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  • 狭間 が更新を投稿 6年前

    「宋さんの呪いの嘘とホント」続き

    とうとう準備の日を終え日が明け宋さんが現れる日を迎える。

    今でもよく覚えている。
    この日は雨だったんだ。一日中雨がシトシト降っていた。

    皆登校するとき雨合羽を着て、自分の汗と湿度で湿った学生服は重く身体にへばりついている。

    こんな日は何もなくても気分が悪い。

    と言ってもこの日はもちろん5人組全員登校していたが、今日おそらく起こるであろう恐怖体験にワクワクしているだけだった。

    だけど情報屋は俺達にちゃんと言ったんだ。
    「皆必ず菓子、コップ、磁石を処分しろよ。
    明日からは対処法を必ず実行してくれよ。
    絶対忘れるなよ!
    宋さんに
    ・触れるな、触れられるな
    ・声をかけるな、返事をするな
    これは、これだけは絶対守ってくれよ。」
    ってね。

    その日はそれだけで部活へと全員が向かった。

    次の日、曇りだった。
    ガリガリ、イケメン、ロン毛、情報屋はほぼ同じくして登校してきた。
    情報屋は真剣な顔つきだった。

    俺は登校時間ギリギリで教室に入り1時限目が終わると直ぐに4人の所へ行った。

    そこで情報屋が教えてくれた。
    どうやら4人は全員宋さんに会えたようだ。
    と言うより現れたようだ。

    シチュエーションは全員バラバラ。
    でも違うところはイケメンとロン毛の見た夢は身内出てきたと言うのだ。

    イケメンの所へは妹
    ロン毛の所へは母親

    残りのガリガリと情報屋は朽ち果てそうな屍が出て追いかけられたそうだ。

    そして問題は、イケメンが妹に右足を触られ、ロン毛は偽の母親の問いかけに返事をした事。

    なぜ偽の母親、偽の妹に気がついたか?と言うと、イケメンの右足を触った偽の妹は
    「この足もらうね。」と無表情のまま呟き、
    ロン毛の声を聞いた偽の母親は
    「やった、やった×100」と口元が見えなくなるほどの高速で、高音のまるで鳥のように囀ずったと言うのだ。

    ここで違和感を感じないだろうか?

    「宋さんが現れる」と言う統一事項に、シチュエーションの統一性が無いこと。

    むしろイケメンとロン毛は引っ掛かっても仕方がないと思うほどのトラップ振りである。

    イケメンは
    「まあ、とりあえず今日こうして学校に来ているんだからなんかされたりする訳じゃないよ。
    ちょっと起きたときはビビったけど。」

    ロン毛は
    「んー。なぁ情報屋。
    宋さんてなんなんだ?」

    情報屋は
    「すまん。わからない。」
    「じゃあ、返事したり触られたりしたら何が起こるんだ?」
    とロン毛はきりかえす。

    「それも実際にどうなるか?はわからない。
    わからないけど対処法をやれば大丈夫なはず。」

    ロン毛は冷静に分析しているようだった。
    俺は4人に提案した。

    「なぁみんな。とりあえず今日、情報屋の情報源である祓屋の所に行ってみないか?
    情報源なんだから何か知ってるんじゃないか?」

    情報屋は
    「そうだな。俺もこんなふうになると思わなかったし。」
    ガリガリも
    「そいつの所で、最悪お祓い的な事してくれるんじゃね?」
    と言って一応全員一致で放課後に部活を休んで祓屋の所へ行くこととなる。

    放課後みんな自転車に乗りほとんど会話もなく祓屋の所へ向かった。
    以外にも祓屋は住宅街にあり、普通の2階建ての家だった。

    情報屋はインターホンを押し祓屋が招き入れてくれた。
    驚きもなにもない普通のリビングに通され、大きめの木のテーブルに座椅子、お茶、せんべいが出てきた。

    と言うかホントに普通のオバハンだ。

    「みなさん、よく来ましたねぇ。今日はどんな御用かな、情報屋君。」

    情報屋は宋さんが現れた事、イケメンとロン毛が問いかけに答え、触られた事を説明した。

    祓屋は
    「ん?そんなはずはないよ。そんな人を引っ掛けるほど頭の回る奴が出てくるはずない。
    ちょっとそこのイケメン君。
    君の触られた足を私に触らせてもらえないかな?」

