だけが少しずつ横を向こうと動いている。私は短い悲鳴を上げたが、一体何を見ようとしているのかが気になる。恐る恐る追った視線の先には、首を吊った私がいた。
  1133. 120安い部屋に引っ越したが、夜寝ていると壁側から何かを叩く音が聞こえてくる。でも隣に誰も住んでいない事は知っており、安い理由を痛感していると、コン、コンだった音はチャッ、チャッと変化していた。なんだと思い布団から起き上がると、壁にもたれた男が自分の頭を棒で叩き割っていた。
  1134. 119草むした広場には“死体缶”と呼ばれる錆て朽ちたドラム缶があった。名の由来は「中に死体が入っている」という誰かの冗談から。僕らは起きろ~とか言って叩いたり上に乗って飛び跳ねたりして遊んでいた。ある日建築の為にドラム缶を撤去すると、“下”から手で耳を塞いだ死体が掘り出された
  1135. 118夜の山道を走行中に後ろを走り屋に煽られ、道を譲ろうとすると更にクラクションで煽ってきた。そして並走させ窓を開け物凄い剣幕で叫び、追い越して行った。もしかして「逃げろ」と言ってた?でも今でかい頭があんたを追って行ったよ。ふとバックミラーを見ると“カラダ”が追って来ていた。
  1136. 117快晴の日、自殺しようと屋上の柵を乗り越えると視線を感じ、向くと少年が見ていた。え、何?と訊くと「世界は綺麗なんだよ。貴方には見るべき綺麗なモノが沢山ある」と優しい声で言う。何故か心に響き涙が溢れ、大空を見上げた。少年は「そう、大空から見ようよ。だから早く」と下を指差した
  1137. 116カフェテラスで一人珈琲を楽しんでいると突然苦しくなり、血の泡を吹いた所でハッと目が覚めた。いつの間に寝たのかと珈琲を口に運ぶと、離れた席からこちらに掌をかざしている男に気づいた。怪訝に思い立ち去ろうとすると店のスタッフが近づいてきて小声で言った。「なんで生きてんだよ?」
  1138. 115ダルマさんが転んだ!と振り返ると、見知らぬ子が混じっていた。気弱な僕はそのまま続け、遂にその子がすぐ後ろに。が、タッチしようともせず濁った目を向けている。怖くてその子を押し倒すと、頭を地面に強打し動かなくなった。それ以来振り向くとその子が立っている。徐々に距離を縮めて…
  1139. 114マスクをした少女は少年に助けを求めた。だが口唇口蓋裂という障害で「タシュケレ」と発音してしまい、少年は「ワタシキレイって言ってるの?」と返す。少女は障害を隠したマスクを邪魔に思い外すと、少年は『口裂け!』と叫んで逃げていった。少女の後ろに整髪料で髪を固めた男が迫っていた
  1140. 113事故で腕を喪失、眉唾だったが医師の勧めで移植を受ける事に。腕はリハビリで動くようになったが時々痺れる事がある。定期検診の日、混雑している待合室にいると腕が痺れてきた。すると男が立ち上がり「皆さん、私は『脳』です。やっと揃った。貴方達は医師によりバラバラにされた私の一部」
  1141. 112凄惨な殺人があり自殺も多発すると噂の心霊スポットに友人達と来た。暫くはしゃいでスマホで撮影などしていたが結局何も起こらず、皆がなんだよとぼやいていると、誰かがこう言った。「じゃあさ、事件を再現してみね?誰か霊になれよ」その言葉に何故か皆が賛同し、魂のない目つきで俺を見た
  1142. 111今日は上司に酷く怒られ、帰宅しシャワーを浴び、風呂に浸かってフゥと溜息、そして悔し涙。あいつ、いつか思い知らせてやる!と思うと突然明かりが消え、暗闇に人影が浮かんだ。悲鳴をあげると、一瞬だが顏が見えた。それは凄まじい怒りの形相をした上司だった。そんなにお怒りなんですね…
  1143. 110夜の公園で遊んでいると、バスケのボールを持った俺を見て友人が固まった表情で「お前、何持ってるんだ?」と言った。何が?と答えると「それ、生首じゃないか!」と言うので派手に驚くと「ウッソ~!」と友人が爆笑。怒ると友人は狂ったように笑いながら走り出し、車道に出て車に激突した
  1144. 109私を妊娠中の母と別れた画家の父が、顏を知らない筈の成人した今の私の肖像画を送ってきた。母は父を憎んでいたが、私は絵を捨てられなかった。不思議な事に絵は私の変化と共に姿を変え、それが父の念=想いだと感じていた。が、30歳を越えると、絵は恨みの籠った目で睨む母のようだった。
  1145. 108会社の喫煙室で同僚に勤務中の爪を噛む癖を注意すると、彼は不貞たようにこちらに煙を吐き、俺はそれを吸い込んでしまった。煙は一瞬人の顔に見えた気がした。翌日から俺も爪を噛み始め同僚を恨んだが、次第にそれが精神安定となり、同僚と早期昇進を実現した。同僚は短い爪とドヤ顏を見せた
  1146. 107高齢で脚の弱くなった母に付添いある人の墓参りに。墓地では母の知人達も来ていた。その人の墓は酷く荒れ汚れており、掃除が大変だと思った。一人が穏やかに「では」と言うと皆が袋を取り出し、一斉に中身を墓に投げつけ出した。それは汚物ばかりで、全員が唾を吐きかけ罵詈雑言を飛ばした。
  1147. 106託児所のスタッフだったある日、子供達と遊んでいるとある子が泣き出した。傍に寄るとその子は泣き止み「大丈夫…ママ」と呟いた。ママの事が余程好きで、つい私をそう呼んだのだろうと思った。が、その子の足元に首が捻れ這いつくばる女が見えた。毎日の送り迎えが父親である理由に気づいた
  1148. 105家出し遠く離れた場所で保護された娘曰く、自分の意思で家出したのでは無いと言う。どういう事か尋ねると、SNSで知り合った男とやり取りをしているうちに意識を失ったそうで、私はその内容を見せてもらった。気付くと森の闇の中、数人の男女が松明を手に、装束を着せられた私を囲んでいた
  1149. 104少し奇妙な実話です。当時ブラック会社で働いていた私は職場に一人残り朝5時。会社の電話で同僚と通話中、同僚の声の向こうに「コンニチハ…」という男性の鮮明な声が。私達は互いに誰か来たかと確認するも、答えはNO。しかも朝5時に「コンニチハ」とは変です。あれは一体何だったのか…
  1150. 103怖くありませんが実話です。夜遅くにPC作業をしながら怪談朗読の動画音声をイヤホンで聴いていました。なかなかの怖い話に作業の手を止め聴き入っていると突然の激しいノイズが入り、思わずイヤホンを外しました。時計を見ると午前2時過ぎ。それ以来、深夜の怪談視聴はやめています。
  1151. 102授業中、シャープペンが突然書けなくなる。ノックすると芯は出てくるが、何かおかしい。引っ張ると数本の長い髪の毛がズルズルと出てきた。ギョッとし、前の席の友人に小声で「おい、昨日お前にペン貸したけど、何かしたか?」と聞くと「あぁ、チャーリーゲーム“みたいな”ヤツはやったよ」
  1152. 101毎晩人を殺す夢を見る。夢診断によると、ストレス・現状打開願望の他、ストレスからの解放・ステージアップなど良い事も書いている。そして最後に『純粋な願望』とあった。総括すると“殺人願望を抱えるストレスから解放され、新たなステージへ行ける”という事か。よし、迷いは消えた
  1153. 100とうとう百話目。皆ソワソワし最後の蝋燭を吹き消すと部屋は真っ暗に。が、何も起こらない。なんだやっぱりとしらけ、皆で談笑しながら部屋を出る。とその途端、急に静かになった。振り向くと誰もおらず、出てきた筈の部屋もない。奇妙な空間に一人。そして知る事になる。百の物語の結末を…
  1154. 99高齢で引退した元議員に取材。 ──選挙では毎回圧倒的な支持率でしたが、決め手は? 「実は遊説カーに催眠装置を仕込んでたんだよ。賄賂より効果的でね」 ──なぜ今そのことを? 「国民に呪われ死を待つ私に思い残す事はない。だが国民は常に何かしらで操られている事を思い知れば良い」
  1155. 98「ねぇ!昨日どこに行ってたの!?」怒鳴る彼女に合コンしていたとは言えずとぼけるが、「正直に言って!」と彼女は尚も喰いつく。渋々正直に話すと「どこの店!?」と言うので、なんで店まで知る必要があるんだと呆れると、「あんたがどこでそんなヤバイのに憑かれたのか聞いてるのよ!」と…
  1156. 97仕事から帰宅すると、玄関の扉を反対から引かれ開かない。ヤンチャな息子の悪戯だと思い優しく叱ると、笑い声と逃げていく足音が聞こえた。が、中に入ると真っ暗。呼んでも返事はない。妻と息子は?背後で扉が閉まり「アソボ…」の声。振り返ると、精神病院に入った浮気相手が血にまみれていた
  1157. 96先生はAが学校に来ない理由を体調不良だと言うが、違う事は知ってる。先日俺達はAをからかう為に心霊スポットに置き去りにした。暫くしてから戻ると、立ち尽くすA。声をかけると突然Aはこの世のモノではない姿になり、俺達は一斉に逃げ出した。Aは帰宅したらしいが、既にAの家族はもう…
  1158. 95女が俺を見て笑っている。いつでもどこでもだ。俺は発狂しそうになって、街中で女に向かい「いい加減にしろ!」と叫んでいた。周囲の目が俺に向けられる。やめろ、見られたくないんだ…。お前ら、俺を見るな!硬い物を拾い、手当たり次第殴り殺す。窓に映る俺の横で、女が俺を見て笑っている…
  1159. 94母の葬儀以来1年ぶりの帰省。一人になった親父は俺の帰省が嬉しかったのか、泥酔で早寝。実家は狭く、ほぼ押入状態にされた自室で俺も寝ていると、何かの物音で目を覚ました。電気をつけると、積まれた段ボールの一つからだ。恐る恐る開けて見てみると、切断された数本の女性の指が蠢いていた
  1160. 93彼はこの上ない程に良い人で、こんな人と結婚できる私は本当に幸せ者だ。彼との間に生まれてくる子供は一体どんな子かしら。不安だけど、とても楽しみだわ。私は、彼とこれから出会える子供の為に尽くします。私達ならどんな事だって乗り越えられる筈。彼が深い呪いを受けていようとも…
  1161. 92放課後、誰もいない図書室で一人本を読んでいると、音も無く現れた見知らぬ女子生徒が向かいの席に座った。その子は学校の古い卒業アルバムを差し出して「この中に私を殺した人がいるの」と言い、スッと消えた。驚いたがアルバムを開くと、顔を黒く塗り潰された生徒の名が担任教師と同じだった
  1162. 91彼女が初めて部屋に来る事になったが、扉の前で急に顔色を悪くし走り去ってしまった。僕は彼女を追いかけ事情を尋ねると、彼女は震えながらも話してくれた。僕の部屋には以前元彼が住み、彼女から別れ話をした晩に自殺してしまったらしい。遺書に“君は僕の元に必ず戻ってくる”と書き残して…