    「いいっすよ。」
    と言うとイケメンは学ランのズボンを右足膝頭が出る位まで捲った。

    イケメンの右足は正直どこを触られたのか俺達素人には皆目わからない。

    祓屋は
    「あたしゃ、よくいる見える連中とはちょっと違うんだよね。
    見るのではなく感じとる事ができる。まぁ触れば解る。そんじゃ触らせてもらうよ。」

    祓屋はイケメンの脛辺りに手を置きしばらく目を閉じていた。
    けっこう長かったと思う。そう、時間にして3分位かな。
    そしたら祓屋が微妙に、小刻みに震えだしたんだ。

    「こんな、バカな!ありえない!」
    いきなり大声で祓屋が言ったんだ。
    俺達はあっけにとられていると
    「もう1人の。ロン毛、ちょっとこっちにきて顔を触らせるんだ。
    早く!」

    勢いに圧されながらロン毛は祓屋の前に座って目を閉じた。
    祓屋はロン毛の顔と言うより耳と額を触った。
    「こ、これはまずい。
    この2人は厄介な者に目をつけられた。」

    情報屋は恐る恐る祓屋に聞いてみた。
    「祓屋さん。ロン毛とイケメンはどうなるんですか?あと俺達はどうすればいい?」

    祓屋は深い深い溜め息をついて答えた。
    「方法はこの前情報屋君に教えた対処法では無理だね。イケメン君とロン毛君はこれからあたしが言うものを揃えて7日7晩これから教える事を実行するんだ。」
    祓屋が言った内容はこんな感じ。
    ・旧市街を出ずに小貝川の1番上流に近い河原の砂を1篭拾ってくる。
    俺達の住む町は茨城県S市なんだが、合併をしているので合併等をする前のホントに1番古い状態の1番上流に近い所。

    次に清酒を用意し清酒と砂を混ぜて盆に盛る。
    この盆は丸いなら何でもいいみたい。

    その盆を自分の部屋の北側におく。

    それをまず実行してほしいと言っていた。
    それで怪異があるようだったらまた来るように言われた。
    でも遅かったんだ。
    俺達が砂を集め、清酒を買い帰宅してその夜にイケメンは救急車で運ばれた。
    実際には夜トイレに行って階段から落ちたらしい。
    と言うのを次の日、イケメンの母親から電話をもらい知ったんだけどね。
    イケメンが多分俺を含めてメンバー全員に電話をするように母親に頼んだんだと思う。

    俺はちょうど土曜日ということもありイケメンの入院する「ヤブ病院」に見舞いに行ったんだ。

    あっ!
    なぜ「ヤブ病院」って呼んでるか?と言うと俺が小学生の時に右腕を骨折して、骨がくっついてもいないのに1㎏の砂袋でリハビリさせたから。結構な医療ミスだよね。
    だから俺はそれ以来その病院を「ヤブ病院」と呼んでるんだ。
    まぁそれはよしとして。

    病室に着くとイケメンは怯えていたんだ。

    俺が昨日の夜の事を尋ねると
    「実は俺トイレに行った記憶がないんだ。
    ずっと夢の中にいると思ってた。夢の中で俺は動けないで金縛りみたいな状態だったんだけど、なにかが俺の右足を触ってるんだ。
    そして」
    《ダメだよ、小細工しても貰うものは貰うからね。》
    「って暗闇から女の声がするんだ。
    怖くて怖くてずっとやめろ!って叫んでた。
    そしたらいきなり動けない俺を何かが突き飛ばしたんだ。そしたら俺は暗闇に落ちた。
    目が覚めると右足が痛くて唸ってた。
    壁に頭をぶつけたみたいでなんかクラクラしてたら病院のベッドにいた。」
    イケメンは一気にしゃべるとハアハアと荒く呼吸していた。

    「まずいなイケメン。例の砂はどうなってる?」

    「砂は母親に取りに行ってもらった。
    悪いんだけど情報屋、ロン毛、ガリガリにも俺の状況を伝えてくれ。あいつら連絡がとれねーんだ。」

    俺はイケメンに
    「わかった。後の事は任せろ、お前は取り敢えず足を治せよ。」
    と言って病室を出た。