  1163. 90「ママ!見て!カエルがいる!」幼い息子が我が家の狭い庭で叫ぶ。私は見たくなかったが息子の好奇心を突き放すわけにもいかず、どれどれと庭に出る。しかし息子が指差した先にいたのは、人間のような顔で目玉をギョロつかせ、ヌメヌメした舌を出した“カエルっぽい”形の奇怪な何かだった。
  1164. 89“彼の子供が欲しい…”。それは既婚者相手に望んではいけない事だとわかっている。悩み苦しみ過ぎたせいか酷い頭痛で、病院へ行くとCT検査をする事に。結果が出ると医師は「どうにも理解し難い事が…」と頭のスキャン画像を私に見せ、白い影を指しこう言った。「ここに胎児がいます」
  1165. 88雨の日、部屋の中で温かいココアをすすり、静かな雨音だけをBGMに外の景色を眺めているのは飽きない。木々の葉から次々と滴る雫。屋根やアスファルトを打ち弾けた雨の飛沫。水嵩を増し勢いを付ける川の流れ。これら全てに、私は頭の中で色を付け、妄想に耽る。世界が紅に染まりますように…
  1166. 87ビル警備のバイト。監視モニターでエレベーター内を見ると、OLの後ろに長い棒を持った男が。慌てて機内通話で呼びかけると応答したのは男の方で、彼はモップを持った清掃員だった。謝罪し通話を切ると、次の瞬間モニターに映ったのは、何かで清掃員の首を絞めるつけるOLの姿だった。
  1167. 86俺は親を知らず戸籍もなく、顔の大きな傷でうまく話せない為に人との繋がりを持てない。今までずっと盗みと殺しで生きてきた。神が殺しを許さないのであれば、何故俺が存在し、どう生きていけというんだ?自殺?怒りが、恨みがそれを許さない。俺は神を呪い、例え死んでも命を喰らい続けてやる
  1168. 852歳上の姉ちゃんは、僕が公園でオモチャを無くし泣いてると探しに行ったまま帰らず、2日後に公園のトイレで死んで見つかった。優しかった姉ちゃん。僕はボールをお供えすると勝手に転がり出し、追いかけた先にオモチャがあった。ありがと。これからは僕も姉ちゃんみたいに優しくなろうと思う
  1169. 84大好きな歌手の限定ライブCDをようやく入手。聴くが途中で歌が途切れ、奇妙な低音が数秒間入っている。もしやと思いPCの逆再生ソフトを使い聴いてみると、なんと男の低い声で「キ~ク~ナ~…」と言っている。でもまだ全部聴いてないし限定版だから処分もできないし…。これは超レアだ!
  1170. 83最近、変な夢を見る。廃屋が並ぶ中、1軒だけ生活感のある小屋があり、私は何故かその中に入る。中には女性がおり小袋を差し出され、そこで目が覚める。祖母にそれを話すと翌日から行方不明に。心配したが数日後に某ダムで無事発見された。祖母は綺麗な櫛を握り、一人静かに泣いていたそうだ。
  1171. 82ストーカー被害に遭い、犯人だと疑っていた人物が死んだ。しかし被害は無くならず、目星をつけた人物は次々と死亡。それだけでなく、嫌な事があり“死ね”と思った人物も死んだ。ある日手紙が届き「アナタが願ったから殺しておいたヨ」と書いてあった。心まで読めるストーカーかよ…
  1172. 81友人達と『部屋飲み中に霊が出る』というよくあるフェイク心霊動画を撮影。後で加工する為何もないところで撮影者のAがワァァ!と怖がる。なかなかの演技。するとAは「マジ!マジで映った!」と言い、確認するが何もない。ここだよ!と画面の自分を指差すAが、「ココダヨ…」と別人の声で…
  1173. 80子供の小学校の運動会、高学年による騎馬戦は毎年白熱する。恒例の事だけど、初観戦の保護者の中にはその光景に固まる人もおり、目が合い会釈すると、顔を引きつらせ会釈を返してくる。それもその筈、普通の人には見えないけど、子供達に混じって本物の騎馬隊(落武者)が合戦をやってるから…
  1174. 79「すんません親方…」「ったく、俺たち大工の命でもある工具を忘れるなんて、命を忘れてきたのと同じだぞ」と言いAに工具を貸した。暫くして「すんません親方、工具を…」とAが。「さっき貸してやっただろ!」「え?何の事っスか?」見ると貸した筈の工具が戻っており、真っ赤に濡れていた。
  1175. 78仕事を終え帰宅途中、酔っ払ったオッサンに突然「なぁ助けてくれよぉ」と肩を掴まれた。酒臭かった事もあり、んだよ…と払い退けると、オッサンは尚も「おぃぃ頼む、助けてくれよぉ」と縋り付く。疲れていた俺は苛立ち、あ"ぁ"!?と振り返ると、オッサンは笑顔の少女にザクザク刺されていた
  1176. 77ある住宅の隅に“ソレ”はいた。誰にも気付かれず、ヒッソリと…。子犬大ほどのソレは日に日に大きくなっていき、人間の大人の大きさで成長を止めた。更に数日後には完全な人間の男の姿となり、なんと歩きだし、人通りの多い場所へと去って行った。今もどこかで人の中に紛れているのだろうか…
  1177. 764歳と6歳の息子達は初の動物園に興奮し、いくら叱っても走り回る。無限の体力か…。そんな二人がある檻の前で立ち止まる。檻は空で何の表記もない。だが二人共オォーとかスゲェーなどと声をあげ、食い入るように見ている。言葉遣いを叱っていると、檻が激しい音を立て揺れた。何かいるんだ…
  1178. 75すっかり寂れた公園の前を通ると、珍しく子供達が遊んでいる。俺もガキの頃はと郷愁にかられたが、彼らの元気な声に顔がほころんだ。すると突然子供達は煙のように消え、一人の少年が残った。あれは…、親友だった〇〇。…あのさ、大人になると色々あってさ。俺も、そっちに行っていいかな…?
  1179. 74近所で犬が朝から晩までずーっと吠えている。飼い主に一言言うべく、鳴き声を頼りに居場所を掴んだ。この家だ。呼鈴に返答はなく、騒がしい裏庭に無断で周り込むと大きな犬がいた。が、その犬は何かに怯え衰弱しきっている。見ると装束姿の男が大幣を振るいながら、犬に向かって吠え続けていた
  1180. 73息子は否定してるけど、どうやら学校でイジメられている。担任に聞いてもそんな事実はないと言い、クラスメイトも何も知らないと言う。全員嘘つきだ!私にはわかってるのよ!正直に話すまで、絶対に帰さない。 ……結局何も掴めなかった。さて、コレらをどこに捨てようかしら…。
  1181. 72外回りの営業中、ひと息つこうと飲料自販機の前に立つ。あ!つぶつぶミカンだ!復刻版だが懐かしさに即購入。缶を振ってから開け、粒が沈まぬ内に素早く飲む。うまっ!口の奥に残った粒を噛み潰す。するとグジュと変な苦味が。ペッと吐き出すが普通の粒だ。その晩、目や鼻から何かが這い出した
  1182. 71TVで最近人気の芸人が一般人モノマネをしており、公私のギャップが酷い人物としてネタにしていた。でもそれは明らかに私の事だとわかるもので、翌日から職場で白い目を向けられるようになった。芸人はなぜ私の事を知っているのか。ある晩、部屋の天井に半透明の芸人が逆さにニュッと出てきた
  1183. 70路上でギターを弾き、誰も聴いていないが気ままに歌っていると、いつの間にか一人の少女がいる事に気付いた。前髪が長く表情を伺う事はできないが、その子の為に渾身のバラードを歌った。少女は小さく震えながら袖で涙を拭い、近づいてきた。が、少女は金槌を握っていたので慌てて逃げた。
  1184. 69廃墟にて定点カメラで録画するなどのオカルトマニアの友人が「俺は霊を見た事ないから、是非見てみたいんだよねぇ。曰く付き物件とか住みたいし、曰く付き物品があったら欲しいくらいだよ」と言っているが、いやお前、気付いてないだろうけど、もう手遅れな程いろいろ憑いちゃってるから。
  1185. 68妻がガーデニングに凝り始め、庭は花や草木で彩られた。なかなかセンスが良いのは認めるが、家事もせず庭いじりに没頭、食事すら出なくなった。育ち盛りの息子は妻に抗議すると、妻が手にしたスプレーを吹きかけられ、暫くもがいた後に動かなくなった。息子が眠る場所に咲いた花は、綺麗だった
  1186. 677歳の娘と一緒に夕食の買い出しに。娘には好きなお菓子を一つだけ選んでいいよと約束していた。野菜を物色中、買い物カゴに何かを入れられた。見るとそれは『超怖い話グミ』だった。なぜこんな物がほしいの?と訊くと、娘は「お話を百個集めたら、天国に行けるんだって」と嬉しそうに言った。
  1187. 66工事現場とか地面を掘っている現場を、私は見る事はできない。掘り返せば、必ずその土地で亡くなった者の霊が這い出してくるからだ。今までで一番怖い経験は、這い出した霊とつい目が合ってしまい、家までついて来られてしまった事だ。一人だけならまだしも、無数の霊に戸や窓を叩かれた。
  1188. 65子供の時、僕らは地元の深い森に探検に行った。森の奥で、苔むした小さいお社を発見。なんだか神秘的なものを感じ、全員で苔を落として綺麗にし、持っていた菓子を供えて帰宅した。その後、身内や知り合いになる人は次々死亡。生きる場所を無くした僕らは、とうとう森のお社の前に戻った。
  1189. 64動画の生配信企画として都市伝説『深夜に某人形電話にかけると自宅までやってくる』を確かめてみた。電話は繋がると「モシモシ、ワタシ○○チャン、アナタハ○○県○○市○○丁目の…」とウチの住所を言い始め、慌てて通話を切った。その後の第一声は「えぇっと…、この都市伝説は嘘ですねw」
  1190. 63古着好きな同棲中の彼氏が、珍しく私に似合うだろうからと白いワンピースを買ってきた。でもそれは私の趣味じゃないし、そもそもデザインが古臭さかった。一応礼を言うが感情が顔に出ていたのか、彼氏は拗ねたように怒り、ワンピースだけを持って出て行ってしまった。あれから戻って来ていない
  1191. 62あ、このグニュッとした感触、覚えがある。また“アレ”を踏んだな…。運が付くどころか落ちる“アレ”だ。俺は歩道の縁石でそれをこそぎ取る。縁石には黒い塊がベットリ。まだ微かにヒクヒクしている。小鬼というか、物の怪の類だ。まったく、俺にまとわりつくなよ。また踏み潰しちまうぞ。
  1192. 61溜息を吐くと幸せが逃げると言うが、呼吸をしているだけで不幸を吸い込んでしまう私は、御札を仕込んだマスクが無くては生きてはいけない。ある日、私がマスクを外して溜息を吐くとどうなるのかと兄がしつこく聞いてくるので、責任不問を条件に試してみた。その年一番の不幸が日本を襲った。
  1193. 60弟が通魔で六人もの人を殺した。弟は昔から何事も長続きせず、そのくせプライドは高くキレやすいクズだ。だが少し顔が良いだけでファンレターが届く。人殺しなのに、だ。私たち加害者家族はいくら詫びても毎日嫌がらせを受け、母はついに自殺。私は獄中の弟を呪い殺す事を誓い、母の後を追った
  1194. 59広大な山の土地を遺し、祖父が亡くなった。遺言は無く、土地をどう相続するかを決める為、まずは山を視察する事に。しばらく登り、カラスの群れが鳴きわめく上方を向くと、伸びた樹々に押し上げられた沢山の人の白骨死体があった。祖父は何をしてきたのか。相続は別の意味でこじれた。
  1195. 58我が家の玄関先の壁に黒いシミができている事に気づいた。築30年だしシミ程度どうって事ないと放置していると、それは日に日に大きくなり、まるで人の顔のようになった。しかもなんだか赤みを帯びてきている。深夜、寝付けず外の空気を吸いに玄関を出ると、男が壁に顔を必死に擦り付けていた
  1196. 57駅で電車を待っていると、誰かが足をつつく。見ると薄ら笑いの子供がおり、「危ないから気をつけて…」とだけ言うと走り去って行った。何が危ないと言うのか。周囲を警戒していると背後に人が立ったので、慌てて違う乗り場に移動した。やって来た電車は、直前に脱線しホームに突っ込んできた。
  1197. 56マンションの隣の住人は毎晩喧嘩で騒がしく、こちらが注意すれば夫婦揃って逆上。警察に通報しても何の対処もしてくれない。ある晩、また喧嘩が始まったかと思ったら、急に静かになった。ちょっと心配になってベランダから体を乗り出し隣を覗くと、血塗れの大家がこちらに気づき、会釈をした。
  1198. 55出産をした私の顔を見て、見舞いに来た友人達が「幸せそう」と喜んでくれた。産まれたばかりの赤ん坊の写真を皆がスマホで撮る。だがA子が撮るとどうしても顔が歪む。怖くなってデータは消去してもらった。15年後、子供の凄まじい暴力で家庭は崩壊。幸せをやり直す為、全てを消去しよう。
  1199. 54ビルの窓清掃員として勤めて1年。38階建ての高層ビルを清掃中、視界の横を何かがかすめ落ちていった。ハッと振り向くと、再び何かが落ちてきた。それは〈人のよう〉であった。何事かと上を見上げると、窓に四つん這いで張り付いた化け物が、落ちていくそれらを追いかけていった。
  1200. 53実は私の友人も『小さいオッサン』が見える人で、なんと昨日は私の肩に乗っていたみたいなの!今日もいるかなー。 友人:え…? 私:え?どうしたの? 友人:何?それ… 私:え?何って、何? 友人:まさか! 私:な、何なの!? 私が訊くと友人が突然絶叫をあげ苦しみ出し、絶命した。
  1201. 52目を覚ますと病院のベッドの上。私は自殺未遂をしたらしい。もしかしたら友人からの相談を受けている内に、鬱な気持ちが伝染したのかもしれない。ある日、その友人が見舞いに来た。話をしていると意識が遠退き、気付くと病院の屋上から飛び降りようとしていた。建物の下で、友人が笑っていた。
  1202. 51荷物を預ける為に地下鉄のコインロッカーを開けると、ゾワッと鳥肌が立った。コインロッカーには怖い話がつき物。すると突然ロッカーから髪の長い女が這い出し、地面に落ちた。「イテテ…、出してくれてありがとう、テヘ❤️」と可愛いコが言う。 という妄想していると、中から黒い手が…
  1203. 50元カノの結婚式。出し物として友人達が順に話すビデオレターを流した。会場は爆笑と感動に包まれたが、映像に俺が映ると突然ノイズが入った。それは激しくなると、「オマエノ…セイダ…」と女の低い声が流れ、会場は悲鳴と共にパニックになった。モニターには、こちらを睨む新婦が映っていた。
  1204. 49夫のDVを訴えるべく、部屋にレコーダーを仕掛けた。その晩も些細な事で私を殴り罵声を浴びせてきたが、必死に耐え、録音に成功した。弁護士に録音を聴かせると「何ですか?これは」と言う。「DVの様子ですが…」と答えると、彼は眉を顰め言った。「私には女性の高笑いしか聞こえませんが」
  1205. 48道を歩いていると、突然若い男に「すんません、ちょっとこれ持ってて」と、強引に刃物を渡された。するとその男は突然「助けてー!」と叫び、困惑していると「どうした!?」と別の男が現れこう言った。「証拠は撮った。選べよ。豚箱に行くか、金出すか」 僕は刃物で二人を殺す事を選んだ。
  1206. 47彼女が死んだ海に来た。出逢いはサーフィン。友人と共に来た未経験の彼女を教えるうちに恋愛へと発展した。事故から3年、彼女から卒業しなくては先に進めない。思い出を捨てる前に最後にもう一度海に入る。涙の中に彼女の幻が滲む。…と見えていたが、目の前に彼女と亡者達が手を伸ばしていた
  1207. 464歳の娘には見えない友達がいるそうだ。よく聞く一時的なのものだろうと適当に話を合わせ流していた。ある日、娘が嬉しそうにしており、どうしたの?と訊くと「○○ちゃんがママの中に入りたいって言うの。だから私はいいよって言ったの」と言う。突然の腹痛。翌週、覚えのない妊娠が発覚した
  1208. 45転校生の僕を皆が避ける。下校中、同級生が追ってきて「詳しく言えないけど余所者の君を避けるのにはある理由があるんだ。帰宅までは絶対無言でいてくれ」と言う。別れ際、うっかり『バイバイ』と言うと、彼は顔を青くし逃げ出した。すると「帰ラナイデ…」と、真っ黒な子供達が僕の手を握った
  1209. 44高校生になり、母に連れられ初めて祖母のいる母の生家へ。初対面の祖母は想像より小柄だが、優しそうだ。母の姉にあたる叔母は、若くしてこの地で亡くなったらしい。祖母の勧めで使った温泉は貸切状態で最高!戻ると、母と祖母が奇妙な面を被り、こう言った。「さぁ、お役目を果たす時だよ」
  1210. 43先週より住み始めたアパートは、オンボロだが大家は良い人だった。始めこそ鬱陶しかったが事ある毎に心配してくれ、次第に人の優しさを知る事ができた。ある日、大家に「そろそろ一緒に来るかい?」と言われ、どこへ?と答えると、「焦らなくていいんだよ…」と言い残し、煙のように消えた。
  1211. 42新しい電波塔の展望台から都心を一望。遠くを指差し「次はあそこがいいな」と言うと、彼氏が「ちょっと待て!次がちょうど20箇所目だ!」と言う。「ということはぁ、ブッ殺し20人目突破記念しなきゃ!」と私がはしゃぐと、彼氏が大きな手で私の頭を撫で、喜んでくれた。今が一番幸せかも。
  1212. 41ジョギングをしていると、後ろから迫る足音。音は通り過ぎるが姿は見えない。すると今度はアスファルトの地面を削るような音が通り過ぎていく。が、やはり何も見えない。そして次には激しい銃声や爆発音、怒号、断末魔の叫びが通り過ぎて行った。脚を止める。ここで、色んな事があったんだな…
  1213. 40生き別れた弟に30年ぶりに会える事に。弟は重い病を持って生まれ、両親は治療費を稼ぐ為に全てを捧げたが、二人共苦労の末若くして亡くなった。弟が今も元気でいられるのは両親のおかげだ。だが俺は両親の顔を忘れてしまったよ。異国の地であらゆる屈辱を受けた。俺は懐に刃物を忍ばせた。
  1214. 39バイト先の居酒屋で、店長に尋ねる。「店長、あの客、誰と話してるんスかね?キモ…」二人掛けの席に男が一人、誰もいない向い席に話している。「あぁ、放っておけ、どうにもならん」と店長が答える。「どうにもならんって、どういう意味っスか?」「あの席であぁなったら、もう助からねぇよ」
  1215. 38彼女が綺麗な石を拾ったと自慢げに見せてきた。怪しく輝いているが、確かに綺麗だ、吸い込まれそうな程に…。つい見惚れていると、彼女がこれは私の物よと怒り出した。何て事を言うんだ。二人の物にすればいいじゃないか!いや、むしろそれは俺が持つべき…。翌日、男女の遺体が発見された。
  1216. 37コインランドリーで洗濯中、若い女がやってきた。夏という事もあり、露出した肌に目を奪われる。漫画を読みながらチラ見していると、突然女が凄まじい悲鳴を上げた。驚いて顔を上げると、女の姿がない。辺りを見回すと、ドラム式乾燥機の中に、関節がグシャグシャになった女の遺体があった
  1217. 36SNSで意気投合した女性が、何が気に入らなかったのか突然「殺す!」と言い出した。いくら落ち着くよう言っても全く収まらない。正直少し好きになっていたが仕方なくブロックした。すると自宅の廊下をバタンバタン何かを叩きながら「んの野郎!絶対殺す!」と言って、父が通り過ぎて行った。
  1218. 35心霊動画が撮れたと友人がはしゃぎながらそれを見せてくれた。深夜の墓地でタバコを吸っている俺の足元を指し、「これ、オーブみたいなのが映ってるだろ?お前、ヤバくね?」と笑う。俺は言葉を無くした。俺の横にいる友人の背中に女が覆い被さっている事に、こいつは気づいていないんだ…。
  1219. 34今朝、3年飼った犬が死んでいた。庭に埋めてあげようという話になり、「じゃあ、ここに埋めてあげて」と幼い息子が言う。妻が「短命だったけど、幸せをありがとう」と言いながら土を掘ると、沢山の小動物の骨や死骸が出てきた。「ここなら寂しくないよね」と、息子がニコニコしながら言った。
  1220. 33昨年、母は幼い妹と私を残し病で亡くなった。妹は母の温もりを求め、いつも私や祖母に抱っこをねだる。ある夏の日、深夜に目を覚ますと、隣で穏やかに眠る妹に寄り添うように、白い靄が揺らめいていた。微かな懐かしい香り。あぁ、お盆だっけ…。ふと涙が溢れる。風鈴が優しくチリンと鳴った。
  1221. 32貧乏な俺はあえて激安の事故物件を借りた。部屋は少し暗いが特別嫌な感じもしない。荷解き中に携帯を弄っていると、カメラが勝手に撮影を始めた。だが写真には特に変な物は写っていない。翌日も勝手に撮影を始めたが、やはり何もない。あれ?そういえば自撮りモードなのに、俺が写ってない…。
  1222. 31台風だろうと関係なく出勤の為、渋々と雨具を着て自宅を出る。強風に煽られながらようやく駅前まで来ると、少し先で商店の看板が外れて飛んだが、幸い人に被害はなかった。すると視界の隅に高速で飛んでくる影が入った。咄嗟によけると、そこにはカッパ姿のオッサンが斧を振り上げていた。
  1223. 30ある夜、寝ていると突然金縛りに。目を開けると、天井に巨大な人の顔があった。恐怖が襲うが身動きできない。そのまま数分経っても何もしてこないその顔を見ると、ふとあることに気づいた。鼻毛…、が出てる。しかも結構長い。思わず笑うと、顔は一粒の涙を落とし、消えた。
  1224. 29少年時代のある夏の夜。僕は夜に口笛を吹くと蛇が出るという迷信を試してみた。当然何も起こらない、と思いきや、「もし…」とか細い声がベランダの方から聞こえてきた。見るとそこには綺麗な白い浴衣姿の少女。「だ、誰?」と声を掛けると、「おぬしが呼んだのじゃろ?わしは蛇神じゃ」
  1225. 28目がゴロゴロする。眼球の中で何かが這っているような違和感。鏡で見ても何もなく、眼科に行くと緊急入院するように言われ、小さな病室に閉じ込められた。何やら外が騒がしく、窓から見ると、宇宙服のような格好の人達が病院に入っていく。すると突然病室の扉が開き、火炎放射器が火を噴いた。
  1226. 27俺の凡ミスで同僚3人も連帯責任を負い残業。深夜2時、普段は寝ている時間。疲労もあって眠気が襲う。頑張ろうぜと同僚が入れてくれたコーヒーを啜り、椅子に座ったまま伸びをすると血液が一気に頭まで登り、意識が飛んだ。目が醒めると埋められており、同僚達が俺の顔をめがけ土を放った。
  1227. 26免許を取り、調子に乗って遠出したが、歩行中の女性を跳ねて死なせてしまった。数年後に釈放され、改めて免許を取り一人ドライブ中、突然「ブレーキ…」の声。咄嗟にブレーキを踏むと、目の前を猫が通り過ぎた。しばらく進むとまた「ブレーキ…」 どうやらお節介なのに憑かれてるらしい…。
  1228. 25約束の時間に30分も遅れているのに、彼氏は連絡をしてこない。私もわざと連絡をしないでいるけど、返ってイライラは募るばかり。更に10分過ぎた頃、ようやく「ごめんね」とメッセージが届く。もう!と一声発し顔を上げると、頭の欠けた彼氏が 「ゴメンネ、死ンジャッタ」
  1229. 24小学校教員である私のクラスには、まるで菩薩のように穏やかな雰囲気を醸し出す生徒がおり、家庭内での教育方法が気になっていた。 親子面談の日、私は母親に尋ねると、彼女は隣に座る子を優しい目で見つめて答える。 「常に心の中で、目の前の相手をできるだけ残酷に殺しなさい、と…」
  1230. 23彼氏と食事の帰り、吠えてくる犬に酔った勢いで「ワンワンッ!!」と吠え返す。彼氏に笑いながらやめろよと諭されるが、牙を剥き出す犬についムキになり、また吠え返してしまった。すると後ろから低い唸り声がし、振り返ると黒く巨大な半透明の犬が、彼氏の頭にかじりつこうとしていた。
  1231. 22幼い妹がどこで見つけたのか、綺麗な日本人形を抱いていた。人形の表情は優しく品があり、又とても可愛いかった。少し抱かせてと言うと妹はダメと言うので、強引に人形を掴むと背中の突起物を押した。すると人形の顔は般若に変貌し、傍にいた母の顔も般若のように切り裂け、朱に染まり倒れた。
  1232. 21中学生時代、誰かが遊びで作った『読むと死ぬ本』をクラス中で回し読んでいた。臆病な僕は冗談でも読めず、皆に激しくいじられた。当然死者は出ず、25歳の年に開かれた同窓会ではまずは生存確認で盛り上がった。酒も入り流れで皆に昔の臆病さをいじられた僕は、ふと気づくと皆殺しにしていた
  1233. 20赤ん坊との散歩の帰りに突然雨が降り出し、慌ててベビーカーに傘を当てがう。すると道の前方に赤い傘をさした少女がこちらをじっと見ている事に気づいた。気にせずベビーカーを押し、すれ違うと少女が突然目を見開き絶叫を上げた。赤ん坊も凄まじい声を上げる。この子は、異形でも私の子よ!
  1234. 19妻の病が原因不明で、霊視してもらうと、呪いによるものだと判明。それを解く儀式の最中、術者の持つ水晶に俺の顔が映った。「まさか、俺が無意識に妻を呪っていたと!?」と詰め寄るが、術者は黙って首を振る。すると目の前に突然大きな黒い影が現れ、呻くように声を発した。 …ニィ、エ…
  1235. 18友人と昼のカフェテラスで話に花を咲かせていた。楽しい会話の途中に「ちょっとごめんね」とトイレへ向かうが先客がおり、扉の前で待つ。黒く光沢のある扉に、私の席と友人が映る。何気なく見ていると、友人が私のカップに何かを入れた。用を済ませ席に戻ると、友人は満面の笑顔を見せた。
  1236. 17通学路の途中にある新築の家が、家主一家の離散でわずか3ヶ月で廃墟のようになってしまった。その前を通り過ぎ、「ここ、悪霊にでも取り憑かれたのかな?」と私が言うと、友人が「違うよ。お隣さんが全てを吸い取ったんだよ」と答える。振り返ると、隣の家から幸せそうな親子が出てきた
  1237. 16仕事を終え、疲れて帰宅。玄関を開くが暗く、誰の気配もない。明かりを点けリビングへ行くと、床には血塗れの妻の姿が。あぁそうか…、と鞄をソファに置き、ネクタイを外す。ふと背後の気配に気づき、振り返ると6歳の息子が立っている。ゆっくりと息子に近づく。次は俺の番なんだろ?
  1238. 15酷いストーカー被害に遭い、今借りている部屋もそのままに逃げ出し、暫く実家に避難。警察は頼りにならず、不安な毎日を過ごしていた。ある晩、外資系の会社に勤め、今は海外にいる頼れる兄とスマホでビデオ通話をしていると、ふと気づいた。「お兄ちゃん…、今、どこにいるの…?」
  1239. 14彼女は部屋に遊びに来るなり、冷蔵庫を見て「気持ちが悪い」と言った。恐る恐る冷蔵庫を開くが、あるのは昨日買ったリンゴと古い調味料だけ。だが彼女はリンゴを指差し震えている。つけたままのテレビがニュースを伝える。 ~◯◯県◯◯市のリンゴ園で、女性の変死体が発見されました…
  1240. 13久々に焼肉屋に行き、注文すると鐘が鳴った。なんと私は本日百人目の客らしい。店員が「おめでとうございます。当店オーナーの遺言で、彼が一番愛した牛の一番良い部位を差し上げます」と言う。「遺言、て言わなくても…。気持ち悪いな…」そう言うと突然グラスが割れた。「ぅう嬉しいです!」
  1241. 12満員の終電、座れず窓に映る自分をボンヤリ見ていると、すぐ横にいる筈のない女が私を指差し映っていた。ギョッとし目が離せないでいると、その女の口がゆっくりと動き出す。「…ア」と言っているように見えた。全神経を集中させ、続く言葉を読み取る。「…ホ」なんじゃい!!
  1242. 11母を幼少期に亡くした僕は、母性的な女性に恋をした。以前某自称霊能者から聞いた『意中の相手を幸せにする』という儀式を毎夜自室で行っていたある日、父が血相を変えて部屋に飛び込んできた。「やめろ!誰に教わった!?その儀式のせいで、お前の母さんは死んだんだ!」父が泣き崩れる…
  1243. 10肝試しで廃墟を順番で探索中「後ろに注意」という張り紙を発見。振り返るとそこにも「後ろに注意」という張り紙。首を傾げ振り返ると今度は「正解」の文字。意味解らぬまま友人と交代したが、戻ってこない。探しに行くと友人が倒れており、傍には「残念」の張り紙。何が「正解」だったんだ…?
  1244. 9トンネルの途中で手を四回打ち鳴らすと、後ろから女が近づいてくると噂の心霊スポットに友人と行った。薄暗く空気の冷えたトンネル内。立ち止まり、四回手を叩く。暫くすると微かに物音が聞こえた。後ろから?いや違う!音は次第に大きくなっていく。前後から集団で走って来ている!
  1245. 8この崖の美しい景色に誘われるのだろうか…。遺族は皆、自殺に首を傾げているらしい。私は多発する身投げを止めるべく見張っていると、表情の暗い女が現れた。だが彼女は私を見つけると、声を掛けてきた。「貴方も止めに来たのですか?私は貴方のような人をポーンと突き落とす事が好きなんです」
  1246. 7猫達が我が家の縁の下で集会でも開いているのか、床下からの鳴き声がうるさい。日が過ぎ落ち着いたかと思えば、またうるさくなるという事を繰り返す。ある日、遂に我慢ができず懐中電灯を片手に縁の下に潜り込んだ。そこには、何体分もの人骨と新たな遺体を囲む猫達が鳴き声をあげていた。
  1247. 6日が暮れカーテンを閉じようと窓際に立つと、電柱脇に立つ中年男性が目に入った。そういえば、昼からずっとあそこにいる。男に不気味なものを感じ、さっとカーテンを閉じた。深夜、ふと気になりカーテンの隙間から外を見ると、男はまだそこにいた。さっきは見えなかった女を背負って…。
  1248. 5登山中、ボロ切れを纏った醜い老婆が突然現れた。驚き、見ると手には木の棒を握っている。何をするつもりなのか。気づくと周囲を同じような老人達に囲まれていた。そこで思い出した。少子高齢化の影響で山に捨てられた老人が群れを成し、子を産み、山賊と化しているという山の噂を…。
  1249. 4毎朝、爪、髪が丁寧に包装され届く。それは歯、指、耳、舌、眼球とエスカレート。ある日「TVの生中継を見て」というメモが届き、電源を入れると、顔中包帯を巻いた人物が自分の首を切り落とす姿が映った。私は終わったのだとほくそ笑んだ。が、翌朝、首が届いた。誰が送った?
  1250. 3「お前さぁ、海外旅行に行って変なの持って帰ってくるなよ」「マジか!?祓ってくれ!」「そりゃ無理だ。言葉わかんねぇ」「おい、そりゃねぇよ!」「んなことよりさ、憑いてる奴、スッゲェかわいいじゃん。俺がもらってやってもいいゼ?」「え?……ヤダ」
  1251. 2夜の帰り道。行き交うヘッドライトを眺め歩いていると、路上に何かを発見。あれは…、腕だ。アスファルトの車道に、人の腕が生えている。するとその腕が車に轢かれた。同時に右腕に激痛が走る。見ると自分の右腕が折れ曲がっている。痛みに顔を歪め前方を見ると、今度は地面に頭が…。
  1252. 1親孝行しようと両親を連れ海外旅行へ。途中、飛行機内で突然黒服の男に話しかけられた。「私、死神とキューピットの二役を担っています。あなたが前席の女性と結ばれる代わりにこの機を墜落させ、ご両親含め200名死亡させるか、あなたが一人、今ここで死ぬか…」「は?」「お選び下さい」